――そして葬儀が終わった後、再び二人は村長の家でこの周辺の常識を学んだ。
それらの話が終わる頃には夕日が空を染めていた。
グレンは話が終わる頃に、村長にお願いを申し出てみた。
「……村長さん、お願いがあるのですが」
「はい?」
「私は旅人の身。泊まるところが無いので、一泊、寝床をお借りできませんか?」
「いえいえ、貴方様は命の恩人です。どうぞ、何泊でもしていってください」
そういって、死んでしまった家族の空き家を借りることなった。
村長の家を出て、広場へと差し掛かる。そこで数人の村人が三人と一匹に真剣な顔で寄って来た。
「そ、村長」
「どうした、お前達」
「それが――――」
その緊迫した気配に、また厄介事の気配を感じる。
この世界では厄介事ってのは起き続けるものなのか?
村人達の話では、まだ村人の遺体が無いか、あるいは生き残りがいないか周囲を見て回っていたところ、
この村の方角へと馬に乗った戦士風の者達が近づいているのを見たらしい。
そう話し終えたところで、その場にいた全員の視線が怯えたように、懇願するように俺達に向けられた。
「アインズさん、俺はこの村に数日泊まろうかと思うので、ある程度は助けようとおもうのですが?」
「まぁ、乗りかかった船ですし、少しだけ付き合いましょう」
「村長さん、ここの一番大きな建物は・・・村長さんの家かな?生き残りを全員集めて避難して下さい。村長は大変だと
思いますが、私たちと広場へお願いできますか?」
俺がそう言うと、村人達は頷いた。そして、駆けていく。鐘で村人達を集め、村長の家に集合させたら
アインズは残っていた死の騎士を自分の背後へ配置しする。
俺はシロモフを連れて、村長と共に招かれざる客人達を待った。
「グレンさん、それってスピアニードルですか?」
「ええ、そうですよ。このふさふさもふもふの感触。たまりません。昔テイムしていた子達は最終日に手放してしまいましてね。
俺と一緒に消えるのではなく、せめてあの世界が仮想とはいえ、続いて生きてくれれば・・・と願いたかったんですよ。
たんなる願望ですが・・・
でも、この子は終わりのあの日に、再度テイムしたんですよ」
その瞬間にこちらに来ましてね
言外にそれを込めてアインズさんに伝える。
「そうでしたか・・・・」
やがて村の中央を走る道の先に数体の騎兵の姿が見えて来た。彼らは隊列を組み広場へと進んでくる。
見える姿になんとなく違和感を感じる。
武装に統一性がなく、各自でアレンジを施しているのだ。とても正規軍には見えない。
歴戦の戦士団?。悪く言えば武装の纏まりのない傭兵団だろう。
彼らは死の騎士とスピアニードルを警戒しつつ、見事な整列をして見せた。そして、一人だけ進み出て来る。部隊長だろうか?
俺たち3人と一匹を見て驚いているようだった。
あの視線はちょっと怖いなぁと思っていると
「この村の村長だな?」
「あ、はい」
「横にいる方々を紹介して頂けないだろうか?
男の名はガゼフ・ストロノーフ。王国の戦士長を務めているらしい。この近隣を荒らして回っている帝国の騎士達を討伐するために
王命を受けて、村々を回っているのだとか。
村長曰く、王国の御前試合で優勝を果たした凄腕の戦士であり、王直属の精鋭兵士達を指揮する立場の人物。
つまり、王国でも身分が上の立場の人間である。
「それには及びません。初めまして、王国戦士長殿。私は旅の魔法詠唱者です。こちらはアルベド。私の最も信頼する側近です。」
「俺もただの旅人です。村が襲われていたので、たまたま助けに入っただけです。アインズさんとは、この村で知り合いました。」
一礼して自己紹介をすると、ガゼフは馬から降り、頭を下げた。
「この村を救っていただき、感謝の言葉もない」
特権階級?の人物が頭を下げる。それもわざわざ馬を降りて。
まぁ上から見下ろしながら話されてもなって、そういえば俺もシロモフから降りて話をした方がいいって思ったんだから
その辺の一般常識は同じなのかな?
この世界――時代の人間としては信じられない対応なのだろう。ざわりと空気が揺らいだ。
その、一目で人柄が分かるガゼフの態度に、アインズは好感を抱く。
俺は、そりゃ馬からは降りるもんだと感じつつ・・・・
「……いえいえ。実際は私も報酬目当てですので、お気にされず」
ん~、アインズさんが欲しかった報酬ってなんだったんだろう?
何ももらってなかった気がするんだけど・・・・・
グレンさんは、いまだにアインズさんが何を欲していたのか気づいてません。
「お二人とも、かなり腕が立つ方とお見受けするが・・・・・・・お二人の名前は存じ上げませんな」
「先ほども言いましたが、俺はただの旅人ですよ。アインズさんとは、偶然ここで出会っただけです」
アインズさんも、ただ頷くだけだ。
「なるほど、旅の途中でしたか。優秀な魔法詠唱者の方々のお時間を奪うのは少々苦しいが、
村を襲った不快な輩について詳しい説明をお聞かせ願いたい」
「お話ししたいのは山々なのですが、私は通りすがりです。本当に偶然出会ってしまっただけで・・
ああ、この鎧を着てました。」
そういって、彼らが来ていた装備品一式を見せる。
「これは帝国の?いや、偽装の可能性もあるか?」
「さすが戦士長殿。これだけのことで、それに気が付くとは。私はスレイン法国可能性も考慮すべきかと思っています」
え、なんでスレイン法国の可能性があるってわかるんだよ・・・・これって、帝国の紋章なんだから帝国の侵略の一環だと思うんだけど
裏をかくってそういうことなのか?アインズさんは、そんなに色々と考えているのかぁ。
俺なんて、あとで何食べるかとか、他にテイム出来るモンスターがいないかってくらいしか考えてないんだよね。
「それで、お二人のそばに控えるそのモンスターか?説明していただけないだろうか?」
「これは私が生み出したシモベですよ」
「テイムしたモンスターですよ。シロモフって名前です。」
「なっ・・・・生み出した?それに飼いならすっ!?この精強な魔物をかっ」
「「え」」
二人とも同時に声を上げてしまった。
アンデットなのだから、怖いと思うけど(グレンさん)
この可愛らしいモンスターが精強?(モモンガさん)
――二人の疑問に関わらず話は進むようだった。ガゼフの連れてきていた騎兵が広場に駆け込み、緊急事態を告げたのだ。
「戦士長! 周囲に複数の人影。村を囲むような形で接近しつつあります!」
「なるほど・・・・・・・・確かにいるな」
ガゼフが家の窓から不審者を窺う。
ゆっくりと村に向かって歩む複数の人影。おそらくは魔法詠唱者。連れているのは天使だ。
異界より召喚された天使。スレイン法国では神に仕えていると思われている特殊モンスターである。
「あれは
「あんまり珍しいものじゃないけど、そうみたいですね」
横のアインズの漏らした言葉に、合わせて言葉を挟んだグレンに、ガゼフは即座に反応する。
天使や悪魔といったモンスターは同じ魔法で召喚されるモンスターよりも若干強いのだ。
宗教論争に興味は無いが、どれほどの強敵か、という事には興味がある。
単純に俺たち戦士団が勝てるかどうか、という1点に限るのだが。
ガゼフ達王国の戦士にそういった知識は無いが、ここに高位であろう魔法詠唱者達がいたのは幸いだった。
「ゴウン殿、ターナー殿、あの天使を知っておられるなら、どういうモンスターか教えて欲しい」
「第三位階魔法で召喚される天使です。おそらく、ですが」
「まぁ、強い召喚天使じゃないですよ。ほら」といって、召喚して見せる。
「同じモンスターを呼び出せる魔法を所持しているのか」
MPの無駄遣いをする気はないので、召喚を解除する。
第三位階魔法で呼び出されるモンスターが強い天使じゃないとはどういうことだ。いや、簡単に手持ちの魔法を見せるのだ。
もっと上の魔法が使えるのではないだろうか?
ガゼフは、そう思うが最低でも第三位階魔法が仕える相手と分かっただけでも有難い。
魔法には色々あるが神官系、魔術師など色々あるが、位階は決まっている。
十の位階まで存在する、
とされ、帝国のフールーダという魔法詠唱者は確認されている中でも最高の第六位階まで使えるらしい。
第七位階からは前人未到で検証不可、英雄譚や神話にしか存在しないとされているが・・・・・・
あるか無いか分からないものを想定するつもりはない。
そして、第三位階の魔法を使う魔法詠唱者はほぼ人類の最高位とされるのをガゼフは知っている。
そんな魔法詠唱者をあれほどの数揃えられるとすれば・・・・・・・・
ガゼフには彼らの正体がおおよそ見当がついた。
「恐らくスレイン法国のものだろう。お二方、かの国に追われる覚えはありますか?」
二人とも、こちらに来てさほど時間は立っていない。ゆえに首を横に振る。
「・・・・・戦士長という地位に おられる方は恨まれるものなのですか」
え・・・・どういうこと?
グレンさんは会話に着いていけません。
「この地位についているかぎり、仕方のないことだ。相手はおそらくスレイン法国の――特殊工作部隊、噂に聞く六色聖典の一つだろうな」
相手は厄介に過ぎる。激しい焦りとが生まれている。それと同時に怒りも・・・
「まったく武装をはぎ取る行動を起こしながら、ここまでするとはな・・・・」
本来であれば、五宝物を装備している筈だった。
だが、今その装備は全て引き剥がされている。
王国で私腹を肥やす貴族共に動かす事を禁じられたのだ。
そしてこの状況だ。厳しい・・・・
装備が無いだけでなく、対策の打ちようが無い。
いや、一つだけ、対策となる存在が目の前にいる。
「ゴウン殿、ターナー殿」
天使を見ている熱心に眺めるアインズと、あのくらいどうでもいいと思っているように見えるターナーに声を掛ける。
「報酬は望むだけの額を用意すると約束する。雇われないか?」
「・・・・・・・・・・・・・お断りさせていただきましょう」
この世界に、どんな相手がいるか分からない以上断るべきだろう。いや、戦士長の実力や、この世界の力を測る良い機会かもしれない。
「あ、俺なら雇われてもいいよ」
え、何この人。この世界がどこかわからない以上、気を付けるべきじゃないか?
そんなことにも気が回らないのか?場当たり的に行動するタイプか?
アインズは少なからず苛立ちを覚えた。
自分が危険を少しでも排除しようと動いているのに、こいつは考えが無さすぎる。
嫉妬マスクをもってはいるが、やはり人間種か・・・・
いや、カンストプレイヤーがどれくらい戦えるか情報を集めるのに役立ってもらおうとアインズは思う。
「おお、それは有難いっ」
「あ、ちょっと待ってもらえますか?もちろん条件は付けさせて頂きますよ。私も自分の命は惜しいので」
おや?少しは考えているのか?>アインズさん
「それでは、どういう条件でしょうか?」
「まず第一に私は前線に出ません。後方支援に徹します。
回復魔法が仕えますし、強化魔法も多少は心得ていますから。それと召喚魔法で多少の支援をするくらいです。
場合によっては攻撃もしますけどね。
で、一番重要な条件ですが、私の身に危険があると感じれば即座に逃げます。それでも良ければ雇われますが?」
敵すべてが魔法詠唱者であり、こちらは全員が戦士だ。魔法が使えるものがいない中、一人でも使えるのであれば戦闘の幅が広がる。
「魔法による支援を得られるだけでも助かります。お願いしたい」
出来れば、その魔獣を前線に出してほしいが、それを伝えると支援ですら断られる気がしたのだ。
「では、手始めに」
かなり弱いはずだが、ムーンウルフよりちょっと強い程度の猿。
炎の上位天使とは総合力では互角だ。耐久力は上だが、魔法に相当する攻撃が行えないのでほとんどダメージは通らない。
相性の差だ。
ようは、ただの盾役だ。
これを2体召喚する。
「この子達を戦士長殿に盾役に付けます。」
「これは心強い。本当に、本当に感謝いたします。」
そういって、頭を下げる。
「グレン殿に手を貸していただけるだけでも感謝しきれないのだが、ゴウン殿。我儘を言うようだが、重ねてもう一度だけ村の者を
守ってほしい。何とぞ、何とぞ聞き入れてほしい」
そういって、跪こうとした気配をアインズさんは止める。
「そこまでして頂く必要はありません。村の者は、アインズ・ウール・ゴウンの名にかけて守ることをお約束しましょう」
「感謝する。ゴウン殿。これで最悪の事態は避けられるだろう。私は前だけを進むとさせていただこう。それにグレン殿の援護も得られる
とのこと。大変心強い」
「・・・・・・・よければ、こちらをお持ちください。もしかすると何かの助けになるかもしれません」
あれって500円ガチャのはずれアイテム?
効果は忘れたけど、アインズさんも・・・あのガチャ回したのか・・・・・
俺も10回だけ回して・・・・・すっごい後悔した・・・・・・・
あれ以来、課金ガチャはしまいと心に誓ったものだ。
「君からの品だ。ありがたく頂戴しよう。ではゴウン殿お元気で。今後の旅が無事に済むよう祈っているよ。
グレン殿、援護をお願いする。」
「では、行くとしますか。何か作戦を立てたりしないので?」
「敵の狙いは、間違いなく私だ。であれば敵に分かるように飛び出した方が敵の目を引き付け村の安全が確保出来るだろう」
「つまり、戦士長殿が飛び出したのち、私がさらに後から続くということで?」
「そうです。ですが一番重要なのは、村から敵を引き離すことです。一撃を当てた後、撤退です。
決して敵を倒すことが目的ではありませんので」
「分かりました。シロモフ~おいで~」
「やっと出てきたっすね。待ちくたびれたっす。」
「悪い悪い」そういって、ペレットを一個だけ作りおやつ代わりに与える。
与えすぎかな?と思うけど、エサを食べてる姿って可愛いんだよね~
太りすぎないよう気を付けなければ・・・・・・・・・
「グレン殿、その魔獣も連れていくのか?」
「足もそれなりに早いし、乗ってくつもりだけど・・・・・だめ?」
「いや、そういう訳ではないのだが、それほど精強そうな魔獣であればぜひとも戦力として加えさせていただきたい」
「すっごい可愛いって思うんだけど、戦士長殿には精強そうに見えるのか・・・・・」
やっぱりこの世界の人間ってlvが低いのか?
あの騎士がたまたまってことは無いと思うんだけど、60台のモンスターが圧倒的強さを持つように見えるのかな?
でも、ユグドラシル時代でも可愛さではトップクラスだと思ったから、この世界の美的感覚が違うのかも?
そういえば、森の賢王ってのがいるんだっけ。
暇ができたら探してみようかな?