文句は受け付けん。
IS(インフィニット・ストラトス)、それは、世紀の大天才(大天災)〈篠ノ之 束〉が作りあげた、人間が宇宙に羽ばたく為のマルチフォームスーツである。
しかし、いくら天才の作ったものとはいえ、それには欠点が存在した。
それは…女にしかISは動かせない、ということだ。
まぁそんな常識も、数週間前にぶち破られた。
そう、現れたのだ男でありながらISを操縦させることのできる者が……。
今まで女尊男卑の風潮で苦しめられていた男たちは喜びの声上げ、ISを動かした男〈織斑 一夏〉に感謝の言葉を上げた。
そんな中、もしかしたらまだISを動かせる男がいるかもしれないと、政府は大々的に調査を始めた。
「ふあぁぁぁ……こんな調査速く終わんねえかなぁ…眠くて仕方がねぇ…」
そして、ここに大口を開けて欠伸している男も、一応政府の命令で、ISを動かせるかどうかを調べられている。
織斑 一夏がISを動かし、政府が調査を始めて丁度二週間が経った今もまだ新しい男性操縦者は1人も見つかっていない。
そのため、この男〈神無月 志門〉がめんどくさそうな態度をとってしまうのも仕方のない事である。
これだけ探して1人も見つからないなら、どうせ自分も動かせないと、そう思ってしまったからだ。
それでも一応調査を受けるのは政府の命令だからだというのが大きいが、それでもやはり男の子はロボットに憧れるものだ、たとえ動かせなくても一目見たいと思うのも当然だろう。
だから志門も調査を受けている。
「さぁ、君で最後だよ」
どうやら、自分が昼寝していた間に皆並んでいたようで、最後尾となっていたようだ。
志門は目の前の女性に促されるまま、ISに手を近づける。
「にしても……これがISかぁ……、あのとき見た奴より漢らしいフォルムでカッコいいじゃねぇか……」
志門は手を当てている目の前のIS(打鉄)にそう評価を下し、当てる手に力を込める。
─その瞬間。
「うおぉっ!!?」
光が志門を覆い、眩い光を放つ。
一瞬、調査に使われた会場である学校の体育館は全て淡い緑色の光が反射する。
それはまるで、元から体育館が緑色だったのかと勘違いしてしまうほどだ。
「嘘……! 二人目……!?」
光が収まると、志門は起動した打鉄の中に移動していた。
調査を行っていた女性は、もういないだろうと諦めかけていた二人目の男性操縦者の急な出現に驚き、目を見開く。
「なんか分かんねぇけど…俺、こいつに乗れてるのか……?」
「え、えぇ……そうみたいね……」
志門の独り言のような質問に女性はたじろぎながらも、そう答える。
「っ~~……! おっしゃあぁぁぁぁぁ!!!」
どうせ乗れないと諦めていたが、志門はISに乗れた事を純粋に喜び、子供のような叫び声を上げ、歓喜する。
「あっ!? こ、こら! 嬉しいのは分かりますけど、ISに乗ったまま暴れないで下さい!! っていうか初めて乗ったのになんでそんなに動かせてるの!?」
女性は志門に落ち着くように言葉を投げるが、志門は喜びの余り聞こえていない。
志門がおとなしくなるのはそれから1分後だった。
◆ ◆
あれから3日程時を飛ばして、今、志門はIS学園の教室に居る。
あの後、志門は二人目の男性操縦者ということで、すぐに政府の元まで運ばれた。
何故か手足に手錠をかけられ、見知らぬ女性に抱きかかえられて、為すすべなく。
抱きかかえられた時に押しつけられたおっぱいが柔らかかったからそんなこと別に気にしていない、と志門が手錠をかけられたことをそんなことと感じているのは、単に心が広いからなのか、それとも只のスケベなのか………、まぁ十中八九後者だろう。
「夏君……織斑一夏君!」
「えっ!? は、はい!!?」
俺は急に聞こえた慌てたような声に一瞬驚き、声の主である、俺の右斜め前の席に居る世界初の男性操縦者の織斑一夏に目を向ける。
織斑はどうやら、先生に名前を呼ばれた理由が分かってないようで、周りを見てオロオロしている。
「い、いきなり驚かせてごめんね…、でも今、自己紹介の時間で、“お”の織斑君の順番で…だから、自己紹介してくれないかな…? だめかな…?」
対して目の前にいる、俺のクラスの担任である山田真耶は今の織斑に引けず劣らず慌てている。
「せ、先生、そんなにお願いしなくても自己紹介くらいしますから……」
「本当ですか…!? 約束ですよ!?」
今の時間は皆が自己紹介するための時間だというのに約束もなにもないだろう…。
教師であり、担任であるのだからもう少ししっかりしてほしいと思うが、それと同時に可愛いからこのままでいいとも思う。
「え、えーと……織斑一夏です…。」
ようやく織斑が自己紹介を始め、自分の名前を口にする。
そこで一旦織斑の言葉が止まり、周りが『まさかそれだけじゃないよね?』といったような期待を込めた視線を送る。
まぁ、自己紹介はそのクラスでの第一印象となる。いくら緊張しているとはいえ、流石に趣味か何かを言うだろう。
「以上です!」
…そう思っていた。
織斑は俺の期待を裏切り、きっぱりとそう言い切り自己紹介を終えた。
これだけ全員が期待している中で、そう言えるのは織斑の神経は中々に太い。
俺は素直にそう感心する。
──パァン!!
不意に何かを叩いたような音が聞こえた。
「げぇ!? 千冬姉!!?」
「学校では織斑先生と呼べ、馬鹿者が…自己紹介もまともにできんのか?」
俺は少し視線を上にずらすと、そこには今の叩いた音の音源と思われる出席簿を持った、世界最強の称号を持つ女、〈織斑 千冬〉がそこにいた。
織斑は頭を抑えて出席簿で叩かれたであろう頭を抑え、涙を浮かべてうずくまる。
「なんで千冬姉がここに…」
──パァン!!
織斑はもう一度、千冬姉と呼び頭を叩かれる。
最初のは流石に理不尽と思ったが、一度言われて直ぐ二回目となると、流石に援護のしようがない。
織斑先生は、未だにうずくまっている織斑を放置し、俺達の方に向き直る
「これから一年間、このクラスを担当する事になった織斑千冬だ。私のする事はまだまだ卵の殻を破れていないお前たちを、ひよっこより少しマシなレベルまで育てあげることだ。いいか、決して自分は特別だと思うな、貴様等はまだそこらにいる一般人と殆ど変わらないと思え!!」
流石に世界最強と呼ばれるだけあって、中々の迫力だ。昔テレビで見たときも凄かったが、こうして目の前で見ていると鬼のような迫力がある。
──キャアアアアアアア!!!
「うおっ!? うるさっ!!?」
織斑先生が話し終えると同時に、鼓膜が破れるかのような奇声が聞こえてくる。
まるでワールドカップのサッカースタジアムだ。
全く、女の子のどこからこんなデカい声が出てくるんだと、独りごちる。
「私、お姉様の憧れてこの学校に来たんです、新潟から!!」
「私は北海道から!」
確かに目の前に憧れの人がいれば多少興奮するのも仕方がないと思う。
だが、それにしたってうるさい、別にやかましいのは嫌いではないし、好きではあるが、それでもここまでうるさいと限度という物がある。
「はぁ~……毎年毎年、私のクラスにバカを集中させているのか?」
織斑先生は頭を抑えて、罵倒の言葉を吐きながら、クラス全体を見渡す。
「いいです! お姉様!! もっと罵って!!」
「でも、時には優しくして!!」
ここまでうるさいのが続けば自然と俺の耳も慣れてきたのか、もう不快感を感じる所か、賑やかで楽しいと思えるようになってきた。
「うしっ! んじゃ、一年間よろしくお願いしますぜ!! お姉様!」
大分賑やかになったので、俺も皆と同じように織斑先生に向かって、お姉様と言う
──ゴスッ!!
「っ痛えぇぇぇぇぇ!!?」
織斑先生の振り下ろした出席簿から明らかに出席簿が出してはいけない鈍い音を響かせる。
「貴様もだ、神無月、学校では織斑先生と呼べ、先ほど織斑にもそう言った筈だが?」
俺はさっきの織斑と同じような体制で頭を抑えてうずくまり、上を見上げる。
すると、そこには明らかに怒りの色を顔に浮かべた織斑先生がいた。
どうやらお姉様というのはお気に召さなかったようだ…。
「いいか貴様等、規則などは守らなくてもいいが、私の言うことにははいかYesで答えろ。いいな?」
俺は、どこの独裁者だと言いたかったが、頭の痛みでそれどころではない。
一体どうすれば出席簿でここまでの痛みが出せるのか…
「さて、次の自己紹介は”か”で…貴様だ神無月、早くしろ。」
「いや、ちょっと勘弁してください。 今、頭痛くてそれどころじゃ……」
「私の言うことには、はいかYesで答えろと言ったが? お前は織斑よりも物覚えが悪いらしいな?」
「はい! 分かりました! 自己紹介させていただきます!!」
これ以上、織斑先生の殺人出席簿を食らってしまえば俺の頭が保たない。
ただでさえ頭が悪いのに、これ以上悪くされては適わん。
俺はすぐさま直立し、自己紹介を始める。
「俺は神無月 志門、二人目の男性操縦者だ!! 趣味はうまいもんを食べること、特技はないけどスポーツとかなら結構得意だ! 勉強は苦手だけどとりあえずやれるだけやるんで、皆一年間よろしく!!」
こっから俺のIS学園の生活が始まった。
一応説明しておきます。
「規則などは守らなくてもいいが、私の言うことにははいかYesで答えろ」
と、教師らしからぬことを本文で言っていますが、これはつまり千冬さんが規則を守れ、と言うので、どのみち規則は守らなければいけないという事です