私はショートケーキを作ろうかなっと思ってます。
あとがきには感想にあった質問に回答しておりますのであとがきも見てもらえたら嬉しいかな。
ぼっちさんは別としてナザリック地下大墳墓はいつも忙しいのだ。メイド達はナザリック全域の清掃に、守護者や配下の者達は警備から製造などで、俺は各種書類に目を通したり、新たな計画書と睨めっこ等山ほどの仕事を抱えているのだ。
そんな中、ぼっちさんが執務室にやってきたのだ。だいたいぼっちさんが執務室に来ると何かあるに決まっているのだ。しかも良い事の方が少ない。悩みのひとつだ…
執務室に居たをシズをひと撫ですると目の前までやってきた。
「どうしましたか?」
「・・・今日は・・・何月何日」
「?えーと…たしか3月13日でしたね」
「・・・明日の用意は?」
「明日?何かありましたか?」
頭を捻って明日の予定を思い出す。モモンとしての仕事も入れてないはずだし守護者達と何か行なう予定もないはずだ。
一人唸っているといつの間にか背後に周ったぼっちさんに首根っこを掴まれそのまま引き摺られるように連れ出される。訳も分からず抵抗するが後ろまで手が届かず何も出来ずに終わった。
「・・・シズ。少しアインズ様借りる」
それだけ言うと再び引き摺られることに…
「とうとうやって来た3月13日…」
第11階層の月末生産報告書に目を通していると何の前触れもなく口を開いた第11階層守護者のモミ・シュバリエを見つめる。
「『とうとう』って何かあったかしら」
「ご存知、ないのですか!?」
「!何よ、急に…」
「ごめん…あー、ホワイト・デーって知ってる?」
「ホワイト・デー?白の日?いいえ、知らないわ」
「そう…ホワイト・デーと言うのは…あ、ちょっと待って」
誰からかメッセージを受けたらしく端っこ移動して呟き始めた。
正直私は彼女が苦手だ。ナザリックのことを考えてくれているのだが何を考えているのか分からないのだ。いつもは控えめで口数が少ないのだがいきなりテンションが上がって叫びだすし、危険な感じはするのだが特に何かをするという事もなく、私達とは違うNPC…
メッセージが終了したのか何やら不適な笑みを浮かべこちらを窺がっってきた。嫌な予感がしたので理由をつけて離れることにする。
「…この後だけどちょっと時間ある?」
「この後は予定が詰まってるの」
「お茶する時間もない?」
「そうね」
「ふーん…残念だなぁ」
諦めたと思ってこの場を急遽離れるようとする。上手く離脱できると思ってドアノブへと手を伸ばした瞬間、ある言葉が耳に入った。
「アインズ様を隠し撮りした写真とか見せてあげようと思ったのに」
「!?……今、なんと言ったの」
「アインズ様のか・く・し・ど・り」
「そんな事をしていたの!!」
「そう怒らないでよ…分かったよ…燃やせば良い?」
「!?」
「入浴シーンは無いとしても執務している時に何気ない仕草、戦闘中の物まであったんだけど…そうだよね。隠し撮りした物なんてすべて灰に…」
「ま、まちなさい!?」
「…どったの?」
「…………そ、そういえばこの後の予定は無かったはずだわ」
「あれ?さっきは予定があるって…」
「勘違いしていたみたいね。この後お茶しない?何か見る物なんて用意して」
「あいあいさー…」
速攻で餌に食らい付いてしまった事を後悔があったがそんな事より彼女が持っている写真への期待でいっぱいだった。
「ちょっとどうしたんですかぼっちさん!?」
ぼっちさん専用の調理場に改造された部屋まで引き摺られた俺は当然の疑問を口にした。ナザリックの為に多くの仕事をこなさなくてはならないのに何故!と口にする前に調理台の上を指差され見てみるとそこにはお菓子でも作るのであろう材料が並んでいた。
「明日は3月14日でホワイト・デー・・・」
「あ!そういうことでしたか。そうならそうと言ってもらえれば良かったの…に、って少し怒ってますか?」
「・・・・・・別に」
相変わらず表情では分からないが雰囲気的に怒っているように感じる。
まぁとりあえず調理室に連れて来たという事は一緒に作ろうと言う事なのだろう。だが、料理スキルも料理技術も無い。ならどうするか悩みながらぼっちさんへ口を開いた。
「ぼっちさんは何を作るんですか?あ、真似ると言う事ではなく参考で」
「・・・アウラはフルーツパイ、マーレはミルフィーユ、シャルティアは紅茶ケーキ、ユリはフォンダン・ショコラ、エントマはマカロン、シズはプディング、ナーベラルはレミントン、ソリュシャンはデビルスフードケーキ、ルプスレギナはチョコチップスコーン、で一般メイドのシクススにはフラワーケーキ、フォアイルには・・・」
「いやいやいやぼっちさん!?それだけ作る気ですか!?」
「・・・もちろん」
「…すごいですね。しかし何を作ったらいいか…」
「・・・・・・!!ウエディング・・・」
「却下です」
「・・・・・・」
「そんな目で見ても却下します」
「・・・じゃあショートケーキで」
「うーむ、それでいきましょうか」
作る物が決まるとぼっちさんはショートケーキの資料を渡し、自分の作業を開始した。
見ながら作り始めたのだがやはりテレビで見たように手早くというのは難しい。それに比べて慣れているのか作るのが異様に早いぼっちさんは焼いている間に他の物を仕込んだり何がどれやら分からないほど同時進行で進めていた。
「・・・そう言えば」
何かを思い出したのか作業の手を止め、こちらを振り向くぼっちさん。
「モミに・・・別々の部屋に居るように言われた・・・何かあった?」
その言葉に至高が停止した。
『ちゅ』
あの時、頬に伝わった感触を思い出しながら頬を触る。顔が赤くなると精神の安定化が発生する。しかし一回ではなく何度も発生するたびに顔を赤らめる事を首を傾げながら覗き込んできた。
「なななな、なんでも無いんです!!」
「・・・?分かった」
納得はしてないが引いてくれたぼっちさんから目の前の材料に目を戻し、調理を続けることにするがここで問題が発生した。
卵が割れないのだ。いや、割れるのだが潰れるのだ。元々料理はしないほうだがここまで酷くなかったはずだ。
何度か割っているうちに気付いた。ひびを入れて二つに割ろうとした時に力を入れた指の骨が殻に食い込みそこらかしこにひびが入り潰れるのだ。
どっかのリザードマンではないが『むぅ』と声を漏らし悩んでいると気付いたぼっちさんがこちらを見つめていた。
「・・・・・・カステラでも作る気ですか?」
「いえね…卵が割れないんですよ」
骨の手を振ると理解したのか近づき必要な数だけ卵を手に取る。白く丸みを帯びた所に卵を軽く当ててひびを入れて次々と割り、白身と黄身に分けていくのだが言っておかなければならないことが一つあった。
「あの、ぼっちさん。卵を割ってくれたのはありがたいんですけど私の腕で卵にひびを入れるのやめません?」
「・・・?・・・!?ごめん」
何の躊躇いも無く当たり前に行うものだから反応できなかったが『白く丸みを帯びた所』である私の左腕の裾より出ていた骨でひびを入れていたのだ。
それ以降は何事も無く順調に出来上がっていく。しかし一人一つにしても結構な数になってしまった。これらを全部ぼっちさんが入れるであろう調理場のアイテムボックスに入れるわけにもいかず、かと言って厨房にも入れるにしても結構なスペースをとってしまう。
「・・・出来たら47番目の部屋へ」
「47番目の部屋ですか?こんどは何の部屋にしたんですか?」
「・・・はい、これ」
いつの間にか私が作ったショートケーキを1ホールから1ピースを切り取り箱に入れて包んでくれていた。それをこちらに渡して行くようにジェスチャーしてくる。
「いえ、一個ではなくもっと持てま…」
「・・・Go」
よく分からないがその一個だけ持って行く事に…まったくどう言う事なのだろう?
「くっふうううぅぅぅぅぅ!!」
私は鼻息荒くして興奮していた。モミからお茶をしながら(まったく手は付けていないが…)大量の画像を保存している巻物を一時間近くも見直していた。
ぼっち様との戦闘を行なっていたアインズ様。
いつも見ている仕事をなされるアインズ様。
冒険者モモンとして剣を振るわれるアインズ様。
どれをとってもすばらしい画像の数々であった。しかし疑問も残る。最初の画像などどうやって撮ったのか分からないのだが…
『ふぅ』と一息入れつつ巻物を机にそっと置き、冷え切った紅茶を口にする。
少し落ち着いたことでモミが居ないことに気が付いた。思い返してみると数分前に『ちょっと出てくる』と行ったきり帰って来てないのだ。待ってる間はまた巻物を見返せばよいのだが…
そんな時部屋の扉が開いた。モミが戻ってきたんだと思った瞬間、気配で違う事に気付いた。
部屋に入ってきたのはアインズ様だった。アインズ様も私と同じく驚いた表情をしていたが…ここで何となく訳が分かった。多分あの子がぼっち様と何かをしてくれたのだろう。
扉を開けるとこちらを驚きの表情をして見つめるアルベドと目が合った。
察した。1ピースだけ詰められた箱を渡されてこの部屋に行かされた理由を…
「アルベド。少しいいかな」
「勿論ですアインズ様。少しといわず何時間でも♪」
「いや、これなのだが…」
持って来たケーキを箱より出してアルベドに差し出す。
「一日早いのだがホワイト・デーと言ってバレンタインでもお返しを行なう日なのだ」
「!?…そういうことでしたか(ぼそぼそ)」
「?何か言ったか?」
「いえ、何も」
「それでなのだが食べて感想を聞かせてくれないか?私も作るのは初めてなんでな」
「!?はははは、初めて!?アインズ様の初めてでございますか!!」
「う、うむ…そ、そうだ」
「アインズ様の始めてを私が…」
「おーい…駄目だ、聞こえてないな」
「…紅茶をお持ちしました」
「ああ、ありが…そうか、アルベドをこの部屋に呼んだのはお前か?」
横を通り過ぎ新しいカップを持ったモミがてへっとポーズをとりつつカップに紅茶を注いでいく。注ぎ終わると机の真ん中にあった巻物を回収してそそくさと出て行った。扉が開いた瞬間、ぼっちさんが親指を立てていたのが目に入った。
「はっ!?失礼致しましたアインズ様」
「構わないさ。さぁ召し上がれ」
「では、頂きます」
その後、感想を聞きながら二人は会話をしつつゆっくりとお茶を楽しんだのであった。
ちなみに割りすぎた卵はぼっちとモミがカステラやミルクレープにしてナザリック内に配りまくったと言う。
Q:ぼっち様を負かせようとした結果、最後まで気が付かずに実質自らに火を放つという醜態を晒したもののナザリック軍に数・質で劣りながらぼっち様が勝利した事
A:モミの計画を知らないナザリックNPCは軍略も行なえると言う事でぼっちさまの株が急上昇!モミの場合はなんやかんやで突破されるのかと諦め…
Q:『……心的には別かもしれないが…』が、指す友情はどういう性質のものなのか
A:普通に皆様が友人や親友に抱く感情と変わりません。共に悲しみ喜ぶことも出来ます。ナザリックの為ならばそれらの感情を押し込めることが可能な状態へとスイッチが切り替わるので殺害も拷問も何事も無かったように行なえます。ただスイッチが切り替わった時には元に戻りますがね…
Q:彼女にとって守るべきナザリックとは建築物のことなのか
A:建物や組織を含めたシステムですね。確かに人もなのですがナザリック全体に悪影響がでそうならば少数を斬り捨てて大多数を助ける。その考えから斬り捨てることも出来る。