蛟side
ある日のことだった。オロチ軍の幹部である私は同じ幹部の女郎蜘蛛と赤カブトと共に主君であるヤマタノオロチ様に呼び出されて大広間に向かっていた。
「へへ、待ちくたびれたぜ。大将が俺らに何の用があるのか楽しみだよな蛟~~」
嬉しそうに赤カブトは話しかけてきた。まぁ、しばらくの間何もなかったせいで暴れることができずに不機嫌だったこいつには嬉しい事か・・・。
「・・・幹部全員呼ばれると言うことは、余程の事であると言う意味だ。今まで我慢して溜めていた分をスッキリするように暴れるがいい」
「おう!!」
「広間に着いたわ。無駄口は終わりよ」
女郎蜘蛛に言われて私は赤カブトとの話をやめた。扉がゆっくり開き中に入るとオロチ様がいた。三人の中から代表として尋ねる。
「お呼びでございますか?オロチ様」
「ああ、これからお前達にはそれぞれ別々に行動してもらう」
そう仰るとニ体の黒天邪鬼にこの国の地図を持って来させて左右に開いて我々に見せながら説明した。
「女郎蜘蛛、お前はようやく完成した妖怪船で五千の部下を連れて蝦夷に行き、そこにいる二匹の梟を攻めて俺の配下にしてこい」
「はい!畏まりました!!」
「赤カブトは西の越後を攻めろ。最近そこの妖怪共が集団を作り、俺に反抗して目障りなんでな・・・皆殺しにしてこい!」
「ギャハハハ!了解したぜ大将!!」
「蛟は南だ。浮世絵町にいる奴良リクオに会ってこい」
「奴良リクオに?」
「そうだ。アイツが本当に女郎蜘蛛の言った通りの奴なのかお前の目で確かめてこい。それから放ってあった密偵からの報告でな、ちょうど今奴は四国八十八鬼夜行と言う集団に攻められているみたいでな。奴らの情報を手土産にすれば近づくことができるはずだ。何かに必要な時のためにこいつらを連れて行け」
オロチ様の首の一つが見つめる方向には黒天邪鬼が十体、青天邪鬼が十五体、赤天邪鬼が二十五体の総勢五十体がいた。
「内容は分かりました。しかしなぜ私なのですか?理由を聞かせてください」
「理由?ならちょっと近くに来い」
そう言われて二人より前に出て、オロチ様が耳元で囁く。
聞いた内容に驚いたが表情には出さすに納得し、話が終わった後私達はそれぞれの目的地へと向かった。
十六夜の祠から出発して五時間後、東京の浮世絵町に着いた。
最初に私は部下達に情報を集める事と今後の隠れ家になる所を探す事の二つを命じた。その間私は誰もいない場所で人間に化けた。顔と体格はこの前女郎蜘蛛が見ていた本に載っていたなかなか好い奴にして、髪は長く黒色で服装は全体が青色で白の模様があるものにした。
しばらく経って隠れ家が見つかった。町から少し離れた空き家で人間共にとってはお化け屋敷と思うようなものだった。そこで部下達を全員集めてそれぞれが得た情報をまとめた。
「つまり今のところはまだ激しくなっていないわけだな」
「はい。しかし組の大将が行方不明で、各縄張りを攻められておるので危機的状況です」
「それをどうやって切り抜けるか楽しみだな。引き続き情報を集めをしてこい」
そう命じて部下達がいなくなった後時刻を確認する。
ちょうど午前十一時頃か・・・。
「(この時刻では奴良リクオは学校という所にいるはずだ。丁度いいから奴の姿を見に行くとするか)」
本来の目的を果たすために隠れ家から三十分かかって中学校に着いた。妖気を消して人間に見つからないようにしながら周りの状況を確認する。妖気が八つで神気が一つ感じる。日の御子もここにいるという訳か。
「とりあえず近くにいる奴良組の妖怪に接近してみるか・・・」
こっそり学校の中を歩いているとある教室の近くの歩いている娘を見つけた。
「次はお待ちかねの。お昼ですもんねー!リクオ様喜んでくれるかな♪」
「(・・・奴良組の妖怪で間違いないな。)」
「早めに屋上に行って、準備しておかないとね~!」
何やら楽しそうに階段を上っていく娘の後を追いかける。わずかな距離なのに私の気配に気がつかないとは随分と鈍い妖怪だ。まぁ、今の状況ではありがたいけどな。
「(そろそろ頃合いか)おい」
「え!?」
「お前は奴良組の妖怪だな」
話しかけると娘は首が曲がるくらいな勢いで振り向き、私を睨んだ。
「あなたは何者!?」
「安心しろ、私は敵ではない。ただお前の主に話をしたいだけだ。話をしてくれるなら四国に関する情報を渡そう」
「そんなの・・・信じられるわけ「氷麗?」リクオ様!!」
後ろを見ると奴良リクオと日の御子がいた。
「蛟!?どうしてあなたが!!?」
「オロチ様の命令だ。それより人間に見つかると面倒だから話は屋上に行ってからにしないか」
そう言って屋上に向かうとそこにはもう一体奴良組の妖怪がいたが気にせずに鉄格子に腰を下ろした。奴良リクオと日の御子は私の目の前に座り、残りが左右で警戒しながら座った。
「・・・・・・・」
「どうした?その娘が持っている弁当を食べないのか?」
「え?あ、いや、その・・・」
「リクオ様は先に食べていてください。質問は私がします。蛟もそれでよろしいですか?」
「分かったよテラ」
「・・・・・私はリクオと話がしたかったがよかろう」
日の御子に言われて奴良リクオは弁当を食べ始めた。中身は氷でできていて、私のような氷の妖怪にとってはかなりいいものだと思うが奴にとっては辛いだろうな。見ていて分かるが食べるたびに体が震えている。隣で見ている日の御子も苦笑いしている。
「それで、何から聞きたい?」
「まず最初にあなたがここにいる理由を教えてください」
「さっきも言ったはずだが、私はオロチ様の命令で奴良リクオに会うためにここにいる」
「・・・あなたはまだオロチに」
おかしな奴だ。何故あの時と同じように私を見てそんな悲しい顔をする?
そんな日の御子を見て奴良リクオが話しかけてきた。
「それじゃ次に・・・僕に何の用があるの?」
「ようやくか・・・お前に質問がある。何故お前は人間を守ろうとする」
「!!」
「何故って・・・(汗)。僕にとっては人間を守ることは当たり前で・・・」
当たり前?こいつは本気でそう思っているのか。脆弱で欲深い虫けらのような人間共を!!
「当たり前か・・・ならこれから起きる事態の中でどうやって人間を守るのか見物させてもらうぞ」
「これから起きる・・・?」
「あの~話の途中ですけど若、生徒達が体育館に移動しているのですが・・・」
「え、あっ、しまった!!今日は一時から生徒会選挙演説のおうえんがあったこと忘れてた!!急いでいくよテラ!氷麗!」
素早く動いて出入り口に向かうリクオの足目掛けて自分の足を伸ばして転ばせた。だが奴はとっさに受け身をして体勢を立て直した。
「なかなかいい動きだ。それに免じてお前に一ついい情報をくれてやる。四国の妖怪がこの学校の中に紛れ込んでいる」
「え!?」
「そんなっ!」
「妖怪の名は犬神と言う首だけ飛ぶことができる獣の妖怪だ。さぁ守ってみろ人間共を」
そうリクオに告げて私は屋上から立ち去った。
これからがどうなることか見定めてもらうぞ奴良組総大将!!