Infinite Stratos~Full Throttle of MACH~   作:朝陽祭

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ようやく第一章の終盤戦突入です。
しかし、例のアレの特典で大まかに情報が見えてきましたがどうしよっかなあれ……

あ、劇場版ゴーストの方は楽しみです。敵の方はライトが光ると目付きの悪い骸骨っぽく見えそうなので、劇中でどう表現されるか楽しみです。


第六話 織斑一夏は何を思うのか

 

 

 

「改めて自己紹介するわね、2組の【凰 鈴音(ファン・リンイン)】よ。中国の代表候補生でもあるわ」

 

「んで、俺のセカンド幼馴染だ。ちょうど箒が家庭の事情で転校したのが小4の時で、鈴が小5の時に転校してきたんだ。ちょうど入れ替わるような形だな!」

 

「い~ち~か~……そのセカンド幼馴染ってのやめろって何度も言ってるでしょうがっ!?」

 

 

 

 

 ――朝の騒動から一転して昼休み。学園の屋上でどこからか持ち出してきた敷物を広げた一夏達は、鈴の自己紹介を聞きながら昼食を食べ始めていた。

 

 

「なんで私も呼ばれたのかと思ったけど……同じ学年の代表候補生の顔合わせも考えるとちょうどよかったのかもね?」

 

「すまんな簪、この埋め合わせは必ずする」

 

「それじゃあ紅椿のデータ収集に優先的に関わらせてほしいな。打鉄弐式にフィードバックさせたい点がいくつかあるし」

 

「……構わんが、先輩達の説得には協力しろ。最悪生徒会長も巻き込む勢いでいくぞ?」

 

「…………うん、これを機会にお姉ちゃんともちゃんと話したいしね。あ、私は4組の【更識 簪(さらしき かんざし)】。よろしくね鳳さん」

 

「鈴でいいわよ。お互い代表候補生ってことで協力することもあるだろうし、友達にもなりたいしね」

 

 

 

 箒に呼ばれたことで同席していた4組のクラス代表であり日本の代表候補生でもある簪はというと、鈴と握手を交わした後は弁当を広げおかずを箸で口に運び始める。

 

 そして鈴はというと、簪の要求に顔をひきつらせていた箒の顔を眺め腕を組みながら、しみじみと頷きつつ口を開いた。

 

 

 

「そういえば、箒とはこうして直接会うのはじめてになるのよね?なんか、画面越しで会話していたとは言え変な気分だわ」

 

「……いったい、どういうことでしょうか?」

 

「姉さんの計らいで、転校した後も一夏とネット通話で連絡をとりあうことはできたのでな。その流れで鈴のことも紹介してもらったんだ」

 

「日本に居た頃は両親が中華料理屋を開いてたのもあってちょくちょく一夏の家で差し入れとかやったりしてたのよ。後は一夏の友達連中でお泊り会みたいなことをする時に、駆りだされたりとかね?」

 

「なるほど……私、同級生とそういったことをした経験がないので、少し羨ましいですわ!他にはどんなことがあったんですの!?殿方はベッドの下とかにこうセクシーな本を隠したりするというのを聞きますが!」

 

「どっから仕入れたそんな知識ぃっ!?」

 

 

 疑問が浮かんだセシリアに答えたのは箒だった。そして、箒から引き継ぐような形で鈴が説明をするとセシリアは目をきらめかせながらその話題にくいつき、鈴は鋭いツッコミを入れる。

 

 余談ではあるが、簪はセシリアの発言に顔を赤らめて黙々と弁当を食べ進めていた。

 

 

「まぁ、そんな生活も夏休みに鈴が中国に戻ったことで終わったんだがな……思ったより早かったな再会。おばさんは元気か?」

 

「スルーなの!?今のスルーするの!?……まぁ、政府の援助もあってあっちで観光客向けの中華料理屋開いてバリバリ稼いでるわよ」

 

「そっか、そりゃよかった……あ、そうだ鈴。今度の土日は暇か?俺と箒は帰省ってことで一旦地元に戻るんだけど、よかったらお前も来ないか?」

 

「おい、一夏!?」

 

 

 そんなこんなで思い出話を進めながら昼食を食べていると、ふと一夏が鈴に対し予定を確認する。それに対し箒が顔を赤らめつつ声を荒げる。

 

 ちなみにセシリアはというと「あらあら、まぁまぁ♪」と言った感じで口を抑えつつどこか楽しんでおり、簪は「……うわ、こんなラブコメみたいな展開本当にあるんだ」と思わず呟いていた。

 

 

「はぁ?暇って言えば暇だけどなんであたしまで一緒なのよ?箒って確か転校してから一度も戻ってないんでしょ?そっちを優先してあげなさいよ」

 

「ほら、中国に戻る時に約束したじゃんか!料理が上達したら毎日酢豚をご馳走してくれるってさ!まさかこんなに早く再会するとは思わなかったけど、鈴の顔みたらちょうどあの酢豚を食べたくなってさぁ!……って、どうした鈴?なんかすごい顔してるけど」

 

 

 そんな箒の反応で何かを察した鈴が怪訝そうに眉をひそめてさり気なく箒をフォローするが、一夏はそんな鈴の反応に気づかず笑顔で言葉を続けていく。

 

 だが、一夏が気がついた時には、全身に暗い雰囲気を漂わせて頭を抱える鈴と箒の姿があったのだった。

 

 

「あぁ、さすがにこれは伝わるだろうと変にアレンジしたあたしが馬鹿だったわ。そうよね、こいつ直球で告白しても斜め上の解釈する超弩級の朴念仁だったわね……」

 

「鈴、済まなかった……次の土日、一緒に気分転換をしよう。なんならセシリアと簪も一緒に来るか?いや、頼む一緒に来てくれ」

 

「一夏さん……えぇ、不肖ながらこのセシリア・オルコット、お付き合いさせていただきますわ」

 

「織斑君、さすがにそれはないよ……」

 

「え、えっ!?なんでみんな俺が悪いみたいな視線を向けてくるんだっ!?」

 

 

 

 ――こうして、1年代表候補生達は心を一つにし、それを理解できない一夏は妙な疎外感を味わうのであった。

 

 

 

 

 

 

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「――ってな訳で、一緒に来たのはいいけど女子連中が観光も兼ねて遊びに行ってさぁ?俺だけだと暇だからお前んとこ来たって訳だ」

 

「何から何までお前が悪いし俺の家を避難所代わりにするんじゃねぇよっ!?女子の園に野郎一人は辛いだろうなとか思ってた気持ちがふっとんだわっ!?」

 

「なんだよそれ!?数馬の奴はストレートに羨ましがってたけどマジできついんだからなあの状況!?寮の副管理人は男だけど知り合いだからかえってやりづらいしよぉ!」

 

「知るかばーか!てめぇ鈴が中国に戻ってからやたらピリピリしてたり長期休暇に急に海外に行ってたりしてこちとら心配してたんだぞ!?あんま変わってなくてよかったよこんちくしょう!」

 

「そいつはどうも!なんでそんな気遣いが女の子の前だとできないかねお前は!そうしたら今よりもっとモテるぞお前!?」

 

「うるせぇ!」

 

 

 

 ――そして、時は流れ週末。一夏は友人である【五反田 弾(ごたんだ だん)】の家に転がり込むと、二階にある弾の部屋で一緒に格闘ゲームをしていた。

 

 コントローラーをガチャガチャと操作しつつ、一夏と弾は他愛もない話を続けていく。

 

 

 

「そういや蘭はどうなんだ?下の食堂を覗いた時は手伝いはしてなかったみたいだけど、出かけてるのか?」

 

「あぁ……最近は受験勉強で外に出てることが多いよ。お前がIS学園に入学したって話聞いてから、『私もIS学園に入学する!』って張り切ってる」

 

「マジかよ、聖マリアンヌ女学院って確か中高エスカレーター式の学校だろ?蘭の成績聞いてる限りじゃIS学園も行けるとは思うけど……あぁっ!?弾!てめぇはめ殺ししてくるんじゃねぇよ!」

 

「このキャラの基本戦略をやって何が悪い!……後はそうだな、最近新しい友達が出来たってこともあって外に出てるのは多いな」

 

「新しい友達?まさか恋人か!?IS学園じゃ女の子同士での恋愛してる先輩も居るって聞くから拗らせると大変だぞ!?」

 

「なんでてめぇは他人の恋愛にはやたら食いつくんだ!?というかIS学園は百合もあるのかよ怖いわっ!?あ、コンボすかした!一応うちの食堂にも連れて来てたけど、意中の男性が居るっぽいしな、そんなことはないと信じたい」

 

「へー……弾、告白する前に玉砕とは残念だったな?」

 

「そろそろぶん殴るぞてめぇ?しかし、また妙に世間知らずというか箱入り娘というか、不思議な女の子だったな。たしか【療子(りょうこ)】ちゃんって言ったかなぁ……白いゴスロリ服とナースキャップみたいな帽子つけてて、それがまた妙に嵌ってるんだよ。あと『ショウ』って名前の犬を連れてたな」

 

「へぇ……というか弾、情報知りすぎてて怖い」

 

「うるせぇ。親父が蘭に療子ちゃんのことやたら聞くから情報が必然と入ってくるんだよ……あっくそコンボミスった」

 

「おらおらどうした弾隙アリだぜ!ってなにぃ!?カウンターだと!?」

 

「いちかー?だーん?居るんでしょー?戻ったわよー!」

 

 

 弾の妹である【五反田 蘭(ごたんだ らん)】の近況を聞きながら二人が格闘ゲームに勤しんでいると、下の階から鈴の声が聞こえてくる。

 

 どうやら、観光を兼ねたショッピングを終えて戻ってきたようだ。

 

 

「あん?鈴達の奴戻ってきたのか。んじゃ、そのままここでご馳走になるか」

 

「大丈夫か一夏?聞いた話じゃ連れの中にはお嬢様も居るんだろ?うちの食堂の味に自信がないって訳じゃねぇが、お嬢様の口に合うかは保証しないぞさすがに」

 

「まぁ、普通にレストランの食事とか食べてるし大丈夫だと思うぜ?」

 

「世界各国からの学生が集まる場所のレストランとうちを一緒にするんじゃねぇよ……」

 

 

 そして二人がゲームを終えて下へ降りると、そのまま一夏達は弾の家族が経営している『五反田食堂』で夕食を取ることとなった。

 

 その中でセシリアが庶民の味に感銘を受けたり、鈴が厨房を借りて一夏が所望していた酢豚を作ったり、戻ってきた蘭が一夏の姿と鈴達の姿を見て色々とあったりしたが、その休日は平和な日常を過ごせていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ハート様、ブレン様、ただいま戻りました」

 

「お帰り、メディック。友達とは楽しく過ごせたか?」

 

「はい、蘭様との一日はとても楽しかったですわ♪」

 

「そうか、それはよかった」

 

「それはよかった、ではないですよハート!?メディック!迂闊に人間に接触するのはあれ程やめなさいと言っているでしょう!?」

 

 

 

 一夏達が五反田食堂で夕食を取っていた頃。とある廃工場ではその場に似つかわしくない格好をした三人の男女が、そんな会話を交わしていた。

 

 一人は、真紅のコートに身を包んだ黒髪の青年。【ハート】と呼ばれたその青年は笑みを浮かべながら、もう一人の男性に声をかける。

 

 

「いいじゃないかブレン。メディックはその風貌から警戒心を抱かれにくい。人間社会の情報を掴むのには最適だ」

 

「ハート、あなたはメディックを甘やかしすぎです!あのコピー元の世話だってフリーズに頼まなければいけないというのに……あぁ、こらお前!なぜ私の元に来るのです!?離れなさい!しっ、しっ!」

 

「あらあら、ショウもブレン様を気に入っているようですわね?」

 

「メディィィィィィッッッック!?この犬も世話をするのならきちんとしなさい!」

 

 

 もう一人の、眼鏡をかけた深緑のジャケットを纏った青年――【ブレン】が小言を少女にぶつけていると、少女が連れていた犬がブレンの元へと駈けより、その足にじゃれてくる。

 

 そして、そんな様子を見ながら白いゴスロリ服とナースキャップを纏った少女は両手を胸の前で合わせ、笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――その少女を五反田 蘭が見れば、彼女のことを【療子ちゃん】と呼んだであろう。

 

 だが、彼女の正体を……今はまだ、蘭は知らない。

 

 その少女が、機械生命体(ロイミュード)のシングルナンバー『009』、【メディック】であるということを。

 

 そして、この出会いが何をもたらすのかは――ロイミュードである彼ら自身も、知らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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『ねぇ一夏、あたしさ?中国に戻っても料理勉強するから!ぜったい上達して、いつか日本でも中華料理屋が出来るくらいうまくなるから!だから……そうなったら、毎日あたしの酢豚を食べてよね!』

 

 

 それは、昔の記憶を辿る『夢』だった。

 

 一夏がそれを『夢』だと認識していたのは、今より少しだけ幼い自分の背中を見つめるような視点で、それを眺めているからだった。

 

 過去の鈴が泣き顔をこらえた笑顔でそう言ってるのを眺め、一夏は――

 

 

 

『……あぁ、楽しみにしてるな!』

 

「……わりぃな鈴。弾の言う通りで、何から何まで俺が悪いよ。お前の気持ちに気づいていても、茶化して誤魔化した俺を、許さないでくれ」

 

 

 

 ――過去の一夏が『鈴を安心させる為』だけに精一杯の『作り笑い』を浮かべる様を眺めつつ、そう呟いた。

 

 すると、一夏の前に浮かんでいた過去の光景がぐにゃりとねじ曲がり……また、別の光景を映し出す。

 

 それは、中学一年の頃。一夏が第二回モンド・グロッソに出場する千冬を応援する為、単身でドイツに来ていた時の記憶だ。

 

 

『なぁ……何の冗談なんだよこれ……なぁ、嘘だと言ってくれよ!父さん!』

 

『一夏……全くもって度し難いよお前という存在は。私のデッドコピーですらない……お前は、私が生み出した存在の中で、一番の【失敗作】だ』

 

 

 

 右手に紫色の装飾が備えられたグリップのような銃を構える、【幼い頃の千冬に瓜二つの少女】が変身した【怪人】と、虚ろな目をした【死んだはずの母】。

 

 ――そして、【死んだはずの母】が抱えるスマートパッドに映しだされた、【父の声で喋るナニカ】を前にして、慟哭の声をあげる過去の一夏が居た。

 

 

 

 

 

 『――織斑一夏、貴様は何のために戦う!怒りか?罪悪感か?それとも正義か?』

 

 『うるせぇ!俺が戦う理由なんてどうだっていいだろ!やることは実にシンプル!貴様らロイミュードの企みも、蛮野の企みも、全部ぶっ潰す!それだけだ!』

 

 「いや、そうじゃない。俺は……俺が戦う理由は――」

 

 

 

 また場面が切り替わり、今度は静止する雨の中で真紅の【怪人】が拳を振るいながら問いかけてくる。白い装甲に身を纏った過去の一夏とは別の答えを、一夏が口にしようとしたその時――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――夏、一夏!起きろ!大丈夫か!?」

 

「……あぁ、箒か。わりぃ、ちょっと夢見が悪くてな」

 

「そうか……ほら、これを飲め。随分と汗をかいているぞ?」

 

「おう、さんきゅ」

 

 

 ――身体がゆすられていることに気が付き目を開くと、そこには心配そうな表情を浮かべている箒の姿があった。

 

 身体を起こした一夏は箒から清涼飲料水が入ったペットボトルを受け取ると、喉を鳴らして一気に飲み干していく。

 

 

 

「そんな様子で大丈夫か?今日はクラス対抗トーナメントで、初戦から鈴が相手だぞ?」

 

「――いよっし!エネルギー充填完了っと!心配すんなよ箒!ちょいっと出鼻をくじかれたが、早起きできたのは好都合だ!身体を慣らして、バリバリ頑張るぜ!」

 

「……そうか」

 

 

 表情から不安の色が消えない箒だったが、一夏は笑顔を浮かべると明るく振る舞い、無駄にビルダーのようなポーズを取る。

 

 そんな一夏を見てようやく笑顔が戻った箒の顔を、ちょうど昇ってきた朝日が照らしだすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うっひゃあ……満員御礼だなぁ」

 

「元より注目されていたのは確かですが、なんでも私達の模擬戦映像が広まった結果観戦の申し込みが爆発的に増えたらしいですわ」

 

「最も、申し込みをしてきた企業の多くは篠ノ之の紅椿目当てが多かったようだがな……さて、織斑。準備はできているな?」

 

 

 アリーナの観客席が満員になっている様をモニターで眺め一夏とセシリアが感想をもらしていると、千冬が現れて確認を行う。

 

 

「あれ?山田先生はどうしたんだ千冬姉ぇ?」

 

「お前は何度言ったら……山田先生は上級生を率いて観客席の見回りに行ってもらっている。想像以上に企業が集まったからな、念の為だ」

 

「そっか……そんじゃ千冬姉ぇ、箒、セシリア!行ってくる!」

 

「えぇ、頑張ってください一夏さん!」

 

「あぁ、気をつけてな」

 

 

 真耶が見当たらないことを尋ねた一夏に対して千冬が答えると、一夏はサムズアップをしながらアリーナへと飛び出していく。

 

 その後姿を眺めながら、箒はそっと千冬に近づいて小声で話しかけた。

 

 

 

「……織斑先生、音無さんとクリムはどこに?」

 

「一応、臨時の警備員としてねじ込んでアリーナを巡回してもらっているが、どうした急に?」

 

「いえ……なんだか胸騒ぎがするんです。なにか起こるんじゃないかって」

 

「奇遇だな、私もそう思っていたところだ。だからこそ一応これを用意しておいた……オルコット、これを学生服のベルトに付けておけ」

 

「は、はい?……っと、これは……箒さん達が着けているホルダーと、同じものですか?ですが、一体これは何のために」

 

 

 箒の言葉に頷くと、千冬はセシリアに声をかけて銀色のホルダーを投げ渡す。セシリアがそれを受け取ると言われるがままに学生服のベルトに装着したが、疑問を覚えて千冬に問いかけた。

 

 

「お守りのようなものだ。本来ならば更識姉妹や鈴にも渡しておきたかった所だが、致し方あるまい……一夏と深く関わるのならば、恐らく必要になるだろうからな」

 

「それは、どういう……?」

 

「……クラス対抗戦が終わったら、話そう。今は、試合に集中しろ」

 

 

 

 千冬の言葉に促され箒とセシリアがモニターを眺めると、そこには観客の歓声を浴びながら激しくぶつかり合う、一夏と鈴の姿が映しだされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――白と深紅の影がぶつかり合う度に、激しい剣戟の音が響き渡る。

 

 白式を纏った一夏が雪平弐式を振るえば、鈴は己のIS【甲龍(ファンロン)】の武装である青龍刀【双天牙月】で受け止める。

 

 一方で、己が学んだ星心大輪拳をベースとした打撃を交えつつ鈴が武装の一つである衝撃砲を放てば、一夏は楯無との訓練で学んだ瞬時加速(イグニッション・ブースト)を小刻みに使用することで回避する。

 

 双方の技術が高校生とは思えないレベルの演武のような戦いに、観客は男女問わず湧き上がっていた。

 

 

 

「一夏ぁ!随分と腕上げたじゃない!あんた本当にIS装着して間もないの!?」

 

「そっちこそな!さすが一気に代表候補生に上り詰めたってだけはあるな!」

 

 

 

 一夏と鈴もまた双方の腕前を改めて感じ、自然と笑みを浮かべる。これがクラス対抗戦であるということすら忘れ、一夏と鈴は二人だけの世界に入り込んでいく。

 

 打撃、射撃、斬撃、蹴撃。様々な技を、瞬時加速(イグニッション・ブースト)を交えた高速移動でぶつけあう。その動きは、熟練のIS乗りでも目を見張る程に、わずか数瞬の間にその冴えを増してく。

 

 そして、二人は一度距離を取り、お互いがアリーナの端へと着地する。

 

 

 

「――いくぞ!鈴ぃぃぃぃぃんっっっっっ!」

 

「――来なさい!一夏ぁぁぁぁぁっっっっ!」

 

 

 裂帛の気合と共に、零落白夜を開放した雪平弐式を構えた一夏が、腕部衝撃砲の砲身を掌に展開した鈴が、アリーナの中央めがけて加速する。

 

 そして、二つの影がぶつかり合おうとしたその瞬間――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――アリーナを覆っていた遮断シールドが激しい音と衝撃と共に砕かれ、アリーナの中央に『ナニカ』が粉塵を巻き上げつつ舞い降りた。

 

 

 

「っ!?な、なによいったい!?」

 

「なんだぁっ!?」

 

 

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)の応用でとっさにブレーキをかけた一夏と鈴はお互いに駆け寄ると、乱入者に警戒心を向ける。

 

 

「……一夏、気づいてる?あれからはまったく生きてる『気配』を感じないわ。まるで『機械』みたい」

 

「おいおい、そういうのに敏感なお前が言うってことは厄介事な気がしてきたぞ?天下のIS学園にテロしてくるってだけで大惨事なのによぉ……」

 

 

 二人が『ナニカ』から視線を逸らさずにそんな会話を繰り広げていると、粉塵が晴れていき、『ナニカ』の影が顕になる。

 

 

 

 

 

 

 

 ――結論から言えば、それはIS(インフィニット・ストラトス)を纏った存在だった。

 

 現在稼働が確認されているどのISにも該当しない、その銀色に輝く鋭角的な装甲は、それだけで所属不明だということが見て取れる。

 

 問題は、その『装着者』だった。

 

 鈍色に輝く装甲と、胸部に埋め込まれた『ナンバーの刻印されていない』プレート。そして、人間でいう瞳の位置から伸びる、翼のような装飾。

 

 その存在を、一夏は知っていた。なぜならば、グローバルフリーズのあの日。一夏はそれを撃滅する為に戦っていたのだから。

 

 

 

「……ロイ、ミュード!」

 

 

 

 その悪魔の名を、一夏は憎悪を秘めた声で、憎々しげに呟くのだった。

 

 

 

 

 ~To Be Continued~

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