前回は女性守護者達と行った第六階層の海エリアに今度は男性守護者達と来ている。
いつも通りの姿のコキュートスに赤いトランクスタイプの水着を穿いているデミウルゴス、そして前回と同じ水着姿のアインズにぼっち、マーレの計五人であr…れ?
ぼっちは首を傾げた。
あれ?女性守護者達との海の時に一緒に居なかったっけ?居たよな。でも性別は男だから居てもおかしくないんだ…よね?
少し唸っているとアインズが大事そうに何かを運んできた。
「スイカですかアインズ様?」
「ほう、ナザリックのレパートリーには無かった筈だが知っているのだな」
「はい。とは言っても知識だけですが」
「シカシ海デスイカデスカ?食ベル準備ヲ致シマショウカ」
「・・・包丁・・・塩・・・皿・・・スプーン・・・揃ってる」
次々と出された調味料と調理用具を見て手を軽く振って違うと意思表示する。
「海でスイカと言ったらスイカ割りでしょう」
「・・・あー」
そういえばそんなイベント見たことある。漫画やドラマの中だけのイベントと思っていたんだがなぁ…
理解したぼっちは置いといて他の皆は興味津々であった。
「ス、スイカを割るんですか?」
「この棒で割るのだ」
「デハ早速…」
取り出された木の棒で叩き割ろうと手を伸ばしたコキュートスをアインズがとめる。その表情はまたかと苦笑いしていた。
「スイカ割りとは目隠しをした状態で周りに何処にあるかを指示してもらいスイカを割るゲームなのだ」
「ソウイウ趣向ノモノデシタカ」
「では最初はアインズ様からでしょうか?」
「ふむ…ぼっちさんから行きますか?」
「・・・(コクン)」
木の棒を受け取り目隠しをして開始位置に立つ。
ここからは索敵担当の俺オンステージ!!
「あー…ぼっちさん」
「・・・?」
「索敵系使用禁止で」
『な、なんだってー!』
先に言うなって!!と言うかどうやればいいんだ!?マジで場所が分からん。
『もう駄目だぁ・・・おしまいだぁ・・・』
そこまでじゃない。左手で頭を掴んでどこかに捨てるぞ。
『支えてんのは左手だ、利き腕じゃないんだぜ』
ってポコピーさんから某大佐になってんじゃねえかよ!!
脳内の幻聴にツッコミを入れつつ周りの声に従って向かって行き、思いっきり振り下ろすと何かにぶつかった。目隠しを外すとスイカの横の地面に直撃していた。
「・・・むぅ」
「お、おしかったですね」
「・・・はい」
次にマーレに渡して外野に周る。微笑を向けてくるアインズの横に腰掛ける。
「・・・よく知ってましたね」
「前にテレビ何かで見たんですよ。まぁ、実際した事はありませんが」
「・・・私もです」
大振りで空ぶったマーレから木の棒を受け取り攻撃系のスキルをのせた一撃を用意するコキュートスをデミウルゴスとマーレが必死に止める。
そんな光景をにこやかに見つめる。
「こんなゆっくりする時があってもいいですよね」
「・・・ええ」
確かに忙しい日が続いている。たまにはのんびりしても良いですね。
とか、ぼっちは思っているがぼっちが忙しいのは大体自分のせいなので自業自得以外のなんでもないのだが…
眺めているうちにデミウルゴスも外してアインズの番になった。指定の位置で立ち止まり目隠しをする。するとデミウルゴスが慌てアインズの前に走り出す。何かを取り出し地面に書き込んでいる。
「なにをしているのでしょうか?」
「・・・数字?」
「イエ、何カ数式ヲ地面ニ描イテイルヨウデス」
首を傾げながら見守っていると書き連ねれていた数列が止まり、納得した様に頷き顔を上げた。
「スイカまで右5歩・前に24歩で御座います」
あの地面に書いた計算式は足幅とスイカとの距離を測っていたらしい。
言われても解り辛いと思うのだが…
「そ、そうか。正確な位置情報、ご苦労だったな」
「アインズ様のお役に立てる事こそ本望」
うーわー…片膝付いてすんごいキラキラした目で見上げてるよデミデミ。そして何か緊張しているらしき我がギルマス…
ため息を付きつつ卑怯な手だがあれだけの期待を背負わされたアインズを助ける為に種族としての力を使う。気付かれぬように足裏から一本の触手を伸ばし地面に忍ばせる。それをアインズの片足下からスイカまでを直線状に結び軽い振動を起こす。気付いて辺りを見渡そうとするがする前に短くメッセージを入れる。
「・・・辿れ(ぼそぼそ)」
メッセージで伝わった言葉を理解したのか辺りを見渡すことせず歩き出した。手助けもあって見事叩き割ることに成功した。歓声を上げる守護者たちを余所に砕かれたスイカを皿に乗っけてく。気付いたデミウルゴスとコキュートスが手伝いすぐに終わった。
砂浜で叩き割る物じゃないね。見てよコレ。砕けた衝撃で転がって砂で全面コーティングされたスイカの一部…。もし次にやる機会があれば下にシートを敷こう。そうしよう。
集め終えたスイカを並べてそれぞれに渡して行く。自分の分を持って腰を降ろすと当然かのように隣にマーレが腰を降ろす。
口に含んだスイカより甘い汁が口いっぱいに広がる。これなら塩はいらな…
「はむ…っ、ん―――!?」
「・・・かけ過ぎ」
何をしたか見てなくても片手に持っている塩と反応を見れば何が起こったかは大体理解出来た。
今更だがひとつ気になることがある。
「・・・コキュートスは・・・スイカ食べれる・・・のか?」
「?普通ニ食ベレマスガ」
「・・・そうか」
カブトムシはスイカは水分が多すぎて駄目って聞いた事があるんだがコキュートスは大丈夫なんだな。
ひとり納得して渋い顔をしていたマーレの頭を撫でながらもう一口頬張る。
同じく第六階層
第六階層を任せられているアウラは机に肘を付いた状態で大きくため息を付いていた。
「なんでさ…」
「…何が?」
アウラの呟きに反応したのは向かい側で机の上に置かれたケーキを自分の皿に移すモミであった。
「何がって当然マーレの事に決まってるじゃない!!」
思いっきり机を叩かれて驚く事無くケーキ持ち上げて倒れないように無事を確保する。
二日連続で海エリアに行っているのはマーレだけだった。女性人たちはそれだけでもいきり立っているのに至高の御方より許可が下りたとの事で文句も言えない。本人に言えない分をモミに愚痴っているのだ。
「なんでマーレだけ…」
「らって、しふぁらないじゃふぁい」
「飲み込んでから喋りなさいよ」
ハムスターのように頬いっぱいに膨らませて喋り続けたモミを注意する。ゴクンと喉を鳴らして口の中にあったケーキを胃へと送る。
「だって、しかたないじゃん。許可下りたんだし」
「ってかあんたが協力したんじゃない!!」
「…フヒ」
「『フヒ』じゃない『フヒ』じゃあ!!」
マーレが二日連続で至高の御方々について行けたのはモミの協力があったからである。本当なら女性守護者が海に行く日にモミも行くはずだったがマーレと交代したのだ。昨日モミがマーレの仕事をする事でいつか仕事を代わってもらう事になっている。
「…まぁまぁケーキでも食べて落ち着こうよ」
「…むぅ…頂きます」
むくれたまま差し出された苺のショートケーキを受け取る。フォークを荒々しくケーキに刺し、一口サイズに切り取った部位を口の中に放り込む。
「もぐもぐ…ん?」
美味しかった。程よい甘さの生クリームが苺の酸味と合わさって絶妙な味を出している。
「おいしいっしょ?」
「美味しいんだけどさ…」
確かに美味しかった。美味しかったのだがおかしい。
ナザリック内で出される料理は何かしら効果付与されるものばかりである。なのに今食べたケーキには付与される効果などはなかった。それだけでなく食べた覚えがある味だった。
嫌な予感がした。
「ねぇ…このケーキってさ、誰が作ったの?」
「…冷蔵庫に入ってた」
「厨房の冷蔵庫?」
「…そうそう」
「ぼっち様の?」
「…そうそう……はっ!?」
「頂いたの?」
「………」
「頂いたの?」
「…テヘペロ♪」
満面の笑顔で答えたモミに対してアウラは冷めた笑みを浮かべてメッセージを使用する。
「シャルティア、ちょっと来てぇ」
「アイエエエエ!シャルティア!?シャルティアナンデェ!?」
慌てふためくモミはその後ブラックカプセルに放り込まれたという…
次回は悩み中…特別編を書こうか本編を書こうか…