職員日記   作:りんご飴

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なんか私が書きたいものと違う気がする。

さっさと女神救出しよう。それでまた下らない勘違い的なものを書きたいんだ。



第10話

 

ネプギア達が姉の救出に成功する一方、アレンは瓦礫の山に身を隠していた。

 

少し前までは逃げ回っていたのだが、如何せん限界だった。時間にしては30分ほどの僅かなものとはいえ、自分の生命を容易く刈り取る事の出来る人外の敵を前にした緊張感に加え、慣れぬ地形が彼の体力を普段よりも遥かに削った。

プラネテューヌの国境付近、ゲイムギョウ界を左右に分断する巨大な山脈の麓にある小さな村に生まれ、野山を駆け回った所謂山育ちのNOUMINであるアレンにすれば足元の悪さなど気にもならないが、これだけ不気味かつ尋常ならざる地には参った。

 

どうにか休憩しようと瓦礫の合間を縫い、僅かな隙間に身体を滑り込ませた。そして現在である。

 

だが、何時までも安全なセーフティゾーンは存在しない。先程から姿の見えないアレンを探していたジャッジだが痺れを切らし、ついに瓦礫を粉砕し始めた。もしも自分の潜む場所に降り下ろされればアレンはなす術なく木っ端微塵だ。まともに動くスペースなどない瓦礫の中にいては何時かは死ぬ。己から外へ出る事が必要だった。

 

ふと、どうして自分はこんな事になっているのだろうか。そんな疑問が浮かんだ。それは勿論、ジャッジを挑発したからなのだがそんな事ではなく、何故自分が執政官にまでなってしまったのかという事だ。軽い走馬灯だろうか。なんとなく昔の事ばかりが思い出される。

 

まだ自分が村にいた頃、父の農業を手伝う傍ら、偶々訪れた旅の人に聞いた都会の話が脳裏に焼きつき、一体どんなところなのだろうと日ごろ想像していたのだ。村の子供たち全員で夢を膨らませた。子供は10人もいない少子高齢化の典型的な限界集落の様相を呈していた村だったのだが。

しかし、立ちはだかる壁は大きかった。まず学校などありもしなかったので学力、都会に出るだけの金、挙げればキリがない。だが諦めきれなかった俺は村にいた老医者や、寺の住職などの元で勉強というものをした。精々、加減乗除が出来れば十分だという村の大人たちからは学べなかった多くがそこにあった。

日が登る前に水汲みに行き、午前中は畑仕事をする。そして、それが終われば日が沈むまで勉学に励んだ。

そうした努力が身を結んだのだろうか。俺はそこそこ以上に優秀で、それを認めた老医者が伝手で首都の学業機関への渡りをつけてくれたのだ。

やがて、このことは村が始まって以来の大事となった。なにせ村で生まれ、出る事なく死ぬ者もいる程だったからだ。自分を可愛がってくれていた老人達は、果ては学者か、大臣か、などと大仰なことを言っていたのを覚えている。結果だけ見れば大臣クラスの役職にはついたのだが。

母は独り旅立つ俺を心配していたが、やはりというべきか父は反対していた。最後は家出気味に反対を押し切り、首都に向かったのだ。

 

首都についてからはその威容に圧倒されながらもなんとか日を暮らしていた。慢性的な金欠に苦しめられながらも奨学金などをどうにか活用し、勉強を続けた。簡単に言えば俺は世間一般で言うところの甘酸っぱい青春というものを知らない。勉学とバイト、二つに全てを捧げた俺に青春を謳歌する余裕はなかった。

 

なんとか高校と大学を卒業し、公務員試験を受け、教会の生活環境化に就職。

 

友達少ない、恋人いない、仕事は窓際、灰色過ぎるだろう俺。

 

昔から思い出しても俺が何故執政官になったのか本当に分からないな。

 

 

 

「アレン・エドワードォォォォオ!!!」

 

ハッと、我に返る。

ジャッジの咆哮は思考の海に沈んでいたアレンを現実に引き戻した。

 

「どォこだァァァァァァア!!」

 

「全く、少しくらい休ませてくれても良いじゃないか」

 

相手をこれ以上待たせるわけにもいかないか。そう判じたアレンはジャッジの前に躍り出た。

 

「探したぞッ!探したぞォォォォッ、アレン・エドワード!!」

 

「五月蝿いにも程があるだろう。一々叫ばないとやっていられないのか?」

 

耳が痛い。そう感じるくらいにはジャッジの咆哮を聞いている彼にすれば一言でさえ、鼓膜を揺さぶるのは如何なものかと思う。

 

「だが、俺の役目も多分終わっただろう。時間は稼げた。これだけあれば女神様達の救出も終わっているはずだ」

 

あとは女神様達が無駄に五月蝿いジャッジの声を聞きつけて此方を助けに来てくれれば万事解決となる。

 

「なぁ、ジャッジ・ザ・ハード。俺は強いと思ってるのかもしれないが、それでもただの人間だ。女神様、候補生を合わせて8人の方が強い相手だと思わないか?」

 

「マジックにやられた連中だろう!」

 

「かもしれないが、8人だ。マジック・ザ・ハードに敗れた時の女神様は5人だった。たかが3人、されど3人だ。彼女らはお前の仲間の……なんだったか、えぇと、ぁあと、……トリップだ!」

 

「トリックだッ!」

 

あ、違った。アレン自身は直接接触することなく話を聞いただけだった所為か、うろ覚えだったのだ。幼女大好きなところとその名前はかつて知り合ったトリックさんを思い出すが、関係あるのかないのか。

 

「ごほん、トリック・ザ・ハードを撃破している。この点を踏まえれば満足の行く戦いが出来ると思うが?」

 

「目の前のお前が先だァ」

 

「それが間違いだ。俺はお前如きに本気で戦うつもりはない。目の前の敵は戦わずに逃げるだけ。それなら、確実に戦ってくれる女神様達を相手にする方がお前にとって利益だろう」

 

勿論ハッタリである。本気とか既に出してるし。

この状況で「お前に本気を出させてやる」みたいな展開になったら割と詰みなので危険な賭けではあるが、どうせこのまま逃げてもジリ貧だ。アレンは手札が悪いなら取り敢えず賭け金をレイズするタイプだからと言えよう。

 

頭がすっからかんの脳筋かと思っていたが損得勘定くらいは出来るらしく、唸りながらも思考している。

 

アレンは余裕の表情を崩さない。

崩した瞬間に、dead endな事を考えれば、崩せないというのが正しいが。

 

「チッ!そこを動くんじゃねぇッ!!すぐに戻って来てお前を殺してやるからなァァァァァア!!」

 

「最後まで騒々しいやつだ」

 

賭けには買った。

一安心、緊張の糸が解け思わず地に座り込む。

 

安堵の溜息をつくことで、一種の極限状態で加速していた思考が停止気味ながらも状況を整理していた。

 

そして、この状況でようやくある考えに至った。

 

もしも、もしも女神様達が負けたのならば………

 

「やっべぇ……完全に忘れてた」

 

 

 

 

 

 

 

 




次から頑張る。
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