骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 ぷれぷれを見たら書きたくなっただけの特別編…


特別編18:謎のクラッカー

 冷蔵庫に仕舞ってあるケーキを取りにキッチンに来たぼっちは机の上に苺のショートケーキワンホールを切り分けて皿に移して行く。

 昼食時より時間が経っている為にここには一般メイドが3人にキッチンに残っていたNPCが4人の計7名が集まっていた。八等分に切り分けた内の七つを配り終えて食べるように言う。皆嬉しそうにフォークを持ってケーキへと伸ばして行く。

 ぼっちはある一般メイドを見つめつつ大皿に載せたワンホールケーキを冷蔵庫からサービスカートへと移す。言っておくが彼女が気になるとか色恋沙汰ではない。

 彼女の名はフォアイル。短く切り揃えられたブロンドの髪に短めのメイド服。よく食事の時はシクススとリュミエールと共に居る所を良く見かける。あの頬を膨らませてもぐもぐと食べる姿を見ているだけで癒されるのだ。

 そんな彼女からカートへと視線を移したとき、通路側よりこちらを窺っているユリと目が合った。

 

 「どうした・・・ユリ」

 「ぼ、ぼっち様。いえ、その…」

 「・・・ひとつ余っている・・・食べるか?」

 「宜しいのでしょうか?」

 「・・・(コクン)」

 

 冷静を保とうとしているが頬が少しばかり緩んでいる事を微笑ましく思い笑みを浮かべる。それに気付いたユリが顔を少し赤らめながら席に付いた。

 手に持っていたクラッカーを机に置いて一口分のケーキを食して今度は頬を完全に緩めた。

 

 「ユリ・・・それは?」

 「これは…パンドラズ・アクターがアインズ様にお渡しして欲しいと言われたアイテムで…」

 

 先ほどの表情とはうって変わって不安や絶望などの負の感情が見えていた。

 少し悩む素振りを見せたぼっちは…

 

 

 

 アインズはいつもの執務室ではなく空き部屋のひとつに来ていた。今日はぼっちさんがナザリックの皆でケーキバイキングをしようと企画したのだがそれほどケーキのレパートリーが無かった為に試食会を設けるとの事でこの部屋で待っている。

 試食会参加者はヴィクティムとガルガンチュア、モミを除いた階層守護者だ。

 

 「ぼっち様のケーキ楽しみだなぁ」

 「ぼ、僕も楽しみです」

 「楽しむだけで無く試食会なのだから良い所を見出さなければ駄目ですよ」

 

 デミウルゴスの言葉にそれぞれが頷くが『良い所』しか言わないと言うのはどうなのだろうか?至高の御方と言う事で批評は最初からないんだろうか?

 少し悩んでいるとドアが開けられカートを押してぼっちが入って来た。皆が座っているソファの中心に設置してある長机に並べて行く。

 

 「モンブランにチョコレートケーキ、レアチーズケーキとスフレチーズケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、苺のムース、ザッハトルテ、ガトーショコラ、ふるーt」

 「どれだけ作ってんですか!?」

 

 長机では足りないほどのワンホールのケーキが並んで行く。

 アインズの突っ込みに首を傾げるぼっちと嬉しそうにしている守護者達を見ていると自分が可笑しいのかと思ってしまう。

 にしてもこれ食べ切れるのか…

 取り皿とフォークをぼっちが、コーヒーをアウラが配って行く。その間にぼっちより貰った肉体付属用スライムを口から喉へと押し込む。

 

 「あ・・・アインズさん・・・これ」

 「あ、はい、なんです『パァン!!』…か…あ」

 

 ぼっちさんの手にしていたクラッカーから破裂音が響き渡った。それが単なるクラッカーなら良かった。本当に良かったのに…

 破裂音を響かしたクラッカーからは紙吹雪と共にアインズを模った金色の人形が飛び出していた。その左手を下腹部辺りで握り締め、右手を高らかに掲げられた人形の形には見覚えがあった。

 

 「・・・すみません・・・引っ張ってしまいました」

 

 余りの出来事に「ぎゃああああ!!何てことしてるんですかあああ!!」と叫びそうになったのを堪える。口は開いたままだが…

 あのクラッカーの名前は《完全なる狂騒・改》。二度に渡り喜劇…失敬。悲劇を招いたマジックアイテムの改良型…

 《完全なる狂騒》ではプレアデス達が暴走し、《完全なる狂騒・改(試作品)》では性格が変更された守護者にセバスが暴走、《完全なる狂騒・改》は本音を引き出す…

 

 「大事なアイテム・・・でしたか?」

 「い…いいえ、別にどうって事ない」

 

 口から本音が飛び出そうになるのを堪えて会話をするが友人に声をかけるようにではなくNPCに対して威厳を出すときのように言ってしまった。やってしまったと後悔したがぼっちは良かったと胸を撫で下ろしていた。

 

 「では・・・食べて感想を・・・もしくは意見とか・・・聞かせて」

 

 「あ…」と声が漏れてしまった。

 フォークを持ちケーキに伸ばす守護者達に視線を向ける。今は理性のリミッターが薄れて本音が漏れてしまう可能性が高い。と言うか十中八九漏れる。不味いは無いとしても趣味である料理を馬鹿にされたりしたら怒るのではないか?もう二度とキレたぼっちさんは見たくない…

 ユグドラシルでプレイしていた時にある時間が起こった。

 ペロロンチーノさんがいきなりエロゲネタを語りだしたのがキッカケだった。いつもの光景と言えば光景だったがひとつだけ違う点があったのだ。ぶくぶく茶釜さんが居なかったのだ。ストッパーであるお姉さんがインしていない為に話に熱が入って声が大きくなっていた。そこにはやまいこさんや餡ころもっちもちさんなど女性陣も居る場所だったから注意しようかなと思っていると…

 

 「TPOは・・・守ろうよ」

 

 インしたぼっちさんが注意をしてくれた。その注意よりも「ぼっちさんがシャベッタアア!?」って騒ぎになり、一時的に下関係の話題から逸れたのだが再び話し出したのだ。すると…

 

 「チョット表ニ出ヨウカ?」

 

 外に出るとPVPを仕掛けられ、あっという間に懐に潜られ矢も放つ間もなく切り刻まれ可笑しな表現だが鳥がミンチになった。後で合流したぶくぶく茶釜さんは「家の愚弟が…」と謝り、ペロロンチーノさんは場所を弁えようとしっかりと学習した。

 もしあの時のようになっても止めれる気がしない。何故こういう時にモミが居ないんだ!!と叫びたくなる。

 

 「んー!!おいしいですぼっち様」

 「このコーヒーに良く合う甘さでありんすね」

 

 美味しそうに食べてぼっちさんを褒める二人を見て胸を撫で下ろす。

 

 「このガトーショコラはもう少し苦い方が好みね」

 「そ、そうでしょうか。僕は甘いほうが…」

 

 いつもと違う反応をしたアルベドとマーレの発言に恐る恐る表情を窺うが普通に聞いて頷いていた。

 精神安定が行なわれないからいつも気にしないことまで気にしてしまったのだろうか?そうだ。こんな事でぼっちさんが怒るわけが無いじゃないか。やはり気にしすぎだったな。

 安心しきった表情でケーキを頬張るとアルベドの口元にチョコクリームが付いている事に気付いた。

 

 「クリームが付いているぞ」

 「え、これは失礼を」

 「ふむ、美味しいな」

 「え///」

 

 ハンカチを取り出し拭こうとする前に指ですくって口へと運んで感想を呟いていた。ってなにをいているんだ俺は!?

 赤面するアルベドと恥かしさのあまり思考が停止したアインズは膠着した。

 

 「意見宜シイデショウカ?」

 「・・・ん」

 「アイスクリームノケーキナド如何デショウカ?」

 「・・・良いね・・・採用」

 「っ!!ぼっち様の血のケー「却下」えええええ!?」

 「良い案を出してくれたら・・・ちょっとした褒美を・・・出そう」

 「ソレハマコトデスカ!?」

 

 口から漏れる冷気を思いっきり噴出するコキュートスが食い付き立ち上がる。武器を取り出し興奮気味に近寄る。

 

 「一度ボッチ様ト本気ノ戦イヲシテミタイト常々思ッテオリマシタ!!」

 「・・・本気の?」

 「手加減無用ノ全力バトルヲ!!」

 「・・・分かった」

 「デハ早速!!」

 「あー!僕も見に行きます」

 「あたしも」

 「待つでありんすよ!!」

 

 待ち切れない様子で駆け出したコキュートスの後を追ってぼっちにアウラやマーレ、シャルティアが退室して行く。そこでふと気が付いた。

 

 「どうしたのだデミウルゴス。先ほどから一言も喋ってないが」

 

 今はアルベドの顔を見れないアインズは逆隣に座るデミウルゴスに目を向けた。一言も喋らずにもくもくとケーキを食べる事に違和感を感じたのだ。振り向いたデミウルゴスの顔には冷や汗が流れ、手は力の入れ過ぎで震えていた。

 

 「下手に喋るとあのアイテムの影響で失礼な事を喋る可能性があるので堪えていたのです。ご心配をお掛けして申し訳ありません」

 「いや、大丈夫…ではないな」

 「もし良ければ今の間に《完全なる静寂》を取って来ようかと思いますが」

 「うむ。頼むぞ」

 「ハハッ!」

 

 深々と頭を下げてデミウルゴスも退出してアルベドと二人っきりの空間となってしまう。

 喋ることも出来ず二人とも黙々とケーキを頬張る。

 沈黙と時間だけが流れる空間を気まずく感じて何か喋ろうとアルベドへ向く。しかし何を喋れば良いか解らずまじまじと見ていたら言葉が漏れてしまった。

 

 「やっぱり美人だよなぁ」

 「―ッ!!」

 

 あ、オワタ…

 言葉を発し終える前に眼光がギラギラと輝きロックオンしてきた事を理解する。

 周りを確認する。アルベド以外誰も居ない。

 出口の位置は自分の座席と反対側でアルベドの方が近い。

 

 「アインズ様、今私のことを」

 「お、落ち着くのだアルベドよ」

 「私は冷静ですよ♪」

 

 上に覆いかぶさるように迫ってくることに抵抗らしい抵抗も出来ずに身動きが取れなくなり熱っぽい吐息が頬に触れる。

 

 「ノックしてもしも~し…」

 

 突如ドアを開けて入って来たモミと目が合った。私を見て、アルベドを見て、ケーキを見る。ドアの近くにあった大皿ごとケーキワンホールを持ってドアの前に戻る。

 

 「お邪魔しました~」

 「ま、待て!!」

 「えー…だって」

 「待ってください…」

 「は~い」

 

 開いている席に座りケーキを食べ始め…

 

 「ちょっ、おま!?」

 「初めては二人っきりの方が良かったのですけど今を逃しては…」

 「脱ぐんじゃない!!」

 「そ、そうですわね…」

 「ホッ…やっと落ち着いたか」

 「脱がすほうがお好みでしたか」

 「いやー!!モミ助けて!!」

 

 その言葉を待っていたのか邪悪そうに嗤う。「助けたら何があるの~?」と顔にもろに出ていた。今は緊急事態!ここは奴の要求を呑むしかない!!

 

 「特別休暇を…1日」

 「あっそ」

 「待て!3日」

 「それだけ?」

 「分かった!!一週間!!一週間でどうだ!!」

 「フヒヒ、ゴルディオンハンマー!発動承認!!セーフティデバイス、リリーブ!!」

 

 懐から出した持ち手は黄色で叩くところは赤色のピコピコハンマーを掲げる。

 この身体になって目が追いつかないなんてことはぼっちさんの動きぐらいだと思っていたがここにもう一人居るとはと驚愕した。

 席から跳び下りたと同時に残像を残しつつハンマーを振りかぶりつつ横まで迫っていた。そのヤル気をほかに向ければ良いのに…

 

 「光にな~れ~」

 「へぶあっ!?」

 

 ピコなんて可愛らしい音ではなくバチコーンと思いっきり引っ叩いたような音とアルベドの首の辺りからグキリと鈍い音が聞こえた。

 

 「おーい、アルベド?返事が無い…ただの敷き物のようだ」

 

 ピクリとも動かなくなったアルベドをチラッと見ながらポカーンとしていた俺の頭を軽くピコハンで叩く。もう興味を失せたのか再び席についてケーキを頬張り続ける。

 

 「なぁ、モミよ」

 「んぐんぐんぐ…ごっくん。なに?」

 「そのハンマーは?」

 

 そう。モミが持っていたピコハンはデミウルゴスが取りに行った《完全なる狂騒》系の効果を完全に打ち消す《完全なる静寂》だった。

 

 「あー、デミデミから持って行ってって」

 「そのデミウルゴスはどうした?」

 「何かステラと口論してたよ。本音駄々漏れで」

 

 あー…あの二人仲悪かったな。先に使えばよかったのに。

 精神が安定化した事に安心しているとドアを思いっきり開けてアウラとマーレが入ってきた。

 

 「もう決着が着いたのか?」

 「はい。だるまです」

 「は?だるま?」

 「だるまでスケ●ヨです。ねー、マーレ」

 「うん。ぼっち様が言ってました」

 

 意味が理解出来てないのは俺だけか?モミは「あー、はいはい」と解っているようだし。

 いつもと違い手振り身振りで表現しようとする二人は本当に子供らしかった。その後ろから興奮冷めやらぬ表情をしたシャルティアが入って来た。

 さすがにそのまま聞くのも理解してない事を宣伝しているみたいで駄目だ。ならば戦闘内容を聞けば理解できるだろう。

 

 「シャルティアよ。ぼっちさんとコキュートスの戦いはどうだった?」

 「凄かったでありんすよ。複数の武器を操るコキュートスの動きを完全に見切って腕を一本ずつ斬り落として最後は頭から雪が積もった所に叩き落して」

 「…コキュートスはどうしたのだ?」

 「まだ雪の上で勝負の余韻にひたっていんす。回復は配下の者にまかしんした」

 「そ、そうか…」

 

 だるまってもしかして手が無い事か?ああ!何となく理解した。確かに似ているなって結構グロくないか?そして結局ス●キヨとは一体?

 

 「…ん?ぼっちさんはどうした?」

 「通路で喧嘩していたデミウルゴスとステラの仲裁を行なっています!」

 「います!」

 

 そろそろ解除してやろうとピコハンをモミから受け取ろうと立ち上がろうとした瞬間、モミの顔がクリームに包まれた。

 

 「よくもアインズ様と私の【ピ――――】タイムを邪魔してくれたわね!!」

 「アッハッハッハッ」

 

 顔面にケーキを上げつけられ生クリームの中から笑い声が聞こえてきた。

 机を思いっきり叩き、反動で跳ね上がったロールケーキを裏拳で飛ばす。アルベドの顔に直撃して炸裂する。

 

 「ぶっほぉ!!」

 「…よくもやってくっれたわね!!」

 

 怒り心頭のアルベドは新たなケーキを手に立ち上がる。アルベドを止めようと守護者とアインズが動こうとする。

 

 「ナニシテル?」

 

 凍った。

 この場と言うか空間が凍り付いた。すべての動きが固まった…

 

 「モウ一度聞クヨ?ナニシテル?」

 

 寂れた人形のようにギギギと音を立てるように振り替えると片目だけだが満面の笑顔を向けるぼっちが…

 

 「食ベ物ヲ粗末ニスルンダァネ」

 「い、いえ、これは…その…えっと…」

 「ヘルプミーアインズ様」

 「え!?」

 「アインズサンモデスカ?」

 「いいえ!私は関係ないです」

 「デスヨネ」

 

 にこやかに笑っていた目が見開かれ真っ赤な瞳で二人を睨みつける。

 

 「質問ダ。罰ヲスケキ●デ済マスカ、ダルマデ済マスカ当テテミナ」

 「…一思いに●ケキヨでお願いします…」

 「No!No!No!No!NO!」

 「で、ではだるまですか?」

 「No!No!No!No!NO!」

 「…まさかと思うけど…両方じゃないよね?」

 「Yes!Yes!Yes!Yes!Yes!!」

 

 声をかけることも躊躇う怒りを露にするぼっちを見て皆が二度と食べ物を粗末にしない事とぼっちを怒らせない事をを誓った。

 両手両足を縛られた二人はブラックカプセル内に頭から叩き込まれて一時間放置されたという…


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