骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 おはラッキー★
 現在深夜二時まで書き続けていたチェリオだよ~。
 日曜日だけで二つのSSを同時進行なんてきつかった。でも何とか間に合った!では寝ます…


特別編10:二匹の鬼VSナザリック

 「・・・・・・」

 「…………」

 「はむはむはむ」

 「モキュ、モキュ、モキュ」

 

 この一室にはいつも通りにヴィクティムとガルガンチュアを除く各階層守護者が集まって食事をしているのだ。コース料理ではなく太巻きを一人一本無言で食べている。

 何の会話も無くただ食べている。

 提案したアインズはどうしてこうなったと悩み始めていた…

 今日の昼ごろまで話は戻る。

 執務室で作業をしていたアインズは一人(ユリが待機している)考え込んでいた。

 NPC達に多くの業務から警備、清掃など数多くの仕事を与えている身としては何か皆で楽しめる娯楽、もしくはイベントを企画しなければならないと思っていたのだ。しかしいざ考えてみるとどのような物が良いのか分からずに時間だけが経っているのだ。

 コンコン

 ノック音の後に扉が開きぼっちさんが入ってきた。いつも通りに控えているプレアデスを(今回はユリ)一撫でして歩み寄ってくる。

 

 「・・・外で入手した・・・情報」

 

 ぼっちさんから差し出された資料を受け取りながら見つめる。

 このナザリックで一番そう言うイベントを企画しているのはぼっちさんだった。そこで今までのイベントを思い出してみる。

 クリスマスパーティー…お正月…スキー&雪合戦…ひな祭り…ホワイト・デーなど月々にある行事に合わせている。そこで一つ思い出した。

 

 「あ…豆まき…」

 「・・・?」

 「いえ、節分をしてないなと思いまして」

 「節・・・分・・・」

 「はい。そうだ!準備も簡単ですし今夜にでもしますか」

 「え・・・あ・・・」

 

 その発言は控えていたユリからナザリック全体に広がったのだ。して今に至るのだが…

 無言で決められた方角を向いて太巻きを食べる。何と言うか盛り上がりに欠ける。あの時ぼっちさんが何か言いたげにしていたのはこうなる事を予測していたからなのだろう。

 少し後悔しつつ太巻きを食べているとアルベドが視界に入った。

 

 「あむ…んちゅ…はあむ」

 

 …………無意識でやっているのだろうか。それとも意識してやっているのだろうか。兎も角このままアルベドを見ていたらどれだけ精神の安定化させられるか分からない。視界を別の方向に向けると小刻みに震えているモミが視界に入った。笑いを堪えているのだろう。そこにいたのは…

 

 「モキュ、モキュ、モキュ…?」

 

 可愛らしい擬音を漏らしながら太巻きを必死に下あごを動かして食べているコキュートスだった。思わず微笑んでしまい一人困惑したように首を傾げている。

 

 「……ドウカナサレマシタカ?」

 「あ!喋ったら駄目なんだから」

 「お、お姉ちゃんも喋っちゃ…あ」

 

 疑問を口にしたコキュートスを皮切りにアウラ・マーレと口を開いていった。そして自分自身も喋ってしまった事に気付き口を塞ぐ。

 そんなやり取りがあり、全員が太巻きを食べ終わった。あとは豆を撒くだけだが…豆の入った袋を取り出し机の上に置く。

 

 「後は豆を撒くだけだがやるか」

 「豆を撒くのですか?」

 「ああ。鬼は外、福は内と言って投げるのだ。中には鬼役が居て鬼に投げると言うのもあるのだが…」

 「はい!アインズ様。あたし投げたいです」

 

 元気よく返事したアウラに豆が入った袋を渡すとニヤリと笑い、豆を取り出し投げた。

 

 「わぷっ!?」

 

 直撃したシャルティアが変な声を出した。完全に狙って投げたのは確実だった。喰らったシャルティアは肩を震わしながら怒りを露にしていた。

 

 「何で私に投げるでありんすか!!」

 「だってあんた吸血『鬼』でしょ?だったら投げないとね」

 「確かにアウラの言うとおりだね」

 「ちょ!!デミウルゴスまで」

 「あのー」

 「どうかしたかね?」

 「ぼっち様も吸血鬼ですよね?」

 『あ!』

 

 皆とぼっちを見たアインズはあの時ぼっちが何か言いたげにしていた本当の理由を理解した。

 

 

 

 くっそ!だからしたくなかったのに…思ったよ。俺も節分しようかと思ったけども吸血『鬼』の時点で投げつけられるの分かったから言わなかったのに。てかあの骸骨今気付いたって顔しやがったな!!

 考え込むぼっちをどう捉えたかアウラが急に申し訳無さそうな表情をした。

 

 「ち、違うんですぼっち様。あたしはシャルティアに投げようと言っただけでぼっち様には決して!その…あの!」

 

 あ!察し。これただ悩んでいるだけなんだけどアウラから見たら激オコに見えるのか。このままだと俺が苛めているみたいじゃないか。

 

 「・・・今日は無礼講で行こう」

 

 この言葉でナザリック全員が参加する豆まきが模様される事となった。

 ルールは簡単。時刻が変更される残り3時間、鬼であるシャルティアとぼっちが逃げ回ると言うものだ。細かなものを言うと通常攻撃やスキル・魔法などの攻撃系を逃げる側が追う側に行なうのを禁止。追う側は豆のみで逃げる側に攻撃する事。もちろん姿を消すのは禁止と言う物だった。

 さて開始するとなると皆がシャルティアを狙っているのが分かる。だがそれは可愛そうなので俺が庇うように前に立つと投げようとした手が止まった。至高の御方と言う肩書きで投げずらいのだ!そう思っていると

 モミの手より豆粒一つが中を舞う。 

 『レールガンって知ってる?』

 知っているがあれは50m以上離れてれば…って豆じゃ無理じゃね?そんな思いは余所に舞っていた豆が握り拳のようで親指の先が人差し指に少し掛かった状態の拳のまで降りてくると親指で豆を弾き飛ばして来た。あまりの速さに豆が熱を持ち赤く輝いて見える。そんな豆が仮面で唯一開いている瞳に…

 

 「・・・!!」

 

 ぶねぇ!!首を傾げるだけで何とか避けれたがもう少しで失明するところだった。

 

 「そうだ。ぼっちさんに当てられた者は一日ぼっちさんを自由に出来ると言うのをルールに追加しよう」

 

 呟いたアインズの言葉に一斉に皆の顔つきが変わった。まるで獲物を狙う肉食獣だ。

 

 「申し訳ありませんぼっち様。これも無礼講。お覚悟を!」

 「イベントト言エドモ全力デ行カセテ頂キマス」

 「当てれたら、な、何でも良いんですか!」

 「マ、マーレ!?あんた目が怖いよ」

 

 ヤバイコレはっと思考する前に思いっきり振りかぶった手から豆が放たれる。

 

 「散れ・・・」

 「は、はい!」

 

 シャルティアは入り口まで飛び退き、俺は豆の軌道を見切って回避して行く。

 『散弾ではなぁ!」』

 いやいやいや!散弾だから今困ってんのよ!なんて考えてる場合じゃない。逃げなきゃ!!(必死)

 

 「失礼・・・」

 「はわっ!?ぼぼぼ、ぼっち様!!」

 

 こちらも飛び退きシャルティアに近づくとお姫様抱っこの形で持ち上げそのまま去っていく。

 おのれ骸骨!覚えておけよぉ!!決して口からは出さない叫びを心の中だけで叫んでいったぼっちであった。

 

 「あたしもして欲しい!じゃなかった。追いかけなきゃ」 

 「オ待チヲボッチ様」

 「ぼ、僕もして欲しかった…」

 「やはりただ投げるだけではぼっち様には当たりませんか」

 「ふひっ♪策はある」

 

 外野になってしまったアインズはアルベドと一緒に眺めつつ、少しやらかした感が半端なかった。後で何か言われないか不安になった。

 

 

 

 おかしい。

 ぼっちは第三階層まで逃れたのだがここまで苦戦するとは思わなかった。速力的に撒くのは簡単なのだがその後隠れた場所がばれるのだ。

 食堂に隠れていると「ぼっち様そこっすね!」とルプス&ナーベラルに見つかった。いつものようにルプスの発言の注意で叩き少しだが時間を稼いだナーベラル。ナイス!!

 円状闘技場に身を隠していたら「アウラ殿!見つけたでござる」とハムスケとアウラに囲まれる。さすがにアウラの配下全員で包囲とか洒落にならない。

 第五階層の雪の中に潜って隠れていると「そ、そこに居ますね」とスケリトル・ドラゴンに跨ったマーレに追いかけられた。くそ!マーレに跨られるとかスケリトル・ドラゴンが羨ましい!!

 それに一般メイドも何か組織立って行動しているような…

 

 「そっちに居た?」

 「いいえ。あちらは探した?」

 「この階層に居るのは確かなのに…」

 

 ばれてる。理由が分からない…

 

 「あのぅ…ぼっち様///」

 

 まさか盗聴器か何かでも付けられたか?いや、そんなアイテムあったか?

 

 「ぼっち様///」

 「・・・ん?」

 

 先ほどから呼ばれていた事に気付き返事をするシャルティアが真っ赤な顔で恥かしそうに俯いている。

 

 「そのぉ…すこし恥かしいでありんす///」

 

 あまり意識しないようにしてたのにシャルティアの発言で戻された。

 現在ぼっちは第三階層で柱の陰に隠れているのだ。しかしそこは狭く悠々と二人は隠れない。ゆえに足や手を絡ませ抱きしめるように二人が無理やり隠れているのだ。顔と顔が接触しそうなぐらいに。こんな所見られたら恥かしい…な…

 気付いた。どうしてこうも見つかるのか。魔法感知式のスキルを発動する。こちらに向かって動いてくる魔法を探知した。隠れているのも限界と判断して表に出る。するとそこにはモミとステラが待ち構えていた。

 

 「・・・やはりお前か」

 「やはりとはどういう事でありんすか?」

 「・・・メイド達の動きや私達の発見率が高かったのはそこから覗いているから・・・なぁ、ニグレド?」

 「フヒヒ…やっぱり気付かれてた」

 

 答えは合っていたのだろう。申し訳無さそうにしているステラの横でモミは不敵笑う。

 

 「凄かったでしょ?今ニグレドと一緒に一般メイドの指揮官としてパンドラズ・アクター、豆を持てない恐怖公の眷属達を索敵斑として指揮官をハイネが居るんだよ。フヒヒヒヒ。では覚悟しってもらおうかな♪」

 「も、申し訳ありませんマスター。私は…」

 

 投げようと構えるモミは楽しそうだがステラは苦しそうだ。俺に対する忠誠心が高い為に欲望と忠誠心に挟まれているのだろう。当てられるべきなのか…

 

 「さて、ぼっち様に一日仕事を押し付けて私が堂々と一日遊ぶ為に!!」

 

 何か俺の頭の中で音を立てて壊れた。今何つったあいつ?ははは、笑わせおる。お灸を据えてやろう。

 

 「・・・ステラ。モミを止めよ・・・手段は任せる」

 「!!ハッ!承知しました」

 「へ?」

 「追う側が追う側を攻撃するのはルール違反じゃない・・・」

 「姉さん。そのような目的の為にマスターに刃を向けるとは…」

 「え!ちょ!まっ!!」

 「行け!ガイ・ボルガ!!」

 

 ステラが投擲した槍はまるでクラスター爆弾のように分裂して30もの矢となりモミを襲った。

 『ゲルズゲー!?』どこかのMAの名前を叫んだモミの声が聞こえたが無視して走り出した。下に降りる事は出来ずそのまま走り去る。何とか第一階層まで来たぼっちは背中から蝙蝠のような羽を生やして、またしてもお姫様抱っこの形で抱きしめたシャルティアと共に夜空へと羽ばたいた。

 シャルティアの感嘆の声が耳に入った。空には無数の星々が輝きまるで宝石のようだった。そんな星を覆うように明るい月に目を奪われた。

 

 「・・・月が綺麗だな・・・」

 「そうでありんすね」

 

 ぼっちの呟きにぼっちにもたれる様にしているシャルティアが答えた。

 そこではっとなった。

 

 「・・・今のは月が綺麗と言う意味で他意はないからな」

 「???分かったでありんす」

 

 急に照れたように言うぼっちを不思議がりながら返事するシャルティア。その後二人は日付が変わる残り30分間夜空を舞ったと言う。

 

 

 

 次の日ぼっちの言った意味を知りたくてアルベドやデミウルゴスに聞いたが分からず、司書長に聞いたところある文豪が『I Love You』を私は貴方を愛しているではなく月は綺麗ですねと言った事ではないかと聞き一人顔を赤らめていたと言う…




次回の特別編は今まであまり触れなかった変身型スライム種のお話です。

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