Infinite Stratos~Full Throttle of MACH~ 作:朝陽祭
1話後半はもう少し早めに投稿できるように努力します。
セシリア戦まででやりたいことがどんどん膨らんでいくからはやく形にしないと……
第一話 なぜ、決闘は行われることになったのか~前編~
「――失礼。少々よろしいですか、織斑 一夏さん?」
「んぁ?」
それは、一夏がIS学園に来て初めての授業を終えた後の休み時間の出来事だった。
担任である織斑千冬の登場により、クラス全員の自己紹介が半ばで終わり授業に入った為、周囲では女子達がそれぞれ自己紹介を行いつつ歓談を交えていた。
そんな中、唯一のISを使える男性として注目を集めていたはずの一夏の周りに人が集まっていたかというとそうではなく、一夏が唸るような声をあげて教科書を読み込んでいた為、女子達はその様子を遠巻きに眺めているだけだった。
ちなみになぜ一夏が休み時間にも関わらず教科書を読んでいるのかというと至極単純な理由で、授業の内容についていくのがやっとの状態な為、少しでも周りとの差を埋めようとしているからである。
元々IS学園へ入学することを目的としそこらの偏差値が高い学校とはレベルの違う受験勉強を行っていた周りの女子達とは違い、一夏が本格的にISについての勉強を始めたのは高校入試の会場で偶然ISに触れた後――つまり、春休みに入ってからなのである。
優秀な家庭教師がサポートしてくれた為にある程度の知識は手に入れたものの所詮は付け焼き刃にすぎない為、一夏は自主的に勉強を進めようとしていたのだが……そんな一夏に対し、話しかけてくる者が居た。
わざわざ無碍にするのも申し訳ないと思った一夏が振り向くと、そこには金髪のロングヘアをなびかせた、いかにも自信満々なお嬢様といった雰囲気を醸し出す少女が、両手を腰に当てて立っていた。
初対面のはずなのにどこか見覚えのあったその顔に、一夏は顎に手を当てて思案するような表情を見せたが、やがて何かに気がついたように指を鳴らすと、記憶の片隅にあった少女の名前を口に出した。
「……確か、セシリア・オルコットさんだっけ?イギリスの代表候補生の?」
「おや、私の名をご存知でしたか。あなたの状況から考えると、IS学園に入学するための基礎的な知識を覚えるだけでも一苦労だと思ったのですが。」
「いや、まぁそうなんだけどさ……うちの家庭教師が、『IS学園で出会うこともあるだろうから、覚えておけ』って勉強の合間に覚えさせられたんだよ。」
「なるほど、実に優秀な家庭教師だったようですわね。それに、本人も自分の置かれた環境についていこうと努力している……ふむ、想像以上に興味が湧いてきましたわね。」
頭を掻きながら問いかけに答える一夏を見ながら、セシリアは顎に指を当ててひとり何かを納得したかのように呟く。そんなセシリアに一夏は訝しげな目を向けながら、軽く手を挙げるとまるで教師に質問する生徒のように言葉を発した。
「それでだオルコットさん、俺への用件はなんだ?用があるから話しかけてきたと思ったんだが。」
「あら、失礼しました。まぁ、あなたに直接用がある訳ではないのですが……あれ、どうにかなりません?」
「あれ?」
軽く手を叩いたセシリアは、そのまま手を横へと向ける。それにつられて一夏が振りむくとそこには――
(……………………なぜだ、なぜ誰も話しかけてこないのだ?)
腕組をして周囲にプレッシャーを放ちつつ何かを考えているポニーテールの少女「篠ノ之 箒」と、そのプレッシャーに気圧されて遠巻きに眺めている少女達の集団があった。
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「しっかし、箒もあれだよなぁ。お前、転校してからどんな生活してたんだよ?昔から無意識にプレッシャーを放って動物から逃げられることはあったけど、悪化してんじゃないか。」
「う、うるさいっ!転校してからは勉強と自分を鍛えることで忙しかったんだ!」
「ほほぅ?俺とのテレビ電話は毎週欠かさずやってたのに?考えてみりゃ、学校生活についてはまったく触れようとしなかったなお前。」
「なんだその目は!?息抜きくらいいいだろう!」
――時は流れて昼休み、学園内に設けられた食堂の一席で、一夏と箒は向かい合わせになり、先ほどの休み時間にあった珍事について語っていた。
呆れつつも笑みを浮かべながらからかう一夏に対し、箒は顔を真っ赤にしながら頼んでいたカツ丼をガツガツと食べ始める。
「まぁ、織斑君が居てくれて助かりましたわね。少し会話を挟むだけで篠ノ之さんのプレッシャーが嘘のように吹き飛んだのですから。さすがは幼馴染、といった所でしょうか?」
そして、そんな箒を隣で眺めながら、セシリアは優雅にスパゲッティを食べている。その動作の一つ一つがまるでキラキラとしたエフェクトがかかるようで、他の席に座っていた女子や席を見つけようと辺りを見回している女子が、見惚れるような視線をセシリアに向けていた。
「……オルコットと言ったな、随分私や一夏について詳しいみたいだな。」
「織斑君についてはそういう訳でもありませんわ。正直に申し上げますと、篠ノ之さんについて調べていたら幼馴染ということがわかったので、ついでで調べただけに過ぎません。」
「私について調べていた?世間一般的には『世界唯一のIS操縦者』として注目を集めている一夏をさしおいてか?」
「あら、ご謙遜はよしてくださいな?あの『篠ノ之 束』の妹であり、自身もISの技術を汎用化するというテーマで論文をいくつか発表し学会を騒がせている若き天才科学者として篠ノ之さんも立派な有名人ですのよ?同年代でISに関わる者としてはお近づきになりたいと思うのは当然の事だと思いますが。まぁ、人見知りのあまり周囲にプレッシャーを放つ人間だったとまでは調べきれていませんでしたわねさすがに。」
「ぐっ!?」
「つまり、さっき俺に話しかけてきたのは箒と仲良くなりたいからその仲介役として間に入って欲しかったってことか。よかったじゃん箒、さっそくIS学園で友達ができたぞ!」
「一夏ぁっ!?私をぼっち扱いするんじゃない!私だって本気を出せば、友達の10人や20人くらい……」
「箒、目が泳いでるぞ?」
「……まぁ、そういう訳で今後共よろしくお願い致しますわ。それと、そろそろ昼食時間が終わるので急いだ方がよろしいかと。」
一夏と箒の漫才を眺めつつ、いつの間にか食事を終えていたセシリアは口元を優雅に拭い、そう忠告する。その言葉にはっとした一夏と箒は慌てて残っていた昼食を平らげることにとりかかったのだった。
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「――そういえばだ、クラスの代表を決める必要があったな。面倒だ、今決めてしまうか。」
「いや、行き当たりばったりすぎんだろ千冬ねぇ。んな『今思い出しました』と言わんばかりのノリでそんな……あいたぁっ!?」
「茶化しつつ授業中の質問するのもそうだが、教師に意見とはいい度胸だな織斑?それと、学園内では織斑先生と呼べ。まったく公私の区別もつかんのか貴様は?」
「いや、意見は言っていいだろ教師にも!それ軍隊とかのノリじゃんっ!?あとハリセン代わりに出席簿をツッコミに使うなよっ!?」
「心配するな、これはお前にだけだ。姉の愛と思って受け取れ。」
「数秒前の自分の台詞を思い出してくださいませんかねぇ織斑せんせぇっ!?」
これは、今日一日の中で幾度となく繰り広げられた光景だ。一夏が授業の内容へ質問を入れつつ授業を茶化し、それに対し千冬がやんわりとツッコミを入れつつ、解説をしていく。
姉弟故の阿吽の呼吸で繰り広げられる漫才に、入学時及び箒が無駄に撒き散らしたプレッシャーで固くなっていた生徒達の緊張感は授業を重ねる毎に和らいでいった。
そんな風にクラス中が笑いにつつまれる中、咳払いをした千冬は続けて説明を行っていく。
「さて、クラス代表について説明を行う。基本的には諸君が中学等で経験したクラス代表と基本的な業務については変わらん。だが、直近の仕事として月末に行われるクラス対抗トーナメントに文字通りクラスの威信を背負った代表として出てもらうことになる。」
そこで言葉を区切り、千冬は笑みを浮かべて学生達に向けて問いかけた。
「このクラス対抗トーナメントは新入生歓迎の式典でもある。いくつかの企業からは既に、今年度の有望株をチェックする為として見学申請も頂いている……名前を売るには絶好の機会だがさて、誰か立候補する者は居るか?他薦でも構わんぞ。」
「はいっ!織斑君を推薦します!」
「私も、織斑君がいいですっ!」
「私も私も!」
千冬の挑発的な言葉を聞き真っ先に手を挙げた女子から一夏を推薦する言葉が次々と飛び出ると、一夏は椅子からずっこけた後立ち上がり、他薦してきた女子に向かって吠えた。
「待て待て待て待てぇっ!?そこでなんで俺の名前が出んのっ!?今の流れどう見ても立候補していく流れだろっ!?」
「はっはっは、嫌だなぁ織斑君わかってるくせに。こういう場で希少価値の高い織斑君をアピールしなくてどうすんのさ?」
「なにより私達は自分の実力をよく知っている!企業のお眼鏡にかなうような実力を持っていると自信満々に言えるほどの実力はまだ身につけられてないのさ!」
「それにこういうのは自分がやるよりも、やってる人間を見てる方が面白いってのが相場なんだよねぇっ!織斑君がもし傍観者の立場ならどうする!?煽るでしょうキミの性格なら!」
「くそっ!?言い返せねぇっ!?」
緊張感がほぐれたが故かノリノリで主張してくる女子達に、一夏はオーバーなリアクションで頭を抱える。
まだそれほど交流していないにも関わらず、気がつけば女子達からの一夏の印象は「面白い男の子」という形でインプットされ親しみやすさを与えているようだった。
「あぁ、ちなみに他薦の場合での辞退は却下する。わずかな間でクラスの代表にしてもよいという信頼を身につけたという証拠だ、答えてみせろ。」
「ちくしょう退路が塞がれたっ!じゃあ俺はセシリア・オルコットさんを推薦します!イギリスの代表候補生なんだ俺よりも経験という点については一日の長があるからな!」
明らかに悪ノリ感の漂う推薦と、千冬の言葉によって逃げ場を失った一夏は、せめてものあがきとして先程知り合ったセシリアの名前を出す。すると、それにあわせてポツポツと意見が飛び出てきた。
「あ、しかもオルコットさんって専用機持ちなんだよね?確かにそれならクラスの代表にふさわしいかも。」
「織斑君だと確かにインパクトは強いけど、実力として見るならオルコットさんの方が堅実だね。私もオルコットさんを推薦します。」
「私もオルコットさんにさんせーい!」
そうしていくうちに次々とセシリアと一夏を推薦する旨の発言をする学生が増えていき、書記を行っていた副担任の「山田 真耶」が黒板に票を集計していく。
「ふむ……今の所は織斑とオルコットの二強か。さて、沈黙を続けているがオルコット、お前は何かいうことがあるか?織斑が他薦という形で巻き込んだのだ。お前にも同様の権利はあるぞ?」
「そうですわね……まずは私を推薦していただいた皆さんに感謝を。どういう形で代表を決めるかはわかりませんが、全力でやらせていただきたいと思います。その上で、私がクラス代表として推薦したいのは――篠ノ之箒さんですわ。」
そのセシリアの言葉に、我関せずと言わんばかりに頬杖をついていた箒が音を立てて崩れ落ちると、勢い良く立ち上がってセシリアへと顔を向け叫びだす。
「待てっ!?なぜ私まで巻き込まれる!?」
「あら、織斑君と私の影に隠れてコソコソしようなど許しませんわよ篠ノ之さん……私、知っていますのよ?今年度の入学実技試験において、教官への勝利判定という形で合格したのは『3』名。そのうち2人は、私を含めた専用機持ちの代表候補生ですが――」
そう言うと、セシリアはどこからともなく優雅に取り出した西洋風の扇子で、口元を隠す。その光景を眺めていた千冬と真耶は「あ、生徒会長とキャラが被った」と内心思い、同じ頃とある部屋では大きなくしゃみの音が響きわたった。
「――第二世代型のIS『打鉄』、それも実習用の訓練機で教官への勝利判定をもぎ取ったその実力ならば、代表候補生に引けを取らないものでしょう?」
セシリアが告げたその言葉に、他の女子達は驚愕と尊敬の眼差しを向ける。一斉に視線が向けられた為に思わずたじろいでしまった箒は、助けを求めるように千冬へと視線を向けたが、千冬からの応答は「諦めろ」という生温かい目だった。
「はい、集計が終わりました。篠ノ之さんは織斑君を推薦していたので、最終的なクラス代表候補者は織斑君、オルコットさん、篠ノ之さんの3人ですね。」
「箒ぃっ!?幼馴染のお前は俺を助けてくれると信じ……あがっ!?」
「やかましいぞ織斑。さて候補者の選抜方式だが――」
がっくりと肩を落とした箒をよそにさりげなく挙手を促して集計を行っていた真耶が結果を報告すると一夏が慟哭の叫びをあげ、その額めがけて千冬がチョークを手裏剣のように投げて沈黙させる。
そして、千冬は笑みを浮かべると――クラス全員へ向けてクラス代表の選抜方法を告げた。
「――百聞は一見に如かず。一対一の決闘方式、総当り戦による勝敗でクラス代表を決める。一番強い奴がクラス代表だ、実にシンプルだろう?」