魔法少女リリカルなのは~ご近所の魔法使い~   作:イッツウ

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戦闘シーンにおいて

パワーバランスおかしくない?

と思う方も、もしかしたらいるかもしれないと思うのですが

この作品は主人公側に仲間が多いので、相対的に敵側も強くしてあります

作者の描写がクソなのでそう捉えられないとしても

そういう事にしておいてもらえるとありがたいです


25・互いが敵ならば?

 

『アリサ』

 

 

 シグナムと名乗った彼女の戦いは凄まじいの一言だ。

 流れるような連撃に、心眼持ち――この場合は経験則かしらね――のような動きの先読み。

 互いにベルカ式の使い手。それでも私が押されるのは、彼女と私とを隔てる技術と経験の差があるから。ただの戦いの場数だけじゃない。

 

「ハァッ!」

「クゥッ!」

 

 左腕の手甲で防御はしたけどまた弾き飛ばされる。追撃に入るシグナムの姿が見えたけどやられてばかりじゃいられない。

 

「このっ!」

 

 崩れた体勢からそのまま強引に体を回転させてグローリーを大きく振るう。シグナムも少しの驚愕を顔に浮かべながらも、デバイスでそれを防ぐ事によって追撃は不可能になる。

 

「あそこから強引に一撃を放つとは…さすがに予想外だったぞ」

「まぁ結局、防がれたけどね」

「おまえは……経験が浅いな? 正確には私のようなスタイルとの対人戦が」

 

 ……やっぱり見破られた。

 訓練で近接戦はフェイトや鈴が組み手の相手をしてくれるけど、スタイルも違うし訓練の域を出ない。ジュエルシード事件の際に相手をしていたのも、傀儡兵だから人のソレとは違う。

 対して彼女は『騎士』としての洗練された対人戦の動きを遺憾なく発揮している。素人目から見ても分かる程ね。

 彼女とのその差を自覚してるからこそ、私は多少強引でも攻めなければ勝ちの目は見出せない。それほどまでに勝ち目は薄い。

 けど――

 

「だからって逃げ出すような事はしたくないのよ!」

「気概は本物みたいだな……レヴァンティン」

 

 ガコンッ!とシグナムの剣がまるで拳銃のようにスライドし、内部から空の薬莢を吐き出す。同時に彼女の魔力の高まる。

 あれこそが蓮さんから教えてもらったミッド式とベルカ式との違いの一つ。

 

「カートリッジシステム…」

「そうだ。おまえはどうした? 使わないのか?」

「……使えないのよ」

「何っ?」

 

 私のグローリーはその機構を外している。

 まだ魔法を使い初めの頃の私がそんなシステムを使いこなせるはずもなく、蓮さんが意図的に外したのだ。おまけにグローリーのカートリッジシステムはさらに凶悪で、術者に途方も無い負担をかけると蓮さんは言っていた。

 蓮さんのその優しさが今は仇となってしまうとはね。

 

「カートリッジも無しに私に勝つつもりか?」

「余計な気遣いはいらないわ。私はただ全力でアンタを…討つ!」

「……そうか。ならば言葉は不要だな。参るぞ、アリサ・バニングス!」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『鈴』

 

 

 突き出していた拳を収め、目の前のヴィータと対峙する。ヴィータの方も未だに構える様子は無い。

 互いに無言。渇いた空気が流れるのみ。

 どれくらいの沈黙が続いたのかはわからないが、埒が明かないと判断したのかヴィータの方から口を開いた。

 

「…まさかおまえが魔導師だったなんてな。私の事を知っててあの時、勝負を挑んできたのか?」

「んなわけねぇだろ、偶然だ。聞きたいことがある。おまえがこんな事をしたのか?」

「何だよ? 知り合いなのか?」

「友人だ。で、どうなんだ?」

「……そうだって言ったらどうすんだ?」

「ぶっ飛ばす!」

 

 駆け出す。収めていた拳を再び握り、魔法陣を展開させる。

 

「【衝撃】!」

「くぅっ!」

 

 少々奇襲気味になってしまったにもかかわらず、ヴィータの展開した防御魔法に阻まれる。

 体ごと後方に大きく押されるヴィータに対して俺は手を休めない。続いて放った無誘導の【射撃】は容易く避けられるが、相手の回避を想定した上での【射撃】だ。行動を先読み、更に【射撃】を放とうとする。

 

「シュワルベ…フリィィゲェン!」

 

 だがヴィータはいつの間にやら手に持った4つの小さな鉄球をハンマー型のデバイスで打ち出した。

 【射撃】をキャンセルし、真っ直ぐに向かってくるソレを防ぐ。

 

「【盾】!」

 

 ギィン!と耳障りな音が響き、六角形の魔法陣の盾に阻まれた鉄球は音を立てて砕ける。

 息をつく間もなく、今度はヴィータの方がデバイスを叩きこもうと跳躍してきた。

 

「ぶっ潰れろぉ!!」 

 

 ヴィータのデバイスがガコンッ!と一部をスライドさせる。そして魔力の高まりを感じた。

 けど俺の方は慌てず騒がず。

 タイミングを見計らって向かってくるヴィータに合わせるように跳躍。

 

「ここだぁっ!!」

「なにぃ!」

 

 俺が避ける、もしくは受けると思ってたんだろう、驚愕の表情を浮かべるヴィータ。ヴィータのデバイスは振るわれた頃には俺は既に零距離に飛び込んでいた。

 ヴィータの得物はハンマー。つまり、その鎚の部分でダメージを与える。なら鎚に当たる前に零距離にまで接すれば大したダメージにならない、そう踏んで距離を詰めたのだ。

 結果、俺にはダメージは伝わっていない。ショルダータックルで突っ込んだために肩口がヴィータの腹部にめり込み、ヴィータの口から空気が強制的に吐き出される吐息が耳に届いた。

 

「かふっ…」

「もう1発だ、【衝撃】!!」

 

 さすがにあの距離と体勢からはヴィータも防御が出来ず、その小さな体は見事に吹っ飛ばされる。 地面と並行して滑空、そのまま建物に吹っ飛ばされることで漸く動きを止める。その際に崩れた建物から勢いよく粉塵が巻き起こる。

 そこで溜飲を下げた俺の頭は徐々に冷静になっていく。そして当初の目的の確認。

 

「なのは、フェイト! 大丈夫か!?」

 

 駆け寄ってそれぞれの状態の確認をする。

 意識を失っているし、傷を負ってはいるがどちらも呼吸はしているので命に別状はなさそうだ。その事実に胸を撫で下ろすも、この時2人の状態に違和感を感じた。

 バリアジャケットが解除されている上に、魔力をほとんど感じないのだ。

 すぐに思い出したのは、フェイトが言っていた魔力だけを奪われる魔導師襲撃事件の事。

 

(という事は……まさかコイツらが?)

「テメェェェェェェェェェ!!!!」

 

 背後から怒声と何かが崩れるような音が響いた。

 振り返ると、建物の崩落によって全身ボロボロで煤だらけの――そして怒り心頭なヴィータがいた。

 アレをくらってダメージを負っている筈なのにソレを感じさせないくらいに怒っている。

 ……当たり前か。やった本人が言うのもなんだけど。

 

 ヴィータが構え、俺も再び構える。

 殺気に溢れ、睨み合う俺達。

 

 そして同時に踏み出す――事ができなかった。

 

「全員動くな! 時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。これ以上の戦闘行為を禁ずる!」

 

 突如として結界が崩壊。それと聞き覚えのある声と姿が確認できた。相変わらずの黒い制服にデバイス。その姿は俺の記憶の中と相違ない。

 

「…クロノ?」

「チッ、時空管理局かよ。シャマル!」

 

 クロノの姿を見た途端、ヴィータの奴は顔を顰める。そして誰かの名を呼んだと思ったら、ヴィータの足元にベルカ式の魔法陣が展開される。

 

「リン! とりあえず勝負は預ける。けどテメェは必ずアタシが倒すからな!」

 

 捨て台詞を吐き、消えていった。

 どうやら気付かない場所に仲間が居て、ソイツに逃走の手筈を頼んだのだろう。察するに、さっきの『シャマル』とやらはその仲間の名前のようだ。

 

「クソッ、逃げられたか…」

 

 クロノが俺の前に下りてきた。

 

「大丈夫だったか? 鈴」

「あ、ああ。久しぶりだな、クロノ。元気そうで何よりだ」

「うん、君も変わりなさそうだな」

 

 久しぶりの会話だったためにテンポが掴めず、ありふれた社交辞令のようになってしまう。とりあえず起きた事が多すぎて脳内整理が追いつかない。

 頭をガリガリと掻いて目の前の執務官に説明を求める。

 

「…で、当然説明はしてくれるんだろう?」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『シグナム』

 

 

「ここまで、だな」

「ハァ…ハァ…」

 

 目の前のアリサ・バニングスは最早戦える状態ではない。

 纏っている甲冑は所々の破損が目立ち、その素肌にはいくつかの傷。本人もデバイスに縋ってようやく立っている状態だ。

 しかし、それでもこちらに向ける眼光は一向に衰えを見せない。

 そもそも私自身もこれほど長引かせるつもりはなかった。だが彼女の不屈の精神とタフネスさが徐々に私を追い詰めていった。

 だからこそ余力が残っている内に決着をつける必要があった。その結果が今の状態である。

 これ以上動かれるのはマズイので彼女をバインドで拘束する。

 

「っ! あぅ!!」 

「すまないが――っ!?」

 

 ガラスの割れるような音と共に結界の崩壊。さらに上空から幾つもの剣が私に向かって降り注いだ。

 後方に大きく跳ぶことで剣の雨を回避する。

 

「アリサちゃん!!」

「すず…か?」

 

 聞き覚えのない声に上空へ顔を向けると、そこには漆黒のバリアジャケットを纏い、十字架のようなデバイスをこちらに向ける少女が居た。

 その出で立ちから魔導師だという事が容易に窺い知れる。ならばこの剣の雨も彼女の仕業なのだろう。

 

「クロス、取り囲んで!」

《承知、空間掌握》

 

 彼女の声と共に、いくつかの剣の先端を覗かせた小さな魔法陣が私を取り囲む。

 

「クッ!? 囲まれたかっ…」

 

 マズイ状況だ。

 魔法で全方位を囲まれたこの状況からの回避は困難。かと言って受けるにしても防御魔法はともかく、これ以上は恐らくレヴァンティンが耐えられない(・・・・・・)

 

「ソードシュー――ッ! キャアッ!!」

「すずかっ!!」

 

 だが彼女の魔法は行使されることは無かった。

 それはバインドによって拘束されてしまったからである。無論、私ではない。同じヴォルケンリッターが『盾の守護獣』

 

「大丈夫か? シグナム」

 

 この男、ザフィーラのおかげだ。

 

「ああ。助かったぞ、ザフィーラ」

「礼には及ばん。それと先程シャマルから連絡があった。管理局が介入してきたそうだ」

「何っ!」

「蒐集は既に済ませてあるそうだ。現在2人は管理局の追跡を振り切ってこちらに向かっている」

「そうか。なら到着後、速やかに蒐集を終わらそう。あまり長引かせると感づかれる恐れがある」

「ちょっと、アンタ等!!」

 

 私達に割り込んでくるのはアリサ・バニングス。その仲間であろう少女――すずかと言ったか?――も、共にバインドで拘束されて地面に投げ出されている状態だった。

 

「さっきから『しゅうしゅう』だの何だの、一体何が目的なのよ!」

「…答えるつもりはない」

「何ですって!!」

「すまないとは思っている。だがこれも我が主のため、悪く思うな…」

 

 このような事をほざく今の私はどのような顔をしているだろうか?

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「それにしてもさすがシグナムね。同じ騎士が相手でも勝っちゃうなんて」

「いや、あれ以上続けていれば……負けていたかもしれない」

「どういう事だ?」

「これだ」

「っ!! レヴァンティンが…」

「そうだ。あれ以上打ち合っていたら…破壊されていただろう…」

「武器破壊…か」

「あの少女、アリサ・バニングスは良い騎士になるだろうな」

「もしこれからもあの連中が邪魔をしてくるのであれば……かなり手強い相手になるぞ?」

「ああ、これからは管理局の介入を避けるため、蒐集は場所を変えたほうがいいだろう。幸い今日だけでかなりのページが稼げた。遠からず完成するだろう」

「そうね、それがいいわ」

「了解した」

「………」

「? ヴィータ、聞いているのか?」

「あっ? あ、ああ…聞いてるよ。遠出するんだろ?」

「そうだが…何かあったのか?」

「いや、何でもねぇ…」

「ならばいいが…」

 

 そして彼女達はその地に降り立つ。

 自身の帰るべき場所へ。自身を待ってくれている人のために。

 

 

「おかえり~。遅かったね、どないしたん?」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『鈴』

 

 

「ほい、あ~ん」

「あ、あ~ん」

 

 もうコレぐらいの行為では動じなくなってきた自分を褒めてやりたい。

 

 

 

 ここは時空管理局の医務室。

 何で俺達がここに居るのかというと、なのはとフェイトの治療のためだ。

 2人は怪我自体は大した事はないが、魔導師の魔力の源であるリンカーコアを抜き取られていた。怪我よりもそっちの方が重大だったために本格的な検査が必要になり、リンディさんやクロノの計らいでここに搬送されたのだ。

 ちなみにここにはなのはとフェイトだけじゃなく、アリサとすずかも居る。2人もなのは達と同じようにリンカーコアを抜き取られていた。

 

 検査の結果、暫く魔法は使えなくなるだけで他は大した異常なし。

 しかし、念のためにみんなは4人部屋の病室で一泊の入院。入院生活のお約束として、俺は何処からか拝借してきたリンゴを剥いて振舞っている。それが冒頭の遣り取りね。

 

 

 

「ん、おいしいよ」

「それは良かったな、フェイト」

 

 そうです。餌付けされているのはフェイトなのです。おかげでなのはとアリサとすずかからの突き刺さる視線のせいで俺の胃がストレスでマッハなんだが。

 リンゴは数があっても、俺の体は1つだからさすがに全員にやる気は起きない。それにジャンケンで勝ったのがフェイトだったんだからそう睨むなよ。ちゃんと切って、皿に配ってあげただろうによ。

 でもおいしそうに食べるフェイトの無邪気な顔が小動物を思わせてくれるので、胃のストレスが癒されてプラマイゼロ……にはならないな。

 俺の胃よ、もう暫くもってくれ。

 

 

 

 なのは達の相手を終え、病室から出るとそこにはクロノの姿があった。腕を組んでこちらを真剣に見据える瞳から察するに、なのは達の見舞いだけってワケではなさそうだ。

 

「君に話がある」

 

 …とりあえず、場所を変えるか。

 

 

 

 

 

「今回の事件に協力してほしい」

 

 クロノの話は以前のように俺の手を借りたいという事だった。

 なのは達は現状がアレなので俺だけだ。俺としてはコチラから協力させてほしい所だったので、向こうから言ってきたのは色々と好都合だ。

 なのは達の治療にデバイスの修理、そして襲撃者達の情報など管理局から協力を得なければならない事が多すぎるから、ソレと引き換えに俺の手を貸すといった取引を持ちかけようと目論んでたんだが事態は良い方に転んだ。

 それにもう1つ、思うところもあるしな。

 

「ああ、かまわない。ただ今のところ手を貸すのは俺だけだ。なのは達はあの状態だからな」

「わかってるさ。それに君は連中の内、1人を単独で退ける程だ。それだけでも十分な戦力さ」

「なら、コンゴトモヨロシク」

 

 クロノに手を差し出し、互いに握手を交わす。契約成立の証といったところだ。

 話は以上とばかりに俺は切り上げようとしたが、クロノからもう1つだけ問いかけが来た。

 

「もう1つ、聞きたいんだが……どうして彼女が――フェイト・テスタロッサが居る?」

 

 …クソ。だからさっさと話を切り上げたかったのに。

 あのジュエルシード事件の際、クロノ達の目の前でフェイトは事件の首謀者であるプレシアさんと共に虚数空間の海へ飛び込んだのだ。管理局の方では両名死亡扱いとなっている。

 そんな人物の1人が目の前で生きていた。これは事件を担当した執務官として無視できない事なんだろう。

 一応、2人は元から地球出身として戸籍を偽造しているから他人の空似としてシラを切る事もできるが……クロノは何だかんだで協力し合った仲で俺としても情を抱いている。だから嘘を吐くにしても、罪悪感が募り心苦しくなる。

 そんな俺の葛藤を察したのか、クロノは言葉に続きを付け足した。

 

「これは執務官として聞きたいわけじゃない。クロノとして個人的に聞きたいんだ」

「何だと?」

「あの事件はもう決着がついている。それを今更蒸し返して更に後味悪くするつもりもない。彼女の身の上を知っているから余計にね」

 

 執務官としては良くないけど、とクロノはそこで締め括った。

 

 俺はクロノという人物を見誤っていた。

 確かに情を挟むのは執務官としてはよろしくない。けど、だからこそ好感が持てる。クロノは信用できる。

 まったく、俺の眼は海のリハク以上に節穴だな。俺も忘れがちだが、年上の身としては立つ瀬が無いなぁ。

 まぁ、なのは達を含め、こいつらが早熟すぎるってのも要因の1つだと思うんだがな。

 

「クロノ、アンタを信用して、馴れ馴れしいとは思うが友人として話す。だから一切の口外は無しで頼む」

「見くびるなよ? それくらいの事は弁えてるつもりだ」

 

 これは失礼。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『すずか』

 

 

「いいな~いいな~。フェイトちゃんは鈴君に食べさせてもらって」

「な、なのは。もう許して…」

「なのは、もう許してあげなさいよ…」

 

 なのはちゃんのジトっとした視線を受けて泣きそうな顔のフェイトちゃん。私もアリサちゃんも羨ましいとは思ったけど、なのはちゃんが抱いたヤキモチはそれ以上に根深かったみたい。

 そんな喧騒を眺めながら、私はアリサちゃんを助けに行った時の事を振り返る。

 

 

 

 魔力の反応を感知した私はお姉ちゃん達には内緒で家を飛び出した。

 辿り着いたのはアリサちゃんの家の辺り。しかも結界まで張ってあった。

 私達が使うミッド式とは違うからアリサちゃんかな?と思ったけど、アリサちゃんは結界魔法が使えない。だったらこの結界は誰が張ったの?

 そこで思い出したのがフェイトちゃんの言ってた魔導師襲撃事件。

 まさかと思ったけどありえない事じゃない。そう判断した私は結界を解除しようと躍起になるけど、堅牢すぎてうまくいかない。

 

「クロス、何とかできない?」

《今の主の技量では解除は不可能です。ですが主の魔力量でしたら恐らく破壊は可能です》

 

 それを聞いて、即行動に移った。持ちうる魔力のほとんどを注ぎ込んだ『ブラッディティアーズ』を結界に向けて落とす。

 血のような真紅の魔力の剣と結界が鬩ぎ合い、両者が音を立てて崩壊した。

 結界の破壊と同時に飛び込むと、下降でアリサちゃんがバインドで縛られていた。私としては珍しく感情に身を任せて、見知らぬ女性に向かってソードシューターを放った。

 魔力をほとんど内包していないブラフのような魔法だけど、女性はそれを回避する。これがブラフなのはアリサちゃんとの距離を離すため。

 残り少ない魔力を注ぎ込んで、彼女を取り囲むように本命のソードシューターを展開させる。私の合図で射出させるというところまで追い込んだけど、そこで思わぬ横槍が入った。

 彼女のものじゃない、誰かのバインドによる拘束。そしてその仲間もすぐに現れた。

 鍛えられた体躯にアルフさんと同じような獣耳を生やした男性。おまけに私を拘束するこのバインドからして一流の魔導師。

 私の魔法は霧消し、アリサちゃんと並んでその身を横たえる事になった。

 私とアリサちゃん、共にバインドで拘束され、鈴君たちへの念話も通じないこの状況は詰みといった所でしょう。

 でもそんな状況にも関わらず、アリサちゃんは臆する事無く女性に対して噛み付いてます。こういった状況でも決して衰えないアリサちゃんの気概は見習うべき事だと感じた。

 ただ女性もアリサちゃんに対して答えを返すことはありませんでした。でもその折に、一瞬だけ見せたその表情は何処か苦しそうでした。

 それから暫くして2人の人物がやって来ました。1人は金髪で民族衣装のような衣を纏った大人の女性。そしてもう1人は赤毛にゴシック衣装の、私と同じかもしくは年下の女の子。親しげに会話を交わす2人はこの人達の仲間ね。

 話が終わった金髪の女性がその手に持った辞書のように分厚い本を開いて私達に向けて翳す。本が不気味に脈動し、輝いて……

 

 そして気がつけば私達4人はこの医務室に居た。目を覚まして最初に感じたのは違和感。胸の奥の何かが抜け落ちたような虚無感。

 そして思い出すのは魔導師襲撃事件の際の被害。試しとばかりに魔法を行使しようするけど使えなかった。

 私達は魔導師襲撃事件の被害者となったワケですね。

 それから他のみんなが目を覚まし、やって来たお医者さんのような人と数ヶ月ぶりの対面となるリンディさんに事情を色々と説明してもらった。

 それがつい1時間前ほどの出来事。

 

 

 

「いい加減にしなさい、バカなのは」

「あいたっ!」

 

 アリサちゃんのチョップがなのはちゃんの頭に振り下ろされる。頭を抱えて涙目のなのはちゃん。フェイトちゃんはようやく解放されて安堵の溜め息。そんな微笑ましい光景に見惚れているとこの部屋に人が訪れた。

 

「災難だったな、調子はどうだ?」

「フェイト、大丈夫なの?」

「「「「蓮さん! プレシア(かあ)さん」」」」

 

 いきなりの登場にびっくり。それは多分、みんなも同じだと思う。だって顔が物語ってるから。

 そんな私達の様子に気付いているのかいないのか、蓮さんとプレシアさんは近くのパイプイスに腰掛ける。

 

「あの…蓮さんは何故、ここに?」

「ん? 元々こっちの方に用事があって滞在してたからな。そんな時に鈴から連絡を受けてお前達がここに居ると聞いてな。ちょっと見舞いに来たわけだ」

「ああ、そう言えばそうでしたね」

 

 納得しちゃった。

 それから蓮さんは起こった事件の詳細を私達に尋ねてきました。私達はそれぞれ感じた事を1つ1つ話して、蓮さんは静かに聞き入ってます。プレシアさんもフェイトちゃんに寄り添いながら聞き手に徹していた。

 

 

 

「…闇の書、か」

「闇の書?」

「何です、それは?」

「ああ……多分、後で管理局の方から説明があるはずだ。その時にでも聞いてくれ」

 

 説明が面倒だと最後に締め括る蓮さん。ここに来て丸投げですか。

 

「まぁとにかく、今はしっかりと養生しておけ。まだ本調子ではないんだから」

「…そうですね。そうさせてもらいます」

「うん、蓮さん。お見舞いに来てくれてありがとう」

「ありがとうございます」

「あ、あの…蓮さん!」

 

 突然、アリサちゃんが声を荒げる。そういえばさっきまで妙に静かだっただけどどうしたんだろう?

 

「ん? どうした、アリサ?」

「グローリーに……カートリッジシステムを戻してください!」

「却下」

 

 キッパリ、スッパリと一刀両断。惚れ惚れするぐらいキレイに切り捨てましたね。

 

「いいかアリサ? カートリッジシステムは確かに瞬間的な強化を可能とする。だがそのため、デバイスと術者に多大な負担が掛かる。これは初期の頃に教えたな? で、グローリーだが、こいつは私が手掛けた一品でちょっと特殊でな。システムの際、両名に掛かる負担は他のアームドデバイスの比ではないんだ。グローリーはそれに耐えられるだけの耐久力はある。けどなアリサ、術者であるおまえはそうはいかない」

 

 忘れがちになるけど、私とアリサちゃんのデバイスは蓮さんのハンドメイドの一品。だからこそ誰よりもグローリーの性能と共に危険性も把握しているから蓮さんは優しく諭す。

 

「掛かる負担によって下手をしたら体に何かしらの障害を負う事になりかねない。だから私はお前に渡す際にシステムを外したんだ。それにグローリーはカートリッジシステムが無くとも十分に優秀なデバイスだ。それでいいだろ?」

「それでは…」

「?」

「それでは足りないんです。あの人に勝つには…」

 

 アリサちゃんのシーツを握る手に力が込もる。俯いた顔からどんな表情をしているのかはわからないけど、ここに居る一同が共通してわかった事があった。

 アリサちゃんは…とても悔しがってる。

 アリサちゃんだけじゃない、本当は私達だって悔しい。でもそれを表には出さず、必死に気丈に取り繕ってた。現にさっきまで普通に接していた私達も、今は沈痛な面持ちでいる。

 

「あのシグナムって人は騎士として毅然と向かってきました。その在り方に私は……応えることができませんでした。何と言いますか、負けた事もそうなんですけど、あの人の誇りに応えられなかった事が……とても悔しいんです」

「……」

「だから次にあの人と戦うときはただの”ベルカ式の使い手”じゃなくて…”ベルカの騎士”として戦いたいんです! お願いします!」

《マイスター、私からも頼みます》

 

 アリサちゃんの必死の懇願の声に蓮さんがどう思ったのかはわからないけど、アリサちゃんの想いは届くと何故か確信できた。

 長い沈黙の後、蓮さんはプレシアさんから1枚の紙とペンを受け取って何やら書き込んでいく。そして書き終わるとアリサちゃんに手を差し出す。

 

「……グローリーを貸せ」

「えっ?」

「暫くはデバイス無しでの訓練だ。この紙に書かれた訓練メニューをこなして、後日私が大丈夫だと判断したらシステムを取り付けてやる」

「ほ、本当ですか!?」

「嘘はつかん。誓おう」

 

 アリサちゃんは待機状態のグローリーを蓮さんに渡して紙を受け取る。

 

《ご武運を、アリサ様》

「まかせなさい。絶対にクリアしてみせるから」

 

 アリサちゃんは拳を握って、力強く言い放つ。その姿にはさっきまでの悲壮感はもう見受けられない。

 

「じゃ、私達はそろそろ戻る。また後日会おう」

「はい、ありがとうございます」

 

 そして蓮さんとプレシアさんは去って行った。

 

「よし! 退院したら早速頑張るわ……よ…」

 

 意気込んでいたアリサちゃんだけど、その訓練メニューの書かれた紙を見た途端に動かなくなっちゃった。私もなのはちゃんもフェイトちゃんもどうしたのかと思って紙を覗きこむ。

 

「「「…うわぁ~」」」

 

 これは訓練というより懲罰だね。

 

 がんばってね、アリサちゃん。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

『鈴』

 

 

 さてはて、俺が管理局に協力するようになってから、1週間以上経ちました。

 えっ? 時間が飛びすぎ? 気にしなさんな。俺は気にしない。

 

 それまでの出来事といったら、まず管理局のアースラクルーのリンディさん達がこっちの世界の――しかも近所のマンションに引っ越してきた。

 といってもセーフハウスの意味合いでだけどな。俺も協力者としての立場から、このセーフハウスに寝泊りする事が多い。 

 リンディさん達が思った以上、普通の生活をしていたことに何故か違和感を感じた。後、余談だけど俺が作った夕食を食べて女&母親としての威厳を砕かれた女性2人が居た。

 

 次になのは達だがリンカーコアは無事に治った。

 一応、この事件には協力する姿勢ではいるが、今のままではまたやられてしまう可能性が高いので現場には出ずにひたすら訓練の日々だ。

 大破していたなのはとフェイトのデバイスは修理と共に強化されて戻ってきた。

 

『レイジングハート・エクセリオン』と『バルディッシュ・アサルト』だってさ。

 

 冗談半分で「中二病だー!」って言ったらツープラトンでアックスボンバーをかまされた。首が折れかと思った。

 アリサのデバイスはまだお預けの状態で先生の判定はまだ下ってはいない。あ、それとすずかも何やらクロスを弄っているようだ。いつの間にメンテだけではなく、改造までできる程の知識を得たんだ?

  

 そして肝心の事件だけど中々に進展しない。

 向こうは魔力の蒐集を目的としていて、今ではこの地球ではなくいろんな次元世界で蒐集しているみたいだ。各所に網は張っているけど、どうしても後手に回らざるをえない。

 その度に俺とクロノのコンビで向かい、幾度かの交戦もあったがすぐに逃げられる。向こうにはかなり優秀な参謀がいるようだ。

 

 後は…近々アルフをユーノを無限書庫で闇の書についての情報収集させるつもりでいるくらいかな?

 ユーノはともかく…アルフは明らかにミスキャストのような気がする。

 

 

 

 大雑把に並べると、これぐらいかな?

 そんな日々を送っている俺だけど、ちょっと懸念していることがある。

 それはヴィータだ。

 正直に言うと共に遊んだ仲であるだけに、あまりあいつとの戦いを割り切れていない。

 これは自意識過剰とも思えるような推測なんだが……割り切れていないのはヴィータの奴も同じのような気がする。

 あいつは俺と戦って退散する際にいつも辛そうな顔をしている。そんな時、俺も同じような顔になってると思う。

 何とか和解できないかと思ってはいるが、あいつは頑なに口を閉ざしたままこちらに力を振るう。

 はぁ…本当に世の中って難しいよなぁ。

 

 ああ、やめだ!

 このままネガティブに考えたって埒が明かない。そうだな……次に会った時は逃がさないように注意しながら叩きのめして、無理矢理にでも事情を吐かせよう!

 それによって一層仲が悪くなるだろうけど、今でさえ十分に悪いんだ。悲観するな!

 よっしゃ!

 そうと決まればさっさと現れろ、ヴォルケンリッター!

 次に会った時が年貢の納め時だ!

 

 ハァーーーハッハッハッハッハッーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「ささ、大した御持て成しはできんけど、ゆっくりしていってや♪」

「い、いえ。お構いなく…」

 

 テーブルを挟んで目の前の少女はにっこりと笑って紅茶を差し出してくる。その笑顔は人を惹きつけるような魅力的な笑顔だ。

 

 背後の女3人と犬1匹はきつ~く睨んで殺気を飛ばしてくる。その殺気は人を死に至らせんとする濃厚な殴っ血killだ。

 

 ああ、神よ。これだけは言わせて下さい。

 

「どうしてこうなった…」

 

 





かなり足早な展開になります。
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