ワールドトリガー 《ASTERs》   作:うたた寝犬

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第47話「日曜日の午前」

ランク戦初日の次の日である2月2日日曜日に、月守はボーダー本部に足を運んだ。表向きは防衛任務などの仕事は何も入っていない上に隊長である彩笑も特に指示を出していないため休日だが、日頃の習慣というか長年の癖というか、月守は特に用が無いにも関わらずボーダー本部に来ていた。

 

(完全オフの時に本部に来るのは、少し久々だな)

 

日曜日の午前中ということもあって、いつもよりもエンジニアや事務職にあたる大人職員の姿は少なめだが、その反面ブースなどにはC級隊員の数が多かった。最初はソロランク戦でもやろうと思っていた月守だが、そのC級隊員の多さをブース手前の物音で判断をして引き返し、普段多くの時間を過ごす地木隊の作戦室に向かうことにした。

 

セキュリティである暗証番号を入力して扉を開くと、

「あ、月守先輩おはようございます」

そこには当然の顔で、オペレーターである和水真香が仕事モードの時にしか着ないオペレーターの制服姿で自身の仕事用デスクに座っていた。パソコンも起動している上に、部屋の暖房もすっかり温まっているのでだいぶ前からここにいたことが伺えた。

 

その事に軽く驚きつつ、月守は真香の挨拶に答えた。

「おはよう、真香ちゃん。もしかして朝早くからいたの?」

 

「はい。といっても、2時間半くらい前からですけどね」

真香は何てこと無いように言うが今は午前9時なので6時半頃からいた事になる。ボーダーという組織は仕事柄どんな時間帯でも本部への出入りができるようになってはいるが、常識的に考えて休日の朝6時半は早い時間帯だ。

「さらっと言ったけど、早起きだとしてもその時間は早いよ…。休みの日に来るにしてもあと1時間くらい家でのんびりしてから来ればいいのに……」

月守は作戦室にある椅子に座りつつそう言ったが、真香は備え付けの時計に目を向けながら言った。

 

「え?でもあと30分で作戦会議始まりますよ?」

 

「は!?うそ!?俺それ聞いてないけど!」

まさかの事態に月守は慌てるが、

「はい、嘘ですよ。今日は完全オフな日です」

真香はニッコニコと笑い、そう答えた。

 

「……」

 

「……」

作戦室にたっぷりと沈黙が訪れた後、

「……びっくりしたぁ」

心底安堵したように月守は椅子の背もたれに体重を預けつつそう言った。イタズラが成功した真香はクスッと笑い、月守に言葉を投げかける。

「ドッキリ大成功です」

 

「そういうドッキリは良くないよ」

 

「あはは、飲み物用意するので許してくださいよ。何飲みますか?」

 

「冷蔵庫にあるのなら何でもいいけど……」

 

「ああ、そうなるとココア1択ですね。昨日帰るとき、地木隊長がいそいそとココアを冷蔵庫に詰め込んでましたから」

真香はそう言って冷蔵庫を開けると、そこには言った通りにココアが内部を占拠していた。それを見た月守は呆れたように言った。

「あんのバカ……。冷蔵庫の占拠はやめろって何回も言ってるだろうが」

 

「詰め込みすぎると冷却効率落ちますもんね。とりあえずココアで良いですか?」

 

「いいよ。1つちょうだい」

 

「はい」

冷蔵庫から缶のココアを2つ取り出し、真香は1つを月守に渡した。

「ありがと」

 

「どういたしまして」

言葉を交わした2人は同時にプルタブを開け、ココアに口をつけた。

 

月守はココアを半分ほど飲んだところで、真香に問いかけた。

「次の試合の情報収集してたの?」

 

「はい。3チームの試合のログと、ソロランク戦のデータ、訓練のデータとか、集められる分集めて目を通してました。まだ集めた分全部は見てませんけど、午前中には見終わる予定です」

 

「それ全部見ると疲れるから少し絞った方がいいと思うよ」

月守は気遣うように言葉をかけたが、

「疲れるのがわかるってことは、月守先輩は見たんですね?」

それに対して真香は凛とした声で言い返した。

 

「……まあ、ね」

月守の答えが示すように、真香の予想は当たっていた。月守は前日の時点で真香が今見ているデータをチェックし終えていた。その苦労を経験したからこその気遣う言葉ではあったが、真香はそこから逆算するかのごとく見抜いたのだ。

 

真香はココアをキーボードの隣に置き、月守を見据えて言った。

「このくらいやらせて下さいよ、月守先輩。去年の私はオペレーター初心者みたいなもので、作戦立案とかは月守先輩に頼りっきりでしたけど……。さすがに1年もいてそれだとマズいですから」

 

「……そっか」

その言葉を聞いて月守は思った。

(真香ちゃん、最近変わったな)

 

月守がここ1年で感じ取っていた真香の印象は、控えめながらも仕事はしっかりする子、というものであった。受け身になりがちではあるものの、戦闘中に情報支援を求めるとすぐに対応するというのが基本スタンスであり、あらゆる可能性を考慮して対策できるようにしつつも、決してそれを押し付けないオペレーターであった。

 

だがここ最近、具体的には大規模侵攻を終えた後から真香は少しずつ変わっているように思えた。ランク戦初戦の作戦を立てている時に、真香は自ら敵のスナイパーの位置を予測する事を提案したのだが、今までの真香ならばその作戦を考える事まではしたとしても自分から言うことは無かった。

そういった細かい変化が、最近の真香にはあった。その変化は敢えて言うのであれば、

「自立してきた」

という表現が一番近いものであった。

 

そんなことを月守は考えつつ、真香に言葉を投げかける。

「そう言ってくれるのは頼もしいけど…。あんまり無理はしないでね。来月は一高の入試あるでしょ?」

 

「模試ではずっとA判定なので大丈夫です」

 

「わお」

これには月守も再度驚いた。成績優秀なのは聞いていたが、A判定を維持し続けているのは知らなかったのだ。

「勉強もボーダーも隙なしだね。せめて勉強の方の優秀さだけでも彩笑に分けてあげてほしいよ」

 

割と本気で言う月守を見て、真香はクスクスと笑った。

「私はしーちゃん1人で手一杯ですよー。地木隊長は月守先輩にお任せです」

 

「任されちゃったよ……。まあ、それは今に始まったことじゃないけどさ」

 

「あはは、そうですねぇ」

互いに苦労しているような内容だが、それでいて楽しそうに2人は笑いあって会話をしていた。そこで不意に、真香が素朴な疑問を投げかけた。

「ところで月守先輩。どうしてわざわざ何もない休日に作戦室に来たんですか?」

 

「…………」

月守はその問いかけに対して無言のまま気まずそうに視線を逸らしたあと、

「理由とかない、けど……。なんか気付いたら本部に来てた」

どこかぎこちない口調でそう答えた。

 

それを見た真香は容赦なく思ったことをそのまま口にした。

「暇でやることないのに作戦室に来るのは、ちょっとどうかと思います」

 

「そ、それは重々承知してるけど……」

 

「ちなみにですけど、午後も予定が無いとか言わないですよね?」

なぜか楽しそうな笑みを浮かべて真香は問いかけ、月守はそれにつられて苦笑いをしつつも慌てて口を開く。

「そんなわけないよ?予定あるから」

 

「ですよね。さすがにそこまで先輩は暇じゃ無いですもんね。ちなみにどんな予定です?」

なおも続く真香の追求を受け月守はとっさに、

「お見舞いに行くよ、夕陽さんの」

と、答えた。

 

「夕陽さんのお見舞い……、ですか?珍しいですね」

 

「そ、そうかもね。ほら、昨日のランク戦の結果とか一応報告しとこうかなーって思ってさ」

 

「ああ、なるほど。それもそうですね」

 

「でしょ?」

 

「はい。……ちゃんと、予定があるみたいでよかったです」

真香は笑顔であるが、今の月守には何故かその笑顔がとても怖いように感じてしまい、それから逃げるようにそそくさと作戦室を後にした。

 

*** *** ***

 

一方その頃、彩笑はソロランク戦用のブースにいて、絶賛対戦中だった。

 

仮想フィールドである市街地を駆け抜け対戦相手と対峙し、スタンダードな片刃タイプよりもリーチが短く取り回しの効くダガーナイフ状のスコーピオンを振るった。

 

「おっとっと。危ない危ない」

 

対戦相手はアタッカー1位にしてソロランキングでも1位である太刀川慶だ。彩笑の高速のナイフ捌きを、太刀川は得意スタイルである二刀流の弧月による最低限の受け太刀と回避技術で凌ぐ。

 

「くっ……」

スピードでは勝っているにもかかわらず攻撃を捌かれ続け、彩笑の攻撃が少しだけ乱れた。太刀川はその隙を見逃さず反撃に出る。

 

キィンッ!

 

弧月とスコーピオンがぶつかる甲高い音が鳴り響いたと思えば、彩笑の態勢は崩れていた。彩笑が放つ連撃の最中の一太刀に太刀川は完璧にタイミングを合わせて弾いたのだ

 

「あーもう!()()()!」

 

彩笑は悔しそうに言い、

 

「まだまだだな」

太刀川はどこかまったりとした声でそう言った。口調こそまったりとしているがその間にはもう、2本の弧月による猛攻が始まっていた。

 

スピードでは彩笑が勝っているが、逆にその他の分野……、単純な攻撃力や剣術の技量などは太刀川の方が上である。

 

持ち前のスピードを生かした回避技術で太刀川の攻撃を凌ごうとするものの、ソロランク1位の強さは伊達ではなく、彩笑のトリオン体に徐々にだが斬撃が決まる。そしてついに回避しきれなくなり思わず彩笑は受け太刀を取った。

 

だが太刀を受けた瞬間、スコーピオンが砕け散った。

 

太刀川の使う万能型ブレードである弧月に比べ、彩笑の使う軽量型ブレードであるスコーピオンは強度という点で大きく劣る。ゆえにこのように剣戟になり斬り合えば、スコーピオンは破壊されることが多くなり不利になる。

 

「やっば!」

思わず彩笑はバックステップを踏んで太刀川から大きく距離を取りスコーピオンを再展開した。

 

だがその瞬間を太刀川は逃さない。

 

彩笑のバックステップと同じタイミングで太刀川は弧月を構えており、スコーピオンを再展開したのと全く同タイミングでオプショントリガーを起動した。

 

「旋空弧月」

 

彩笑のチームメイトである天音も愛用する弧月専用オプショントリガー「旋空」。日頃から見慣れたその伸びる斬撃が容赦なく彩笑に襲いかかった。

 

「っ!」

回避を試みるも一歩……いや、半歩間に合わず彩笑の戦闘体は切り裂かれて、視界が大きくブレた。

 

それと同時に勝者と敗者が決まったことを知らせる音声が両者に届き、試合が終了した。

 

 

 

 

 

 

 

「太刀川さんやっぱり強い〜……」

 

「はっはっは。後輩にはまだまだ負けらないからな」

試合を終えた2人は小部屋から出てブース内で休憩していた。それぞれ自販機で買ったココアとお汁粉を飲みつつ、意見を交わす。

「36対14か……。まあ、こんなもんだろ」

 

「むぅ。前半は割りと互角だったのにー」

 

「地木の新技がやっとモノになってきたからだな。でも後半は集中力が切れたのか?動きが単調になってたぞ?」

太刀川の指摘を受け、彩笑は気まずそうに視線を逸らしつつ答えた。

「その……。新技をもっとスムーズに使えるかと思っていろいろ試そうとしてたんですけど……。上手くいかなかったです」

 

「あー、なるほど。最後の勝負の()()()ってそういうことか」

 

「はい」

 

「なるほどなるほど。でも確かに、あのタイミングで決まったら面白そうだな……」

 

「でしょでしょ!」

自分の発想に理解を示してくれた太刀川を見て彩笑は嬉しそうにそう言ったが、

「でも特定の技を狙いすぎて動きが鈍くなるのは本末転等だろ」

 

「うー……。も、もっと練習するし」

すぐに厳しい指摘をされて、再度視線を逸らした。

 

年相応にというか、子供じみた彩笑の態度を見て太刀川は笑った。

 

 

 

「次の試合は少し厳しそうだな」

互いに飲み物を飲み干したところで、太刀川がさっきまでの試合についてでは無く、彩笑たちが水曜日に控えているチームランク戦についての話題を持ち出した。

 

「まあ、そうですね。村上先輩が厄介なので厳しいとは思ってますけど」

彩笑は素直に考えを述べ、太刀川はそれをさらに掘り下げるように言った。

「村上か。純粋な実力なら、地木と村上にそう大差はないと思うが……」

 

「実力じゃなくて相性の問題なんですよ〜……。正直、村上先輩と勝負したら太刀川さんと戦うより負ける自信ありますもん」

 

「こればっかりはどうにもならんな……。ちなみに俺はどっちと勝負しても勝ち越せる自信がある」

 

「ノーマルトリガーで太刀川さんに勝ち越せるなんて忍田本部長だけじゃん。五分五分の勝負に持っていけるのもニノさんと迅さんくらいだし…」

 

「二宮か……。あ、今思い出したが、次のお前たちのランク戦の解説は二宮が担当するらしいぞ」

 

「ニノさんが……?……咲耶がボロボロに言われそう」

 

「あいつの解説は辛口だからな」

太刀川が笑いながらそう言った瞬間、

 

「お前の解説は逆にぬるいんだよ」

 

その背後から、冷たく淡々とした言葉が投げかけられた。

そこにいたのは今話題に出ていた二宮匡貴だった。下手なホラーより肝が冷えそうな場面だが、太刀川はなんてことないように言葉を交わした。

「なんだ、いたのか」

 

「悪いか?」

 

「悪いわけないさ」

何か思うことがあるのか太刀川は意味深に言うが、その隙を突くように彩笑が二宮に声をかけた。

「ニノさ……二宮さんこんにちは!じゃなくておはようございます!」

 

「ああ。休日にわざわざソロランク戦で特訓か?」

 

「休日じゃ無くてもソロランク戦には顔だしてますよー」

 

「熱心なことだな……。ちゃんと勉強もしろよ、地木。じゃないとコイツみたいになりかねん」

 

「オイコラ」

さらりと言われた太刀川は抗議しようとしたが、

「二宮の言う通りだ」

二宮でも彩笑でもない第四の人物が太刀川の背後でその言葉に答え、そのまま太刀川を組み伏せた。

 

「痛った……、って、風間さん!?」

 

「やっと見つけたぞ太刀川。二宮、発見と連絡感謝する」

太刀川を背後から組み伏せたのは、A級3位部隊の隊長である風間蒼也だった。体格こそ小柄であるが、熟達したスコーピオンの腕前と姿を消す隠密トリガー「カメレオン」を高いレベルで使い熟す上に高い指揮能力も持ち、「小型かつ高性能」を体現するボーダー隊員である。

 

なお、彩笑は以前風間からスコーピオン剣術についてとカメレオンの取り扱いについて指南を受けた事があり、一応師匠に当たる人物でもある。

 

一癖も二癖もある隊員が多い中、風間は比較的まともな部類に入る隊員である。そんな彼が出会い頭に太刀川を組み伏せたのには、ちゃんとした理由があった。

「ちょっ、どういうことですか風間さん」

太刀川は抗議するものの、風間は冷静に言い放つ。

 

「太刀川お前……。また大学の単位が危ういらしいな」

 

と。

 

ボーダー正隊員の多くは、というかほとんどが学生である。大抵のメンバーは学業とボーダーを両立させているのだが、極一部には学業面で危うい人材も存在する。

そして残念なことに、その代表格が太刀川である。20歳である彼は現在三門市立大学の学生であるが、度々留年の危機に晒されている。ゆえにそのリスクを回避すべく、太刀川には日頃からできるだけ講義への出席(聴いてるかは別として)と課題であるレポートの提出(仕上がりの内容は別として)をしっかりするようにと言われていたのであった。

 

風間の言葉に対して太刀川は冷や汗を流す。

「な、なんのことか……」

 

「裏はもう取れてる。近々提出するレポートにまだ手をつけていないそうだな」

 

「ど、どうしてそれを……!」

 

「認めたな?」

風間はそう言うなりとある人物に通信を繋いで報告をした。

「『忍田本部長、言質は取れました。太刀川を連れて行きます』」

 

『ご苦労。よろしく頼むぞ、風間』

連絡先はボーダー本部長である忍田真史だった。忍田から剣を教わった太刀川は未だに忍田には頭が上がらず、実力主義の風潮があるボーダーにおいて太刀川に堂々と物を言い従わせることができる数少ない人物だった。

 

忍田から許可を得た風間は太刀川を文字通り引きずっていこうとした。それでもなお太刀川は抵抗を見せる。

「ちょっと待ってくれよ風間さん。俺は今、地木とランク戦の途中なんだ」

 

「ランク戦?地木と?」

その言葉を受けた風間は彩笑へと目を向けた。そしてそれは何かの合図であったかのごとく彩笑はニコッと笑い、

 

「ステルスオン」

 

風間直伝のカメレオンを起動して姿を消した。

 

「なっ!ちょっ、おい!地木!」

 

「太刀川。今、オレの目に地木は見えない。適当な事を言って逃げようとするんじゃない」

何食わぬ顔で風間は言い放ち太刀川を引きずって移動していく。

 

ブースの出口に差し掛かり、その姿が見えなくなる寸前、

「地木ィ!覚えてろよ!」

太刀川はトップらしからぬ捨て台詞を吐いていった。

 

「……」

(俺はあんな奴にソロランキングで負けているのか…)

残された二宮は無言ながらもそんな事を考えていた。すると、

「太刀川さん見てると、ホント勉強って大事だなぁってしみじみ思います」

姿を消したまま二宮の隣に移動していた彩笑がカメレオンを解除してそう言った。

 

「あっさり太刀川を見捨てたな」

 

「だって、怒ったら太刀川さんより風間さんの方が怖いですもん」

 

「だな」

 

「はい」

ケラケラと笑って言い放つ彩笑を見て、二宮は近くの椅子に座って会話を続けた。

「……太刀川から聞いたようだが、次のお前たちの試合は俺が解説を担当することになった」

 

「相方はどなたです?」

 

「知らん。まだ未定だ」

 

「なるほどなるほど」

彩笑は笑顔を崩さず二宮と会話を続けた。

「二宮さんは次の試合はどんな風になると予想してます?」

 

「解説役に予習用として送られたデータは一通り目を通したが……。よほど()()()()()()()()お前たちに勝ちの目はない。そういう試合になるだろうな」

 

「あはは、はっきり言いますね」

 

「事実だ」

 

「んー、そうですね。次の試合はちょっと厳しいです」

珍しく弱音のような事を言ったが、彩笑はすぐに言葉を続けた。

「まあ、意地でも負けませんけどね」

 

「そうか」

彩笑から一度視線を外してから二宮は言った。

「……月守に言っておけ。つまらん試合はするなと」

 

「わかりました。でも、自分で言わないんですか?」

 

「そこまでお前たちのために骨を折る義理はない」

二宮はそう言い、椅子から立ち上がってブースを後にした。

 

その背中を見送った彩笑は1つ伸びを入れてから、

「さてと。太刀川さん連れてかれちゃったし、別な練習相手探さなきゃ!」

のんびりとした口調でそう言い、次の対戦相手を探してブース内をうろつき始めたのであった。




ここから後書きです。

今回は久々に真香ちゃんが生き生きしてるなーと思いながら書いてました。

先日やっと単行本15巻買えました。テンションだだ上がりでした。


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