とある神社ーーー
ドンッ!
「アゥ~~~」
「キュ~~ン」
黒い渦に吸い込まれたアマテラスとチビテラスは気がつくと空高くにいて、そのまま神社の側に大量に咲いている山吹の花の中に落ちた。
普通の人なら死んでいるが、さすが大神であるのか傷一つなくただ地面にぶつかったところが痛むだけであった。
アマテラスは痛みを抑えながらすぐに起き上がり、隣でいまだ気絶しているチビテラスに寄りながら辺りの様子を窺おうと山吹の花から顔を出した。
「わぁ!?」
「!?」
その瞬間目の前にいた何者かとぶつかった。
アマテラスside
私とぶつかったのは小さな男の子だった。
まだ五、六歳くらいで不思議な髪をしている。ウシワカみたいに他の国のものかしら?
「わぁ、犬だ。お父さーん!!ここに変な色の犬がいるよ」
変な色・・・もしかしてこの子には私の模様が見えているの!?
「おう。どうしたんだいリクオ?」
「どうしたの、リクオ?」
「お父さん、お姉ちゃん。ここに変な色をしている犬がいるの」
リクオって言う子が私の頭を撫でながらやってきた男女に言う。
男の方は黒髪で何故か髪が横に長く伸びていて女の子も黒髪だが不思議な服を着ている。
「ウゥ~(あの男は半妖だけど・・・あの女の子からは大妖怪並の妖気を感じるわ)」
「んーーー見たところ野良犬みてぇだな。ここに住み着いているのか?」
半妖が私に触れようとした瞬間後ろから娘のチビテラスがやってきた。
チビテラスも二人の妖気に気が付いて攻撃しようとするがやめさせた。
「ワン!(待ちなさいチビテラス。今は様子を見るのです)」
「ワンワン(分りましたお母様)」
この娘は素直だから助かるわ。
イッスンだったら絶対に文句を言うはず・・・
「ねぇ、お父さん。この犬飼ってもいい?」
「う~~ん(まぁいざとなれば家の下僕達に世話させればいいか。)いいぜ。そのかわりしっかり面倒を看るんだぞ」
父親から許可をもらえたからあの子嬉しそうね。
しばらく状況を知る必要があるために寝る所は世話になることだし、ガッカリさせないようにしないとね。
「じゃあ、あそこまで競争だ!」
あの子が走り出した後をチビテラスが面白そうに追いかけだした。
何故私は追いかけないかって?私はこの半妖と女の子の正体を探るためよ。
「わぁ、綺麗」
女の子が感嘆の声をした方を向くとそこには私達がいた場所よりも山吹の花が咲いていた。
そして女の子が山吹に近づいて花冠を作っていると半妖が何かを懐かしむ顔をしながら古歌を言い出した。
「『七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき』あの後・・・山吹の花言葉を何度も調べちまったっけ“気品”“崇高”そして・・・“待ちかねる”まるで、俺の娘見てぇだ・・・」
なんて悲しい古歌・・・この半妖、とても悲しい事を体験したんでしょうね。
私は大神であることを忘れて半妖の足に寄り添った。
「クゥ~ン」
「なんだぃ?俺を慰めてくれるのかい・・・」
半妖も私の気持ちが分かってくれたのか私の頭を何度も撫でる。
そこへあの子とチビテラスが此方に向かって走ってくる。
「お父さんーーー!」
「ワンワン!!」
「リクオ・・・」
半妖があの子の方に顔を振り向いたその時、後ろを向くと女の子が手に異様な形の刀を持って刺そうとしていた。
「ガウッ!!」
「おわっ!?」
咄嗟に私は半妖を銜えてその場で大ジャンプをした。
しかしいつもより重いせいで刀が私の右足に突き刺さってしまってバランスが崩れた。
それでも少し離れたが足から血が止まらず、さらに何故か女の子が突然悲鳴をあげだした。
「ワン!(お母様)」
私の怪我を見てチビテラスが慌てて駆け寄って私の右足を舐めたり、顔を近づけたりした。
心配させないようにと笑顔で「大丈夫よ」と答えた。
「おい!大丈夫か!?」
半妖も心配しながら手を私の右足にかざすと不思議な光が溢れて少しずつ痛みが和らげてきた。
「ああああぁ・・・あははそうじゃ妾は『まちかねた』のじゃ!」
悲鳴を上げていた女の子は突然笑いだした。
そして大妖怪並の妖気を一気に発生させた。この妖気はまるで・・・ヤマタノオロチみたいだ。
「思わぬ邪魔が入ったが・・・よくやった。これで宿願は復活だ」
謎の妖怪が後ろに現れた頭に赤い目を持つ老人の妖怪にあの刀を渡す。
その間に半妖は自分の子を後ろに隠れさせた。
「いえ、羽衣狐様。あの男・・・奴良鯉伴を殺さねば我らの邪魔になります。見る限り奴は深手をおっております。今なら楽に殺せますぞ!!」
この半妖の名前は奴良鯉伴と言うのね。けど頭の悪い妖怪だこと・・・確かに彼の着物には血が大量についているがそれは私が庇って怪我をしてついた血だから、彼はどこにも怪我をしていないのにあの妖怪には怪我をしているように見えるのか。
「まぁ待て鏖地蔵。妾は復活したところで機嫌が良い。それにお前は気がつかないのか?」
「何がですか?」
羽衣狐は鋭い目で周りを見つめる。それにつられてその場にいる者全員が気を探ってみる。
!?なんであいつらが・・・ヤマタノオロチ達の気が感じるの!?
「気がついたか。妾以外にも何者かが甦ったみたいじゃ。ここは急いで京に戻るのだ」
「はっ!かしこまりました」
そう言って二人は消えていった。
その後右足の痛みは消えて私はチビテラスと一緒に鯉伴の屋敷に連れていかれた。
次からは半妖ではなく、しっかり鯉伴と書きます。