モモンガ様迷惑を受ける   作:大きな像の金槌

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すっごいことに気づいた

書けないなら、喋らせればいいんじゃない?


18.戦いの後で

―――――王国の会議室

 

その中は暗い雰囲気に包まれていた。

 

国王を始め、六代貴族が集まっている。さらには魔術師ギルド組合長や冒険者ギルド組合長まで・・・・

 

 

「いきなり呼びだされたと思いましたら、この王都の惨状は一体どういうことです?」

 

「まったく、一体どのような大災害起きたというのか?あの砂漠化した原因とは魔法か何かなのかね?」

 

「少なくとも私が知る魔法のなかにはありません」

 

「魔法でないなら魔王でも現れたとでもいうのですかな?」

 

「ははは、魔王などおとぎ話の存在でしょう」

 

 

皆、好きなことを口にする。

 

 

王が口を開いた。

 

「そのまさか・・・が起きたようだ」

 

 

「?そのまさかとは?」

 

 

「魔王が現れたのだよ」

 

 

「ははは」

 

貴族全員が王の冗談と思える言葉に声を出して笑ってしまう。

 

 

―――――――――――王は決して、その苦悶の表情を変えることは無かった。

 

 

「いや、失礼。王もお年を召されたのでは?そろそろ王子に王位を譲ってもいいのではないでしょうか?」

 

「いやいや、それは失言であろう?」

 

 

王のその表情を読み取ることすらせず貴族は好き勝手に言う。

 

 

一人の貴族が、真剣な表情でそれを受け止めていた。

 

「国王様・・・・それが事実なのですか?一体、なぜ、そのような結論に至ったか説明して頂きたいのですが?」

 

 

 

「今朝方早く、アダマントタイト級冒険者がその事実を告げていったのだ。」

 

 

「はっ、アダマンタイトとはいえ、たかが冒険者のたわごとを信じるおつもりですか。これは、ますます王位を返上することを

お考えになるべきでは?」

 

 

 

「信じられぬのも無理はなかろう。なら、そなたは王都で目にしたものを、どう説明するのだ?」

 

 

その一言を返せるものは、この場に誰一人としていなかった。

 

 

「ですから、魔法でしょう?」

 

 

魔術師ギルド組合長が声を挟む

 

「確かに魔法かもしれません」

 

ほら見たことかと貴族の一人が得意げな表情を見せる

 

「ですが、魔法であれば、明らかに第3位階でおさまるような力ではありませんね。

私の知る限りでこれほどのことを起こせる魔法など存在しておりませんよ」

 

 

 

 

この場にいる最も魔法に詳しいものが、そういうのだ。だれも反論を挟むことは出来ない。

 

「だが・・・・しかし・・・・・」

 

魔法だろうと得意げに言った貴族は口ごもる。

 

 

「であれば、そのアダマントタイト級冒険者は、どうして魔王などと戯言を残していったのです?そもそも、その冒険者は

どこにいるのですかな?」

別の貴族が当然ともいえる疑問を挟む。

 

「それは分からぬ。ただ、魔王を追うとだけ言って出ていったのだ。」

 

 

「ならばなおのことっ、そやつが最も怪しいではないかっ。なぜ行かせたのですっ」

 

 

「蒼の薔薇のメンバーも、魔王を見たというのだ。それに・・・・蒼の薔薇のメンバーの1名は行方不明だそうだ。」

 

 

王国最強の冒険者である、蒼の薔薇を知らないものはさすがにいなかった。

 

その中の1人が行方不明だと?

 

 

「その・・・・蒼の薔薇の面々は魔王を見たのですか?」

 

 

「3名のものが相対したそうだ。だが・・・・・・・・・何もできずに撤退したと言っていた。」

 

 

人類最高峰のアダマントタイト級冒険者が、何もできずに撤退していったとは・・・・・

 

 

全員が重い沈黙に包まれてしまった。

 

 

「なぜ撤退できたのです?それほど強力な存在なら逃げることすら敵わないと思うのですが・・・・」

 

 

 

「その行方不明の蒼の薔薇の一人と、グレンという人物が戦ってくれたおかげで逃げれたそうだ」

 

 

グレン?

魔術師ギルド組合長は、その名前に憶えがあった。

 

「もしや、」グレンの特徴を伝えると「その人物で間違いなかろう」

 

 

スレイン法国へ行くと言っていたが、いつの間に戻ってきていたのだろう?

 

「彼なら、確かに対処できるかもしれませんが、その彼はどこへ?」

 

ガゼフと、その部下と共に戦ったためとはいえ、法国の特殊部隊と戦っていて勝っているのだ。

魔術師ギルドの組員から報告を聞いていたが、第6位階の魔法を使用できるらしい。実力は間違いなくあるだろう。

 

 

「彼も行方不明とのことだ」

 

 

「・・・・・・・王よ。それで、そのなんですかな・・・・・・・その魔王に、どう対処するおつもりで?」

 

 

 

王は考える。

再び相対したとして勝てるのだろうか?

ここ数年の帝国との争いでリ・エスティーゼ王国は疲弊しきっているのだ。

 

現状、砂漠化してしまった王都を復興できるかどうかも怪しいものだ。

 

 

ここまで黙って聞いていたレェブン候がようやく口を開いた。

 

 

「王都の復興は無理でしょう。いえ、それどころか王国が滅びることは間違いないでしょう」

 

 

「なっ、それでも王国に仕えるもののいう言葉かっ」

 

「では、あなたは、この国が復興できると思いになるのですか?」

 

レェブン候の言葉は、ただただ静かな声だった。

 

「いくらなんでも、皆気づいているのでしょう?帝国の毎年恒例の攻撃で王国はひたすら傷ついているのだっ

その状況下で、これほどの惨事が起こったのだぞっ

王国の力と我々六代貴族が力を合わせることが出来たとしても復興は不可能だっ」

 

 

六代貴族筆頭の、怒鳴り声に誰も言い返せないでいだ。

王一人を除いては・・・・・・

 

「レェブン候よ。王国の力だけでは・・・と申したのだな?」

 

「はい・・・ですが・・・・」

 

「よい、申してみるがよい」

 

「王国の復興は無理でしょう。方法があるとすれば、スレイン法国とバハルス帝国に援助を求めるのです」

 

 

他の貴族が口々に異論を挟む。

 

「馬鹿なっ王国に滅べとでも言うのかっ?」

「今まで争っていた敵国だぞっ」

「貴族として恥を知れっ」

 

 

レェブン候は、タイミングを見計らってただ一言

 

「では、他にどんな手があるのです?」

 

 

――――――――――――――――誰も答えられなかった。

 

 

「どうやら結論は出たようだな」

 

「申し訳ありません。これまで続いた歴史を閉ざす結果となりまして」

 

レェブン候が頭を下げる。

 

「よいのだ・・・・・王族の血は絶えることになるかもしれんが、民なくして国はなりたたん」

 

王は思う。せめて我が子らだけでも生きてほしいと。

 

 

国を差し出して国を守ろうとするのだ。

元々の支配者など邪魔でしかない。いつ、どんなタイミングで旗印として祭り上げられるか分からないのだ。

処刑されるか、よくても幽閉だろう。

 

だが、民を守るためには、王族の血を絶やしてでも助力を求めるしかない。

それがせめてもの最後の王としての責務なのだから。

 

 

「では、人選はレェブン候に任せよう。ただちにスレイン法国とバハルス帝国へ使者を遣わせよ」

 

 

その言葉を機に、リ・エスティーゼ王国として行われた最後の会議となった。

 

 

王は思う。

恐らく貴族らは己の地位、財産を守るために奔走するだろう。

だが・・・・・王国を滅ぼそうとした魔王の存在にどう対処する気なのだろうか。

 

あれほどの惨状を引き起こした存在に打ち勝つ存在など・・・・もはや神ではないか。

 

神でも悪魔でもいい。

民を、我が子らを守ってほしいと。




何が起こったか、当事者以外にも分かれば良い思います

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