ワールドトリガー 《ASTERs》   作:うたた寝犬

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前書きです。

あけましておめでとうございます。
2017年以上にこの2018年が素晴らしい年になることを祈りつつ、今年の初投稿をお届けします。


第8章【B級ランク戦・開花】
第68話「新しい隊服」


B級ランク戦ラウンド2を終えた翌日、平日であるため当然のように学校があり、彩笑と月守は平常通り登校した。午前中の4時間授業を乗り切り昼休みに突入し、机を並べて、ある意味1番の楽しみにともいえるお昼ご飯であるお弁当を広げたところで、彩笑はおもむろに口を開いた。

 

「新しい隊服が欲しい!」

 

彩笑の向かい側の席に座り同じく弁当を広げた月守は「また何か言い出したな、こいつ」と思いながら、それに答えた。

 

「隊服ならあるじゃん、ジャージタイプとA級なった時に仕立てた軍服みたいなやつ」

「あるけど、それとは別のやつが欲しくなったの。ほら、ジャージのやつって、こう……薄着じゃん?春夏秋は良くても、冬だと見た目寒くない?」

「トリオン体だとその辺関係無いし、冬でもジャージタイプの隊服なところ一杯あるじゃん」

「そうだけど……」

 

口ごもる彩笑を見て、月守はため息を吐いた。

「大方、玉狛の……つーか多分、遊真の隊服見て新しいの欲しくなったんだろ?」

「うわ、まさにそれ!咲耶なんで分かったの?エスパー?」

「適当。んじゃ何?仮に新しい隊服作るとしたら、遊真のやつみたいなニッカポッカにするの?」

「え?あれってサルエルパンツじゃないの?」

 

2人が弁当をつまみながら隊服についての意見を交わしていると、

 

「どうでもいいけどあんたたち、なんでその話をアタシのクラスに来てするわけ?」

 

わずかに不満そうな表情を浮かべた香取葉子が口を開いた。

 

 

 

彩笑と月守はA組だが、今いるこの教室はE組である。4時間目が終わったのとほぼ同時に彩笑はE組の教室に突撃し、

「カトリーヌ!一緒にお昼食べよ!」

ハイテンションでそう言いながら(香取の意思を確認することなく)月守と連携を取りながら早業で机を並べ替え、昼食に持ち込んだのだ。

 

 

 

香取の問いかけに対し、彩笑は一瞬キョトンとした表情を見せたあと、すぐににこやかに笑って答えた。

「カトリーヌの意見も聞きたかったからだよ」

「はあ?なんでアタシなの?」

「ほら、カトリーヌのとこって男女混合チームじゃん。他にも混合チームはあるけど、ジャージタイプじゃないのってカトリーヌのところくらいだし」

ボーダーには男女混合の部隊は珍しくないが、その多くの部隊の隊服はジャージ式である。

 

彩笑と香取の会話を聞きながら、月守は思考した。

(他のところで混合でジャージじゃないってなると、第1の方の玉狛と……ニノさんのとこか。でも玉狛の方はバラバラでフリーダムな感じだし、ニノさんとこのスーツは……二宮隊のメンバーだからこそ似合う感じがするな)

弁当の蒸しササミを食べながら考えていると、彩笑が再び話を振って来た。

 

「ねえねえ、咲耶はどう思う?」

「何が?」

「新しい隊服のデザイン。なんでもいいから意見ちょうだい」

 

いつのまにか新しい隊服を作ることが前提になっていたが、月守は半ば諦めて意見を出した。

 

「……色は黒」

「えー、また黒?ジャージも軍服も全部黒だよ?たまには違う色使おーよー」

「んじゃ何?オレンジ色のコートにする?」

「それ夕陽隊の時じゃん。ってか今更だけどあれはない。目立つからスナイプされまくったし」

 

夕陽隊時代の思い出が連鎖的によみがえる前に、月守は話題を変えた。

「そもそも、俺が何言っても最終的な決定権は彩笑が持ってるんだし、まずは彩笑が意見出してよ」

「え、いいの?それじゃあさ、男子のやつは置いといて、ボクと神音ちゃんの隊服は那須隊のとかカトリーヌのとこみたいに脚見せたい!」

意気揚々と彩笑が出した提案に対して、

 

「お前さっきジャージですら寒いとか言ってたよな?」

「アンタさっき見た目寒いから新しい隊服欲しいって言ってたじゃない」

 

月守と香取は同時にツッコミを入れた。

 

2人がかりのツッコミに凹むことなく、彩笑は自らの意見を主張した。

「それとこれは別。ボクはともかく神音ちゃんの脚、超綺麗なんだよ?細さ、形、肌艶の三拍子文句無しのパーフェクトだよ?隠すのはもったいない!」

「なに?アンタって脚フェチなの?」

「違うよ?強いて言うなら神音ちゃんフェチ!」

清々しい笑顔で言い放つ彩笑を見て、香取は呆れ顔を返した。

「ホント、アンタはあの子を可愛がるわね」

「うん!だって実際、神音ちゃん可愛いもん!カトリーヌもそう思うでしょ?」

「いや別に?そもそもアタシ、あの子のことあんまり知らないし」

「えー、もったいないよカトリーヌ。神音ちゃんの可愛さを知らないなんて、人生の半分損してる!」

 

キラキラした表情でそう言う彩笑を見て、これは何を言っても無駄かもしれないと香取は思った。

 

彩笑は弁当のメインディッシュたるエビフライを幸せそうな表情で食している間に、香取が月守に話しかけた。

「アンタら昨日ケンカしたって聞いたけど、案外普通ね」

「昨日……ああー、ソロランク戦のやつ?」

「そう。夜に雄太から『どうしよう!地木さんと月守くんがケンカしてるよ!』ってコメント付きでアンタらのランク戦の動画送られてきたわ」

「ケンカしてるって……ランク戦の動画って基本音声ないから普通の戦闘にしか見えないだろ?」

「なんか下の方に字幕で色々セリフが出てたのよ。『ねえ!ボクとあの子のどっちが大事なの!?』『待ってくれ誤解だ!話を聞いてくれ!』みたいな感じのやつ」

「おいなんだそれ、全然違うぞ?」

「そんなとこだろうと思ったわ。多分、誰かがふざけて作ったやつね」

「よし、作った奴見つけたら軽くシメる」

月守は意気揚々とそう言うが、後にその動画を作ったのが酒に酔った女性エンジニアであることを知り、逆にシメられたのはまた別の話。

 

「まあ、それはそれとしてアンタはどうなの?」

「何が?」

「いや、隊服のデザイン。まさかアンタも脚出すつもりなわけないでしょ?」

「そりゃあね。というか香取、相談に乗ってくれるんだ」

「ただの気まぐれよ」

「あはは。それでも助かるよ、ありがとう」

 

やんわりとした笑顔でお礼を言った月守は、少しだけ考えるそぶりを見せてから答えた。

 

「……と言っても奇抜なデザインじゃなきゃいいくらいで、特に希望は無いかな。ああ、でも、手袋は欲しいかも」

「手袋?ああそういえば、アンタ達全員素手よね」

「そうそう。逆に香取のところは全員手袋ってかグローブだっけ。やっぱりこう……感覚的なやつが素手とは違うの?」

「アタシはあってもなくてもいいけど、麓郎はつけてる方がしっくりくるって言ってたわ」

「そっか。握った感じが安定するのかな……」

「かもね。てか何?アンタ、ガンナーとかアタッカーに転向すんの?」

「え?しないよ?シューターに絞る」

本気のキョトン顔で答える月守に対して、

「アンタ何にも持たないのに何で手袋欲しいの!?」

香取は思わず本日2度目のツッコミを入れた。

 

2人のやり取りを見て、エビフライを飲み込んだ彩笑が笑いながら会話に割り込んだ。

「手袋だけど、つけるなら咲耶だけでお願い」

「なんで?」

「だってほら、黒い隊服に手袋だと王子隊と被るじゃん」

言われて月守と香取はB級上位部隊である王子隊の隊服を思い浮かべた。

 

王子隊の隊服は黒を基調としてどことなく軍服を思わせるデザインで、戦闘員全員がグローブを着用しており、確かに見た目は似通う部分はあった。

「ね?被るでしょ?」

「まあ確かに。でもそんなこと言ったらジャージタイプなら大体被るだろ?」

「うー……他のところと被ってもいいけど、王子隊と被るのはイヤ」

王子隊と被ることを嫌がる彩笑を見て、月守は珍しいと思った。それは香取も思ったようで、弁当をちょこちょことつまみながら質問した。

「アンタも王子隊嫌いなの?」

「ん?嫌いじゃないよ?オージー先輩とは色んな人のあだ名考えたりしてるし……例えば、カトリーヌは2人で考えたやつだよ!」

「ふーん、そう。月守、アンタもう二度とこの2人を引き合わせないで」

香取は瞳の奥にうっすらと殺意を潜ませた目で睨みながらそう言い、

「善処はするよ」

困ったように笑いながら月守は答えた。

 

香取からの要望を聞き入れた月守は話を戻した。

「それで、なんで王子隊と被るの嫌なの?」

「えー、だってボクら王子隊とキャラ被ってるのに見た目まで被ったらアウトじゃん?」

「そう?」

「被ってるよー。まずボクとオージー先輩は我が道走る隊長でしょ?んで、咲耶とクラッチ先輩は冷静キャラ装いながら戦闘じゃアクセルガンガン踏むタイプじゃん?神音ちゃんとカシオンはまだまだ成長の余地ある中学生で、真香ちゃんと橘高先輩は落ち着いててスラっと背が高いお姉さん的オペレーター。ほら!全員見事に被ってる!」

彩笑は自信満々に断言し、

「言われなきゃ気づかなかった」

「因縁つけるチンピラみたいね」

それを聞いた2人は遠回しに気にしすぎだと言った。

 

「うー、そうかな……そうかなあ……?」

2人に意見を否定された彩笑はしょんぼりとしながら弁当の卵焼きへと箸を伸ばしたが、それを見た香取がワンテンポ遅れてからわずかに慌てて口を開いた。

 

「地木、ちょっと待って。何しれっと月守の弁当食ってんの?」

 

そう、彩笑が我が物顔で自然に箸を向けたのは自分の弁当ではなく月守の弁当だった。だが部下の食物に手を付けた隊長は全く悪びれることなく、

「ボクのお弁当はボクのもの。咲耶のお弁当もボクのもの!」

日本一有名なガキ大将と同じことを語った。

 

その物言いを聞いた香取は弁当を食べる手を止め、げんなりした目を月守へと向けた。

「……アンタさあ、いい加減隊長を甘やかすのやめなさい」

「何回か注意したけど、言い終わった直後に『今日のメインは鶏肉だったから、明日は魚メインの弁当な!』って具合にリクエストされるから諦めた」

「清々しいレベルのワガママね。ってかアンタ、自炊してるんだ」

しかし香取の呟きに対して、彩笑が反応した。

「咲耶ー、それ言ったのボクじゃなくて夕陽さん!」

「夕陽……アンタ達の前の部隊の隊長の……。弁当はあの人のリクエストだったわけね?」

「そうだよ。ボクは『卵焼きはもうちょっとフワッとしてる方がいい!』とか卵焼きについてしか言ってないもん」

「やっぱアンタもリクエストしてんじゃない!」

思わず机を叩きながら香取はツッコミを入れた。

 

彩笑は強奪した卵焼きを食べながら自らの言い分を語った。

「だって咲耶の作る卵焼き、超美味しいんだよ?料理の腕自体はそこそこだけど、卵メインの料理になればツーランクくらいレベル上がるよ?咲耶の作る卵焼きの美味しさを知らないなんて、カトリーヌは人生の半分損してる!」

「アンタこの10分でアタシの人生全否定したわね……」

自由気ままに振る舞う彩笑を相手にすることに疲れ、声のトーンが下がってきた香取を前にして彩笑は閃いたような表情を見せた後、再び月守の弁当に箸を伸ばして卵焼きを1つ摘んで香取の口元へ近づけた。

「ちょっ、地木……!?」

「一口食べてみてよ」

「食べてみてよって言われても……」

「程よい塩加減が絶妙だよ?」

「アタシ、卵焼きは甘い味付け派なんだけど……」

「まあまあ、ここは騙されたと思って食べてよ〜」

公衆の面前で友人の弁当を食べさせられるという状況に香取は気恥ずかしさを覚え、月守に助けを求めようとして視線を向けたが、

「香取、食べたら感想ちょうだい」

月守に至極真面目な表情でそう言われて、逆に行動の選択肢を潰されてしまった。

 

それでも尚、強引に拒否するという選択肢もあったが、

「カトリーヌ。あーんして、あーん」

屈託無く笑いながら卵焼きを差し出す彩笑に根負けし、腹をくくって卵焼きを頬張った。

 

もぐもぐと数回味わって咀嚼し、ごくっと卵焼きを飲み込んだところで、

「ね?美味しいでしょ?」

と、彩笑が柔らかな笑みで問いかけた。

 

その問いかけに対して香取はたっぷり間を開けてから、

「……甘い味付け派から寝返ってもいいくらいには」

ほんの少しだけ悔しそうにそう答え、それを聞いた2人は小さく笑みをこぼした。

 

 

しばらく3人は弁当を食べ進め、香取が大方を胃袋へと納めたところで1つ疑問を投げかけた。

「月守、アンタはそもそも女子2人が脚見せるような隊服に賛成なの?」

「うーん。ノーコメントっていうのは……」

「ダメ、認めない。答えなさい」

有無を言わさず香取の物言いに対して、月守はかなり躊躇ったそぶりを見せてから、

「……節度をちゃんと守った範囲なら、良いと思います」

ぎこちない言葉遣いでそう答えた。

 

しかしその答えを聞いた女子2人は、月守に厳しい視線を向けた。

「咲耶、なんか……裏がある優等生っぽい答え」

「男子なんて所詮そんなもんよ地木。真面目に見えても、どうせムッツリスケベなの」

「咲耶ムッツリだったんだ……」

「地木、英語でムッツリとかそういうニュアンスの言葉ないの?」

「んー……『You are lustful at heart!』かな。キミ実はスケベだよね、的なニュアンス」

「アンタなんで他の教科壊滅なのに英語だけ出来るわけ?」

「他の教科が壊滅になるくらい英語勉強してるもん!」

「捻りもない答えね」

真面目に答えた結果、厳しい指摘をされた上に英語でなじられた月守は静かに弁当を片付け始めた。

 

「もう食べ終わったの?」

香取の問いかけに対して月守はいつもと変わらぬ様子で答える。

「まあね。4時間目が隣のBクラスと合同体育だったから腹減ってた」

「ああ、そういう……って、何気に地木も食べ終わってるし」

気づけば香取は1人だけ弁当が残っている状態だった。

 

そうして2人が弁当を片付け終えた丁度その時に、声をかけられた。

「ああ、月守、やっと見つけた。探したぞ」

月守が声をかけられた方向を向くと、そこには玉狛支部所属のA級隊員、烏丸京介がいた。

「お、どうした京介」

「用事があったから探してたんだが、なんでここにいたんだ?」

「昼飯」

「いや、昼飯なのは見れば分かるが……てっきり自分のクラスか食堂にいると思ってな」

「文句はこのちびっこいのに言ってくれ」

「誰がチビだよ、このムッツリ」

「ムッツリ……?」

 

会話の流れを知らない烏丸は言いながら首を傾げたが、月守は「こっちの話だから気にするな」と言って本題を尋ねた。

「それで京介、用事ってなんだ?」

「ああ……。月守、今日ウチの支部に来てくれるか?」

「今日?まあ、今日は夕方空いてるからいいけど……なに、俺なにかやらかしたっけ?」

「やらかしたというか……ほら、大規模侵攻の時にお前が迅さんに丸投げした手柄があるだろ?それ関連だ」

「ああ〜」

脳裏に大規模侵攻での戦いが蘇り、烏丸の要件を月守は大体察した。

「それは確かに行かなきゃな」

「来てくれるか?」

「おお、行く。学校終わってからでいいよな?」

「当たり前だろう。学校サボるなよ」

クギを刺された月守は苦笑いをした後にゆっくりと立ち上がり、

「んじゃ、そっちの支部行く代わりに……」

そっと、烏丸にしか聞こえないように近づいて耳打ちし、1つの条件を提示した。

 

それを聞いた烏丸は訝しむ表情を見せた。

「別に構わないぞ」

「おー、サンキュ!」

ニコっと、普段よりもどことなく幼く年相応の少年のような笑顔でお礼を言った月守は、烏丸が購買で売っているパンを手にしている事に気付いた。

 

「もしかして昼飯まだか?」

「まあ、先に要件を伝えようと思ってな」

「なんかすまん」

友人の昼飯を遅らせてしまったことに対して、月守は謝罪した。

 

そして謝罪したところで月守が彩笑に軽く、それでいて素早く足蹴された。身に覚えがない足蹴を受けた月守は彩笑に視線を向けるが、その彩笑は香取を指差していた(香取からは彩笑の身体が邪魔で見えない角度)。

 

彩笑の指先に導かれ自身の視界に香取を捉えた月守は、彼女の表情が烏丸が登場する前までとはまるで違うことに気付いた。

嬉しそうな幸せそうな気恥ずかしそうな…、言ってしまえば「恋する乙女」という表現がピッタリな甘酸っぱい表情をしていた。

 

(ああそういえば、香取は鳥丸狙いだって噂聞いたことあるなあ……)

 

そこまで思い出した月守に向けて、彩笑が珍しく人の悪い笑みを浮かべながら、何やら意味ありげな目配せを送った。

 

その笑みと目配せの2つで、3年間相方を勤め続けた月守は彩笑の意図を察し、白々しい笑みを見せた。

「よし彩笑、昼ご飯も食べ終わったし、さっさと退散するか」

「そうだね。あれ?とりまる、お昼まだなの?」

「ああ。というかそれ、さっきも言…」

「だったら丁度いいね!」

烏丸が話すのを遮る形で言いながら彩笑は立ち上がり、

「とりまる、ここ座ってカトリーヌと一緒にご飯食べなよ!」

今日一番の笑顔でそう言い放った。

 

「ち、地木!?ちょっと待って!」

慌てて彩笑に異議を唱えようとした香取だが、優れたサポート技術を持つ月守がそこへ割り込んだ。

「今から他のとこ行っても大体のやつ食べ終わってるだろうし、丁度いいだろ。食べてけ食べてけ」

「つ、月守まで……!?」

ボーダー屈指の連携を誇る2人の口撃を受け追い込まれて劣勢となった香取だが、そんな彼女へ容赦なく、

 

「確かに、一人で食べるのもな……香取、良かったらここで食べていっていいか?」

 

ボーダーが誇るイケメン烏丸はトドメの一言を告げた。

 

元A級、現A級3人がかりの口撃を受けたB級上位部隊の隊長は、

「…うん。い、いいよ…」

普段の尖った態度とは打って変わった、しおらしい雰囲気で烏丸の頼みを受け入れた。

 

一連のやり取りを見て作戦が上手くいった2人は内心ニヤニヤニヤニヤニヤと笑いたい気持ちで一杯だったが、そこをグッと堪えて、

「それじゃカトリーヌ、またね!今日は相談乗ってくれてありがと!」

「京介、じゃあ放課後にまた」

それぞれそう言って、Eクラスの教室を後にした。

 

 

 

 

この後何があったのか、2人は知らない。だがその日の夜、月守が混合チームとして担当した防衛任務にてメンバーだった香取隊の三浦雄太は、

「今日のヨーコちゃん、なんかすっごい機嫌よかった!」

と、幸せそうに語っていたため、ひとまず上手くいったのだろうと月守は思った。

 

 




ここから後書きです。

ボケ倒す彩笑と月守に突っ込む香取という形の68話でした。
スマートフォンでもパソコンでも、予測変換で単語とか言葉出るじゃないですか。本編書いてる時、「恋する乙女」って打とうとしたら「こいするおとめ」って最後まで打ち込まないと「恋する乙女」って予測が出てこなかったのがなんか軽くショックでした。『こいするお』まで打ち込むと『恋する俺』という自分に酔ってるの?と言いたくなるワードは出てきました。

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