のほほ~んとダンジョンに行くのは間違っているだろうか   作:takubon

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 お久しぶりです。お待たせしていたらすみませんでした。二、三話連続投稿します


第四話 のほほんと強襲、再び

 

 

 野営地の一番大きな天幕の中、【ロキ・ファミリア】の中核を担う首脳陣達、フィン、リヴェリア、ガレスが集まっていた

 

「・・・そうか、やはりお前達の方にもあのモンスターが」

「あぁ、僕達も51階層で突然襲われた。お蔭であの腐食液で僕とガレス、ティオナは獲物を失ったよ」

 

 本音達が新種のモンスターの残党を殲滅した後、少し経ってクエストに出ていたフィン達も野営地に戻って来た。フィンの報告によると、クエストの為51層へ向かうとあの芋虫型のモンスターに襲われ、交戦するもあのモンスターの腐食液によって自らの武器を溶かされ止む無く撤退。合流したアイズの魔法と【不懐属性(デュランダル)】の武器、そして最後はレフィーヤの広域殲滅魔法により殲滅し、戻って来たとの事

 

 さらに先程までここにいた別班のアイズ達の報告によると、向かった『ガドモスの泉』は荒らされており、大量の灰とドロップアイテムである『ガドモスの皮膜』が残されていた事から強竜(ガドモス)を倒した事が分かった

 

「しかし、あの強竜をも倒すとはな・・・」

「それとまだ決めつける要素が足りないけど・・・・あれらは率先して他のモンスター狙っていっているような節が見られた」

「ずっと下の階層に生息しておったのが上がって来たのか、それともダンジョンが新種のモンスターを産みだしたのか・・・・・どちらにしても厄介じゃな」

 

 ガレスは顎髭を撫でながら憶測と共に嘆息した

 

「まぁ、こっちも無事なようで何よりだったよ」

「聞けば、ワシ等方よりも遥かに数が多かったそうじゃな」

「あぁ・・・正直彼等がいてくれたお蔭でな。一度は崩れかけたものを立て直して反撃する事が出来た」

「「・・・ほぅ」」

 

 リヴェリアの言葉に二人はどこか面白そうな声を漏らしてリヴェリアを見る。リヴェリアは「何だ?」とばかりにその整った肩眉を上げた

 

「いや、てっきり君の事だから留守を任されたのに~とか、立つ瀬がない~と言うと思っていたからね」

「寧ろどこか誇らしそうに言うもんじゃからのぅ」

「「しかも戻って来た時彼(あやつ)と抱き合っていた(おった)し」」

「っ!?そ、それはっ!」

 

 普段は冷静沈着なリヴェリアが慌てた様に声を上げる。その白い肌は淡い朱に染まっていた

 

 モンスターを倒し終えた本音達がロキ・ファミリアの団員達と一緒に喜び合っていた時、本音がリヴェリアに抱き付いたのだ。その事に団員達はピタリと動きを止めるが、更に驚くべき事が起きた。リヴェリアも本音を抱き返したのだ、しかも微笑みながら

 

「いやぁ、君が自分から抱擁をするとはねぇ」

「ワシも思わず目を疑ってしまったぞい」

「-ッ!ーーッ!?」

 

 団員達はもちろんの事、同族のエルフの団員達はもっと信じられなさそうに皆口をあんぐりと開けて呆然としてしまうほどだった。その場面を返って来たフィン達に目撃されたという訳だ。にやにやと笑う2人の茶化しに、リヴェリアはほっそりと尖った耳の先まで真っ赤に染まる

 

「これはとうとう春が来たのかな?」

「あの堅物エルフのお主がのぅ。こりゃぁ、地上に戻ったらロキとの酒の肴にでもするかの」

「あはは、それをするとますますロキが彼を勧誘したがってしまうね。でも彼が入ってくれると色々と助かるし、リヴェリアの為にも僕も頑張ってみようかな?なんて」

「・・・【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風(うず)を巻け】・・・ッ!!」

「え、ちょっ!?リヴェリア、待った待った!?」

「い、いかん、イジリ過ぎたわい!なんとかせぃフィン!」

「ガレス!?僕に押し付けないでくれよ!」

 

 その後、恥ずかしさ限界を超えたリヴェリアが広域殲滅魔法の詠唱を行使するまで、二人はからかい続けていた。その光景を今後の事を聞こうと尋ねていた椿と簪は、ロキファミリアの中心核達の様子に愉快そうに笑い、目を丸くするのだった

 

 結論、クーデレのデレ強し

 

 

 ◇ ◆ ◇  ◆ ◇  

 

 

「いやぁ、ラウルんも無事でよかったよ~」

『だな』

「ありがとうッス。いや、ホントに死にかけて殺されかけたっすよぉ」

『「ん?殺されかけた?」』

「はいっす。その、ティオネさんに・・・」

『・・・なぁ、なんとなく状況が分かっちまったぜ』

「・・・多分でぃむなん絡みだねぇ」

『「ドンマイ(だよ)、坊主(ラウルん)」』

「うぅ、二人の言葉がしみるっす(泣)・・・」

 

 戦闘後の野営地の小さな天幕に、本音とデルフリンガー、そして今回のクエストにサポーターとして同行していた【ロキ・ファミリア】の気苦労が絶えないどこぞの某不幸青年と似た雰囲気を漂わせている、ラウル・ノールドが少しばかり休息を取っていた。何気にこの二人は結構仲良しだったりする。男に対して興味がないデルフリンガーもまた、この青年の事は何かと気にかけているのだ。・・・興味というのはソッチではない事を追記しておく。腐った系がお好きな方はBLで検索を

 

「あっ、じゃぁ自分はそろそろ仕事があるんで失礼するっす!」

「頑張ってねぇ~」『おぅ』

 

「はいっすー!」と元気よく返事をしたラウルはその場から立ち去って行った。ラウルがいなくなり一人になった本音は大きく伸び、息を吐く

 

「ふぃー、それにしても今回はハードだったぜぃー」

『お疲れさん、相棒』

「うぃ!でるるんもお疲「のほほんくーん!」れさまぁー?」

 

 軽い衝動が襲い、背後から褐色の腕が回された。「お?」と首を少し動かし振り返ってみると、一人のアマゾネスの少女、ティオナが本音の背中に抱き付いている

 

「ヤッホー、のほほん君!」

「おー、アーやん久しぶり~」

「一応さっき会ったばかりだよね!?」

「なんと!」

「何で驚いてるの!?」

「なんとなく~」

「むむっ、揶揄っただとぅ!こいつめー!このこの~!」

「きゃぁ~!」

「あんた達、早速漫才やってるわね」

 

 ティオナの双子の姉、ティオネもやって来て半場呆れた様に言う。彼女の後ろにはアイズやレフィーヤの姿も見えた

 

「おー、ネーやん、アイアイ、フィーやん。みんなも無事でよかったよぉ~」

 

 ほにゃり、と心の底から嬉しそうに微笑む。相変わらず癒されるなぁ、と言うのが全員の共通意見だった。若干一名はティオナが羨ましかったりする

 

「まぁ、私達の方も殆ど無事ね・・・・・武器以外は」

「そーだよ聞いてよのほほん君!あたしの、あたしの大双刃(ウルガ)がぁ~!」

「お、おぉう?よーし、よーしどうどう」

「あたしは馬か!?」

「ん?アーやんは馬じゃないよぉ?急にどうしたの?」

「素かい!!」

 

 本音達が再び漫才を始めた所でデルフリンガーが他の皆に問いかける

 

『で、嬢ちゃん達、一体何があったんだってんだ?』

「あー、実はティオナが初見の時にあのモンスターに突っ込んで、そのまま武器がオジャンになっちゃったのよ」

『・・・・・【ゴブニュ・ファミリア】の奴等が聞いたらぶっ倒れるんじゃねぇか?』

「あ、あははは・・・・」

「私のは、大丈夫だった」

 

 デルフリンガーの言葉にレフィーヤは苦笑、アイズは自分の腰の愛剣を揺らした

 

 ちなみに【ゴブニュ・ファミリア】とは【ヘファイストス・ファミリア】と同じく鍛冶師を抱えるファミリアで、大双刃を製作した所だ。商売敵といっても別に敵対している訳ではなくライバル的なものなのでちょくちょく本音は訪れていたりする

 

 そんな時、ティオナを慰めていた本音が「ん?」と何かに気が付いた様に声を上げると、ティオナを一旦置いてアイズの元へと近寄った

 

「アーイアイ!」

「?」

「えい~!」

「っ!?」

「・・・ん」

 

 そしてふわりと正面からアイズに抱き付いた。その行為に対して隣のレフィーヤが驚きの表情のまま固まり、対してアイズは特に動じる事なくそれを受け入れている・・・いや、若干嬉しそうに見える?

 

「どうしたの?」

 

 自分より少し背の低い本音に目線を下げて僅かに首を傾げて問いかけると、本音はいつもの眠たそうな瞼を少し上げ、真っ直ぐにアイズの事を見返す

 

「ねぇ、アイアイ。体、痛むんだよね?」

「!」

「ダメだよ~?ちゃんと言わなきゃ~」

 

 本音の指摘にアイズは僅かに目を見開く。あの新種のモンスター達との戦いでアイズは自らの魔法の強い負荷により、全身からずきずきとした痛みが走っていたのだ。あっさりと見抜かれたアイズはバツが悪そうにその目を逸らしてしまう

 

「あー!アイズまた無理してたのー!」

「あ、アイズさん!大丈夫ですか!?ぽ、ポーションを!」

「えっと、その・・・」

「おー、おしくらまんじゅうみたーい」

 

 その反応を見たティオナとレフィーヤは本音に抱きしめられているアイズに詰め寄った。アイズは目を泳がせて、本音は一人場違いな感想を述べている。そんな四人の様子を暖かい目で見つめる一人と一剣。のどかな空気が流れる

 

「ねぇ、私の気のせいならいいんだけど、とんでもない魔力の波動を感じない?しかも酷く馴染みのものを」

『気のせいだ。というか気にしちゃぁいけねぇよ、あれは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数分後、再び野営地に緊張が走った

 

 

 音が届いた。まるで何本もの木をいっぺんにへし折る様な音が。音は鳴りやむ事無く段々と大きく、何かが近づいて来ているように響き渡る。そして()()は姿を現した

 

 黄緑色のあの新種の芋虫型のモンスターを彷彿(ほうふつ)させる下半身

 

 扇に似た厚みの無い二対四枚の腕

 

 上半身は女の人型を連想させる形をしているが、その下にある大きく膨れ上がった何かを溜め込んでいる様な腹部は醜悪で、どす黒い

 

 六Mをも超えるまるで半人半蛇(ラミア)半人半馬(ケンタウロス)に近い巨体には、それに相応しい夥しい量の腐食液が貯めこまれているのが一目で理解出来た。しかもそれが二体・・・・・

 

「あ、あんなでかいの倒したら・・・」

 

 これまで倒して来たもの等比べものにならないくらい、とてつもない量の腐食液が周囲に飛び散る

 

 今までの戦いを振り返っても、芋虫型のモンスター達は力尽きる寸前、その体を破裂させていた。撃破したとしても、辺り一帯全ての者達が巻き添えだ。多くの者達が最悪な光景を脳裏に想像し、顔を青ざめる

 

「・・・・・・」

『相棒・・・』

 

 流石の本音も目の前の階層主ほどの巨体を誇るモンスターに顔を顰めていた。デルフリンガーが声をかけると本音はこくりと頷いて口を開く

 

「あうぅっ、や、やっぱりお菓子ちょっと痛んでたみたい~。ちょっとお腹痛いよぉ」

『だから言ったろ、止めとけって』

「でもでもー、昨日食べたのは大丈夫だったんだよ~?」

 

 ズルッと、周りにいた者達がズッコケた。シリアスな空気ぶち壊しである。これには流石に椿も頬を引き攣らせ、簪は手で顔を覆ってしまった。アイズはアイズで棒読みで痛いの痛いの飛んでいけー、とさらに気の抜ける事を本音にしている

 

 本音が空気をぶち壊した中、野営地からまだ十分に距離がある所でモンスター達は止まった。内一体がまるで我が子を誘うように両腕を広げれば、虹色の粒子が舞い・・・数秒後に爆裂。まだ距離があるというのに目を開けているのが厳しい程の熱波と衝撃波が野営地まで届いた

 腐食液だけでなく爆粉まで放ってくるモンスターに、団員達の多くは軽い絶望を見た

 

「総員、撤退だ」

 

 粉塵が視界を覆う中、フィンは冷静にその場にいる者達に告げた。ばっと全員の視線が集中する中、彼は目の前の二体を油断なく見据えたまま続ける・・・髪が若干凍っているのは誰も指摘しない。こんな時にそのような事が出来るのは本音くらいのものだ

 

「速やかにキャンプを破棄、最小限の物資を持ってこの場から離脱する」

「待てよフィン!?それじゃあ、あいつ等はどうすんだよ!?」

「あんなの放って置いたらとんでもない事になるかもしれないんだよ!?」

 

 ベートとティオナがフィンに対して噛み付く。この安全階層(セーフティポイント)にも現れたのだ、目前のモンスターを放置すればやがて階層を昇り多くの被害を齎すことを黙って見過ごせるはずがなかった。また、彼らは迷宮都市最大派閥【ロキ・ファミリア】の第一級冒険者としての誇りと責任がある

 

「僕も大いに不本意だ。でも、あのモンスターを始末し、必要最低限の被害で抑えるにはこれしかない。月並みの言葉で悪いけどね」

 

 続いてフィンは一度ぐるりと団員達を見渡し、感情を消した表情を二人に向けた

 

「アイズ、本音君。君達で奴らを討ってくれ」

 

 二人だけでだ、と付け加えたフィンのその指示に殆どの者が絶句した

 

「ま、待ってくださ「あいあいさ~!」

 

 悲鳴を上げるように抗議の声を上げたレフィーヤの言葉を遮って、本音がいつもの調子で了承する

 

「よぉーし、頑張ろうぜぃアイアイ、でるるん」

「うん」

『こいつはド派手な戦いになりそうだな相棒』

「だよね~・・・ここは私が食い止める、皆は先に行って!大丈夫、必ず帰って来るから・・・!」

『おい馬鹿やめろ』

「?・・・私も、残るよ?」

『流石嬢ちゃん、相棒のボケを全く理解してない』

「アイアイ・・・これが終わったら、じゃが丸君食べにいこ?」

「うん(`・ω・´)」

『しかしその上を行った!?』

 

 すっかり本人達の間で話が進んでしまっている中、はっ、と我に返ったティオナ達が再びフィンに(ベートは本音に)詰め寄ろうとするが───爆撃

 

 再び二体の女体型のモンスター達が動き出し、まるでその存在感を示すようにゆったりとした速度でこちらに向かって来る

 

「・・・時間がない。全員撤退の準備急げ!」

「待ってよフィン!何で二人だけなのさ!?あたしも行くよ!」

 

 ティオナに続き、ベートやティオネ、レフィーやがなおもフィンに食い下がった。そんな中、本音達の元へ椿と簪が近寄る

 

「あっ、かんちゃん、こるるん。二人も気を付けて撤退してねぇ。間違ってもこけたりしないように~あいたっ!」

「手前達の心配などいらんだろう?」

「それに、その心配は本音の方が、正しい」

 

 コツンッ、と本音の頭を小突く椿と頷く簪。そして話もそこそこに、簪はデルフリンガーに手をかざし、椿は背負っていた一振りの刀を本音の眼前に差し出す

 

「少しだけど私の精神力(マインド)

「今、手持ちで一番の【不懐属性】(デュランダル)の太刀だ」

「ありがとうかんちゃん、こるるん」

 

 それからコツン、とお互いの拳をぶつける三人。傍にいたアイズには、本音達の醸し出す雰囲気があの三人と同じ様に見えた

 

「二度も言わせるな。()()

 

 聞こえてきたフィンのその声音が、冷徹な暴君のごとき威圧を含めた言葉に、もう誰も反論する事が出来なかった

 項垂れながら、あるいは悔しさに歯を食いしばって耐え、涙を浮かべながら若い団員達は撤退の準備に入る。椿と簪も準備の為に本音達から離れ、入れ違いにフィンが二人の前にやって来た。身長の差から少し見上げる形でフィンは目の前の二人に向き合う

 

「すまないアイズ、本音君」

「ううん」

「大丈夫だよでぃむなん、でぃむなんが一番いいって言うんならそれが一番いいんだよ~。皆だって本当は分かってるからさ~」

『それより俺に対して抜けてるぞ』

「忘れられたでるるん、ドンマイだよ~」

『うぉい!』

 

 そんな二人の掛け合いにフィンの表情が若干和らぐ。が、すぐに顔を引き締める

 

「ここから十分に距離を取ったら信号を出す。それまでは時間を稼いでくれ」

「わかった」「りょーかーい!」

 

 早口に指示を伝えたフィンは、自身もすべき事の為に素早くその場を後にした

 

「ねぇねぇ、アイアイ。どっちがいい?」

「私は左を」

「オッケー、じゃぁ、はい!」

 

 本音はアイズに向かって袖の余った手を突き出した。先ほどの光景を見ていたアイズはその意味をすぐに理解し、コツン、と控えめに自らの拳をぶつけた

 

「えへへ~」

 

 嬉しそうに笑う本音に、アイズも僅かばかりに頬が緩む。だがすぐにそれも第一級冒険者の顔へと変わる。それから二人は女体型のモンスターに視線を移した

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

「行くよ~でるるん!」『あいよ!』

 

 アイズから風が生まれ、デルフリンガーは薄く光を放った

 

 そして二人は己の得物を構え、迫り来るモンスター目掛けて同時に岩上から飛び出した

 

 




 また明日、同じ時間頃に
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