骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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ひふみん様誤字報告ありがとう御座います。

今日は久しく長くなってしまいました。


第103話 「漆黒の双剣使いと純白の双剣使い…そして」

 王都リ・エステーゼ正門前には250名の兵士が隊列を組んで出撃の号令を待っていた。その最後尾ではアダマンタイト級冒険者である『漆黒』と『蒼の薔薇』の姿もあった。ボウロロープ侯爵の作戦なのでラナー王女に雇われたモモン達は端っこで待機を言い渡されたのだ。

 腕を組んだまま待っているモモンは先頭で喋り続けているボウロロープ侯爵の長々とした話が終わるのを飽き飽きしながら待っていた。

 右横に居るナーベは左隣を確保しているイビルアイを睨み続けている。これについては放置しとくとして高説を述べているであろう人物を見てため息を付く。

 棒立ちで書いてある字を読むだけの作業にしか見えない。二度目のため息を付こうとして押さえる。人の振り見て我が振り直せと言うし自分はああしないようにしないとなと飽き飽きするだけでなくひとつの教訓として目をやる。

 モモンどころか聞いている多くの兵士も飽き飽きしていた話は終え、いざ出陣の時が着た。

 

 「では、出陣!!」

 

 大声で発したであろう声は後ろの方まで届かなかったが先頭の者が動き出した事で理解して動き出す。やっとかと思いつつ組んでいた腕を解いて歩き出そうとした時、再び止まった。何事かと正面へと目をやると何かが居た。

 

 「これはこれは我輩を探す為にこれほどの者を集められるとは恐悦至極と言ったところでしょうか♪」

 

 上等なスーツにぽっちゃり太った丸々としたフォルム。白いゴブリン顔は二タリと嗤う。

 資料にあった千年公である事はここの誰もが理解した。が、その中でも正体を見破ったのはモモンのみだった。幻術を見抜く魔法を使用すると千年公の姿は消えローブ姿のモミであることが分かる。

 

 「さぁて♪デスナイト達、やっちゃいなさい♪」

 「――!!」

 

 傘をさして空に舞い上がると同時に三体のデスナイトが兵士の群れに突っ込んできた。

 一体は盾を前に出し剣技を持って兵士を屠って行く。

 二体目は二本の太刀を逆手持ちして素早く斬り殺して行く。

 三体目は肩に着地した千年公を支えたまま停止した。

 あまりの強さに先頭にいた兵士たちが一振りで十人単位で瞬殺され、盾を持った兵士たちが壁を作るが一撃で崩壊する。

 ボウロロープ候など一目散に逃げ出している。すでにデスナイトの強さはここの兵士に一般人の彼らが証明してくれるだろう。背より二本の大剣を抜き放ち一歩前に出る。

 

 「ラキュースさん達はあの二刀流を任せても?」

 「構わないわ。そちらはどうするの?」

 「私はあちらの一体を…ナーベは二刀流の方へ周ってくれ」

 「ハッ!!」

 「先に片付けたら援護するわね。行くわよ皆」

 

 ナーベを含んだ蒼の薔薇が駆け出したのを見送り、指差したデスナイトへと駆け出す。

 相手はレベル35のデスナイト。剣士のスキルが使えないとは言えレベル差もあり、ヤルダバオトとの接近戦の経験もあり余裕に満ち溢れていた。

 

 「貴様の相手はこの私だ!!」

 

 叫ぶと同時に蜘蛛の子を散らしたかのように逃げ出す兵士達をすり抜けて上段からの一撃を見舞う。デスナイトは避ける事はせず盾を構えた。

 剣は振り下ろした速度のまま地面を抉った。

 驚愕した。武技も習得出来ないはずの召喚モンスターが容易く受け流したのだ。カルネ村で召喚したデスナイトも実験でナザリックで召喚したデスナイトも荒々しく剣を振るだけでこれほどの剣技を習得するとは。

 そんな感想を抱いていると剣が振られるの素振りを見た。ここで避けるのは簡単だが最高位冒険者が引くと言うのはどうなんだろう?モモンは振り下ろさなかったもう一本の剣で受け止め踏み止まった。

 後ろで歓声が沸き起こる中、楽しそうな笑みを浮かべた千年公がデスナイトに乗ったまま近付いてくる。

 

 「ほほう。デスナイトの一振りを受け止めるとは見事ですねぇ♪」

 「お褒めの言葉として受け取っておこうか。しかし、これほど剣技に秀でたモンスターは見たことがないな…一体何をしたのかな?」

 「何も…強いて言うなら私の知識を埋め込まれていると言った所でしょうか♪」

 「知識だと?」

 「そうです。召喚されたモンスターは召喚者によって性能が変わります。彼は私の知っている剣技のひとつの知識を持っている」

 「その知識だけでここまで変わるとは…な!!」

 

 無理やりに押し返し体勢を崩したデスナイトに斬りかかる。最初の余裕など見せずに斬り込む姿は力強く、激しいものだった。体勢を崩した為に最初は受け流す事は出来ずに受け止めたが次第に体勢を立て直し受け流し始める。

 

 「ならこれはどうだ!!」

 

 二本の大剣を荒々しく交互に降り続ける。普通の人間なら不可能な行為だがモモンにとっては問題ない攻撃だ。その激しい連打を難なく流した事は一般兵から見て悪夢でしかない。

 近すぎ過ぎて大剣が振りにくくなった為に仕方なく後ろに飛び退く。しかしタイミングを合わせたようにデスナイトが盾を構えて突っ込んでくる。

 

 「ぐおっ!?」

 

 相手の剣に視線を向けていたモモンは最初何が起きたのか理解できなかった。衝撃で二歩下がった所で盾で喉元を攻撃された事を知る。

 盾を構えるデスナイトに大剣を構えるモモンは静かに見据える。

 

 

 

 予想外に苦戦していたモモンと同じく二体目を担当していた蒼の薔薇も苦戦を強いられていた。

 辺りを見渡してデスナイトを探すが影も形もない。焦りつつなんとしても見つけようとしていると影により日差しが遮られた。

 

 「イビルアイ後ろだ!!」

 「なっ!?くそ」

 

 叫ばれた方向からの風を感じ取り前に飛び退くとさっきまで自分が立っていた位置を剣が通り過ぎる。一瞬映った姿が景色に消えるように消す。

 

 「一体なんなんだこいつは!?」

 

 ガガーランが叫ぶのも良く分かる。2メートルを超える巨体が短距離のテレポートしているような動きで迫ってくるのだ。その場に残る黒い影はまるで烏の羽のようだ。

 この中で素早さが高いティア・ティナでも追いつけない速度。ナーベも魔法を使用しているが当たる気配がない。何とか動きを止めれれば良いのだが…

 すでに皆疲労困憊でモモンの援護も難しい状態である。短期決戦で挑んだ為に最初に使ったスキルや魔法は予想外すぎる速度によって避けられ無駄に終わった。ダメージは何とか防いでいるがガガーランは深手ではないが背中から血を流していた。もはや誰も「ガガーランの血って蒼じゃなかったんだ」なんて冗談を言える余裕すら無かった。

 

 「ガガーラン…」

 「あん?」

 

 何かを小声で伝えるラキュースは何か名案が浮かんだのだろう。二人は距離を置いて立ち止まった。ガガーランは周囲を警戒しつつ武器を構える。対してラキュースは剣を地面に刺して無防備を晒す。

 行動の意味が分からず声をかけようとした瞬間に黒い影がラキュースの背へと向かって行くのが見えた。

 

 「危ない!!」

 「―っ!!そこね!!」

 「おうりゃあ!!」

 

 振り下ろされる直前に飛び出したガガーランの一撃と地面から剣を抜き後ろへと振り向いたラキュースの攻撃がデスナイト一撃と重なる。さすがにモモンのようには行かずに勢いを殺すだけで押されている。

 

 「ティア!ティナ!!」

 

 動きが止まったデスナイトに二人が斬りかかるがあまりの固さに傷ひとつ付かない。

 

 「…硬い」

 「だったら…」

 

 己の速度にものを言わせて再び迫るが今度は斬りかかりはしなかった。膝関節の付き間に剣を差し込んだのだ。完全には無理だろうが動きは限定された。

 

 「《ドラゴンライトニング》」

 「《クリスタルランス》」

 

 図らずも同タイミングで放たれた龍の形を成した電撃と氷の槍がデスナイトの背に直撃する。体勢を崩したデスナイトを押し返すのはガガーラン一人で十分すぎた。

 

 「超技!暗黒刃超弩級衝撃波!!」

 

 ガガーランが飛び退くと同時に放たれた一撃によりデスナイトは崩れ去り消滅した。

 ここまでにほとんどのスキルと魔法を使用していた為に疲労感で倒れそうになるがまだ倒れる訳には行かないと立ち上がる。

 

 「モモン様!!」

 

 この人数でこれほどの苦戦なのだから一人で戦っているモモンはもっと大変だろうと振り向く…

 

 

 

 静かに向き合うモモンとデスナイトは不敵に笑った。

 

 「向こうも片付いた事だしこちらも決着を付けるか」

 「――っ!!」

 

 叫び声を上げて気合を入れるデスナイトを余所にモモンは持っていた二本の大剣を繋げて両刃の武器へと変貌させる。

 あれからぼっちさんに聞いて使い方は理解した。今度は前のようにはいかない。

 先に攻めたのはモモンだった。駆け出して剣の射程内にデスナイトを入れると肩幅に合わせて力強く一歩を踏み込む。剣の重みで振り回されないように踏ん張り横薙ぎにしようと振りぬく。

 盾で受け流しきれずに盾が軋みながらへこんだがそれだけだ。右手に持っている剣を振り上げて斬り付けようとする。

 

 『激流に逆らえばのみこまれる。むしろ激流に身をまかせ同化する。激流を制するは静水』

 

 ぼっちに言われた言葉を思いながら踏み込んだ右足を軸に剣の流れに乗る。二本の剣の重みが足を軸にした回転にプラスされ速度を増した一撃は先に振り下ろされた一撃より早く身体に届いた。叫ぶ事も出来ずにあっけなく真っ二つにされたデスナイトは粒子へとなり消滅した。

 

 「ふぅ…」

 「フヒ…さすがはアダマンタイト級冒険者達ですねぇ♪我輩が創り上げたデスナイトをこうも簡単に…」

 「言うほど簡単ではないがな。ところで何故後退しているのか聞こうか?」

 「我輩創る事は得意ですが戦いは不得意ですのでここでお暇させて頂こうかと♪」

 「させると思う?」

 

 千年公と対峙するモモンの横にラキュース達とナーベが並ぶ。観戦していた兵士たちもヤル気を取り戻し剣を手に取っている。再びふわりと飛んだ千年公はそのまま宙を浮遊する。

 

 「させると思いますよ。デスナイト時間を稼ぎなさい♪」

 

 ずっと支えていた三体目のデスナイトが動き出した。最後の一体との戦闘が始まったのを確認するとそのまま空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 

 アゼルリシア山脈にある秘密基地前(『特別編14:モミの一日…』より)まで逃げたモミは幻術を解除して洞窟内に入って行く。

 

 「…これだけ働いたんだから今日はもうサボって良いよね」

 

 いつもサボっているでしょう!?というステラの声が聞こえたような気がしたが無視して奥の岩の前まで歩いて行く。

 

 「…合言葉」

 

 モミの言葉だけが洞窟に響く。いつもなら「さんごうかいは」と返って来るのにと首を傾げながら無理やり岩を避ける。その先には見慣れた階段と門番をしていたオーガが倒れていた。

 

 「…ここで寝るな」

 

 ため息を付きつつ揺さぶると手の平が湿ったのを感じて確認するとべったりと血がついていた。

 

 「血!分かる!?血!!…って何言ってんだろ」

 

 血が付いた事にもオーガが死んでいる事にも別に気にせずに何か手を拭くものを探す。

 ドン!!

 軽い衝撃を後ろから受けて振り返ると見知らぬ男が体当たりをしていた。索敵能力が無いとは言え手を抜きすぎたかなと思っていると腹部から違和感を感じた。

 

 「な、なんじゃこりゃあああ!!」

 

 驚愕した表情で後ろから突き抜けた剣の刃を見て叫び声を上げたモミは言い終わると同時にニヘラと笑って男の頭を軽く叩いた。叩かれた男は頭部を360°回転を10回以上して胴体と頭がお別れした。

 

 「まったく…にしても私を貫通するほどの武器って凄いね」

 

 ゴッズアイテムに匹敵しているだろうと軽く思い剣を引き抜く。直後に背後に誰か立っている事に気付いて振り返る。

 切り揃えられた金髪、頬に大きな傷痕、ロングコートの下の神父服…見覚えがあった。抜かれた剣にも…

 

 「雷切!!」

 「のうわっ!?」

 

 青い電流を纏った太刀から無数の電撃が放たれ、魔法防御を発動させながら階段を飛び降りる。下まで降り立つとここに住んでいたモンスターの死体で覆われていた。そして死体の周りにはゴッズ級はもうないとしてもこの中級クラスの武器や防具を装備している集団が居た。

 

 「そいつに手を出すな!!プレイヤーの可能性がある!!」

 

 先ほどの神父が猛スピードで駆け下りて来たまま斬りつけてくる。

 左手に握る太刀は『天羽々斬』。ヤマタノオロチを退治したときの刀を元にしており、剣からは八本の大蛇が相手の動きを止める術を持っている。『天羽々斬』も青い雷撃を放つ『雷切』も人間種だった頃のぼっちが終盤の終盤で使用していた武器だ。

 

 「面倒…厄介…」

 

 魔法をしようして迎撃する。火、電気、水、風と習得している魔法を叩きつけるがタイミングを会わせて斬りつける事で無効化するスキルや受け止めたりして突破を図ってくる。

 モミの戦闘は長くは続かなかった。接近を許したモミは体力を削られ辺りに居た者達は接近しなかったが持っている武器を槍投げのように投げつけてきた。

 膝に剣が突き刺さる。

 肩に落ちていた剣を突き立てられる。

 腹部に槍が突き刺さり壁に貼り付けられる。

 数多の武器と高レベル者との攻撃に晒されたモミはあっという間に壁に串刺しにされた。

 

 「魔法詠唱者がこうも簡単に接近を許しては駄目だな」

 「ふひひ…油断しすぎたかな?」

 

 索敵能力や魔法を使えない神父ぼっちはアイテムを使用してモミのHPを確認する。すでにレッドゾーンに突入しおりあとニ、三撃で殺せる状態にあることに胸を撫で下ろす。

 剣を鞘に収めて囲むように移動させる。

 

 「やめて!私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」

 「エロ同人?何の事かは分からないがこれ以上乱暴する気はない。これでも騎士を勤めていた身でね」

 

 ふーんと生返事をするモミを興味深く見つめる。

 

 「質問に答えてくれたら殺さない。だから答えてくれ。君はプレイヤーかい?それともNPCかい?」

 

 確認の為の質問だろうが答える気は無くただ笑い続けた。串刺し貼り付けにされた少女が狂ったように笑っている様子に周りの者は恐怖する。

 

 「答える気は無いようだね…」

 「知ってる?化け物を殺せるのは人間だけなんだって」

 「…何の話か知らないが…」

 「君達じゃあ私は殺せないって事」

 「?私は人間だよ?」

 「いんや、違う」

 

 モミに対して畏怖の念を抱いていなかったぼっちは半歩引いた。

 飲み込まれそうだった。

 闇夜を固めたような黒く淀んだ瞳に心を捕まれたような気がした。魔法やスキルでの精神攻撃には対応策をつけているからその類ではない。

 ゴクリと唾を飲み込み睨みつける。

 

 「君は器だよ。誰かに求められ、答えようと努力する道化人形。しかし答えることも出来ずに演じることも出来ずにただただ命じられたまま動く人形…その行動に意思は無く…意味など皆無だ」

 「…黙れよ」

 「フヒ!本当の事言われて怒っちゃったのかなぁ?かなぁ?」

 「…黙れと言っている!!」

 「《エクスプロードマイン》」

 

 怒りを露としたぼっちは突如展開された魔法の地雷により足を止めて距離を取る。ぐっと怒りを飲み込み弓兵を並ばせる。まだ撃たせないように片手をあげて待機で留める。

 

 「何のつもりだ?時間かせg…」

 「便所に土間の土…硫黄…木炭…」

 「…なにを言ってる!?」

 

 訳も分からぬ物をぶつぶつ唱え始めた事とファイヤボール天井に向けて放とうとしている事に対して違和感を抱く。

 何十メートルも上の天井に何かが埋め込めれているのが視認出来た。それが何なのか、何を意味するのかは一ミリたりとも理解しえなかったが嫌な予感がする。とてつもなくヤバイ事が起きると。

 

 「…三役揃うと…黒色火薬である」

 「や、止めろぉおおお!!」

 「嫌だ。そんな頼み事は聞けないね」

 

 止めさせようと叫ぶが無慈悲に放たれたファイヤーボールは天井で火炎を撒き散らす。撒き散らされた火が天井に埋め込められた火薬に引火して爆発を起こす。無数の爆発により地面が揺れ天井が崩落してくる。

 

 「総員退避ぃいい!!」

 

 叫ぶと同時に仲間を逃がす為に誘導する。ぼっちには戦闘力はあっても守る術は持ち合わせてない。ゆえに誘導するぐらいしか出来ないのである。

 慌てて逃げ出す中、何人かが落下してくる岩盤などに潰されあっけなく肉塊となっていく。中には右腕や足だけ潰され動けなくなった者も出て来て手を貸そうとした者と一緒に潰されて行く。

 生き残っている者達が階段を駆け上がったのを確認してから貼り付けにしたモミに視線を向けた。

 突き刺さっている刀槍を抜く事無く相も変らずニヘラニヘラ笑っている。

 

 「さ…さよ…さようなら―――さん。わ…私も楽しかったよ…」

 

 モミを隠すように振ってきた岩盤がエクスプロードマインに落ちて大爆発を起こす。爆炎に包まれた一帯には力無く倒れこむ少女が一人…

 

 「情報を与えずに命を絶つか…見事」

 

 空に十字をきって数秒黙祷を捧げると他の者達と同じように脱出する。外に出ると先ほど居た地点の岩盤が崩れて大きな穴が開いていた。

 

 「…報告を」

 

 その場に伏して悲しみにいる者もいるなかぼっちは淡々と口にする。伏していた中で一人が立ち上がり辺りを確認しながら駆けて来る。

 

 「私を含め戦闘可能な生存者19名、負傷者4名。総勢23名ですぼっち様」

 「…半分も取られましたか。プレイヤーかも知れない相手と戦った後と考えればまだ運の良い方ですね」

 「出来れば死んだ同志を掘り起こして故郷で埋葬してあげたいのですが」

 「許可を出したい所ですが今すぐこの場から撤退します。これだけの崩落となると辺りに住んでいる人や町から誰かが来るかもしれません」

 「―っ!!……了解いたしました」

 

 ぐっと泣き出しそうなのを堪える隊員の肩をポンと叩き、崩落した穴へと手を合わせる。叩かれた者は我慢できず涙を溢れさせながら同じく手を合わせる。

 死んだ仲間と久しく見た異世界からの訪問者に……




………次回『…モミ』

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