のほほ~んとダンジョンに行くのは間違っているだろうか 作:takubon
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凄まじい光景だった。金髪の少女がたった一本の剣で、自らよりも遥かに大きなモンスターと戦っている
その冒険者の名は【
【ロキ・ファミリア】の幹部にしてオラリオ屈指の剣士だ
『----ッ!』
「-っ!」
アイズは、女体型のモンスターから放たれる極彩色の腐食液を、自らの風を纏わせた剣による大斬撃で真っ二つに斬り裂いた。視界の左右に流れる極彩色。なお一層激しくなる腐食液の砲撃を、その金の瞳を吊り上げて何度でも断ち続ける
やがて根負けしたのかモンスターからの腐食液の砲撃が止むと、アイズは地を蹴りつけ敵に向かってまさに一つの風となって一直線に突貫した
『!』
接近するアイズに対して二対四枚の腕を振りかざすモンスター。それを緩急をつける事によって躱し、懐に入り込む。一見すると危険度が高まった様に見えるがあの爆発する粒子、もとい爆粉は放ってこない。それは至近距離では自らも巻き添えを喰らってしまう為だ
だがそれでも固い四枚の腕、腐食液の攻撃は変わりなくアイズを襲う。その巨体に似合わず俊敏な動きを見せる相手に対し、体に風を纏わせて高速で動き回って攻撃を躱していく中、アイズの視線は何度もある一点を捉えていた
「(すごい・・・)」
第一級冒険者のアイズの目からしても、その光景にそう思わずにはいられなかった
攻撃が鋭いとか、防御が早いとかそういう次元じゃない。アイズの目に映るその光景は・・・
「おぉー、たかいたかぁーい!あっ、見て見てでるるん、あっちにかんちゃん達が見えるよ~。おぉーい、かんちゃーん、こるるーん!ほらほらぁ、でるるんも」
『ふぅぅぅりぃぃぃまぁぁぁわぁぁぁすぅぅぅなぁぁぁぁぁぁぁ!!?』
『--ッ!?-ー-ッ!!?』
ぶんぶんと手を振っている本音と絶叫を上げている彼の愛剣、そして自分の頭の上に乗っている本音に困惑の悲鳴を上げているモンスターだった
本音は芋虫型の下半身の上をちょろちょろと走り回り、偶に振るわれる腕の攻撃もジャンプしてその上に飛び乗り、動く腕をもまるで関係無い様に走って上半身の頭に当たる部分に飛び移り、撤退をしているフィン達に向かって手を振っている始末。振るわれる腕も、それより早く本音が別の場所に移動する為に攻撃が全く当たらない
「(すごい・・・私にも出来るかな?)」
ドンッ!
アイズの思考がとんでもない方向に行きかけた時、50層の空に閃光が光った
それは合図。フィン達が安全圏まで退避したという事、そして
アイズは一旦離脱してモンスターから距離を取り、今以上の強い風をその身に纏う。それによって軋む体を無視し、地面に着地すると同時に女体型のモンスターに向かって疾駆した
「あっ、合図出たね。んーじゃぁ、いっちょいってみよぉ~!」
『・・・うっぷ。やべ、ちょっと
「えぇ!?で、でるるん大丈夫?一体何があったの?」
『オメェが滅茶苦茶に動き回るからだよッ!!』
「(ガーン!)」
合図の花火が上がったのを確認した本音達もまたアイズと同じように行動を起こそうとしていた――が、若干一剣が酔った状態で、一名がショックを受けたというものだった
『----ッッ!!!』
とうとう怒りが頂点に達したのか、女体型のモンスターは割鐘の様な怒号を上げて、本音を振り落とそうと大きく体を揺り動かす
『やべぇぞ、奴っさんお怒りだ。・・・ぅぷっ』
「…ゴメンねでるるん…私のせいでぇ…」
器用に揺れる巨体の上で膝を抱えて座り込み、暗い雰囲気を漂わせる本音。そんな事は知らんと、女体型のモンスターは頭にある管の様な物を本音に向けて放つ
『だぁーもう!俺が悪かった!もう気にしないでいいからよ!?とっととやっちまうぞ!』
「わかった!」
『はえぇなおい!?』
一気に元気になった本音は、襲い掛かって来る管の様なものを斬り裂き、激しく揺れる黄緑の体からステイタスによるその高い脚力で大きく飛び上がる
『----ッッ!!』
まるで今までの鬱憤を晴らすように、女体型のモンスターは四枚の腕を
数秒の間をおいて爆裂。何重にも重なった数えきれない程の爆発により、50層の空が紅に染まる
『・・・・・・───ッ!?』
己が勝利を確信し、構えを解いた女体型のモンスターは次の瞬間、声なき驚愕の悲鳴を上げた。もし、口しかない自らの顔に目があったのならば、きっと限界まで見開いていただろう
空を照らす紅の炎が、まるで渦を巻くかのようにして中心へと集まって行く。その中心には空と同じ輝きを放つ刀剣と、照らされて銀の輝きを放つ刀を構えた人影が見えた。まるで
「せぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁー!!」
『ーッ!?ーーーッ!!』
重力に従って落下する本音は、どこぞの炎の剣士の様な精一杯の大声と共に斬撃を振り下ろす。硬直していたモンスターが、慌てて迎撃せんとすぐさま腕を振う・・・
「やぁっ!」
『─────ッ!?』
・・・がしかし、その腕は本音が握る【不懐属性】の太刀によって弾かれた。弾いた太刀は刃こぼれすらおこさずに、まるで当然だとばかりにキラリと輝きを放つ
一方で腕を弾かれた女体型のモンスターはというと、連続での驚愕の為か思考が停止し、完全に無防備な姿を晒す。そこを逃さず、本音はもう片方に握る焔色に輝くデルフリンガーを振り下ろした
『────────』
女体型のモンスターに走る縦一筋の焔の線。その線を境にズルリと上下にずれたかと思えば、次の瞬間には巨体を丸ごと包んでしまう様な大炎が上がる
遥か上の50層の天井まで届いて届こうかというかの
「ふぃ~」
高く上がった炎柱が消えても火の粉が舞う中、本音は余った袖で頬を伝う汗を拭って大きく息を吐いた。そして視線を移せば片側の多脚全てと扇型の腕一本を断ち斬られ、自らの爆粉による爆破の渦に晒されているモンスターと、そこから離れた一枚岩の壁面に着地したアイズが見えた
"アイアーイ、こっちは終わったよぉ″
″うん、こっちも次で決める″
一瞬のアイコンタクトで交わされた内容に違わず、アイズはもはや嵐と言っても過言ではない程の風を全身に纏い、目標を金の瞳で射抜く。そして己が主神に
「リル・ラファーガ」
風の螺旋矢となって神速の勢いで迫るアイズに対し、直前の所で反応したモンスターは残った三枚の腕を重ね盾とするが、一瞬の拮抗さえ許さない風の剣突により貫通された
『・・・・・・・・・・・・』
盾ごとまとめて体を穿たれたモンスターは硬直し・・・瞬く間に全身を膨張させた
「『「あっ」』」
離れた位置にいる二人と剣の声が重なった。そんな声を掻き消す様に膨れ上がった体は一気に四散し、溜め込まれていた腐食液と爆粉が特殊な反応を起こしてしまったのか、桁外れな大爆発が起こった
視線の先で巨大な爆炎がドームを形取り、周囲一帯を吹き飛ばした。近くでレフィーヤの悲鳴や若い団員達の息を飲むのを耳にしながら、じっとその一点を見つめる
やがて、モンスターの自爆による被害を避ける為に十分な距離を置いて行方を見守っていた【ロキ・ファミリア】の面々と自分達の所まで爆破の余波が届いた。押し寄せる熱波と衝撃に腕で顔を覆う
顔を緋色に照らされながらも、皆が視線の先の光景をじっと見つめていると、次の瞬間には見開かれた
一か所で炎がうねりを上げ、もう一か所では小さくなっていく。風によって割れ、小さくなって消える炎の海。そしてそこから出て来る二つの人影
燃える炎を背に、ゆっくりと歩み出て来る金髪金眼の少女
何もなくなった焦げた大地を背に、袖をぶんぶんと振りながら笑顔を向けて来る少年?
大歓声
その姿に小さく安堵の息を吐いた。が、その次には若干黒いオーラを発しながら微笑んだ
「簪よ、どうする?」
隣にいた椿がそう聞いて来る。何が?とは聞き返さずとも分かっている簪は、少し考える素振りを見せ
「・・・お菓子、3日間抜き」
「もう少し増やしてもよいのではないか?」
「・・・そうだね。じゃぁ、1週間」
「うむ、妥当だな」
黒いオーラを出す二人に、周りの【ロキ・ファミリア】の面々はそっと距離を取り、ある人物に向けて黙祷を捧げた
「(ぷるるっ!?)」
「?どうしたの?」
「お、おかしいなぁ?なんだか寒気がするよぉ・・・?」
「???」
『あー、吐いた吐いた』
大歓声に塗れて取り交わされた内容に、アイズと一緒に帰還している本音は身震いをした。その数分後、50層に本音の悲鳴が響く事となった
【ステイタス】は次の次辺りで出せる・・・はず・・・多分。ではまた明日!