アルカード=ぼっち
マイン=ぼっちの弟子
レイル=鍛冶屋
モミ=第11階層守護者
ステラ=モミの妹・騎士
ハイネ=ステラの兄・モミの弟・軍師
ザーバ=神父
ポルックス=無口な生産者・カストルの妹
カストル=ポルックスの兄
アダマンタイト級冒険者であるモモンは冒険者組合長アインザック直々の依頼でトブの大森林に来ていた。依頼内容は入手困難な薬草の入手。前回はアダマンタイト級冒険者チーム1、ミスリル級冒険者チーム2でやっとだったものだとか。
チーム構成は騎乗魔獣であるハムスケと辺りを索敵・警戒部隊の指揮と道案内でアウラ、そしてピニスンである。
ピニスン・ポール・ペルリア。木の精霊ドライアードと言う種族の女の子で特徴としては黄色い髪にぱっちり大きな瞳より五月蝿い事かな。
彼女はこの辺りの住人である情報をくれたのだ。この辺りには大昔に封印された世界を滅ぼす事の出来る魔樹『ザイトルクワエ』の一部が時折暴れているのだと言う。
いろいろな話を聞く為にもペルリアを部下にしてザイトルクワエが居ると言う場所に来たのだが、運が良いのか悪かったのか分からないが復活したのだ。
ガルガンチュアより大きく100mを超える巨木に六本の触手、体力は測定外のレイドボスだと思われるモンスター。
これは守護者達の連携を取る為の実験に使えるだろう。メッセージを使い守護者各員を呼び寄せた。
アルベドを先頭にデミウルゴス、マーレ、コキュートス、シャルティア…そして
「は~な~せ~」
縄でぐるぐる巻きにされて身動きが取れないモミがゲートより現れた。
「よく来たなアルベド、デミウルゴス、マーレ、コキュートス、シャルティア…モミ」
「はぁ、帰り「フン!!」ックディアス!?」
「御呼びとあらば即座に」
何かを言おうとしたモミは途中で強烈な蹴りを喰らい倒れる。蹴った張本人であるデミウルゴスはアインズに深く頭を下げながら答えた。気にしないように目を逸らして口を開く。
「今回命じるのは他でもない。あのモンスターの討伐だ」
「アインズ様、ゴ質問ガヒトツ」
「なんだコキュートス?」
「ハッ!アノ程度ノ者ナラバココニ居ル誰モガ倒セルト思ウノデスガ、守護者各員ヲ呼ンダ理由ハ何デ御座イマショウカ?」
「早い者勝ちと言う事でしょうか?」
「それは違うシャルティア。お前達のチームとしての戦闘能力を確認したい」
「チームですか?」
「アインズ様のお心、理解できました」
「そうか。では私は後ろから見ているからな。後は任せた。…全員の力を見たいから全力の装備は使うな。アウラ説明は任せたぞ」
「はい、畏まりました!!」
アインズがペルリアやハムスケが隠れている辺りまで行くのを確認したアウラが説明を始める前に一名が走り出した。
「一番槍頂ク!!」
「コキュートス、ずるい!!」
「待ちなさいよシャルティア!!あたしも」
「何処に行こうというのかね?《ウォール・オブ・スケルトン》」
「グア!?」
「わぷっ!?」
「おっと!!」
モミにより出現させられたいくつもの骸骨が重なった壁に走り出した勢いを殺しきれずにコキュートスとシャルティアが激突する。直前で止まれたアウラは皆の視線を受けてとりあえず戻ることにする。
「…デミデミ。あれを止めといてくれない?」
「ふむ。まぁ、良いでしょう。《ジュデッカの凍結》」
ピキピキと音を立てながらザイトルクワエは凍り付いた。デミウルゴスの対象への時間停止が発動すると後ろの方で騒いでいるペルリアの声が聞こえている。それは置いといて壁に激突した二人を合わせて三人が帰ってきた。
「いきなり何をするでありんすか!!」
「…何も考えず走り出してんじゃねぇぞ♪」
「モ、モミさん?」
「…あー…うん。とりあえずコキュートスやシャルティアはアインズさ――まがどういう意図だと思ったか聞こうか」
落ち着いたモミはいつも通りニヘラと笑いつつ質問を投げる。少し唸った上でコキュートスが口を開く。
「個々ノ力ヲデモンストレーションセヨトノ事デハナイノカ?」
「貴方の考え方は完全に間違えているわ」
「一番ダメージを与えた者がアインズ様に褒められると思ったのに…」
「アインズ様に褒められる!!あぁ……」
「アルベド?アルベド!!」
「…妄想の世界に旅立ったアルベドは置いといてアウラ説明よろ」
「え?あ、うん。あのモンスター《ザイトルクワエ》は推定レベル85で体力は測定外。そしてあいつに生えている薬草はアインズ様が必要としているから薬草の回収ぐらいかな」
「…了解。で、アインズ様が何を意図していたかは…デミデミに答えてもらおうか」
「アインズ様の意図は…守護者個人では勝てない相手を想定してのチーム戦を望んでいるのでしょう」
「あたし達が勝てない相手ってそんなの居るの!?」
「お、お姉ちゃん。落ち着いて」
「…居るかも知れないよ。シャルティアを洗脳されかけたときのワールドアイテムをこちらに持ち込んだ者が居る点からして…ねぇ?」
「ソウダナ。ソウカモシレナイナ」
「…って、そろそろアルベドを呼ぶ戻そうか。デミデミ一撃見舞っちゃって」
「はぁ…仕方ありませんね。ハァ!!」
「何かしらデミウルゴス?」
「い~え、なんて硬いんだこの腹筋なんて考えてもいませんよ」
「では全体指揮私がするヲッ!!」
渾身の一撃を物ともせずにきょとんとしているアルベドより殴ったデミウルゴスのほうが痛がっている中でのモミの一言に皆が視線だけで「それは無い」と訴えかけてくる。
「チーム戦指示をぼっちさん直々に受けたんだけど?」
「では聞きましょうか」
「…なんと言う変わり身…あの人の名前は印籠と同じか…」
一言呟くと白い魔法詠唱者用のローブを羽織り、伊達眼鏡をかける。
「まずパーティ戦で重要のなのは前衛以外が自由に動ける状況を作る為のフォーメーション(戦闘陣形)。
仲間のHPなどステータス管理するオペレーター(情報監視者)
フィールドモニター(戦域哨戒)では敵の援軍など周辺の監視を行う。
移動中にフォーメーションとフィールドモニターを維持する事をパトロールファイル(警戒戦列)
この四つが重要なんだけど…」
「フォーメイション?オペ?何?」
「…今覚えなくて良いからね。今回は私がフォーメーションの指示とオペレーターをやってフィールドモニターはアウラの配下とアインズ様がやってっから任せて。パトロールファイルは…無しで。
さてと役割を決めようか。アルベドはディフェンスでコキュートスとシャルティアはアタッカー、アウラとマーレと私は後方要員っと」
「私は何をすれば良いのでしょうか?」
「今回の作戦は敵をチームとして倒す事と同じぐらい大切なものがあります」
「薬草の入手を私にと言う事でしょうかね」
コクンと頷いたモミは皆の前に出てニヘラとではなくニヤリと嗤った。
「良いか?よく聞けよ?今私は頗る機嫌が悪いんだ♪
ただでさえステラにザーバ、ぼっちさんとナザリックの戦力が低下している中での守護者のほとんどがここに居る為に防御能力が当初に比べて下がり過ぎてんだよ。ガルガンチュアやヴィクティムが居るからプレイヤーが攻めてきても多少は時間稼げるけどさぁ。私的には最悪なんだわ。
これから指示を無視したり、欲を働かせて目立とうとした馬鹿には罰を与えようと思ってまーす♪ぼっちさんにその話を120%盛って話すからね。その上で罰を進言するから」
「ちょ、待ちなさ…」
「アウラとマーレは撫で撫で一ヶ月無し」
「な!?そんな!!」
「ぼ、僕は指示に従います」
「シャルティアは血を吸われる事を禁止」
「そんなご無体な!?」
「コキュートスはこの前の武器ボッシュート」
「ソレダケハ!!」
「デミデミは…例の件を皆にばらす」
「何故それを!?…欲をかかなければ問題ありませんね」
「アルベドは………アインズ様の私室でしていた事をアインズ様に伝えてくる」
「ななななな、何のことかしら?」
「何ってベットでo…」
「解ったわ!!従うわよ!!」
返答を聞いたモミは満足そうに頷いてニヘラと笑った。同時に《ジュデッカの凍結》を自らの力で打ち破ったザイトルクワエが動き出した。
「ほう!時間対策も施されていない雑魚だと思っていましたがどうやら多少見誤っていました」
「…では始めようアウラは《レインアロー 天河の一射 影縫いの矢》。マーレは足を埋めちゃって」
「じゃあ行くよ!!《レインアロー 天河の一射 影縫いの矢》」
「ア、《アース・サージ》!!」
アウラが放った光り輝く無数の矢が降り注ぎ、ザイトルクワエが大きな悲鳴を上げながら痛みと効果により足を止めた。そこを範囲を狭めた大地の津波が根元を固定するように埋めていく。痛みの中で反撃しようとタネを撃ち出そうとする。
「させると思って?スキル発動《ミサイルパリィ》《カウンターアロー》」
放たれたタネはすべて弾かれた上に跳ね返され再び悲鳴を上げる。
「さっすがぁ~」
「フフ、このぐらいで褒められても嬉しくないわね」
「そこはアインズ様にあとで褒めてもらう方向でっとシャルティアは左側の触手を狩っちゃって良いよん♪デミデミは右より薬草を」
「では行くでありんすよ!!」
「お先に《悪魔の諸相:八肢の迅速》」
羽を羽ばたかせ飛行して接近するシャルティアを確認した触手三本が伸びてくる。軽々と回避しながら目を見張る。そしてため息を付いた。
「動きが単調でありんすなぁ」
三本の触手が重なったところをスポイトランス一振りで引き裂いた。笑みを浮かべながら仕事は終わったと戻ろうとした時、右側の触手がスキルによって加速するデミウルゴスを狙っているのに気付いた。手を出そうか悩む間もなく指示が飛ぶ。
「…やっちゃえコキュートス」
「いざ!!《レイザーエッジ・羅刹 風斬マカブル・スマイト・フロストバーン》」
振り抜かれた剣より放たれた光の斬撃がデミウルゴスに迫っていた触手を切り裂いた。が切り裂いたのは二本でもう一本が迫っていた。
「《グラビティメイルシュトローム》」
モミの手より放たれた黒き弾が最後の触手を吹き飛ばし、難なくザイトルクワエを駆け上がったデミウルゴスは薬草をその手に帰ってきた。
「フヒヒッ、私の出番取っておいてありがとね」
「借りを返しただけだ」
「フッ!フヒヒヒ、りょ~か~い。では止めはアインズ様に願いましょうか?」
指名されたアインズはならばと時間停止と多数の魔法を使うことでザイトルクワエをクリスマスツリーに見立てた上で討伐した。それを見た守護者達はさすがと褒め称えていた。魔法の発動時間をすべて計算して行なわれた技法はさすがと言うしかないがアインズ・ウール・ゴウンの爆笑ネタという事を知っていて一人噴出していたが…
兎も角、アインズは薬草を手に入れ守護者達の連携を確認できたわけで大戦果と言えよう。
「…デミデミ」
すでにアインズとハムスケはこの場を離れ、ペルリアを連れたアウラを含む守護者はゲートを潜り帰路へ付こうとしていたがデミウルゴスだけはモミに呼び止められた。
「何でしょうかモミ?」
「…アインズ様の実験準備は順調?」
「ええ、勿論です。ぬかりはありませんよ」
「フヒヒヒ。それは重畳、重畳」
ニヘラと笑ったもののいつになく真面目な表情になった。
「ぼっちさんには内緒にしてくれたんでしょ?」
「言われた通りにしましたが何故ぼっち様には秘密にするのでしょうか?話しても問題ないと思いますが」
「良いから喋っちゃめー。私はステラやマインにも教えてないんだから。…そういえばユリは?」
「教えていますが喋らないように言っては…すみませんメッセージが…こ、これはぼっち様。どうかなさいましたか?」
メッセージの受け答えをしているデミウルゴスを残してゲートに近付く。そこにはいつものニヘラしたモミは居なかった。目は虚ろとなり表情からは生気そのものが抜け落ちたようだった。
「…支配者が二人居るからこうなる。一人なら幾分か楽だったろうに…」
呟いてからハッとなりいつものようにニヘラと嗤う。
「…あ!違った…」
頭を左右に振ってから笑った。ため息を付きながらゲートの中へと消えて行った。
「まぁ、それを何とかするのが私か…」