ISinゲッターロボアーク   作:梵葉豪豪豪

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第1話 一夏と

 地球に棲む人類は平和……には全然ならなかった。なりもしねぇ。理不尽か。

 脅威は地下から身内から宇宙からあらゆる所からやってくる。そして人類は山程の犠牲を払った。死体も残らなかった事例も多い。

 なので人類は知恵を絞り、巨大な暴力装置、つまるところ巨大な人型メカを建造し理不尽に対抗してきた。

 だが巨大な人型、巨大ロボットに関わらない人達もあらゆる知恵と筋肉を駆使して戦っている。これはそういう人達にちょっと焦点を向けてみたそんなお話。尚、主役はロボットに乗る。

 

 

 ここ日本のN市M山区に鎮座するは陸上自衛隊第10師団駐屯地。日本の屈強な男達とかオタクとか集まる地であるが、今日ここには、新型機動装甲服の試験評価と研修のため、世界中から屈強な男女が集まっていた。

 超強化服「IS(インクレティブ・スーツ)」。日本の財団法人早乙女研究所に属する篠ノ之束(しのののたばね2xさい)博士が提唱した、各国を巻き込んで統一規格による共通化と汎用性を目指した高機動装甲服である。提唱した当事者はインフィニット・ストラトス(成層圏まで飛ばせられたらいいなぁ)とかインゲスティブ・スーツ(色々取り込もう)とかいったダブルミーニングで付けた名前であるとの事ではあった。

 が、関係者の間ではインコレクト・スーツ(なんか色々おかしい服)だのイグノーベル・サッカー(お笑いキャンディー)だのイヤハヤ・シット(クタバレ家早家)だの無駄に言葉遊びをされていた。最後のは元暴力団構成員だった女性による全く無関係なただのお家事情である。

 尚、動力には早乙女研究所で設計しライセンス公開した超小型ゲッター炉なるものを推奨していたが、日本以外の各国からは「そんな精神状態で大幅に出力が変わる危ない物積めるかアホゥ!」と軒並み避けられている。

 ともかく、歩兵や工兵、また災害救助や土木業への福音となるべく世界の技術屋や事務屋が試行錯誤して製造を進めている強化服である。

 

 今日はそんなISを試験運用している部隊が集結し研修兼演習を実施したのだ。この手の事は実際はメインが各国との交流、というか飲み会だと言ってはいけない。

 

 

「納得行きませんわ!」

 

 ミーティングルームでそんな怪気炎を上げたのは、英国陸軍のセシリア・オルコット曹長である。金髪縦ロールのおぜうさまだ。

 

「ええと、何が納得行かないのでしょうか?」

 

 応えるは今回の研修のまとめ役を仰せつかっている山田真耶(やまだまや2xさい)一尉。始めてみれば速攻これである。うんざりしたくもなる。

 

「何で初日が座学のみなのですの!? まずは何より実戦でしょう! バトゥバトゥバトゥですわ!」

 

 あーこの人脳筋なんだなー、と山田一尉は改めてうんざりした。曹長に同調しかけている他の面子もきっと脳筋なんだろうなと気が抜けてきた。自分が身を置いている業界の下の方は大体こんなもんなんだろうかと泣きたくなってきた。

 

「それで、つまり演習をしろということなのだな?」

 

 応えたのは、早乙女研究所から出向したパイロット、流千冬(ながれちふゆ2xさい)だ。軍人ではないが、早乙女研究所謹製の巨大ロボット「ゲッターロボ」では脱出機構としてコクピットに試験的にISを採用しているため、この演習にオブザーバーとして呼ばれここにいる。尚、実際に使用した際はゲッターの手持ちの武器をそのまま振り回せるので継戦能力に優れているという。山田一尉にすればかつて演習を共にした同僚でもあるのでフォローに期待した。

 

「おおい! それなら俺とやろうぜ!」

 

 フォローは無駄になる気がしてきた。ぶち壊したのは、何でここにいるのか早乙女研究所の関係者だからここにいる中学生、流一夏(ながれいちか15さい)である。千冬の愛すべき弟だ。現在は早乙女研究所でゲッターロボの整備のバイトをしている少年である。そんな中学生が煽ってきたので山田一尉の胃はマッハで荒れた。某ヒーローのマッハではない。

 

「あら少年、来るのですか?」

「応、俺にハンデはいらねぇぜ!」

 

 セシリア曹長は親指を威勢よく立てた一夏の筋肉隆々(マッチョ)な体格を見て、一応口だけのガキではないと認識した。ではどうするか? ヤッチマイナー。

 

 

 所変わって基地の演習地。学校の校庭みたいだと言ってはいけない。

 セシリア曹長と一夏中学生は対峙していた。それを囲む軍人達一同。お互いの手前にはカートが置かれている。

 

 そんな軍人達の中で、ある女性兵士は一夏を見て唸っていた。彼女の名は篠ノ之箒(しのののほうき19さい)。陸上自衛隊のIS実験部隊に籍を置く2等陸士だ。ちちでかい。

 彼女は一夏とは幼馴染である。出世して彼を婿に迎えてやろうと頑張ったはいいが、一夏一家は百鬼帝国らしき集団に襲われ、早乙女研究所で働くことになっていてついでにそこにいる姉は関西ヤクザの治療を付き合わされて銃撃戦。どういうことだ。N野遠いじゃないか。マッチョになってるじゃないか。あぁ一夏が遠くなるいや仕事上出会いはあるのかいやそうなのか」

 

 悩みながら踊る箒を一瞥した同僚の更識簪(さらしなかんざし19さい)2等陸士は、とりあえずは姉でもある隊長に具申の一つでもしてみた。

 

「あのー姉さ……隊長、篠ノ之隊員どうしましょう?」

 

「そっとしてあげましょう。面白いから」

 

 隊長が口元に広げた扇子には「踊る阿呆に見る阿呆」と書かれていた。それは酷いんじゃないかと簪は訝しんだが、黙っておくだけの社会性はあった。

 

 

「では行きますわよ!」

 

 セシリアがカートをぶち叩くと、多種多様なパーツにバラケてセシリアの肢体に合体していく。手足は肥大化し、全身装甲で覆われた所を顔、肩、太腿等稼働に制限の付きやすい箇所を露出させていく。末端肥大の装甲服の完成だ。

 これが、ISである。セシリアの駆るISの機体名はブルー・ティアーズ。青い。

 

「俺も行くぜ!」

 

 一夏もカートを叩いてISを装着していく。その姿は全身丸みを帯びており、見る人が見ればゲッターロボの人間大だった。機体名はD2-C。山田一尉は感心して千冬に聞いてみた。

 

「やっぱり早乙女研究所だからゲッターの意匠になるんですね」

 

「うむ。あれはうちの弟と愉快な仲間達が小型版ゲッターを目指して作った試作機だ。まぁ失敗作だそうだが」

 

「そうなんですか?」

 

「何でもゲッタービームの発振機が小型化出来なかったのと、3体分離のアイデアに折り合いがつかなかったからだそうだ」

 

「……それって人間大でやることじゃないですよね?」

 

 実現していればこの勝負は1発で終わっていたところだ。

 

「ゲッタートマホーク!」

 

 ビームは出ないが、轟音と土煙を上げて一夏が取り出した得物は、刃先が自身の半分はある巨大な斧である。それを軽々と肩に担ぐ。

 

「レッツ・ダンス!」

 

「おお!」

 

 セシリアが美しくかつ妖絶な表情を見せる。ただし石川賢のビジュアルで。そして両者の雄叫びと共にセシリアは背面から得物を展開させた。ビームを放つ遠隔兵器「ブルー・ティアーズ」その数36機。正面上空に展開させ、ビームを盛大に地面へぶっ放した。言うなれば一人飽和爆撃。

 

「いきなり全力かぁ!?」

 

 箒が突っ込むのも無理は無い。しかし一夏は地面をジグザグに水平飛行して交わしていた。UFOと言わんばかりのこの機動が実現出来るのがISである。交わしながらもセシリアに肉薄していく。

 

「うーりゃうりゃ一夏どんと行けー! アイツの乳ぶっくろ叩き斬れー!」

 

「行けー! 嫁ー! 奴の乳袋潰せー!」

 

 隣で手足を振り回し中国語とドイツ語で応援した女兵士2名に、箒が

 

「え? 一夏?」

 

と反応したのも無理は無い。

 

 思わず隣の箒を同時に見た二人、つい目線を下に向けて睨んだ。しかし何事もなかったかのように、というか無視して一夏の応援に戻った。

 

「何なのだぁ!」

 

 二度も述べるが箒は巨乳である。件の二人の胸については、そっとしておいて欲しい。

 

 

 翻ってせっしーいっちーのバトル。一夏はビームに一発も当たることなく肉薄した。いや当たってはいるがゲッタートマホークで防いでいた。その得物を今度は思いっきりぶん投げた。投げた先は言うまでもなくセシリアにであった。

 

「甘いですわ!」

 

 大回転しながら飛んで来るくそでかいトマホークをセシリアは身をよじって躱す。逸れたトマホークは基地の壁に深々と刺さった。誰が回収するのであろう。そこに僅かに隙とも言えない隙が出来たからと言うべきか、一夏は速攻で体当たりを掛けた。かち合って重厚な金属音が周囲に響いていく。

 

「それでも甘いですわ!」

 

 セシリアの右腕が展開し、巨大な機関銃が装填された。迷うことなく一夏に銃撃を敢行した。轟音と着弾音と空薬莢が盛大にぶち撒けられる。

 しかし一夏は一夏で、自動的に頭部にヘルメットを展開した。とは言っても全身蜂の巣と言わんばかりに凹んだ。貫通しないだけマシというものだ。

 

「う~りゃ!」

 

 一夏が取った次の行動は、頭突きだった。その威力はセシリアも機関銃の制御を手放すほどである。迷わず二撃、三撃と頭突きをキメていく。セシリアも負けじと頭突き返す。お互いのヘルメットやヘッドパーツは砕け飛んだ。

 

 もはやどちらの実力が高いか、どちらのISが優れているか、男か女か、原作者が誰か、そんなことは関係がない。お互いただひたすら意地で頭突きを応酬し続ける。観客の応援もボルテージが上がる一方だ。

 

 勝負は唐突に終わりを告げた。両者が同時に倒れたのだ。引き分けで終わったが、二人ともただ馬鹿笑いしていた。お互いを認めた。認めたのだ。

 

 

 晩に行われた親睦会で、箒は遂に一夏に声を掛け昔話に花を咲かせたのは言うまでもない。酔った勢いではない。尚、セシリアはナポリタンにハマっていた。

 

 




○作中のIS

 スペックで較べれば原作のISの方が勝つでしょう。ただ巨大ロボットが多数活躍している世界でそこを追求しても無意味ですが。
 尚、こちらのISの行き着く先は原作アークのスターボーダ艦内で登場したゲッターぽい意匠のプロテクタとなります。

○登場人物
 ここに触れていないキャラがどう設定をいじられているかは、まぁ原作アークからお察し出来るかと思います。

○篠ノ之博士の真意
 そこはおいおいと。

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