骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 14日の投稿の時点で気付かれていたと思いますがバレンタインです!
 皆様は愛しき人へのチョコを渡すか貰うかしましたか?
 チェリオはココアパウダーたっぷりで苦めのトリュフ作りましたよ♪
 ……もちろん自分用ですが…


特別編7:乙女の戦『バレンタイン』

 今日は珍しく食堂で食事を食べていたぼっちに人だかりが出来ていた。

 右隣には勝ち誇ったように座るシクスス、左隣にはモミが並んで食事している。近くには一般メイドが集まって食事をしているがフォアイル、リュミエール、インクリメントはシクススを睨むのを止めなさい。

 

 「そう言えば明日バレンタインだね…」

 

 ぼそっとモミが呟いたのに俺は頷いた。だが周りのメイド達は首を傾げていた。逆にモミが首を傾げている。内心またかと思いつつ説明…しない!!多分すれば貰える事になるのだろう。今までぼっち生活の中で貰ったことなどなかった。いや、小さい頃に母親から貰ったっけ…。話がずれたな。確かに嬉しいのだがこの後が大騒ぎになるのが目に見えてる。俺も学習するのだ。

 

 「バレンタインとは何ですかモミ様?」

 「ご存じ、ないのですか!?」

 

 シクススの問いに目を見開いてモミが叫んだ。

 そこで区切るんじゃない!それではマクロスFのあの人ではないか。さも当然のように上官にアイドルの説明をするおっさん。

 

 「バレンタイン!それは乙女が好きな異性やお世話になっている相手にチョコを送る。女性の!女の子の!乙女の戦である!!」

 

 どうしたモミ!?いつになく熱くないか?てか周りの視線が…あ、察し。結局そうなりましたか。

 食堂でモミが発生源の騒ぎが大きくなる。これ以上騒ぎが大きくならず収束してくれれば…

 

 「何のさわぎっすか?」

 「ルプスレギナ様!実は…ごにょごにょ…」

 「なんと!?すぐにユリ姉に報告するっす!!」

 

 オワタ…誰がこの子達に教えるんだよ。モミは駄目だな。結果が見えている。結局俺かぁぁぁあああああ!!

 ぼっちは心の中で叫び声を上げてトレイを片しに行く。

 

 

 

 「では皆さん戦(いくさ)を始めましょうか?」

 「「「おおおおおおお!!」」」

 

 胃が痛い…何を始めるってアルベド。勘弁してくれよ。見ろよ、発端のモミだってそんなテンションじゃないのに。

 辺りを見渡す。ここには41人のメイド達にプレアデス、女性守護者で男性は監督役の俺だけ……目が一点を見て止まる。

 もう驚かないぞ。例えさも当然の如くに桃色のエプロンドレスを装備したマーレをを見ても驚かないぞ。心臓が飛び出そうではあるが。

 俺は前日に用意したレシピ表をモミに配らせる。本当なら準備をメイド達に任せるつもりだったが、

 

 『チョコレートはカカオから作られる。と言うことはカカオを栽培すれば良いんですかぼっち様』

 

 何処からしようとしてんだよ!!アウラはいつから農業も出来るアイドルグループに入ったし!用意しますよ。俺が用意するから用意するな!!

 ため息を付きつつ監視役を行なう。それぞれレシピの中で気に入った物を作り始める。

 この厨房であるルールを言い渡してある。ぼっちに聞かない事である。一人が聞き始めると皆がするとモミの判断である。だからぼっちは見て周りぼっちから声をかける事になっている。何事もないだろうと願っていたがさすがナザリックメンバー。期待を裏切らない。

 何やらシズが刃物を使い分けチョコレートを削っている。

 

 「・・・シズは何を作っている?」

 「スプーンチョコです」

 

 スプーンチョコは知っている。スプーンでチョコをすくい固め、デコレーションする物は知っている。

 シズのはスプーンチョコではなくチョコスプーンである。チョコレートの塊をスプーン状に削っている。細部にわたり繊細に模様を描いている。もうこれ芸術じゃね?

 

 「?…どうしましたか?」

 「・・・・・・上手だな」

 

 もはやそれしか言えなかった。すると…

 

 「何で止めるでありんすか!?」

 

 シャルティアの怒鳴り声が聞こえ振り向くとモミが包丁を持っているシャルティアを止めていた。

 

 「少し入れるだけでありんす!」

 「それ駄目だって!それをやるのは病んでる子ぐらいだって!!」

 「・・・どうした?」

 

 モミがあそこまで言うなら結構な問題なのだろうと止めに行く。

 

 「わ、私はぼっち様のチョコに血を入れようとしただけでありんすよ」

 「だからそれが駄目だって!周りもしようとしないの!これじゃあ血のバレンタインじゃないか!!」

 

 うん、そうだね。この惨劇がんばって止めてね?頭が痛くなってきたよ。

 

 「血は入れなくていいから代わりに愛情をたっぷり込めるように」

 「むぶぅ!?ちょ、姉さん!すみませんつばっ!?」

 

 皆にアドバイスをしつつ溶かしたチョコレートをそのまま胃に流し込もうとしていたステラの顔をボールの中に押し込んでいた。

 すでにモミのストレスもマッハなのだろう。ん?ステラの顔を突っ込んだボールに溶かしたてのチョコ入ってなかったっけ?

 

 「す…いま……あの…もうし…」

 

 ひたすらにチョコを睨みつつ、何か呟きながら作業するナーベラルに恐怖を感じた。

 ユリやソリュシャンも怖がり少し距離を開けている。

 怖いがスキルを発動させ聞いてみると『申し訳ありません』や『ごめんなさい』などの謝罪の言葉が並べられていた。

 まだ気に病んでいたんだな。気にしなくても良いのにと思いつつ出口へと足を向ける。

 モミの視線を感じるが止まりはせずそのまま調理場を去る。もうぼっちは胃も頭も痛すぎるから…戦術的撤退であーる。

 

 

 

 翌日…

 少し食べ過ぎた感があるぼっちだった。

 だって一般メイド41人からとプレアデス6名から合計47個も食べたのだ。

 後から考えたらまた今度にすればよかったんだけどね。

 そして今はアウラにマーレにシャルティアにモミと守護者が集まっていた。

 

 「ぼ、ぼっち様。僕からのチョコレート受け取って下さい」

 「・・・ありがとうマーレ」

 

 頭を撫でつつマーレのチョコレートを大事に受け取る。渡す時から頬が赤らんでいたが撫でるともっと赤くなった。

 このチョコレート、ハート型なんだけどそういう意味なの?それともレシピに載っていた形にしただけ?ぼっち?じゃなかったどっち?

 マーレを見つめていたらその間にシャルティアが割り込んできた。少しふてた感じがするのは何故?

 

 「私のチョコも受け取って欲しいでありんす」

 「ああ・・・ありがとう・・!?」

 

 受け取ってなんだが昨日の包丁を持ったシャルティアを思い出す。まさか…

 

 「残念ながら血は入れませんでしたけどいつでも…」

 「なぁ!?僕だって!ぼっち様今度は僕の血を」

 「いつまでそれやるの?あたしまだチョコまだ渡してないんだけど?」

 

 熱が入った二人を止めると嬉しそうにアウラが前に出る。

 

 「あたしからのチョコはこれです」

 「・・・・・・口紅?」

 

 渡されたのは口紅を連想させる小さな丸い筒状の物だった。

 首を傾げているとモミが笑いつつ近づいてくる。

 

 「…アウラ渡し方違うって」

 「違うって渡すんでしょ?」

 「こうするの」

 

 俺が持っていた筒をモミが取り蓋を外す。現れたチョコレートをアウラの唇に躊躇う事無く塗り、こちらに振り向かせ後ろから押す。

 意図を理解したアウラが頬を赤らめながら膠着する。

 接吻しろと言うかあいつは。いや、ネタを多く理解しているモミだ。ならば…

 アウラの目を見つめつつ右手をアウラの眼前まで持っていく。人差し指を立てゆっくりとアウラの唇に触れる。

 

 「柔らかくて、とても甘そうだね…アウラ」

 

 出来る優しい口調前回でそう言うと…

 

 「ふぁ!?はわわわわわぁぁぁ…」

 「お、お姉ちゃん!?」

 「くぅぅぅ…何て羨ましい…」

 

 一瞬、頭の上に蒸気が噴出され真っ赤になったアウラは倒れた。マーレが心配そうに、シャルティアは羨ましそうにアウラを見ていた。

 そしてぼっちはこれが正解だろうとモミを振り向く。

 

 「むがああああああ!!」

 「・・・!?」

 

 モミは奇声を上げつつチョコを全力でぼっちの顔面に投げつけ全速力で部屋を出て行った。なんでこうなったし…

 

 

 

 アルベドはアインズの執務室に向かいながらモミの言葉を思い出す。

 

 『アルベドは攻めすぎ。もう少し落ち着きを持ったほうが良い。全速力で追いかけられたら誰だって逃げるよ』

 

 そんなつもりはなかったのだけどもどうしてもあの方の前では抑えがきかなかったのだ。

 だからこそ今日は余裕を持って接することを肝に銘じる。

 執務室の前で立ち止まりドアを二回ほどノックする。

 

 「アインズ様、アルベドです。失礼致します」

 「うむ、入れ」

 

 お返事を聞き中へと入る。執務に集中しているのだろう顔を向ける事はなかったが凛々しく美しいアインズ様の横顔を見ていると…いけない、いけない。今日は落ち着いて優雅に。

 

 「どうしたアルベド?」

 「はい。今日はバレンタインなのでアインズ様にチョコレートを受け取って欲しく…」

 「そうか。そうだったな、ありがとうアルベド。頂こう」

 

 そう言われアインズ様にゆっくりと近づいていく。

 

 『…いい?奇襲が通用するのは一回だけだからね』

 

 チャンスは一回…決めてみせる。

 チョコが入った包みをアインズ様の御手にお渡しする。意識は包みに集中しており隙が出来た。

 すかさず顔をアインズ様の近くまで寄せる。

 

 

 ちゅ

 

 「し、失礼しますアインズ様」

 「あ、ああ…」

 

 顔が熱を持って赤く染まっているのが分かる。今はアインズ様のお顔を見ることが出来ない。それぐらい恥かしいのだ。俯いたまま執務室を後にする。

 

 アインズは頬を押さえたまま30分ほど呆然としていた。




チェリオ「…あ、察し。それで本編の後書きに居なかったのか…」
ステラ 「その通りです。あの後では出れないでしょう」
チェリオ「貴方は火傷しなかったの?」
モミ  「顔を突っ込まれるたびに一気に流し込みましたんで」
チェリオ「!?」

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