骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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第171話 「神父ぼっちとカーミラぼっち」

 ぼっちはカーミラの姿のままシャルティアの元まで来たのだが面白い状況なのですけど。眼前には右腕をやられたシャルティアに満身創痍ながらも立ち上がる神父。種族は人間なのに吸血鬼の始祖でもあるシャルティアにそこまでダメージを負わせるとは。それに神父の容姿はアインズ・ウール・ゴウン前の自分の姿…ヘルシングのアレクサンド・アンデルセン神父そっくりなのだ。

 

 カーミラと名乗っているが姿はヘルシングのアーカードが幼女になっているときのもの。アンデルセンとアーカードの対決なんて面白い以外のなんだというのか!

 

 「良い夜だな。人間」

 「吸血鬼が二匹も…やることは変わらないか」

 「ぼっ――アル――じゃなかった。カーミラ様になんて口の聞き方を!」

 「良い」

 「は!?しかし人間風情がカーミラ様に無礼を」

 「構わないよ。それに人間だからという事もある」

 

 歪な笑みを浮かべてかかってこいと手を振る。刀を二本握り締めて立ち上がった神父は挑発に乗って走り出すが…。

 

 「…遅すぎる」

 

 斬りつけてきた一撃を一歩下がるだけで避け、次はどうすると見続ける。神父はなんの反応も見せずに振り下ろした刀を逆手持ちで構えて振り上げる。が、あげようとした手首を足で踏みつけて軽く阻止する。

 

 「反応と手癖の悪さはまぁ、良いな」

 「―ッ!?ならば…」

 

 もう一振りで首を断ち切らんと振られるが刀身をそのまま握られ動きを止められる。ぼっちの腕力ステータスは低いが人間と比べて低いほどではない。攻撃力の低い変身型スライム種であるが吸血鬼でもあるのだ。武器を防がれ、動けない状態でも焦る事はなかった。

 

 「駄目です!その武器は―」

 「雷斬!!」

 

 握っていた刀身から青く輝く電撃が敵をその雷により焼き払おうと暴れまくるが、ぼっちを焼く事はなかった。目を見開いて驚きを表現するシャルティアと神父の前で、呆れたように大きなため息を吐き出した。

 

 「知っている。雷斬と天羽々斬…懐かしいが」

 「懐かしい?どういう―」

 「哀れだ」

 

 前かがみになっていた神父の顔面に頭突きを喰らわせる。鼻が折れて血が吹き出して、吸血鬼の本能が擽られるがそんなの後だ。どうせシャルティアほど美味ではないだろうし。鼻を折られた事で一瞬でも怯んだ隙に蹴り飛ばす。同時に握っていた刀を奪い取って自らが構える。

 

 「雷斬と天羽々斬は―」

 「返せ!!」

 

 何も無いところから別の刀を取り出した所を見るに無限の背負い袋かなにかを所持しているのだろう。だが、ただの刀でこの二振りを相手にするには足りなさ過ぎる。懐かしく感じる愛刀の感触を確めながら雷斬を振るう。刀身より放たれた雷撃が神父の手前で地面に激突して土煙を起こす。間髪入れずに天羽々斬を振るって八匹の大蛇を伸ばす。相手の位置を把握しきれてなくても予想こみで三箇所に2・3・2で向かわせる。最初の二匹が絡んだ感触を確めつつ、外した五匹を絡ませるように動かし振るう。土煙から大蛇に絡まれた神父が飛び出され、大きく浮かされ地面に叩きつける。

 

 「カハッ!?」

 

 短い呻き声が漏れたが気にしない。叩き付けたと同時に大蛇を解除して、雷斬を振るって雷撃を飛ばす。天羽々斬を地面に刺して振って八匹の大蛇を伸ばす『第一捕縛術』に比べて拘束力は弱いが、拘束時間は長い『第二捕縛術』を起動させる。地面を潜り進んだ大蛇達が神父の足に絡む。雷撃を受けて痺れながらも足元の大蛇を排除しようと刀を振り上げる。そこに二撃、三撃と雷斬を振るって雷撃を飛ばす。

 

 「こう使うのだよ。理解してくれたかな?」

 

 身体を焼かれながらもこちらを見つめる視線はあいも変わらず敵である自身を見つめていた。これほど痛めつけてもまったく戦意を失わないところは好ましく思うがどうもこいつは好きになれない。まるで人間でありながら人間である事を否定し、機械であろうと心を殺しているような…なんなんだろうな。この感覚は…。

 

 焼かれた身体を何事も無かったように立ち上がってまだ挑もうとしているらしい。自身の意思で抗い、戦うのならば歓喜で迎えたであろうが無意識で戦う人形など興味がない。終わらそうかと懐の銃に視線を移そうとしたが背後から気配を感じた。背後から腕が伸びてきて、優しく自身を抱き締めた。

 

 「にゃはは…久しいな人形」

 「これは…ミイ様。貴方が表に出てくるなど」

 「人形に会う気はなかったけどディオに用があってね」

 「目的は同じですか?」

 「人形と同じ目的?嫌過ぎて寒気が止まらないにゃ」

 「相変わらず嫌われているのですね」

 「うん。とっても嫌いだよ。だからとっとと失せて♪」

 

 言葉を多少交えて沈黙するのはいいんだけど、人を抱き締めて頭の上に顎を置いてからするのは止めてほしい。シャルティアが遠くよりワーワー騒いでいる。

 

 沈黙が続いたが神父は諦めたように頷いた。

 

 「分かりました。後はお任せいたします」

 

 深々と頭を下げて踵を返そうとした神父に刀を投げ返す。受け取った刀を眺めて鞘に納め、今度こそ去って行った。相手が強いとか戦い辛いとかではなく、面白くないから戦いたくない…。

 

 「貴方誰ですか!!」

 

 ふぅ…と息をつこうとするとシャルティアの大声で止まってしまった。そういえば初対面なのに紹介していなかったね。

 

 「にゃ?私はミイだよ♪」

 「だよ♪じゃありんせん!」

 「花魁言葉!喋りでキャラ出てるにゃね」

 「先ほどからにゃーにゃー言っている貴方に言われたくは…って早くぼっち様から離れろ!」

 「い~や~にゃ~!」

 

 抱きついているミイを引っ張って引き離そうとするが逆にがっしりと抱きつかれる。それがさらにシャルティアの怒りを上げる要因になっている。

 

 「むう!感動の再会を果たしたミイの邪魔はしないで欲しいにゃ!!」

 「なんの話ですか?というかぼっち様知り合いなのですか!?」

 「恋仲にゃ!」

 「なんと!?」

 「・・・違うからな」

 

 上で唸られるミイには悪いが嘘は否定させてもらおう。それとシャルティアよ。ぼっち呼びになっているんだけど。現状『カーミラ』なのだけど…あれれ?おっかしいぞ。

 

 上と横で騒がしくされるが中々どうして楽しく感じる。

 

 「・・・何か忘れているような…」

 

 シャルティアとミイはぼっちの取り合いをしていて、ぼっちはぼっちで二人の騒ぎ合いに耳を傾けて、本丸に攻め込んだモモンを思いっきり忘れてしまっていたのだった


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