誤字報告ありがとう御座います。
青い空。
白い砂浜。
透き通った海。
さすがブループラネットさん製作のフィールド。自然に対する熱意が半端なさ過ぎる。おかげでこっちは楽しめるんですが♪
第六階層に作られた浜辺でぼっちはパラソルとシートを設置して海を見る。
大きな波の音を立てながら引いては迫り、引いては迫りで飛沫を上げる。
ここでぼっちより重大発表~。ぼっち、泳げない…
と言うのも、もとの世界では泳げる環境が無い上に別に泳ごうとも思わなかった。本で読んだ知識ぐらいしかないんだが…
軽くため息をつくとほぼ同時にゲートが開かれ水着姿のアインズが現れた。いつものローブを脱ぎ、黒いトランクス型海パンを穿いて脇にはビーチボールを持っていた。
「遅くなりましたね。ぼっちさん……どうしましたか?」
「・・・なんでもない」
ローブを脱いだら普通のスケルトンみたいですね。なんて言える訳ないじゃないですか。
ぼっちもいつものスーツは脱いで今は真紅のトランクス一枚である。ああ…後はいつもの仮面でなく厚めのサングラスかけている。
「お待たせしてしまい申し訳ありません!!」
「す、すみません」
そこに駆けて来たのはアウラとマーレだった。
アウラは上は黄緑や黄色、白などのラインが並んでいるハイカラなビキニに下は緑色の短パンと言うパンツビキニで、マーレは黄色いワンピースにピンクの花柄が描かれたAラインと言われるワンピース型の水着を着ていた。
ん…マーレ?
アインズに頭を撫でられ喜んでいる二人を見ながら疑問符を浮かべる。今日は女性守護者達と海に行こうと言う事だったのだが…
悩むのもめんどくさがり放棄したぼっちに後ろから誰かが接近して来た。振り返ると抱きつこうとしていたのか背伸びをして首の辺りに手を伸ばすシャルティアが居た。振り返ったことで顔と顔が急接近してシャルティアが真っ赤に染まる。
「あ…ああ…」
「・・・」
恥らうシャルティアは胸を白い布地を巻いて隠したような感じのストラップレスのチューブトップであった。この世界に来た当初のように詰め物をしていない為に身体のラインがハッキリと分かってしまう。
「あ、あまり見ないでおくんなまし///」
「・・・すまない」
いつの間にか魅入っていたぼっちはすかさず視界を他へと移す。その先にはアルベドが居た。
布面積の少ないマイクロビキニや投石器に形が似ているスリングショットを想像していたのだがそんな事はなく、上は胸の中心で結ぶビキニで下は大きな布で腰から下を覆ったパレオだった。
きわどい水着を選ぶだろうと考えてた自分を恥かしく思う。自分はまだ皆のことを分かってないんだなと頷き、目をハートにしてアインズに跨るアルベドを見つめた。
「ちょとおおおお!!ぼっちさん、ヘルプ!!眺めてないで助け…」
「ハァ…ハァ…アインズ様の裸体///」
「このぉ~、離れなさいよ!!」
「ち、力強すぎですよぉ」
必死に引き離そうとする二人を退かしてぼっちは首根っこを掴んで海に放り投げた。頭から落ちたアルベドは髪をぐっしょりと濡らして海面に顔を出す。無事なのを視認して振り返るとキラキラした目でアウラが見つめていた。なんだろうと首を傾げようとすると
「助かりましたよ…またこうなるとは…」
「・・・いつもの事」
「いつもじゃ困るんですが…」
ため息をつくアインズだったが気分を切り替えニコリと笑って顔を上げる。
笑っているのだろうが髑髏が笑うってホラーですよ?見ていて普通に怖いんですよ。もう『笑う』ではなく『嗤う』だよ。
「よし。折角の休みなんだ。今日一日はしっかり遊ぶか」
「ぼっち様!」
海遊び開始を告げられると勢い良く駆け寄ってきたアウラは依然と目を輝かせたまま期待を表情で表していた。
まさかなとあるひとつの考えを否定しつつ口にする。
「・・・投げて欲しいのか」
「はい!楽しそうだったので」
耐久値的に投げても大丈夫なのだろうが子供を思いっきりと言う訳にもいかず、飛距離はアルベドの半分でスピードを押さえて山なりに放った。楽しそうな声を響かせながら大きな飛沫を上げて海に落ちた。手を振ってマーレの名を叫んでいるようだった。たぶん「マーレもおいでよ」と叫んでいるのだろう。当人のマーレはして欲しいが怖い気持ちがあってか悩んでいる。
そのやり取りを大きく笑いながらアインズが寄って来る。
「マーレもして貰ったら良いんじゃないか?結構楽しそうではないか」
「・・・だったら」
「へ?」
行き成り腰骨の辺りを掴まれ素っ頓狂な声を出した。何も気にする事無くそのままアインズを持ち上げる。理解できない本人はジタバタと暴れているが後ろから持ち上げられた為に手が届かない。
「ぼっちさん何を!?」
「・・・楽しそうって・・・だから」
「いやいやいや!!私ではなくマーレを…」
聞く耳を持たずに狙いをつけて投げる体勢をとる。
「《二の太刀要らず》・・・届け、俺のコスモ!!」
楽しそうではなく単なる悲鳴を上げながら今回の最高記録を更新しながら上へ上へと飛んでいく。そして落下地点にはアルベドが…
あわわと心配そうなマーレを余所にぼっちはタイミングを計る。
「だんちゃーく・・・今」
タイミング通りに特大の飛沫を上げそのままアルベドに捕縛された。と、いつの間にか戻ってきたアウラはびしょ濡れのまま駆けて来て二度目の催促だ。先と同じように痛くないように投げ込む。あと、マーレもだ。投げる直前に「い、痛くしないで下さいね」と涙目で言われるとよからぬ感情が…。その感情ごとマーレを投げ込む。ここでシャルティアが居ない事に気付いた。辺りを見渡すとパラソルの下で一人皆を見つめていた。
気になったので近寄って行き横に腰を降ろした。驚きつつも嬉しそうなシャルティアの瞳を見つめる。
「・・・泳がないのか?」
「え…あ、私は…泳げないでありんす」
俺もだけどと口から出そうになった言葉を押し込め言葉を続ける。
「・・・苦手なのか?」
「そうではなく、流れる水は駄目ですから」
自分の勘違いを理解した。
シャルティアの種族は吸血鬼。吸血鬼が苦手なものの中に流れる水なんてのもある。ゲーム時代は然程気にしてなかったのだが現実世界としては大問題である。
「ぼっち様は大丈夫なのですか?その…流れる水や直射日光などは?」
ナザリック内の灯りは直射日光と違い吸血鬼になんらデメリットを負わすものではない。それに負わすものだとしてもメイン:スライム種であるぼっちには関係は無かった。
「大丈夫・・・私にとって日の光は大敵ではない。大嫌いなだけだ」
「やっぱりぼっち様は吸血鬼として格が違うでありんすね」
真剣に感心されるんだけど吸血鬼の格はシャルティアの方が上でぼっちは吸血鬼として中途半端すぎてデメリットが無いだけなのだ。
海に誘ったのは失敗だったかなと思いつつ何か楽しめないかと考え、ふっと笑みを浮かべて立ち上がりシャルティアに手を差し出す。
「海で遊べない・・・なら・・・共に歩かないか?・・・海を眺めながら・・・歩くのも良い」
「ぼっち様…はい♪お供いたします」
ニッコリと微笑んだシャルティアは手を取り立ち上がる。嬉しそうに腕と腕を絡めて歩き出すがそんな事を許さない人物が居た。
「あー!!ずるい」
「あ、アウラ!?こ、これは///」
「左は僕が」
海から戻ってきたアウラとマーレはシャルティアが腕を絡める現場を目撃して抗議の視線を向ける。しかしアウラが抗議を開始するとその隙を狙ってましたと言わんばかりにぼっちの左手を抱きしめるように掴む。両手を取られて呆然とするアウラを肩から伸ばした手で高く持ち上げ肩の上に座らした。肩車と言うやつだ。落ち込みかけた表情がいつもの笑顔に戻ったが、超えて恥かしさで真っ赤に染まる。
「・・・行こうか」
四人はそのままの体勢で他愛の無い話をしながら浜辺を歩く。
海から助けを求める声は………そっとしておこう。
海回書いていたらシャルティアが流れる水が苦手だったのを思い出して散歩に変更。海じゃなくても良かったかな…
次回は男性陣と海です。