真夜中の旧校舎
浮世絵町・奴良組本家ーーー
「で?それのどこが僕のせいって言うんだよ?」
ガゴゼの謀反から四年が経ち、中学校の制服を着て羽織をかけていたリクオは庭先で右手に携帯、左手に週刊誌を持っているカラス天狗に説教を受けていた。
「こっちの週刊誌には都市伝説。こっちは河童。そして・・・・・インターネッツなるシロモノには『現代妖怪』の情報がズラ~~~~~リ!世は・・・妖怪ブームになっているのです!どう責任を取るおつもりですか?」
庭の草と花に水を撒きながらリクオは説教をするカラス天狗に質問する。
「だから・・・世間の妖怪ブームが、何で僕?」
「若がいつまでも奴良組を継がずにブラブラしてるから雑魚妖怪や若い妖怪どもになめられてこーやって縄張り(シマ)を荒らされているわけですよーーーかつてのあの快刀乱麻の大活劇!あれは何だったのですか!!」
「だって・・・あの時は何が何だか分からなくなったんだもん!!自分が何を言ったのかも覚えてないし」
「そんな無責任な!!拙者はハッキリと覚えてますぞ!!俺の後ろで群れになれとか何とか言ってたくせにぃ~~~!!」
「二人とも落ち着いてください!(汗)」
大声で言い合いをするリクオとカラス天狗にチビテラスは必死に落ち着かせようとする。
その光景を広間で朝食を本家の者達と一緒に食べていたぬらりひょんと鯉伴が声をかける
「おうリクオ。朝っぱらからなーんの話をしとんじゃ」
「それにあんまり大声で怒鳴ると近所迷惑になっちまうぜ」
「だって・・・じーちゃんと父さんが放任主義だからかわりに僕が怒られてるじゃん」
「しかたなかろう?ごらんの老体・・・お前が早く妖怪の総大将を継いでくれねば・・・ワシ死ぬな」
猫のように背を丸くして体の弱い老人のようにぬらりひょんは咳き込み始めた。
それを見てチビテラスが慌てて近づいた。
「大丈夫ですかお爺様!?死ぬなんてまだ早すぎますよ!!」
「ちょっ、テラ!それは嘘なんだよ!!」
リクオはぬらりひょんが嘘をついていると言うが、チビテラスは若干涙目になりながら否定した。
「何を言っているのですかリクオ様!!大切なお爺様がどうなってもいいのですか!?」
それを聞いて全員が呆然とした。
チビテラスのかなりの優しさに感心するがそれが少し欠点でもあると思った。
「待っていてくださいお爺様。私がすぐに薬草を採りに行ってきます!お母様、お爺様を部屋で安静にさせておいてください!」
「いや、その・・・(汗)」
「待ちなさいテラ。第一あなたは今日からg「それでは行ってきます!!」ちょっと!」
アマテラスの言葉も聞こえず、チビテラスは狼の姿になって屋敷から出て行ってしまった。
それを見てアマテラスは溜息をついた。
「あの娘ったら・・・今日からリクオ君と一緒に学校に行くはずだったのに・・・・・」
「えっ?そうだったのお義母さん!?」
驚きながら言うリクオにアマテラスは頷く。
「じ~い~ちゃ~ん~!!(怒)」
「お、落ち着くんじゃリクオ(汗)」
凄まじい怒りを込めながらぬらりひょんを怒鳴ろうとするリクオに鯉伴は時計を見ながら言った。
「てかリクオまだ学校に行かなくていいのか?」
時計の針はとっくに屋敷を出る時間を過ぎていた。
「え、あ!やばい!?行ってきます!!」
「「「「「いってらっしゃーい」」」」」
リクオが出て行ったのと同時に台所から若菜がお膳を持ちながら広間にやってきた。
「あら?二人も行かなきゃいけないんじゃない?」
笑顔で呑気に告げれば青田坊と雪女は慌ただしく動き出す。食べ終えた食器の片付けを他の妖怪達に任せて二人は人の姿に変わるとリクオと同じ学校の制服を着ていた。
四年前からリクオの護衛を努めることになった二人は生徒に紛れて遠くから見守っているのだ。しかしリクオは未だそのことに気づかれていない。
「「い、いってきまーす!!」」
「はーい。いってらっしゃい」
「若菜さん。ちょっといいですか・・・」
急いでリクオの後を追う二人を見送る若菜にアマテラスが申し訳なさそうに言う。
内容はチビテラスの事についてである。
「・・・・・っという訳で今日学校の先生に明日から行くと伝えてくれないかしら・・・」
「いいですよ。テラちゃんは私の娘でもあるんですから!」
笑って承諾する若菜を見てアマテラスも笑顔になった。
「・・・・・」
「元気を出してくださいテラ様!!」
午後になって薬草を採りから帰ってきたチビテラスだったが、ぬらりひょんが嘘をついていたことを知ってただいま台所で夕食の片づけをしながら落ち込んでいる状態だ。
「だって・・・日の巫女のくせに嘘を見破れないなんて・・・・・(涙)」
今にも泣き出しそうなチビテラスをなんとか元気つけようと料理係の妖怪達は話を続けた。
「そう言えば先程若がお出かけになったみたいですよ」
「リクオ様が?どこに行ったのですか」
「確か・・・旧校舎と言うところです」
「旧校舎・・・・・私少し様子を見に行ってきます」
毛倡妓達に残りの後片付けを頼んでチビテラスは狼の姿になって旧校舎に向かった。
最近旧校舎ではある怪談が噂されていた。
“旧校舎の怪”
『これは本当にあった話。とある学校の敷地内あるのに誰にも行けない場所。そこでは夜な夜な死霊達が暴れていて、迷い込んでしまったら二度と帰って来れない。だから決して、近付いてはならない』
実際に行方不明者が出ているのチビテラスは走るスピードを速めた。
その時、彼女の後ろから二つの影が彼女の後を付いていた。
リクオside
ありえねーーーこの旧校舎ありえないくらいにたくさんの妖怪がいるーーー!!
これまで何とか誤魔化したけど、このままじゃ皆に危険が・・・
「ここでラストかな?お、食堂だって」
「あっ・・・。ま、待って!」
いつの間にか後ろにいたはずの清継君達が前にいた。
二人の後を追って急いで食堂に入るとそこには頬まで口が裂けた女、異形の形相の生物、顔はカマキリの男、頭のない大男など、見るからに不気味な奴らがいた。
「・・・・・・・・し・・・(しまった・・・・・!!)」
「「「「「あああああぁぁぁ!!!!」」」」」
「う、うわぁあああああああ!!」
「出たぁあああああああああ!!」
「何!?何!?リクオくーーーん!?」
清継君と島君は走って行ったけどカナちゃんはあまりの恐さに僕の服を掴みながら気絶した。
襲ってくるこいつらを止めたいけど・・・・・間に合わない・・・
「!!(このままでは・・・)」
「リクオ様だから言ったでしょ?」
「え」
突然巨体が前に現れて襲いかかろうとした奴らを拳を振り下ろしたり、白い着物の少女が吹いた息が氷付けにした。
「こーやって若けぇ奴らが・・・奴良組のシマを好き勝手暴れてるわけですよ」
それは青田坊と雪女・氷麗だった。
「うせな。ここはてめーらのシマじゃねえぞ、ガキども」
青田坊が睨みながら言った途端に妖怪達があっという間に逃げて行った。
ってそれよりなんでここにいるの!?僕は二人に状況説明を求めた。
「だから“護衛”ですよ。確かカラス天狗が言ってたはずですけど。四年前のあの日・・・これからは必ず御供をつけるって!知らなかったんですか?ずぅ~っと一緒に通ってたんですよ!」
「ずぅ~っと!?聞いてない!聞いてないぞぉ~~~!?」
「いいえ、確かに言いました」
ぎょっと窓の外を見るとカラス天狗が飛んでいた。
「まったく・・・心配になって来てみれば、あんな現代妖怪(わかぞう)。妖怪の主となるべきお方が情けのうございます」
じ~っと淡々とした口調でカラス天狗は僕に説教をする。
「だから僕は人間なの!」
「まだおっしゃいますか!!」
「僕は平和に暮らしたいんだぁー!!」
「うるさいゲローーー!!」
「「「「!?」」」」
突然天井が崩れて何かが降ってきた。
巨大な体、周りにはたくさんの蛙、長い舌・・・それはゆっくり動いてリクオ達を見下した。
「ワシの住処で騒いでいるのは誰だゲロ!この『大窯怪』様が許さないゲロ!!」
片目に眼帯を付けている大神の世界にいた妖怪・大窯怪であった。