Fate/Living god 現人神として転生したんだが好き勝手しても良いよな? 作:妖牙
唐突なんだが、ここ最近エルキドゥの様子が可笑しい。何かを隠しているというか、怯えているような雰囲気が微かにだが、感じ取られるようになってきたんだ。
まあその様子が可笑しい原因も大方予想ができている。時期的にも考えて恐らくこうなんじゃないかなっていう答えはある。
「よお、エルキドゥ。どったのさ?最近様子が変みたいだけど?」
「そ、そんなことはないさ。見間違えじゃないかい?」
ほおー。飽く迄もシラを切りますかそうですか。なら、ド直球で行きますかね。
「嘘は良くないな・・・正直に答えてくれ。悪夢を見たんだろ?」
「ッ!ど、どうしてそれを!?」
「ふっ、俺にかかればそれぐらいのことを知るのなんて造作もないのさ。」
嘘です。唯のインチキです。でもエルキドゥはそんなことは知らないから、此方に驚愕が篭った視線を向けてくる。
「そうか、君には全てお見通しなんだね・・・。」
それだけ呟くと、何処か納得したような雰囲気を漂わせながら視線を外すエルキドゥ。キャー!ヤメテー!真に受けないでぇ!俺の心と精神が大変なことになっちゃうぅ!
色々と悶えたい気持ちはあるが、今はそれをぐっと押し殺して真面目な表情で口を開く。
「エルキドゥ。俺の予想が正しければ、お前はそう遠くない未来に――――――」
「――――――分かっているよ。だからヤクモ、君にお願いがあるんだ。」
俺の言葉に対し、覚悟の篭った目をしつつそう答えるエルキドゥ。彼の願いなど大方の予想がつく。だがなエルキドゥ。お前には悪いがその願いを受けてやる訳にはいかん。
「すまんが断るぞ。」
「ッ!どうして僕の願いを聞いてはくれないんだ!?どんな願いかも聞かない内に!」
俺の拒否の言葉に対して、怒りと疑問が篭った視線を向けながら言葉を紡ぐエルキドゥ。滅茶苦茶怒ってるみたいだが、俺が退くわけにはいかん。
「だって大体予想できるしな。大方ギルには言うなとか、ギルの傍に居てやってくれとかそんな所だろ?だったらその願いを聞いてやることはできんよ。」
「だから何故なんだ!僕の願いなんて、君になら叶えることは造作もないだろう!」
俺の言葉に対し、珍しく声を張り上げながら疑問をぶつけてくる。怒りと疑問が混ぜ合わさって、表情もいつもとは違って鬼気迫る感じにも見える。
「だって、それお前の本当の願いじゃないじゃん。だったら俺はその願いを叶えてやるわけにはいかんよ。つーか、最初から自分が死ぬことを前提にしてるんじゃねえよ。」
俺がそう言うと、エルキドゥはさっきまでの表情とは打って変わり、今度は諦観にも似た表情を見せる。
「無理だ、死の運命を覆すことなんてできる筈がない。あの神々に抗うことなんて不可能だ。」
成程。確かに普通じゃ不可能だわな。だがな、お前の傍にはその不可能を可能にする存在がいるだろうが。
「エルキドゥ、俺が何者だったか忘れてないか?俺だって神の一柱だ、お前の運命を捻じ曲げるくらいどうとでもなるさ。」
俺が自信満々で紡いだ言葉を聞いてもエルキドゥの表情は変わらず、未だに諦観を捨てられてはいないようだった。
「幾らヤクモでもそれは無理だ。」
ちょっとそれは酷過ぎやしませんかねぇ。何一つやってもいないのに『無理だ』なんて言うのはダメだと思うの。というか俺の力を信じられないって言いたいのかな?
信じて貰えないのならば、信じて貰えるまで説得を試みるまでよ。
「おいおい、最初から決めつけんなよ。確かに俺にもできないことが山ほどあるさ。でも、俺ができるってはっきりと言ったんだぜ?命を懸けたっていい、俺ならお前を救える。」
俺の自信満々な言葉と『命を懸ける』という単語を聞いたからか、先程までとは違う僅かな希望が感じ取られるようになった。
「・・・本当に僕は生きられるのかい?まだ友の傍に居ても良いんだね?」
質問というよりは確認するようにそう聞いてくるエルキドゥ。漸く俺の言葉を信じてくれるようになったことに喜びを感じながら、俺は口を開く。
「当たり前だ。ダチの理不尽な運命なんて俺が捻じ曲げてやる。だから、聞かせてくれ。お前の本当の望みは何だ?」
俺の言葉を耳に入れたエルキドゥの顔と瞳には最早諦観の色はなく、そこにあるのは僅かな期待と覚悟だ。決意を込めるように、少し息を吸い込んでから彼は自らの願いを口にする。
「――――――僕は、まだ生きたい。生きてずっと友の傍に居たい。」
その言葉を待ってたぜ。ニカっとした笑みを浮かべながら俺は口を開く。
「委細承知した!お前の望み、確かに聞き届けたぜ!」
良し!そうと分かれば早速準備に取り掛からないとな!まあ、こうなることは分かっていたから予め準備は整っているんだけどな。
あとは時期を待つだけだ。待っててくれよエルキドゥ、お前のことは必ず俺が救ってやる。んでもってギルよ、お前をぼっちにはさせないぜ。
エルキドゥとの会話から既に数日が経った。ギルガメシュ叙事詩の史実通りならば、数日をかけて呪いがエルキドゥを蝕み死へと誘うという形となっている。もうじき頃合いだろう。
打つべき手は全て打った。後は上手くいくことを祈るのみ・・・ていうか確実に成功するからね。俺の仕込みに間違いはない。
「さて、エルキドゥ。身体に不調は?」
「今のところはないよ。」
「ヤクモよ、本当に大丈夫であろうな?」
「大丈夫だから、落ち着けよギル。」
あ、言い忘れてたけどギルはエルキドゥのことについては知ってるよ。俺がエルキドゥに了承を取って、ギルに教えておきました。まあ、その影響かは知らないがここ最近ギルがエルキドゥに対してかなり甘くなっていたのだが、それは置いておくとしよう。
「ふむ、このまま何もなく済んでくれればいいんだがな。」
「ああ、僕もそう思う・・・ッ!?」
「遂に来たか!」
とうとうエルキドゥの身体が崩壊し始めた。今まで身体を構成してた血肉が全て土塊へと変わっていき、大地へと零れ落ちていく。
「エルキドゥ・・・!」
ギルがその様子を見て駆け寄ろうとするが、それを手で制止してからエルキドゥに近寄る。さてと此処からが『奇跡』の始まりだ。
「それじゃあ行くぞ。」
それだけ告げると、俺は自らの手にグローブ型の神器を装着し、エルキドゥの崩れていく身体に手を突っ込みあるモノを探す。少し探すだけでお目当てのものは見つかり、それを引っ張り出す。
すると、更に早いスピードでエルキドゥの身体が崩壊していき、終いには只の土塊と成り果ててしまった。だが、身体などはどうでもいい。今重要なのはこの手の中にあるモノだ。
全ての流れは此方の想定した通りだ。後は仕上げるのみ。
「これで良し。ギル、お前の宝物庫から例の奴を此処に出してくれ。」
「あ、ああ。」
俺の言葉を聞いたギルは、自らの宝物庫に予め仕舞っておいたものをこの場に呼び寄せた。黄金に輝く虚空の中から現れたのは限りなく人間に近い人形。見た目も肌触りも、全てが人間と変わらない精巧さを持つ芸術品とも呼べるその人形を見た後に、自分の掌の中で神秘的に輝く光球を眺める。
「さあ、お前の新しい身体だ。」
そう呟いてから、その人形の胸へとその光球を押し付ける。すんなりと胸の中へと吸い込まれてから僅かな間を明けて、身体に温かさが宿り始め、瞳が開かれた。
それを見届けた俺はギルと共に駆け寄る。ここまで来て失敗なんてある筈がないが、万が一もあるのだ。取り敢えず成功したかどうかを確かめるべく、質問をしてみる。
「さて、新しく生まれ変わった気分は如何かな?」
美しい色合いをした瞳が此方に向き、俺の姿を確かめると同時に微笑を浮かべてから口を開いた。
「――――――うん、悪くないよ。」
間違いない。成功だ。
「ギル、成功したぞ。」
「それは真か!?」
「ああ、もう大丈夫だ。」
俺のその言葉を聞いたギルは涙を流しながらエルキドゥへと駆け寄っていく。嬉し涙だろうが、涙を流していたことは見なかったことにしておこう。
さて、今回俺がやったことについて少し解説しておこう。簡単に言えば、予め用意しておいた新しい身体にエルキドゥの魂を移し替えたっていうのが今回の作業の概要だ。え?そんなことできるのって?できます。俺の特典で作った神器なら、魂を掴んだり、人体に近い人形を生み出すのなんて楽勝です。
他にも色々やったけど、概ねこんな感じ。因みに、エルキドゥの新しい身体は神器みたいな扱いなっているようで、寿命はギルの寿命に依存する形とした。これならギルとずっと一緒に居られるだろう。何だかエルキドゥが物みたいになっちゃったけど、こればっかりは勘弁して貰いたい。ついでに、身体は今まで通り自由に変化できるようにしておいたから、今までと使い勝手は変わらない筈だ。
そして、エルキドゥの身体を新調し、更に魂にある程度の細工を施したことであの神々にはもうエルキドゥに好き勝手はできなくなった。つまり、もう神々の手によってどうこうされる心配はなくなったわけだ。
何故エルキドゥの身体が崩壊してから魂を移植したのかについてだが、これは魂を一番感知しやすいのが死に際だったりするからである。別に平時でも感知はできるのだが、今回は確実性を重視してこのタイミングで実行したわけだ。
まあ、何はともあれ上手くいったからめでたしめでたし・・・とはいかないらしい。さっきから俺に向かって殺気が向けられているみたいでね。これは確実に俺を殺しに来ようとしてるね。
誰かなんて言わなくても分かるだろ?今回の出来事で不満を持つような輩は限られるんだから。
「ギル、エルキドゥを頼む。ちょっくら後始末しにいってくるわ。」
それだけ告げると俺は手元に神器を召喚してから、転移する。さてと、俺のダチに手を出した挙句俺を殺そうとするなんざ数百年早いってことを叩き込みにいきますかね。
「雁首そろえて待っていやがれよ!今そっちに行くからな!」
――――――朋友エルキドゥを巡って、現人神ヤクモと天空に住まう神々との間に起った戦いは、後のギルガメシュ叙事詩やメソポタミア神話の中にも記された。細かい記述や伝承はそれぞれに違いはあるものの、その最後の結末に関しては全て同じであった。
『彼の現人神ヤクモ、朋友を救うため神々と戦い、激しい戦いの末に天空の神々を下す。』
その一文が真実であったかどうかは定かではない。だが、本来の歴史において死ぬ筈だったエルキドゥが救われたことで、新たな歴史が動き出したのだということは確かな事実であると言える。
今回はここまでです。
今回はエルキドゥ救済回ということで、はっきりとした原作&歴史ブレイクとなりました。批判とかが来そうで怖いですが・・・。(冷や汗)
さて、ギルガメシュ叙事詩は次回で最後にしたいと思います。その次はどこに向かわせようか・・・。
次回もまた見て頂ければ幸いです。