ぼっちがアウラの血を吸い気絶させる…チェリオがモモンガさんだったら問答無用で殴りかかっている。
「はぁ…はぁ…う、あん…」
アウラの口から吐息が漏れていた。こんな小さくても女の子なんだよな……なんかエロティックていうかなんと言うか……てか、何したの俺…
確か喉が渇いて気を失いかけたと思ったら口の中には血独特の味に首筋を押さえて倒れているアウラ。事後って言うんだろうなこういうの……あまりの出来事に頭が対応するまで時間がかかってしまった。
現在はアウラの部屋に居る。アウラは吸われた影響か、ベッドで休んでいる。その傍らに心配そうなマーレにアウラを調べているシャルティア、そしてこの事件を一番最初に話したモモンガさん。
『・・・・・・血を吸ったら・・・アウラ、倒れた・・・』そう伝えたらモモンガさんが文字通り飛んできた。今まで見たことのない怒り具合で詰め寄ってきた。殴られるかと思ったがマーレがそれを止めてくれた。その後に精神の安定化したモモンガさんがシャルティアを呼んで今に至る。
「大丈夫でありんすよ。モモンガ様。ぼっち様」
シャルティアは怒りも心配の色もなく、いつも通りの感じで喋っている。怒っているということはないと思って安心する。
「お、お姉ちゃんは?」
「落ち着くでありんすマーレ。アウラは一時的に力をぼっち様に吸われて疲れただけでありんす」
「何も問題はないんだな?」
「はい。力は10分もすれば回復しますし、血もさほど吸われていないでありんすから」
「吸血鬼化すると言うことはないのか?」
少し悩むような動作をするシャルティアに同様が広がる。
「いえ、それはないでありんす。確かに吸うことにより吸血鬼化させる事はあるにはあるんでありんすが…」
何故に俺の顔色を窺うのだろうか? 言い難いことでもあるんだろうか……それでも今は聞かなければならない。
「・・・・・・気にするな。言ってくれ」
その言葉に意を決したのか重くなっていた口を開いた。
「ぼっち様は吸血鬼であって吸血鬼ではないので吸うことにより吸血鬼化させる事は出来ないんでありんす」
「ええ!?そんなんですかぼっち様」
ん、どういうこと。俺の方が初耳なんだけど……そんな目で見られても知らないからね…
「恐らくですがぼっち様の吸血鬼能力は何かに影響されて吸血鬼化されているのでは?」
「・・・確かに俺の吸血鬼の能力はこの《ヴァンパイヤ・アイ》によるものだ」
そうだ。あの大会、ワールドチャンピオンで上位者入賞したことにより貰ったオンリーワンアイテムで手に入れた力だ。その言葉を聞いてシャルティアが強く納得する。
「ですんでぼっち様の吸血鬼といての力は仮初の所が大きいので、何の問題もなんでありんす」
マーレがほうっと胸を撫で下ろす。
「ならば、身体に異常はないんだな」
「?いえ、異常はあるでありんすよ?」
あるんかい!て、なによ。早く答えてあげて。俺のためにも。見てよ、マーレは心配して泣きそうな顔になってるし、モモンガさんからは怒気みたいのでてるんだよ!俺もちょっと見てみ……よう…?
「・・・ステータスの大幅な上昇」
そうだ。前に見たときよりステータスが1.5倍ぐらいされている。今なら肉弾戦でもシャルティアに勝てるんじゃないか? それ以外には異常は見られないけど。
「その通りでありんす。これは血を吸った事による影響だと思うでありんすよ」
シャルティアは「失礼しても?」俺の許可を取り、面より見えている目を覗く。
「これも恐らくですがぼっち様は血を吸って吸血鬼化させるのではなく自分と相手の血を入れ替えることで吸血鬼化させるタイプだと思いんす」
なにそれ。どこのダレン・●ャンだよ。
「それはどれくらいの量でだ?そしてどれくらいの吸血鬼を作れるものなのだ?」
さすがはモモンガさん。冷静沈着に物事を判断していく頭脳。半分でいいので分けてもらえませんか?
「さすがにそこまでは…」
「そうか…」
「でも、何かしら術式らしきものが組み込んであるんで…」
さすがに分からないのであろう。それでも何かお力になろうとがんばっているのだろう。そっと右目に触れる。触れた影響なのだろう《ヴァンパイヤ・アイ》の情報が流れ込んでくる。
「量はたいしたことはない・・・主従の契約をせねばそもそも効果はない」
その言葉にモモンガさんは驚き、何かを考えていた。
「主従の契約とは何ですか?」
「その言葉のまま・・・口約束でもいい・・・血を交換する際にどちらが上でどちらが下か決めること・・・」
再び何かを考える。俺はそのまま言葉を続ける。
「吸血鬼化させると素材にはよるがだいたい20前後と思っていたら良いだろう・・・」
「そのデメリットは何かありますか?」
「・・・交換して2、3分はステータスが0.2%ほど減少する・・・」
この世界ではその程度のパワーダウンは問題じゃないだろう。いざとなったら隕石だろうと何だろうと押し返してやる。「ν●●ダムは伊達じゃない!」ってな感じで……と、あほなこと考えていたらシャルティアはキラキラとした目で見つめていた。もしかして心が読まれた?
「にしてもさすがは至高なる御方でありんす。あの極限状態でも、アウラの血量と欲している血のギリギリを見切られるなんて。それに血を吸って吸血鬼化させるとしてもしないギリギリでもある。まことに目を見張るばかりでありんす!」
止・め・て!そのキラキラした目に釣られたようにマーレまでキラキラさせてるし……
「そうか。すまなかったなシャルティア」
「いえ、御方の為ならなんなりと」
「では、あとはマーレに任せても大丈夫か?」
「は、は、はい。お任せください」
「ぼっちさん、少しいいですか?」
なんか嫌な予感。これってアレだよね。「後で校舎裏な?」みたいな……行きたくねえ……でも、行かなきゃなんねんだろうな…
シャルティアとマーレを残し外へ出た。誰も近くに居ない事を確認したモモンガさんの足が止まった。どうしたのかな?と、思うと物凄い勢いで振り向き頭を下げてきた。
「すみませんでした。ギルド長でありながらぼっちさんへの事を考えずに」
頭を下げられたモモンガさんにかける言葉がなかった……違う、びっくりして言葉が出なかったんだ。
「ぼっちさんが喉の渇きを感じ始めたことに対して何の違和感も持たず、問題を放置してしまった俺の失敗です」
「・・・違う・・・アイテムを持ってなかった自分が悪い・・・」
「しかし…能力のことを理解して何の問題もなかったぼっちさんにアレだけの罵倒を浴びせてしまったんですよ?」
頼むから謝らないでモモンガさんさっきから鋭利な言葉の刃物が刺さってくる。それに能力のことは知らなかったんですけど……痛い……俺の良心が削られていく…
「・・・私は気にしていない・・・大丈夫・・・モモンガさんが仲間想いなのは良く知っている・・・」
俺は思っていることをそのまま伝えたつもりだ。これで納得してくれればいいのだが・・・
「そうですか…分かりました。では、次に何かあったときの為に色々と用意しておきますね」
「・・・・・・ええ、お願いしますよ。ギルド長」
モモンガさんはにこっと笑い戻っていった。俺がアウラの部屋に戻るとシャルティアは帰っており、アウラのそばにマーレが座っていた。その光景を見て一つ思いついた……
「………!?」
「…………!」
何か耳元で大きな声が聞こえてくる。なんだろう。こんな朝早くから……耳を済ませてみよう……
「だから何でそうなっているでありんす!」
「あたしにもわかんないんだって…。それよりぼっち様が起きちゃうでしょう!」
意識が急激に覚醒した。目を見開き辺りを確認する。ベッドの真ん中に俺。右側には頬を赤く染めて俯いたマーレ。左側にはベッドの横で喚いているシャルティアと転んでいるアウラ。うん。いつもどおりだ……んな訳は無い!
昨日は眠らず待っているというマーレの横で待とうとすると何かしら世話をしようとする。なので一緒に寝るということになった。と言うかしたのだが…
「・・・アウラ・・・身体のほうはいいのか?」
声をかけた事で起きた事に気づいたのだろう。シャルティアが大人しくなった。
「え、あ、はい。そのー、心配をお掛けしまして申し訳ありません…」
「・・・・・・いや私も急に悪かった」
ん?このままだと「いえ、そんなことは…」とループが始まるのでは?
「いや、そんな…ふああ」
喋る前に撫でたら静かになった。そんなに良いものなんだろうか? シャルティアも何か物欲しそうに見ているし…
「シャルティア・・・おいで」
その言葉を聞くと嬉しそうに胸に飛び込んできた。三人を眺めながらまた眠りについた。何かを忘れている気がするが…
その後、忘れていたセバスの説教は俺の体調悪化と夜を徹してのアウラの看病という言い訳でなんとか逃れた…
ぼっちがロリコン&ショタコンに見えてくる…
ホモじゃないよ…多分…
あ、年末&正月と言う事で今日より1月3日まで連続投稿するよ。特別編は時間はいつもと違い日付が変わった零時ごろに…
チェリオ死にそう…