今日の飯も旨かった。
家族で飯を食べる、それだけのことが幸せでならない。
夕飯を終え、落ち着いたところでコヨミとタローが先程の話を今度は母親に説明している。
初めて会った自分達以外の存在に余程興奮したようだ。
「初めての友達、か…」
今にして思えば友達の1人も作れず山の奥で隠れ住んでいたのでは寂しかったこともあっただろう。
俺もあいつも人間を警戒しすぎているのかもしれない。
しかしやっと手に入れたこの幸せを壊すようなことがあってはならない。
ぼんやりと色々なことを考えながら三人を見つめる。
子供達の話に楽しげに相槌を打ちながらも視線に気付き、微笑みを返してくれた。
子供達の笑顔も、あいつの笑顔も俺が守らなくちゃな。
それだけは変わらない、これまでも、この先も。
なんて、カッコつけたくもなってしまう。
「さぁ、コヨミ、タロー、ふたりともそろそろおやすみの準備なさい?」
「きゃぅ~」
「クゥ~」
つい先程までのはしゃぎっぷりが嘘のようにいつの間にか2人ともうとうとし始めている。
「ほら二人共、ちゃんとお布団で寝ないとダメだろう?」
「きゃぅ…わん…」
コヨミはボソボソとなにか反応しているがタローは既にスヤスヤと寝息を立て始めている。
「ふふ、よほど疲れていたのね」
「ああ、随分なはしゃぎ様だったからな。」
そっとコヨミの頭をなでると、気持ちよさそうに寝息を漏らす。
「この子達にお友達が出来る所で暮らしていた方が良かったんじゃないかしら。世の中悪い人間ばかりではないでしょうし。」
タローを膝に抱き抱えながら言う。
「俺達を狙ってきた人間は少なくない。それはお前もわかってるだろ?」
「えぇ、そうね、あんなのは味わって欲しくないわ…」
伏し目がちに言う。
「だからといって2人にもう友達と会うなとは言わないさ。同じ位の年の友達と遊べるなんて素晴らしいじゃないか。」
「ふふ、そうね…っ!?」
突然耳を立て虚空を睨めつける。
「ん?どうした?」
「障壁が壊されたわ。造龍も攻撃されてる…」
「なに…!」
「龍には力及ばない程度みたいだから大丈夫だと思うけど。」
「だがお前の壁を破れる程だ。念の為子供たちを安全なところへ。」
(しかしこのタイミング。ここしばらくはこんな事もなかったんだが…。まさか昼間の子供とやらが呼ん)
「あなた、2人のお友達をそんな風に思ってはダメ。」
あっさり思っていたことが読まれた。
「あ、あぁ。スマンスマン。」
平謝りをする。
「奥の部屋に透明化の障壁を造っておいたわ。何かあってもあの二人は見つけられない。」
真剣な面持ちでそう言う。
「おいおい、何かって…そう簡単にやられないだろ?」
「やられたわ。しかも恐らく一撃で。」
変わらぬ表情のまま告げられる。
「な…!隠し玉でも居たのか!?」
思わず声を荒らげてしまった。
「わからない。でも相当な力。」
…これは久々にやるしかないようだ。
「子供たちが寝ているんだ。うるさいお客さんにはお帰り頂くとするか。」
「えぇ、そうね。」
そう言い、扉へと歩き出した。
その背中を抱きしめる。
「俺が、お前を護る。」
耳元で囁く。
「ふふっ、守るのは私のしごと。あなたは頑張って闘いなさい?」
せっかくかっこよくキメたのにうまく返されてしまった。
「こういうときはカッコつけさせ―」
言ってる途中で唇を塞がれた。
「いつも格好いいわよ。」
はにかみながら言う。こいつにはかなわない。
「よし、行くか」
ふたりが気づかないようそっと扉を開けて二人で家を出る。