すっかり辺りは暗くなってしまった。
暗くなる前に帰るといういつもの約束を破ってしまった事に家の扉を開くことをためらう。
「タロー、ちゃんと謝ろうね…?」
「クゥゥン…」
そっと扉のノブを握る。
いつもより重く感じるのは気のせいなのだろう。
「ただいま!」
「キャン!」
「2人とも、暗くなる前に帰りなさいって言ったでしょ!」
やっぱり怒られた。
「きゃう…ママ、ごめんなさい…」
「キャウゥ…」
「もう、しょうがないわね…おかえりなさい」
そう言いながら、ママの手はうなだれた2人の頭を優しく撫でてくれる。
「キュゥン」
「キュゥン」
コヨミもタローも同じように息を漏らし、母に寄り添う。
「コヨミもまだまだ甘えん坊だなっと」
不意にママから引き離され、宙に浮かされた。
「コヨミはおねーさんだから甘えん坊じゃないよ、パパ!」
父親に担ぎ上げられ手足をバタバタさせて講義するがすぐに観念して身をゆだねた。
そのままコヨミを肩に座らせ、タローも片手に持ち上げる。
「ママはお料理中だからご飯まで待ってような」
「はーい!」
「キャン!」
二人の素直な返事が同時に発せられた。
「今日はなにしてきたんだ?随分と遅かったじゃないか」
コヨミとタローを自分の両脇に座らせてパパが問いかけてくる。
話していいものかと一瞬戸惑ったものの遅くなってしまった罪悪感もありすぐに全部話すことを決める。
「あのね、今日は怪我してた人がいたから助けてあげたの!」
「おー、そうかそうか、っ!?お前達人間に会ってきたのか!?」
パパが随分と驚いているのが可笑しくなってしまう。
「うん!タローが怪我してる人に気づいて走っていっちゃって、コヨミよりちっちゃい子が動けなくて泣いてたからお薬で手当してあげたの!」
驚いた表情を緩ませ、パパが大きな手で2人の頭を撫でてくれた。
「そうか、二人とも偉いなぁ」
「キャウゥ、その子とお友達になったんだよ!」
撫でられながら嬉しそうに二人がはしゃぐ。
「おお、それは良かったな!」
パパもニッコリと笑ってくれた。
「でもね、タロー、森の外までずっと走っていっちゃったからパパに叱ってもらわなきゃって思ったんだよ!」
「キャウゥン…」
タローが謝る。
「ハハハ、しょうがないじゃないかコヨミはタローに厳しいな」
パパが微笑みながらタローを撫でる。
「タロー、偉いぞ」
安心したのか尻尾をパタパタと振りながら気持ちよさそうになでてもらっている。
「コヨミー!お料理並べるの手伝ってー!」
台所からママが声をかけてきた。
「はーい!ママ!」
返事とともに立ち上がり、台所に駆ける。
「…子供なら大丈夫…か」
タローが不思議そうな顔で見上げる。
「何でもないよっ、さっ、ごはんだ!」
「キャン!」
「しかしタロー、お前よく気付いたな?」
立ち上がりながら父が問いかける。
「キュゥン?」
「そうか、まだ良くわからないか、本能ってやつだな。お前は立派な狼に成れそうだ!おねーちゃんのこと助けてあげられるようになるんだぞ?」
「キャン!」
得意気に一吠えする。
「パパー!タロー!ごはんできたよー!」
コヨミが2人に呼びかける。
「さぁ行こう、いっぱい食べて大きくならなきゃな!」
「キャンキャン!」