のほほ~んとダンジョンに行くのは間違っているだろうか   作:takubon

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十二話 のほほんと神の宴~

 久しぶりに神の宴に参加したヘファイストスとフレイヤ。

 

 分野こそ違いますが、お互いオラリオが誇る大手ファミリアの長。とても忙しい身である為、滅多に神の宴等の行事に顔を出せない二人が来た事で、会場はいつもより少し騒がしいです。

 

 まぁ、フレイヤの場合は少し違う意味ですが。神々ですら魅了する美の女神様なので。男神達が気持ち悪いくらいだらしない顔になっています。なまじ元の顔だけは良いので、はっきり言ってドン引きです。

 

 まぁ、そんな輩共は放って置いて・・・・・・二人一緒に見知った神々にそれぞれ挨拶していく中で、ヘファイストスはよー・・・・・・く知った顔の神物を見かけました。見かけてしまったのです。

 

「(サッ、サッ、サッ)」

「・・・・・・」

 

 その小さな神物は、テーブルに並べられた色取り取りの豪華な料理を、手に持ったタッパーに素早く詰め込んでいきます。加えて時折自らの口にも放り込み、頬がぱんぱんになっていますね。もうハムスターそのもの。

 

 ですがこの宴の場においてあまりにも残念過ぎたその様は、傍で給仕をしていたガネーシャの眷属も顔を引き攣らせる程でした。

 

「はぁ・・・・・まったく、何やってんのよ」

「ふふっ、相変わらずね」

 

 ヘファイストスは旧友の姿に片手で顔を覆い、フレイヤは相変わらず微笑みを崩しません。

 

 あんな行為をしていれば目立たないはずもなく、他の神々もかの神物を指して笑っています。直接何かをして来る訳ではありませんが、それはもう中々のガヤと煽りっぷり。まるでネットのスレの様に言葉が投げかけられます。それでも一心不乱に並べられた料理をタッパーに詰め込み続けています。何が彼女をそうさせるんでしょうか?

 

 見かねたヘファイストスは、見ちゃいられないと呟いて、速足に神友の下へ向かいます。

 

「ふふっ・・・・・本当に仲良しね」

 

 その背中に向かって、フレイヤは面白そうに、優し気な声を漏らしました。

 

 本人に聞こえていたなら、赤面間違いなしでしたね。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「もう、何やってんのよ、あんた・・・・・」

「むぐ? むむっ!」

 

 脱力したような、呆れたヘファイストスの声に、その神物が料理から勢いよく顔を上げました。

 

「むぐむぐ、んっくん! やぁ、ヘファイストス! 久しぶりだねっ!」

 

 しっかり口の中の物を飲み込んでから、無邪気な笑顔で子供の様に元気よく挨拶をする小さな女神。名はヘスティア。

 

 少し前にこの地、オラリオに降りたった女神の一柱にして、天界にいた頃からヘファイストスと長く交流のあった神物です。2人は親友と言って良い間柄でした。

 

 空の様に青い瞳に、幼い顔立ち。かなり長いであろう艶やかな黒髪を、銀鐘がついた青いリボンでツインテールに。大人の女性であるヘファイストスやフレイヤに比べ、随分小柄なその体格に似合わぬ母性の象徴。所謂「ロリ巨乳」の体現者。

 

 更に、普段着ている背中と胸の大きく開いた白いワンピースで、紐乳房の下を通すように二の腕に結んでいる青い紐が特徴。バンザイすると一緒に持ち上がります。後ボクっ娘。

 

 属性てんこ盛り過ぎです、いい加減にしなさい。

 

「えぇ、久しぶりヘスティア。元気そうで何よりよ・・・・・出来ればもっとマシな姿を見せてくれたら、私はもっと嬉しかったんだけど」

 

 一つ溜息を吐いて、彼女は天井を仰ぎます。そんなヘファイストスの様は、苦労人を彷彿とさせる雰囲気を漂わせています。誰か彼女に甘い物と癒しを。

 

「いやー、良かった。ここに来て正解だったよ。うんうん」

 

 ヘスティアの物言いに何か感じ取ったのか、ヘファイストスの表情が穏やかな物ではなくなりました。

 

「何? またお金借りようっていうの?

 言っとくけど、もう1ヴァリスだって貸さないからね」

「し、失敬な! 確かに何度も手を貸してもらって、お世話してもらってたけど、今のボクが親友の君の懐を漁る真似なんかするもんか!」

「ハンッ」

「鼻で笑われた!?」

 

 反論するも、ヘファイストスには冷たい半眼で返されます。

 

 と言うのも、ヘスティアが下界に降り立って間もない、まさに右も左も分からない頃に、ヘファイストスの下でお世話になっていたのです。

 

 しかし、居候の身でありながら働きもせず・眷属も作ろうとせずに、日々自堕落に過ごしていた為に、ヘファイストスの堪忍袋の緒が切れました。ファミリアから追い出され、以降は前に言った通り。本音を通して住居や職等を、陰ながらサポートをしていたという訳なのです。

 

 ヘファイストスは姉御肌の若干クーデレ気質の照れ屋さん。あと眼帯っ娘な男装の麗人。こっちも属性多いですね。壊れるなぁ。

 

「たった今、普通にタダ飯を食い漁ってたあんたに言われても説得力ないわね」

「うぐぅっ!?」

 

 痛い所を突かれたヘスティアが、胸を抑えてよろめく。

 

「い、いや、これは、どうせ残るんだし、粗末に捨てるくらいならボクが有効活用してあげようかなー、なんて・・・・・」

「ほーぅ? 立派じゃないそのケチ臭い精神。わたしゃあ、あんたのそんな姿に感動して涙が止まらないわよー」

「ぐ、ぐぬぬぬ・・・・・!」

 

 皮肉たっぷりの物言いに、唸るヘスティア。こうして言い合えることから、2人の間柄はまさに気心の知れた親友というのがピッタリです。

 

 そこへ、少し遅れてフレイヤも登場。何故かヘスティアが顔を顰めるその訳とは────

 

「・・・・・ボクは君のことが苦手なんだ」

「ふふっ、私は好きよ?」

 

 そういう所なんだってば、と呟いた言葉も微笑みに流されます。まるで子供の戯言の様に思っているのかもしれません。見た目そのままですし。

 

 美の女神は皆一様に食えない性格をしている、というのは言わずと知れた事実です。それも他の神々が霞んでしまうくらいに。

 

 程度の差はあれど、なるべく関わりたくないというのが、ヘスティアの本音なのでした。

 

 

「おーい!ファイたーん! ドチビー!」

 

 

 突如聞こえた女性の呼び声に、ヘスティアが盛大に顔を顰めました。顰め過ぎて変顔になっちゃってます。少なくとも乙女がしていい表情ではありませんね。

 

「・・・・・まぁ、もっと凄い奴もいるんだけどねッ!」

「あら、それは穏やかじゃないわね」

 

 ズカズカと大股で3神の元へやって来たのは、言わずと知れた悪戯の女神ロキ。

 

 いつもパティーや外行きの服ではスーツかボーイッシュな軽装の彼女も、今日は普段と違い、漆黒のドレスで身を包んでいます。適当に括っている髪も、綺麗に夜会巻きにして、ちゃんと女性らしい感じがします。あ、これはちょっと失礼でしたね、すみませんでした。

 

「あっ、ロキ」

「何しに来たんだよ、君は・・・・ッ!」

「ファイたんやっはろー! 今日も大変ふつくしぃなぁー?

 にしてもなんやねんドチビ? 理由がいるんかいな? 『今宵は宴じゃー!』てノリやろ。空気読めん奴やなぁ」

「~~ッッ!!?」

 

 ロキの物言いに顔を真っ赤にさせるヘスティア。額には青筋も浮かんでいます。

 

 そんな2人のやり取りを、さして気にしてない様子のヘファイストスは、いつもの調子で彼女に問うた。 

 

「珍しいわねロキ。あなたがドレスを着てパーティにー出て来るなんて」 

「おー、よぅ聞いてくれたなぁーファイたん。実はなぁー?」

 

 ロキが自身の方へ顔を向けたので、臨戦態勢に入るヘスティア。 

 

「ドレスも買えんようなトチビを見下して笑ったろて思てなぁ?」

「(うっぜぇぇぇぇぇぇぇッッ!!)」

 

 ヘスティアは心の中で盛大に叫びました。目の前でニヤニヤと、心底ムカつく笑みを浮かべているこいつ(ロキ)を殴り飛ばしたいッ! 全力でッ!!

 

 だが、そんな事よりももっと気の晴れる方法(切り札)が、ヘスティアにはあるのです。意識せずとも口角が吊り上がり、不気味な笑みを浮かべる事となりました。

 

「ふふっ・・・・・・ふっふっふっふっふッ! はーっはっはっはぁッ!!」

「な、なんやドチビ。悔しすぎて頭可笑しなったんか?」

 

 突然笑い出したヘスティアに、流石のロキ達も驚きを隠せません。もしや、本当に頭をやってしまったのかもしれないと心配し始めました。

 

「だーれがドレスを着てないだってぇッ!?」

 

 まさか・・・・・ヘスティアはそのワンピースをドレスと言い張るつもり?

 

 そう思ったヘファイストス・ロキの両者は、真剣に彼女の頭を案じました。フレイヤは微笑みを薄れさせ、ヘスティアの事をジッと見ています。

 

 そんな様子には全く気付かず、ヘスティアは一人さらにテンションを上げた。

 

「じゃぁ見せてあげようじゃないかッ! ボクのドレス姿をッ!?」

 

 何でそんなにテンション高いのよ、というヘファイストスのツッコミは華麗にスルーされました。

 

「そいやッ!」

 

 散々勿体づけて、バッと勢いよくワンピースを脱ぎ捨てる。

 

 ワンピースの下には本当にドレスを着ていた。水色と白を基調としたドレス。それはまるで空の様で、花の様だった。

 

 所々にあしらわれた花の刺繍。近くで見るとその細やかな刺繍の美しさに、そしてそのドレスを身に纏う女神の美しさに、思わず先程までの残念過ぎた様からのギャップに目を奪われる周囲。

 

「ジャジャーン! どうだい? これが僕のドレスさ!」

 

 嬉しさいっぱいの笑みを浮かべ、豊満な胸を張る。ぷるんっと大きく弾んだそれに、密かにロキ(ぺたんこ)が精神的ダメージを受けました。

 

「良く似合ってるじゃない。でもあんた、そのドレスどうしたの?

 とてもじゃないけど、あんたの経済力でそんなそれが変えるとは思わないけど」

「よくぞ聞いてくれたねヘファイストスッ!!」

「近い近い、そんな鼻息荒く近づかないでよ。

 あっ、ほら食べカス付いてる。もう、ちょっとじっとしてて」

「んんっ。ありがとう!」

 

「オカン・・・・・」

「ママだしょ」

「それは九魔姫だから」

「姉だろjk」

「目が幸せ過ぎる」

 

 微笑ましいほんわかしたやり取りに、和んでしまう外野勢。

 

「それで? 一体どうしたのよそのドレス」

「実はのほほん君がプレゼントしてくれたのさ! ボクが宴に出るって聞いて、態々用意していてくれたんだって。ほんっと良い子だよあの子は!」

「なぬッ!? のほほんからのプレゼントやて!?」

 

 改めてじっくりドレスを見るヘファイストスとロキ。見れば見る程良く出来たそのドレスは、思わず感嘆の吐息を漏らしてしまう程の出来栄えです。そんな時、ふとある事に気が付いたヘファイストスが一言。

 

「・・・・・しかもこれよく見たら手縫いじゃない。いつのまにこんなものを」

「「!?」」

「・・・・・」

 

 思わず漏れた呟きに、三者三様の反応を見せる面々。ヘスティアは本音に対し感謝でいっぱいになり、ロキは本音の器用さと作った出来栄えに感心しつつ、これがヘスティアへの手作りなのを素直に羨んだ程でした。そしてフレイヤ様は・・・・・・・・・微笑みも失せた無表情でじっと、穴が開きそうな程ドレスとヘスティアを見つめています。それも一瞬の事で、元の微笑みに戻ったので、気付いた者は誰もいませんでした。

 

 さて、笑いに来たつもりが、明らかに形成不利な状況になった事を察知したロキは、しれっとその場を後にしようとするも、そうはさせないと目ざとく気づいたヘスティア。

 

「あっれれ~? どうしたんだいロキぃ。今挨拶に来たばかりなのにもう行っちゃうのかーい?」

「ぐっ。な、なんか用かドチビ」

 

 ニヤニヤと笑うヘスティアに、思わず言葉を詰まらせるロキ。いつもの様に取っ組み合いかと思えば、

 

「まぁ、僕は君とちがってオ・ト・ナだから、思いっきり笑ってやる前に、建設的な話をしようじゃないか」

「あぁん? ドチビの癖に何がオトナやねん!」

「いやぁ、最近肩がこってるみたいで大変なんだー」

「うぐぅ」

 

 これ見よがしに胸を張って、ロキに痛恨のダメージが入った! これは効いた! ついでに外野にいた発達の乏しい女神達にも流れ弾がクリーンヒットしちゃったぜー!

 

「単刀直入に聞くよ。君の所のヴァレン何某は付き合っている異性、もしくはそれに近い存在はいるのかい?」

「あぁん? アホ抜かせ、アイズたんはうちのお気に入りや。嫁には出さんし、ちょっかいかけて来るどあほがおったら、そいつは八つ裂きにしたる・・・・・と言いたいとこやけど、例外が一人だけおる」

「ほぅ、ズバリそれは?」

「んなもんのほほんしかおらんやろ。ただ異性と言えるかはなぁー。かと言って同性ともちゃうやん?」

「何だろう、すっごい納得する」

 

 異性でも同性でもない部類とは一体・・・・・まぁ、可愛ければ何でもいいよネ!

 

「まぁ、つまるところのほほんはウチのもんって事やな! なんたってファミリアぐるみの付き合いなんやでー! こないだも一緒に飲んだ仲なんや~。どや、羨ましいやろ~!」

「いーや違うね! 無乳のロキなんかよりボクの方が良いに決まってるさ! なんせ態々手作りのドレスをプレゼントしてくれる仲なんだからね! ウチのベル君とも絶対仲良くなれる自信があるもんねー!」

「「やんのかああぁんんんーっ!?」」

「あらあら。じゃぁ、間を取って私が貰うわね」

「あんたらいい加減にしなさい。本音は家の子よ。誰にも渡さないわよ。というかフレイヤも悪乗りしないでよ」

「ふふっ、ごめんなさい。ついね」

 

 意味深に微笑むフレイヤは、完全に魅了されている給仕から新しいグラスを貰って上品に嗜んでいます。一々絵になる行動に、周りでやり取りを眺める男神からの視線を釘付けにしています。流石美の女神様ですね。

 

 そんな周りを他所に、神々の間では恒例の取っ組み合いを始めるヘスティアとロキ達。やんややんやと周りが騒ぎ立てる中、頬を引っ張り合うという今回の戦いに、先に音を上げたのはロキの方でした。

 

「きょ、今日はこれくらいにしといたるッ! 覚えとれよドチビッ!」

「ふんっ! そっちこそ次に会う時はその貧相なもの(絶壁)を見せるんじゃないぞ!」

「う、うっさいわボケェッ!?」

 

 ロキが典型的な負け犬の捨て台詞を吐くも、ヘスティアに的確に痛い所を突かれ過ぎた。

 

 もう最後の方は涙を堪えながら会場を走り去って行く彼女と、完全勝利とばかりに笑うヘスティア。

 

 そしてそんな友神達を見て、酷くなって来た頭痛に頭を押えて嘆息するしかないヘファイストスと、微笑みを浮かべるフレイヤ。

 

「はぁ・・・・・全く、なにやってんだか」

「ふふっ、相変わらず元気でいいわね」

「その元気過ぎるのが問題なんだけどね・・・・・」

 

「おい、今日神々の癒し(のほほん)くんが来てるらしいぞ!」

「なにっ!? 神々の愛玩(のほほん)が来てるだって!?」

「ちげぇよ、俺の嫁(のほほん)ちゃんだっての」

「ウラノスさんこいつらです!」

「のほほんきゅんキタ――(゚∀゚)――!!」

「俺がガネーシャだ!」

「はいはいガネーシャガネーシャ」

「愛でねば、全力で愛でねばなるまいてッ!」

「ついにこの封印されし左手(ナデポ)を開放する時が・・・・・!」

「ちくわ大明神」

力作(メイド服)を着て貰わなきゃ!」

「ふっ、俺のゴットフィンガーに酔いしれな!」

「今日こそお持ち帰りを・・・・・って今の誰だ」

「うひひひひひぃぃぃぃ!!」

「やべぇ、こいつ完全に逝っちまいやがってる」

 

「あっちでも騒がしくなって来た・・・・」

「うわー・・・・・」

 

 格別苦いものを食べた様な表情で呻く姉御。そしてドン引きする幼女。

 

 神だけが理解できる用語の羅列ですが、雰囲気だけでも下界の子供達でも何となく意味は分かります。給仕の子達が引いていた。神(の威厳)は死んだ。元からあまり無い神物も多いけれどね。

 早速新たなおもちゃを見つけ、お祭り騒ぎな神々。ちなみに上記の台詞の半分は女神であります。夢が砕け散った。

 

「・・・・・あら、ふふっ」

 

 あとフレイヤ様の微笑みがなんか怖いです。先程までと違って体感温度が下がってる気がする。阿寒とも言える・・・・・風邪、かな?

 

 あっという間に宴は大騒動へと陥る。止めようとする者は誰一人いません。なぜって、主催ファミリアの主神も参加しちゃってるのですから。ダメだこりゃー。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「かんちゃーん! こるるーん! ただいまぁ~」

「・・・・・ん、おかえり、本音」

「む、帰ったか」

 

 ファミリアのホームにヘファイストスともう一人を送り届けた後、工房へ帰って来た本音の元気の良い挨拶に、中で書類作業をしていた2人が揃って出迎えます。

 

「では今日はこのくらいにして寝るか」

「うん・・・・・残りは明日でも十分だから」

 

 そう言って手早く書類を纏め、寝支度を始める2人に本音はおずおずと断りを入れる。

 

「じ、実は私まだちょっと用事が~・・・・・」

「用事? 何か注文でも受けて来たのか?」

「それなら、私達も手伝うよ・・・・・?」

「だ、大丈夫だよ~。私だけでも十分だから~」

 

 やる気十分! という風にアピールをしている本音の姿に、簪はどこか違和感を覚えていた。なにか足りないような・・・・・。

 

「あっ・・・・・本音、デルフリンガーはどうしたの?」

「なんだ、お主またどこかに置き忘れてきたのか?」

「もぉー、ちがうよ~。でるるんはファイたん様とお話し? してそのままだよぉ」

 

「「あー」」

 

 あいつ、無茶しやがって・・・・・と、何かを察して遠い目になった2人は、工房の格子窓から夜空を見つめた・・・・・半透明で笑うデルフリンガーの幻影が見えた気がしました。死んではいないはずです、きっと、多分。

 

「まぁ、それはそうと本音よ・・・・・懐に隠しているものを出してもらおうか?」

「ぎくぅ!・・・・・な、なんの事かなぁ~?」

「ほーぅ・・・・・まさか、しらばっくれるつもりか? 手前等が気づかないとでも思ったか本音よ」

「うっ・・・・・た、食べないもん!」

「食べないなら持っていても仕方あるまい」

「うぅ~っ、み、見てるだけだよぉ~! ガマンすれば後でおいしいもん~!」

 

 見てて可哀想になる程必死に守ろうとする本音。一応こっそり食べる気ではなかったので、思わず許してしまいそうになるのをこちらも必死に心を鬼にして、簪は告げた。

 

「本音・・・・・お尻ぺんぺん」

「わぁー!? わ、分かったよかんちゃん! 出すからやめて~ッ!」

「尻をか?」

「ちがうよ~! もーこるるんのえっちぃー」

 

 しぶしぶながら大人しく隠していたお菓子の山を2人に渡すと、その喪失感から項垂れる本音。

 

「いやー、それにしても本音に嘘を吐かれるなんてなー、手前等は傷ついたなー」

「本当。これは本音にお詫びをしてもらうしかない」

「うぅ、もう好きにしてぇ~・・・・・」

 

 その言葉に、きゅぴーんと2人の目が輝いた気がしたのは、絶対気のせいではないでしょう。

 

 

 

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