第三の封印場所・鹿金寺にて、連合軍の大将である羽衣狐&キュウビと花開院家の精鋭陰陽師三人の戦いが始まろうとしていた。
「福寿流結界術・洛中洛外全方位金屏風!お前達はもう出られない。誰も入れない」
「ほぅ・・・美しいな」
「なかなか見られるものではないな」
周りで金色に輝く屏風を見て羽衣狐達が感嘆していると、水面から破戸が操る式神が現れて両手で彼女達を虫のごとく叩き潰した。そのままペシャンコにされると思ったが、二人同時に尻尾を使って式神の両手を破壊して脱出した。だが、破戸はそれを見ても驚かずに逆に薄く笑ったのだ。
「アハッ!そーだ逃がすなよ。僕の式神ちゃん」
すると破壊された式神の両手から何本もの呪詛の鎖が出てきて彼女達の動きを封じたのだ。
「妖の主どもよ・・・お前達はここから先に進むことは決して出来ない。花開院雅次の“最強の結界”で隔離し、花開院破戸の“最強の式神”で動きを封じている間に私の“最強の妖刀”である八十流妖槍・騎億で滅する。妖刀作りに関して私は十三代目を超えた、と自負している」
自分達の絶対的な自信を言う秋房であったが、ここで彼らは大きな過ちを犯した。それはすぐにでも彼女達に攻撃をすることであった。この長い説明のために敵に反撃の時間を与えてしまったのだ。
「それは是非見てみたいのぅ」
「何!?」
「どれ、この金屏風より綺麗であるかの姉上?」
「これだけの自信だからな。きっと綺麗であろう」
予想とは別に余裕たっぷりに話し合っている彼女達を見て秋房達は動揺する。その時、彼女達の背後から結界の色が徐々に薄黒く変わりだした。そしてその部分をがしゃどくろと連獅子が強引に突き破ろうと迫った。
「グオオオオオオッ―――!!」
「羽衣狐様~~キュウビ様~~~何処ですか~~?今お助けします~~」
「待て待て、今いいところなのだ。がしゃどくろ、連獅子」
「そこですね~~羽衣狐様~~キュウビ様~~~♡」
「「やれやれ・・・」」
二人は少し溜め息をつきながら羽衣狐は尻尾で、キュウビは刀で呪詛の鎖を断ち切り、そのまま式神を滅した。同時にがしゃどくろと連獅子も結界を突き破った。
「ほら、もたもたしているから四百年間封じられていたがしゃどくろがこの金屏風を破ってしまった。早く見せてみろ、その最強とやらをな」
「ククク、羽衣狐よ。今のがその最強とやらみたいだぞ。さてお前達、グズグズしているならまたこちらから行くぞ?」
「くっ・・・!」
「どうする秋房!?」
「うろたえるな!私が攻撃する。お前らはサポートに回れ」
二人に命じた後、秋房は騎億を前に出して術を発動させる。すると彼から妖気が溢れ出し、騎億から異形の手らしきものが伸びて彼は人から化け物の姿に変わりだした。
「(妖槍・騎億は不敗の槍・・・式神破軍が無くとも敗れる道理は無い!!)」
「お前・・・人ではないのか・・・?」
「花開院八十流陰陽術・慿鬼!破戸!!雅次!!続け、行くぞ!!」
騎億を構えて羽衣狐達に向かって行く。それを見て迎え撃とうとキュウビが前に出ようとした時に横から誰かが飛び出した。
ガキッ!!
「貴様ノ相手ハ俺ダ」
「くっ!」
斬りかかったエキビョウの妖刀とそれを防いだ秋房の妖槍が激しく音を響かせながら交り合う。暫く押し合いが続くが、騎億に全力を込めてエキビョウを押し退かせた秋房がそのままエキビョウを真っ二つにするが・・・
「!?」
エキビョウの体は霧のようになってすり抜けてしまい、そのまま元に戻った。秋房が何度も妖気を込みながら騎億で斬ったり突いたり攻撃するが、エキビョウに傷をつけることはできなかった。逆に攻撃し続けたことで秋房は疲れて膝をついてしまった。
「ソンナ攻撃・・・俺ニ効クト思ッタカ?」
「ハァハァ、お、おのれ・・・!?」
再び槍で突こうとしてエキビョウを見るとなんと三体に増えていた。目をこすってもう一度見ると今度は五体になっていた。余りの事に呆然としている秋房をエキビョウは笑いながら言う。
「目ガ可笑シクナッタミタイダナ。モウ貴様ハ俺ノ毒ヨッテ自由ニ動ケマイ」
「毒だ・・と・・・」
「貴様ガ何度モ攻撃シテイル時カラ既ニ毒霧ヲ少シズツ放ッテオイタノダ。ソノ武器ノオカゲデ死ヌコトハナイガ、変ワリニ俺ノ器ニナッテモラウゾ」
言い終わる前に秋房はその場に倒れ込む。だがまだ意識は残っており、何かをブツブツと喋っている。しかしエキビョウは気にせずに口から入り込もうとした時、突然鏖地蔵が現れて首筋から体に忍び込んだ。
「オイ鏖地蔵!コレハ俺ノ獲物ダゾ!!」
「フェフェ、悪いが早い者勝ちじゃよ」
「「秋房!!」」
秋房に憑依しながら言う鏖地蔵をエキビョウは憎悪を感じながら睨み付ける。これを見て波戸と雅次が助けようと駆け出すが連獅子に捕まり、強烈な力で握られて気絶してしまった。この瞬間、戦いの軍配は妖怪連合軍側に上がったのであった。
「フフ、余興は終いじゃ。封印を解きに行くとするか」
その瞬間、何者かが羽衣狐に襲い掛かった。その者は顔を布で覆い隠しており、畏れによって強化した羽衣狐の尻尾を訳もなく素早く避けながら迫った。そして羽衣狐の首目掛けて手にしていた武器を突き出した。
ガキィィィン!!
しかしその奇襲はキュウビを始めとした幹部達によって防がれた。すると今度は連獅子の方に向かって行き、連獅子の手を攻撃して破戸と雅次を救出した。
「この者達は返してもらうぞ」
「そう簡単に返す訳ねぇだろう」
いつの間にか襲撃者の背後にいた茨木童子が刀で斬り付ける。なんとか避けそうとするも二人を抱えていたことにより動きが鈍く、完全には避けられず顔を覆っていた布が破けてしまった。
「アァン!?妖怪か、てめぇ」
「いかにもそうだ。私の名は怨霊王。日の巫女殿に恩がある者だ」
「日の巫女・・・?」
襲撃者の正体はかつて人民のために尽力したが政争で憤死した菅原道真が激しい怨念によってなった妖怪・怨霊王であった。彼はこの世界に来て以来、自分を助けてくれたチビテラスのように陰で人助けをしていたのだ。鹿金寺で羽衣狐達と陰陽術の戦いの様子を見ていたのも彼だったのだ。羽衣狐達は彼の正体よりも『日の巫女』と言う知らない言葉に首を傾ける。ただ唯一連獅子だけがアマテラスの娘であると知っていて、それを聞いたキュウビの眼つきが鋭くなった。
「アマテラスの娘に恩を感じてるだと!?ならば貴様はここで死んでもらう!!」
刀から雷を放つキュウビ。それを見て怨霊王は水面に向かって強力な衝撃波を撃つ。それによって大きな波ができてキュウビの雷と衝突して煙が発生する。
視界が遮られて身動きができない間に怨霊王は退散する。煙が晴れた時には姿も妖気も感じられず追跡不可能であった。
「グオオオオオオッ―――――!!!」
やり場のない怒りをキュウビは天に向かって激しく咆哮するのであった。