OVER END   作:直斗

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デューマン『カレン』

 デューマン『カレン』

 

 正面には大きな角の円い窓に、バルコニーに出られる扉がある。全体的に灰色のその部屋は無機質であり寂しげなものではあるが、ミライにとっての初めての一人暮らしとなる部屋だった。

 ずっと背負ってきていたソードを置き、何もない床に四肢を投げ出す。まだシップ全体が昼の設定となっているためか、部屋の外はとても明るかった。ふと、胸元のPAフラグメントを取り出す。相も変わらず紫色に輝くそれは一切の光を透過せず、暗い天井にくっきりと反射していた。

 反射された光を気ままに動かし、部屋中を照らす。と、どこもかしこもグレーの一角に、三つもの端末がある事に気が付いた。彼女は立ち上がり、その内の一つの端末を起動する。マイルーム端末と表示されたそれは、いくつものメニューを表示した。引っ越しや、模様替えと言った項目があらわれる。その中でも一際彼女が興味を示したのが、PAカスタマイズの表記だった。

 研修生時代にはない、数多くのレシピが保存されている。これなら、とPAフラグメントから紐を外し端末にセットした。正常ならここで修復か、カスタマイズか、を選ばされるのだが表示されたのは『Error』の五文字だった。

 気晴らしにバルコニーへ出ようとした時、部屋のチャイムが響き渡る。慌てて扉を開けるとそこには、一人の女性がいた。

「ごめんねー! 待ってた?」

 長い金髪の彼女は、明るくミライに話しかける。目は大きく、深い緑色をしていた。目の色と同じ色の帽子をかぶった彼女は、どことなくカリンと同じ雰囲気を感じさせていた。

「えっと、PAフラグメントの?」

「そうそう! ウィティアって言うんだよ!」

 特徴的な尖った耳が目に付く。ヒューマンであるミライとは違い、ウィティアはニューマンのようだった。

「ま、本当はテクニックカスタマイズが専門なんだけどねぇ」

「そうでしたか。取りあえず中にどうぞ。といっても、何もありませんが……」

「いえいえー、おかまいなく!」

 ミライはウィティアを招き入れる。本当の意味で何もないそれが珍しいのか、部屋の中を見渡している。そしてすぐに扉近くの端末に気が付いた。

「そのPAフラグメントを見せてくれるかな?」

「これです。既にPAフラグメントの修復をしようとしたのですが、どうもエラーになってしまって……」

「ふむふむ?」

 話しながら問題の物を渡す。じっくりと表裏両方を眺めると、それをマイルーム端末へと挿入した。だが案の定と言うのか、相も変わらずエラーを表示していた。

「うーん、どういう事なんだろう? 端末は壊れていない、よね?」

 そう言ってウィティアは赤色のPAフラグメントを複数取り出す。それらをセットし少し待つと、正常にメニューが開いた。彼女は手にしていた分全てを使い、端末が正常であることを確認する。その後改めて紫色のPAフラグメントをセットすると、やはりエラーだった。

「ごめんねー、私でも分からないかな。PAフラグメントはそもそも赤、青、黄の三色が基本なんだけどねぇ。これは何だろう……」

 取りあえず返すね、とミライに渡される。あぁでもない、こうでもないと悩む彼女をよそに、ミライに通信が入ってきた。

『私です。管制官のコフィーです。間もなくあなたの修了任務を行います。先ほどのアークスゲートエリアに来てください。ところでウィティアさんはまだそちらに?』

「はい。今、丁度私の目の前にいますが――今からですか?」

「私なら大丈夫だよ! 丁度終わったところだから!」

『では準備が済み次第、私の前に来てください。研修時代に学んだことを生かしきれれば、十分合格可能な任務です。それではお待ちしています』

 通信が切れる。ウィティアはミライに背を向けた。

「じゃ、こっちも資料を漁っておくから、何か分かったら連絡するね!」

「はい、よろしくお願いします」

 ミライの言葉を背に、彼女は部屋から出て行く。その姿を見送ると部屋に戻り、ソードを背にした。

 

 テレポーターを使い、アークスゲートエリアに到着する。他にも多くの武器を持ったアークスがそのエリアにはいた。彼らは自由気ままに談笑し、またこれからの任務の為に英気を養うなど、様々だった。

「ミライさん、お待ちしておりました」

 来た時と同じ。銀髪の管制官に話しかける。通信でコフィーと名乗った彼女は、ニッコリとミライに微笑んだ。

「それでは惑星ナベリウスにて、実地研修を行います。内容は森林エリアでの環境調査です。調査とは言いましても、指定されたエリアに“行って帰ってくる”が内容となります。出発は中央のゲートからテレポーターを使用してください。自動でキャンプシップに転送されます。また三機のエレベータを使用すればショップエリアに移動可能です。出発前の準備はそちらでするとよいでしょう。質問が無ければ出発してください」

「わかりました」

 そういうと彼女はゲートへと向かう。暗く長い下り坂を下り、十字路をまっすぐ進む。ここで曲がればシャトルの発着場へと行けるのだが、今回は正面の大量のテレポーターが目当てだった。

 たった今、テレポーターから出てきた四人組とすれ違う。ミライとは別の型のソードを持った男性ヒューマン、パルチザンを持った女性ヒューマン、ロッドを持った青色の髪の女性ニューマン、そして一際目に付いたのが黒色の一際大きな男性キャストだった。彼はその図体に見合ったランチャーを装備しており、彼を除く三人の中で最も背の高い男性ヒューマンでさえ、彼の胸元ほどまでしかなかった。

 ミライはテレポーターへと入る。すると体は一瞬だけ光り、次の瞬間にはキャンプシップの中だった。

「おそい。遅すぎるわ」

 ミライと同じくらいの少女が腰に手を当て、不機嫌そうに言い放つ。金色の髪を後ろで縛り上げ、動きやすくした彼女の前髪の中からは、特徴的な一対の角が生えていた。

「もしかしてあなた、デューマン?」

「そうよ? それがなにか?」

 白い肌に、一対の鋭い角、そして左右で異なる色をした目。資料で読んだことがあるデューマンそのものであり、ミライにとって初めて見る存在だった。

「本修了任務はミライ、あなたと共に行動することに決めたのよ。このレンジャートップの成績をもつ私がね」

「もしかして、あなたはカレン?」

「えぇ、良く気がつけましたわ。でも遅い」

 ミライもカレンの事は、噂に聞いていた。同期の中で、極めて優秀なレンジャーがいると。蔭ながらハンタートップのミライと、レンジャートップのカレン、どちらが強いかよく議論されていたという。

「この分だと、私の方がミライよりも優秀のようですわね」

「うるさいな……」

 ぼやきながらメディカル端末にアクセスし、フォトンドリンクを取り出す。ミライはそれを手に、窓から外を眺めていた。

「ねぇ、ちょっと聞いていますの? 人の話は聞く物でしょう?」

 キャンプシップはオラクル船団を離脱し、惑星ナベリウスまでテレポートする。最も危険が少ないとされるその星に訪れるアークスは多いようで、両側の窓からは多くのキャンプシップが行き来しているのが見えていた。

 二人に通信が入る。

『まもなくナベリウス上空です。二人とも準備お願いします。なお、そちらの様子は常時モニタリングしておりますので、くれぐれもアークスにふさわしい行動を心がけてください』

 キャンプシップ最奥を閉ざしていた、黄色いフォトンのフェンスが開かれる。その奥には青色をした、円形の波打つテレプールがあった。テレプールの下には緑色の森が広がっており、まるで水中にそれらがあるように見えた。

「さぁて。どちらが先に戻ってこられるか、楽しみですわね。行きますわよ!」

「あぁ! 全くもぅ……」

 腰のアサルトライフルを手にすると、カレンはテレプールに飛び込んでいく。慌ててミライも手にしていたフォトンドリンクを投げ捨てると、テレプールに飛び込んでいった。

 

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