雪と記憶   作:E-OS

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第3章「遭遇」前編

美しく煌めく夜空の影となるように、地上には魔の者達が蠢き、敵意を向けて襲いかかってくる。

漆黒の翼を大きく一度羽ばたかせ舞い上がり、目下の魔物の群れに黒炎を纏わせた一撃を与える。

「…消え去れ……!」

数え切れぬ程居た有象無象は焼かれ、裂かれ、全てが無へと消える。

翼を閉じ、静かに地に足をつけると手にした弓が周囲に残る敵の残留ソウルを吸い尽くす。

風を裂く音、魔の者の気配が消え、闇夜に静寂が戻る。

「やっと終わったか。ザコが多いのォ」

この老人も黒ローブも手の一つも出さず歩いているだけだった。

(全ての敵意は俺に向いていた…?)

奴らに仲間意識でもあるのだろうか。

「アレが針結晶の森とやらか…ホゥ?」

目指す先には剣山のように夜空にその針先を無数に輝かせる大森林が広がっている。

地獄の針山とでも言った方がいいか。近寄ることを躊躇わせる異様な雰囲気を漂わせている。

歩みを止めることなく進むが、常人では近づくことは出来ないだろう。

「…」

それにしても静かだ。

先程まで溢れていた魔物の群れはすっかり息を潜めている。

何の音も聞こえない。

凍りついた樹々のざわめきも、夜行動物の声や動く気配も、風の流れる音も何もしない。ただそこにあるのは 静寂だ。

「…ソウルが停まっているな」

「うム。流石にその程度は感じるか」

老人もわかっていたらしい。

 

刹那

 

ギィンッ!!

 

老人の目先にまで巨大な氷の刃が突きつけられている。

「ふム、危うく死ぬところだったじゃないか」

老人が黒ローブを見下しながら言う。

黒ローブは片腕を伸ばし、老人に向けられた氷の刃を掴み止めていた。

「…!」

その腕は鎧の様に武装されていた。

あの一瞬であれだけの刃を受け止めたのを見ても相当な「護衛」のようだ。

「そんなに森に入られたくないのかネェ?ククク」

老人は銃のようなものを構えると森の方と向け、引き金を引いた。

森へと向かって禍々しいソウルに包まれた弾が走る。

あとほんの一秒で森に届こうという地点で突然邪気を撒き散らしながら弾が停まり、彈けた。

「ククク…ビンゴォ!」

続け様に5発の弾を撃ち出す。

それに反応したかのように無数の氷の矢が何も無いその虚空から生み出され、こちらに撃ち放たれた。

黒ローブは氷の刃を粉々に握り砕くとその方向へと一気に跳躍する。

「…くっ!」

遅れをとった。

この一瞬の遅れで盾役としてこの老人を護らなければならなくなってしまった。

こちらに向かって放たれ続ける無数の氷の矢に向けて黒炎を纏わせた一撃を放ち、一気に消滅させる。

老人が放った弾もほとんどが氷の矢に当たり彈け、邪気の壁を作り氷の矢を打ち消している。

最後の一撃だけが丁度先程の地点にぶつかり、再び彈けた。

直後、一撃。

邪気の中心を黒ローブの拳が貫く。

氷の矢はピタリと打ち出されなくなり拳の先から蜘蛛のようにヒビが走る。

黒ローブが拳を戻すと硝子が砕け散るようにその景色が粉々になる。

「クククッこれだけの魔障壁…やはり…ククク」

黒ローブは一跳び後ろに距離を取ると再び構える。

砕けた景色が霧となって消える。

 

霧が晴れるとその向こうには、一つの美しい氷の彫刻のようなドラゴンが佇んでいた。

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