骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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特別編20:ナザリックでの大運動会:弐

 第三種目まで終了し前半戦は最終種目となった。

 

 『…次の種目は障害物競走』

 『戻ったかモミ』

 『まだまだ元気そうですね』

 『元気はあるけど身体が痛い…っと、私の話は置いといて種目説明』

 『そうでした。障害物競走は障害となる6つを走破してゴールへと向かって頂きます。なおこの種目に参加されるのは守護者のみとなっております』

 『それではレッツラゴー』

 

 開始を宣言したモミは防弾チョッキを着ながら片手剣用の盾で守りに徹した。

 スタート位置に着いたのはアルベドにコキュートス、シャルティア、アウラ、マーレ、デミウルゴスの六人だった。

 

 「跳び箱にハードル…網もありますね」

 「走破トイウコトハ網ノ上ヲ走レバイイノダロウカ?」

 「多分ですけど下を潜ると思います」

 「潜るのならばシャルティアは有利よね」

 「なんでありんすか」

 「引っ掛かるような所が無くて良いわね。私なんてどうしても引っ掛かりそうで」

 

 身体のラインが分かる体操服姿のシャルティアを下から上まで眺めてから笑みを浮かべて腕を組んで胸を持ち上げる。

 

 「それは大変でありんすね。邪魔な重りをぶら下げて至高の御方の前で私に敗北するでありんすから」

 

 二人の間に火花が散りアウラとデミウルゴスがまたかと肩を落とす。別段気にする様子の無いコキュートスはさっさとスタート位置に着く。続いてマーレやデミウルゴスも位置に着いた。

 

 「では第四種目始めます。シズ。…シズ?」

 

 開始の合図をしようとしたユリは横にシズが居ない事に気付いて辺りを見渡すと地面に寝っ転がって対戦車ライフルの支えを展開して構えていた。

 

 「よーい」

 

 すでに準備をしていた事を視認して掛け声をかける。今まで使った銃器よりも大きな音が響き余所見をしていたモミに放たれた。

 

 『ゲドラフ!!』

 

 マイク越しにモミの声が響いて2メートルほど吹っ飛んだ。呆気にとられたマーレとアウラ、にらみ合いをまだしていたアルベドとシャルティアを余所にデミウルゴスとコキュートスが駆け出した。慌てて追いかけるが出だしが早かった二人に追いつくのは容易ではない。

 

 「ちょっとずるいわよ!!」

 「ハハハ、ルールに差し障るような事は私達は何も行なっていませんよ」

 「余所見ヲシテイタ方ガ悪イ」

 

 跳び箱・平均台・ハードルを跳び・渡り・跳び越えて行く。ただコキュートスはすべて突撃して破壊して突き進んで行ったが。

 先頭を行くデミウルゴスはスルスルと網を潜って行く。が、コキュートスはその大きさや尖った所が網に引っ掛かって動けずに居た。次にアウラやマーレ、シャルティアが網を抜けて行くが本人が言ったとおりにアルベドが引っ掛かった。

 

 「あぁん、もう」

 

 網が胸やお尻など出ている所に深く食い込んでいく。その様子をテントから戻ってきたアインズと共に眺めていたぼっちはポンと肩を叩く。

 

 「なんでしょうかぼっちさん」

 「鼻の下・・・伸びてる・・・」

 「そそそs、そんな事…【精神安定発動】…そんな事は無い」

 「動揺・・・凄いですけど・・・」

 

 白い髑髏が真っ赤になって顔を両手で隠すが手も白い為に赤さが目立つ。微笑ましく笑っていると残っている四人は次の飴探しの場に着いていた。四角いケースの中を小麦粉で満たして隠している飴を手を使わずに探し出す。

 アウラやマーレは顔を真っ白にしながら飴を探しだした。アウラは桃味でマーレはラムネ味と美味しそうに頬を弛ませるが一人だけ悲鳴を上げた。

 

 「ななな、なんでありんすかこれ!?」

 

 吐き出そうとしているが何とか堪えて震えている。それを見ていたモミが爆笑し始めた。あまりの馬鹿笑いにハイネが若干引いている。

 

 『姉さん何を仕込んだんですか?』

 『うひゃひゃひゃひゃ。サルミアッキを入れておいたのさ』

 『サルキアッキとは?』

 『フィンランドの飴で強い塩味とアンモニア臭が特徴でね。初めて食べる人は良い顔をすることはまず無い。まぁ慣れたらこれはこれでいけるんだけどね』

 『サルミアッキは分かりましたがフィンランド?それも解りませんがそれを入れたんですね』

 

 何とか飲み込もうと必死に頑張るシャルティアを横目でデミウルゴスがクスッと笑う。

 

 「まったくたかが飴でそこまでの反応は少し大袈裟ではありませんか?お!やっと見つけました」

 

 顔を白くしないように周りには見えないように舌で捜していた為に多少時間がかかったが先に見つけたアウラもマーレもシャルティアを心配して近寄っているから距離は離されてない。見つけた苺味だと思われる赤い飴玉を口の中へと転がす。

 

 「ぐあああああああ!?」

 

 先の余裕を持った笑みが苦痛で歪んだ。口と喉を押さえて膝を突いて苦しみを耐えようとするが額から流れる尋常ではない汗が異常事態を知らせる。

 身体が震え始めて今にも倒れそうな身体を何とか維持してテントの方へ向ける。

 

 「何を…何を入れたのですかこれは!うぐっ!?」

 『うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ひとつだけ作ったブート・ジョロキア味…まさか食べるとはプクク』

 『また訳の分からない物を…と言うかデミウルゴス様、大丈夫ですか?』

 『ハバネロの十倍の辛さを持ち触っただけで手が被れるブート・ジョロキアを調理するのには苦労したよ。ちなみに吐き気や頭痛など体調不良を起こす人から失神する人までいるからそのまま食べる事はお勧めできない』

 『分カッテテヤッタンデスネ』

 『はっ!?…ぼ、ぼっちさん…』

 『少シ良イデスヨネ』

 『誰かヘルプ!!』

 

 ぼっちに引き摺られるモミを助ける物など居らずモミの姿はテント裏へと消えていった。

 デミウルゴスはアイテムで治療の為にリタイヤして障害物競走はアウラとマーレの姉弟対決となった。最後の障害は足つぼマットで10メートルの距離を凸凹した石の上を突き進む物だった。アウラは少し痛そうだったが問題なくゴールしたがマーレは痛そうで足が止まりそこで障害物競走は終了した。

 

 『えっと、では前半戦を終了して休憩時間を取ります。40分後から後半戦を始めます』

 

 ハイネが立ち上がると一般メイドがパンと飲み物を配り始めた。このパンはぼっちが早朝から焼いた物でパン食い競争時にモミから盗まれた物でもある。

 

 「ふふん♪」

 

 満面の笑顔でメロンパンを頬張るアウラはご機嫌だった。さっきの勝利で褒められたアウラはご褒美として胡坐をかいたぼっちの足の上に座っても良いですかと願ったのだ。別にそれぐらいならと思ったぼっちは許可を出した。結果マーレやシャルティアなど複数の視線を集める事に…

 

 「シャルティア・・・デミウルゴス・・・大丈夫か?」 

 「はい。私は大丈夫でありんすが」

 「私もアイテムを使用したので大丈夫…です」

 

 未だにデミウルゴスの表情は暗く先ほどのブート・ジョロキアが効いているのだろう。ぼっちは二人に小さな箱を渡す。

 

 「これで・・・口直しを・・・してくれ」

 

 箱の中にはクリームと苺をふんだんに使った苺のケーキが入っていた。マーレが良いなぁと見つめるがまた今度と言う事で今回は諦めさせた。

 

 「しかし前半戦はぼっちさんにやられましたが後半戦で引き分けに持って行きますよ」

 「そうはさせない・・・なぁ、アウラ」

 「もちろんです!!」

 

 むぅと唸り声を上げながらマーレが立ち上がった。

 

 「次は僕が勝って見せます」

 「いいえ、私でありんす」

 「絶対ニ負ケル訳ニハイカナイナ」

 「ええ、もう一度でも勝たれてしまったら私達の負けですからね」

 

 ヤル気満々の四人を見た後少し落ち込んでいるアルベドを見つけた。ここまで活躍出来てない事を悔やんでいるのだろうか。ならば少し元気付ける言葉をかけてあげよう。

 

 「アルベド・・・」

 「なんでしょうかぼっち様」

 「障害物で・・・網に絡まっていた時・・・アインズさんがガン見・・・してた」

 「ぶふぅ!!ちょっとぼっちさん!?」

 「私をですか!?どのようなレベルでか聞いても?」

 「・・・・・・視姦レベル?」

 「何を言ってるんですか!!え、本当にそんな感じでしたか!?ぼっちさん答えてください!!」

 「フフ、フフフフ///」

 

 背筋…と言うか背骨に悪寒を感じたアインズはゆっくりと後ろに後ずさる。怪しく笑う続けるアルベドが四つん這いで迫ってくる。

 

 「落ち着こうなアルベド」

 「私は落ち着いておりますともアインズ様」

 

 あ、あかん。肉食獣の目をしている。

 そう認識した時にはアルベドに跳び付かれ下敷きに…

 

 「・・・元気出たかな」

 「出たとは思いますけどアインズ様が!!」

 「ぼっちさん助けt」

 「だが断る!!」

 「何故ですか!?」

 「・・・馬に蹴られたくないから」

 「はぁ!?ちょ、守護者達よ!アルベドを止めよ!!」

 

 いつも通り暴走したアルベドを必死に引き離そうとする光景を見てお茶を啜るぼっちであった。


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