真に美味しものを食べた時、美味しい以外の感想は要らない。それが世の中の真理の1つだと思えるほど、彼らが食べたケーキは美味だった。
「はー…、幸せ。咲耶、さっきはバカって言ってゴメンね。ケーキ超美味しかったから許す」
「あはは、許された」
幸せそうな表情を見せながら椅子にもたれ掛かりながら彩笑はそう言い、月守は穏やかな口調で答えた。満足そうな雰囲気の中、真香がほんの少し不満げに口を開く。
「確かに美味しかったですけど…。このケーキの味を知っちゃったら、他のケーキ美味しく食べられないですよ。月守先輩、どうしてくれるんですか?」
「ええー…。真香ちゃん、それは理不尽じゃない?」
「理不尽じゃないです。というわけで、これから定期的にこのケーキ奢ってください」
「破綻しちゃうから勘弁して…」
割と真剣に破綻すると言う月守を見て、彩笑と真香は小さくクスっと笑った。2人につられて笑みをこぼした月守に向けて、天音は遠慮がちに声をかけた。
「月守先輩、あの…、ケーキ、すごく美味しかった、です。ありがとう、ございます」
ぺこりと頭を下げてお礼を言った天音を見て、月守は軽く手を振って言葉を返した。
「どういたしまして。今日の主役に喜んでもらえて何よりだよ」
言いながら月守は天音の頭を撫でたいと思ったが、席に着いた状態では手が届かないという物理的な理由で諦めた。
ケーキの余韻が一息ついたところで、彩笑は何気なく提案した。
「ちょうど今みんな揃ってるし…、次の試合の作戦会議でもしない?」
彩笑の提案を受けて、
「それいいね。やろっか」
「さっき予習も終わりましたし、私も賛成です」
「私も、やりたい、です」
3人はそれぞれ肯定の言葉を返し、2日後の試合の作戦会議が開催された。
真香がオペレート時に使うパソコンを操作して作戦室のモニターに対戦相手の画像を表示し、3チームの確認から始めた。
「次の試合も、前回と同じ4つ巴戦です。相手は諏訪隊、荒船隊、柿崎隊で、ステージ選択権は柿崎隊が持ってます」
相手チームのメンバーを思い浮かべたところで、月守がまず意見を出した。
「前回と違うのは、どのチームにも攻撃の軸になるエース的存在を置いてないことかな」
「その通りです。一応どのチームも隊長が攻撃の主軸という見方ができますけど、かといって隊長を倒しても露骨な攻撃力ダウンには繋がらないと思います」
作戦参謀となる2人の言葉を聞き、彩笑は思ったことを素直に口にした。
「…ってことは、前の試合と違ってエースを抑えたりとか避けたりとかしなくて済むってことだよね。その方がなんとなくボクは好きだよ」
効率か非効率ではなく好きか嫌いかで判断する辺りが彩笑らしいと月守は思いながらも、1つ意見を付け加えた。
「彩笑の言うように、前の試合みたいにエースを優先的に狙う必要はないけど…。かといって、倒すことに優先順位がないわけじゃないよ」
月守の意見が今ひとつピンとこなかった天音は、小首を傾げて問いかけた。
「えっと…、月守先輩。相手にエースが、いないなら、誰を倒しても、同じじゃ、ないですか?」
「同じじゃないんだよ、神音。各隊には優先して倒すべき隊員が、それぞれ1人ずついる。…真香ちゃん、誰だか分かるかな?」
話を急に振られた真香だが、淀みなく答えを口にした。
「諏訪隊は笹森先輩、荒船隊は荒船先輩、柿崎隊は虎太郎くんです」
真香の答えを聞いて月守はニコリと笑った。
「正解…、というよりは、俺と同じ考えだね。さて、神音。なんで狙うならこの3人なのか、分かるかな?」
質問された天音はモニターに映る彼らの画像を見ながら、頭を悩ませた。考え込む天音を見て、真香が助け舟のつもりでモニターに相手のトリガー構成を表示したところで、天音は3人の共通点に気付いた。
「あ…。その3人、同じ隊の人と、トリガー構成の感じが…。それぞれ1人だけ、違いますね」
天音の言うように、諏訪隊は笹森以外の2人はショットガン型アステロイドを装備したガンナー、荒船隊は荒船以外の2人はイーグレットメインの純スナイパー、柿崎隊は虎太郎以外の2人はアサルトライフルと弧月を装備したオールラウンダーとなり、名前が出た3人は他のメンバーとのトリガー構成の毛色が違っていた。
天音の出した答えに、月守と真香は頷いた。
「そう、それなのしーちゃん。そこが…、というよりは、戦闘スタイルが違うってところがミソなの」
「トリガー構成が同じ隊の2人と異なるこの3人は、その隊の戦闘の幅を広げてるんだ。笹森はガンナー2人を守る盾役か相手の守りを崩すアタッカー役。荒船さんは純粋なスナイパー役と弧月を持てば近接戦闘ができて敵の注目を引く囮役。虎太郎は近距離でアタッカーとガンナーの役割を担ってる。攻撃力じゃなくて、攻撃の幅を広げてるキーマンだよ」
2人の意見を聞いて納得した様子を見せる天音だが、そこへ彩笑が補足を挟んだ。
「まあ仮にその3人を追い出せたとしても、諏訪隊の火力は十分怖いし、荒船隊の狙撃はキツイし、柿崎隊の柔軟さはまだまだ健在だからね。倒せたとしても油断しちゃダメだよ」
「はい」
4人は言葉を交わしてお互いの考えを共有し、認識を深める。倒す相手に優先順位をつけたことで、彩笑は疑問を投下した。
「ステージはどこになると思う?選択権持ってるのは柿崎隊だけど、どこ選んでくるかな?」
ステージ決定権はチームランク戦において順位が1番下のチームが持つ。今回は柿崎隊が該当するため、他の3チームは柿崎隊が選びそうなステージを想定して打ち合わせを行わなければならない。そのため彩笑の疑問は当然のことなのだが、ステージに関する話題になった瞬間、月守は苦悶の表情を浮かべて頭に手を当てた。
「それがさ…、全っ然予想できないんだよね…」
堂々と月守がそう宣言すると、
「ああ、やっぱり…。月守先輩もそうでしたか…」
真香も疲れた表情を見せながら、力無くそう言った。
お手上げ状態の作戦参謀2人を見て、彩笑は慌てて理由を尋ねた。
「ふ、2人ともなんでそんなに疲れてるの!?ザキさん先輩のとこの予想立てるの、そんなに難しいの!?」
「「難しい」」
声を揃えて2人は答え、それぞれその理由を語った。
「そのチーム毎に差はありますけど、ランク戦のステージを選ぶにはいくつかの基準になる考えがあるんです。大別すると、自分たちの戦闘スタイルを活かしやすいステージにするか、相手チームが苦手とするステージにするか、です」
真香の意見を聞き、月守がそこへ自らの意見を足す。
「今回、他のチームがステージ決定権を持ってると仮定すれば…。諏訪隊は連携しての近〜中距離戦闘メインで遠距離戦が苦手、だから連携しやすいというか合流しやすいような狭めのステージかつ立体的で狙撃を制限できそうなステージ…、市街地Bあたりって予想できる。荒船隊はその逆みたいなものだから、射程を活かせる河川敷あたり…。こんな風に、長所短所を考えれば予想は立つんだよ。だけど…」
月守は一度会話を止めて間を作って一息取り、真香と顔を見合わせてから声を揃えて、
「「柿崎隊はなんでも出来るから予想が立てられない」」
と、結論を述べた。
柿崎隊の戦闘員は、隊長の柿崎国治と隊員の照屋文香が弧月とアサルトライフルを用いるオールラウンダー2名と、ハンドガンを主力にひつつも弧月を使った近接戦闘もこなせるガンナーの巴虎太郎の計3名。3人とも近距離も中距離も熟せる装備と能力を持つため、幅広い状況に対応することができる。
万能な編成の柿崎隊の出方が読めず頭を悩ませる月守を見て、彩笑はクスクスと笑った。
「咲耶をここまで悩ませるなんて、ザキさん先輩すごいね」
「…うん、柿崎さんは凄いよ」
月守は静かな声だが、力強く柿崎のことを凄いと言い切った。
実際、柿崎は凄い人だと月守は思っている。
理由はいくつかあるが、その最たるものは彼が掲げるチームの戦闘スタイルだ。柿崎隊はチームの連携を大事にしている。そのため試合開始後は合流を優先し、合流後も無茶をしてメンバーが欠けるような危ない橋を渡らず、勝負所まで粘り強く耐えて勝負に出る。しかし、メンバーが欠けることを避けるあまり格上相手には強すぎる警戒を示して勝負所を逃す時がままにあり、ランク戦での勝利はなかなか得ていない。
勝ち星を重ねることができない柿崎隊のことを臆病だと言う訓練生がいるが、月守はそんな訓練生を見る度に彼らがいつの日か考えを改めてくれればと願っていた。
彼らはきっと…。
防衛任務の最中に、味方がベイルアウトしてしまった時の恐怖を知らない。
市民の安全を…、命を守る境界線に自分1人だけが残され、ネイバーと戦う時の怖さを知らない。
共に戦っていた仲間が、どれだけ自分に安心を与えていたのかを知らない。
街の平和を守りきった上で、仲間を誰1人犠牲にせずに防衛任務を終わらせる難しさを知らない。
防衛任務にて柿崎隊は毎回誰1人として欠けずに帰還していることを知らない。
それが1年以上続いていることを知らない。
普段の何倍…、かつての第一次侵攻の8倍もの物量のトリオン兵と、イレギュラーな人型ネイバーとの戦いで1人として欠けずに最後まで戦い抜くことが、どれだけ困難なのかを知らない。
開戦から終戦まで…、常に戦力として最前線に立ち、オールラウンダーの特性を活かしてどんなチームとも連携が取れる柿崎隊の頼もしさを、知らない。
常に戦場で、全員が揃っているということの凄さを、柿崎隊を臆病だと言う彼らは知らないのだ。
柿崎隊の姿を頭に思い浮かべた月守は、静かな声のまま言葉を紡いだ。
「何でもできて、フルメンバーでの帰還率が異様に高い…。柿崎さんの…、というか柿崎隊の凄さは合同チームとか防衛任務で発揮されるタイプだよ」
月守が呟いた柿崎隊への賞賛を聞きいた彩笑は元気よく頷いて肯定した。
「うん、それはボクも思った!…もしも、トリオン体にベイルアウト機能が無かったらとしたら、毎回誰1人も欠けずに帰ってくるってことのすごさが伝わるのにね」
「あんまりしたくない仮定だけどな…。今後、柿崎隊がこの戦果のままA級に昇格したらさ、『生きて帰ってくるから』って理由で遠征任務に行けると思う」
「確かに!」
手放しで柿崎隊の良さを語り合う先輩2人を見て、真香は苦笑いしながら嗜めるような口調で声をかけた。
「地木隊長に月守先輩が言うように柿崎隊の凄さは分かってますので…、そろそろ話を戻してもいいですか?」
2人はどことなくバツが悪そうに会話をやめたところで、真香が脱線する前の話題を口にした。
「ステージ選択権を持つ柿崎隊がどこを選んでくるかなんですけど…。近距離に中距離、加えてそれなりのレベルで機動力と防御力を持っていて遠距離戦闘に持ち込むことが難しい柿崎隊に、布陣的な死角はほぼ無いです。なので、柿崎隊にステージ的な得意不得意は無いと思います」
「そうだね。自分達に得意不得意が無いなら、相手の苦手なステージを選べばいいって話になるけど…」
先程真香が話した基準に当てはめて話を進めた月守は、ここで言葉に詰まった。
そのことを不思議に思った彩笑と天音だが、すぐにその理由に気付いた。
「あ…。今回の、チーム…、得意不得意が、バラバラ、ですね」
今回、柿崎隊から見た対戦相手は3チームとも戦闘スタイルが異なるのだ。天音の言葉に続き、彩笑が軽く唸ってから口を開いた。
「近めの距離でバンバン撃ってくる諏訪隊に、遠くから一撃必殺狙ってくる荒船隊。…ねえ、他の隊から見たボクたちってどんなチーム?」
他所から見える自分達の姿を疑問に感じた彩笑の問いかけには、月守が答えた。
「ランカークラスの彩笑がエース貼ってる、近距離型のチームじゃないかな?神音はオールラウンダー気味になってきたけど、多分みんなからはまだアタッカーっていう印象が強いだろうし、俺だって2人のサポート役だしね」
「うーん、多分そんなことかな!」
月守によるチーム評価に納得した彩笑は、ニコッと笑いながら、それを良しとした。
実際は、
「毎試合毎試合何をしてくるか予想が立てにくいからあんまり戦いたくない」
という評価があることを、4人は知らなかった。
話し合いが難航する中、口数が少なかった天音が意見を出した。
「あの…。柿崎隊が、選んでくる、ステージの予想、ですけど…。市街地Cは、どうでしょう?」
市街地Cという予想を聞き、真香がすぐに反応した。
「昨日の玉狛が取った作戦と同じことを、柿崎隊がしてくるかもってこと?」
「うん…。どう、かな?」
確かめるように真香の目をしっかりと見つめて天音はそう言ったが、真香は軽く頭を掻いて答えた。
「それは私も考えなかったわけじゃないけど…。荒船さんって超真面目だから、多分次戦までには何かしら対策を立ててくると思うんだよね」
「うーん、そうだね。俺も同じ考えだ。神音の予想は悪くないけど、多分柿崎さんも荒船先輩の性格を見抜いて同じ考えになると思うから、市街地Cは選ばないと思うよ。…まあ、柿崎さんが市街地Cで荒船隊を抑えられる確信がある作戦を持ってるなら、話は別だけど…」
2人の意見に納得した天音は、
「そう、ですね…。予想って、難しい、です」
無表情ながらも、どことなく落ち込んだ様子でそう言った。
話し合いが難航して空気が重くなる中、彩笑が「じゃあさ!」と前置きしてから意見を出した。
「予想は、市街地Aで立てようよ!」
「市街地A…、ですか?」
発言の意図を読みきれない真香が不思議そうに尋ねると、彩笑は頷いてから理由を語り始めた。
「うん!市街地A!だってさ、市街地Aって本当に基本になるステージでしょ?だからここで、柿崎隊がどう動くかなって予想するの。白兵戦メインで来るのかなー、とか、どっかのチームを狙いにきてるなー、とか色々考えて、作戦の骨組みにしちゃえばいいじゃん!本番で市街地Aを選んでこなくても、そのステージの特徴から白兵戦狙いじゃないとか、特定のチームに照準合わせて来た!とか判断して動けば良いと思わない?細かいところは本番で調整ってことで、さ!」
楽しそうな笑みを浮かべた彩笑は意見を言い終え、作戦参謀である2人の反応を待った。
わずかな間を開けてから、
「…それいいね、採用」
「地木隊長頭柔らかいですね」
月守と真香は感心したように言い、
「ふっふーん!どんなもんだい!」
彩笑は渾身のドヤ顔を返した。
ステージが仮決定ながらも市街地Aとなったことで、真香はパソコンを操作してモニターに市街地Aのマップを映し出した。
「改めて見ると、可もなく不可もなくって感じのステージですね」
独り言のような真香の言葉を、天音が拾った。
「うん。…、試合が始まったら、荒船隊以外は、合流…、かな?」
「基本そうだと思うよ。…柿崎隊、諏訪隊が合流、荒船隊がバッグワーム起動して狙撃地点に移動…。あ、一応市街地Aでの狙撃ポイント、出しますね」
真香は手早くキーボードを叩き、ラウンド1で使ったスナイパーの有効な狙撃地点を表示した。
ある程度有効な地点から伸びるいくつもの射線を見て、彩笑は「ふにゃー」と言いながら息を吐いた。
「改めて見ると、スナイパーの射程長過ぎ!ズルくない!?」
「見方の問題だろ。向こうだってきっと、至近距離でとんでもない速度で動き回れる彩笑のことズルいって思ってるぞ」
「それはそうかもだけどさー」
ぶーぶーと不満(のようなもの)を話す彩笑をよそに、真香はジッとマップを見つめて思考を続けていた。そして、
「ステージの特徴を無視すれば…、色々と見えて来ますね」
考えがまとまったところで、それを一つ一つ口にしていった。
「柿崎隊が合流したとして、そこからの選択肢は…。
①他チームに接近しての白兵戦。
②他チームとある程度距離をとっての射撃戦。
③他チームの出方を見るために待機。
④そもそも合流しないで単騎戦。
案外、初手はそのくらいであんまり多くはないと思います」
真香が提示した4つの選択肢を聞き、月守は頭の中で検証しつつも意見を口にした。
「初手は、そんな感じだろうね。極端だけど、作戦なんて突き詰めていけば突撃、奇襲、待ち伏せ、逃避のどれかに分類されるし」
「本当に極端ですね…。ちなみに月守先輩、その知識の出所は?」
「経験則。チームランク戦黎明期から色々試して、身についたこと。ちゃんと勉強すれば、また違うとは思うから、信憑性は薄いけどね」
「いえいえ、十分参考になります」
参考になると思った事を真香が手早くメモに残したところで、彩笑が気付いたことを口にした。
「でもさ、律儀に柿崎隊が合流するのを待つ理由なんて無いよね?むしろ合流されたら厄介なんだし、合流前にどうにか崩せた方がいいよね?」
「わざわざ向こうの戦力整うまで待つ必要無いし、俺は彩笑に賛成だよ」
彩笑の意見に同意した月守は、そのまま言葉を続ける。
「理想としては、相手の3チームがそれぞれの布陣を整える前に、最初に出た優先して倒すべき隊員を倒して優位を取ることかな。開戦直後になるべく早く、俺たち3人が周囲にいる隊員を把握して単独であっても奇襲をかけて先手を打てれば、今回の序盤としては満点だと思うよ」
「よし、んじゃ序盤はそれで行こっか。神音ちゃん、真香ちゃん。それでいい?」
目を細めて柔らかな笑みで彩笑は問いかけ、
「はい、それで良い、です」
「それでいきましょう」
2人は躊躇うことなく、そう答えた。
*** *** ***
序盤の方向性が定まった後は、チームの意見は滞ることなくまとまっていった。奇襲が上手くいった場合、失敗した場合などを含め、いくつかの場面や展開を予想してそれぞれに作戦を立てていった。
そうして作戦会議が終わると、彩笑は軽く手を叩いた。
「じゃあ、だいたいこんなところかな。作戦は色々話したけど、結局は試合が始まらないとどうなるか分かんないから、当日は臨機応変に行こうね」
珍しく隊長らしい発言をした彩笑を見て、3人はそれぞれ頷いた。
その反応を見て彩笑は席から立ち上がり、ググッと伸びをした。
「よーし、それじゃあ今日はもう解散!次に会うのは、明日の夕方の防衛任務の時だね!」
「あ、忘れてなかったんだ」
茶化すような口調の月守の言葉を聞き、彩笑はわざとらしく不満げな表情を作った。
「忘れるわけないじゃん。正隊員はランク戦よりも防衛任務が大事なんだから!」
「そうだったね。…さてと、それじゃ俺は、その大事な防衛任務に行こうかな」
「ん、行ってらー…。って、咲耶最近、また防衛任務の回数増やしてきてない?」
「まだ週5くらいだよ」
「ちゃんとセーブしてよ?咲耶ほっとくと週7にしちゃうじゃん」
「1回、俺の申請ミスと上の確認ミスで週8とかあったよ」
「どんなミスなのそれ!?」
1週間という時間の枠組みを越えたエピソードを聞いた彩笑は思わずギョッとした。
会議解散後もそうして彼らは会話を弾ませ、月守が防衛任務に出るギリギリの時間までそうしていた。
ここから後書きです。
個人的に敵チームの攻略方法を話し合うことが好きなので、今回みたいな話になりました。
ケーキ食べるだけだと超短い話になったので。
ケーキと言えば。
年明けに友人達と集まる機会がありました。その中にその日誕生日だった人がいたので、私はケーキを買っていきました。そしてそのケーキを食べてる時、久々に会った友人に声をかけました。
「久しぶりだね。ケーキ、どう?」
「うーん、あんまりよくねえな」
友人の返しに私は軽く驚く。甘いもの苦手だったっけと思いつつ、友人の言葉は続きます。
「年末にでかい仕入れはあるけど、それ以外だとあんまりよくはねえんだよなあ」
(……年末にでかい仕入れ?クリスマスケーキのことかな?)
などと疑問に思う中、私は気付きます。
(ああ、『ケーキ』じゃなくて今自分がいる業界の『景気』の話をしてるのか!)
訂正しようか迷いましたが、結局直せないまま会話は終わりました。
日本語って難しいですね。