骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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正月始めから残業のチェリオです。
早く休みが欲しい…
家でぼっちしたい…


第016話 「小さな支配者」

 アインズ達はステラに連れられて第11階層の中枢である《中央家》に到着した。

 道中ステラは物腰は柔らかでどんな事にも真摯に答えてくれるが必要最低限の会話しか行わなかった。

 だからと言って喋るのが苦手とか人見知りという訳ではなくただ話す事が無いのだろう。

 自分が住んでいる階層なのだが一人の騎士として護衛している。その姿勢や性格をコキュートスは気に入っているらしい。

 《中央家》入り口の門に人影が見えた。

 白を基本としたコートにフードなどで皮膚を隠している青年だ。だがその正体は人ではなく見え隠れする緑色の鱗からステラと同じ《ゴルゴン》なのが解る。それもステラと比べて肌全体が覆われている事から上位なのだろう。《ゴルゴン》は位が上がると肌が鱗に覆われるという性質を持つ。

 

 「やあ、ステラ。君がここに来るのは珍しいね」

 「ええ。確かに…」

 

 今まで放っていた気が和らぎ彼女から笑みが零れた。

 ステラはハッと我に返りアインズに向き直った。 

 

 「今回は…」

 「ふふふ。落ち着きなさいステラ。分かっていますから」

 

 青年はアインズ達の前でフードを取り頭を下げた。顔全体が鱗で覆われている事と無数の蛇が現れた事にギョっとするも穏やかな青年と蛇の表情を見るとなんだか安心を覚える。

 

 「お初に御目にかかりますアインズ様。私は《第11階層防衛総長》の役を持つシュバリエ・ハイネンスと申します。お気軽にハイネと呼んで頂ければ幸いです」

 「防衛総長?」

 「はい。この階層は他の階層と違い独自の防衛機能を持っているためにデミウルゴス様とは別に指揮権をぼっち様より拝命しました」

 (確かに…他の階層と違って何か根の様なものが張っている感じがするが…これがぼっちさんが築いた防衛システムなのか)

 「た、確かに何か違うモノを感じます…」

 「ナザリック内では感じた事が無い類のものだね」 

 

 デミウルゴスやマーレ、アウラも気付き辺りを見渡していた。言われてシャルティアやアルベドが付近の確認をしようとしていたが索敵スキルが無い為に確認は出来ないが…

 

 「こちらへどうぞ」

 

 彼は優しげに微笑みながら招く。

 門を抜けると何の変哲もない二階建ての一軒家が建っていた。ただ変わった点として二階のすべての窓がカーテンで覆われていることだけだろう。

 守護者達が何かに気付いてアインズとぼっちを守るように展開する。例えここが至高なる御方々が御造りになられた所としても体が勝手に動いてしまうのだ。

 

 「無礼ですよ。お下がりなさい」

 

 家の付近に待機してナイトマリオネット達が剣を仕舞い下がっていく。

 彼らはハイネンス…いや「ハイネ」の特殊魔法《人形劇指揮者》で作られた者達だ。

 特殊魔法《人形劇指揮者》は人形系アンデットを最低で30体操ることが出来るスキルである。

 通常召喚された人形系アンデットはその場で待機して近づいた敵に襲い掛かる配置型のモンスタートラップである。

 ハイネは人形系アンデットの召喚や特殊魔法《人形劇指揮者》に特化しているため、一日に上・中・下合わせて20体の人形系アンデットを召喚し200体も操ることが出来る。ちなみにプレイヤーでは20を越えた辺りで操作が難しくなりすぎて不可能となる。

 これらの能力でレベルの大半を埋める彼は単体でプレアデスと並ぶ事は出来たとしても勝つ事は不可能なのである。

 

 「失礼致しました。アインズ様。ぼっち様。ささ、こちらで御座います」

 

 玄関を開けると目の前に奥へと進める廊下と二階に上がる為の階段が現れた。ハイネは迷うことなく二階へと向かっていった。

 二階には一つの扉しかなかった。と言うか二階全体が一つの部屋なのだろう。 

 ハイネは扉の横で立ち止まり扉を開けた。中に入る気はないのだろう。アインズは覚悟を決め一歩を踏み出した。表情には出さないが後悔しているぼっちを引き連れて…

 

 

 中は暗かった。多少は灯りがついているのだがこの広い空間に蝋燭の数が合っていないのだ。

 そして皆が目を見張った。

 薄暗いがここはアインズの執務室瓜二つだったのだから。

 そんな執務室の主がトテトテトテと近づいてきた。

 

 「ようこそお越しくださいました…アインズ様にぼっち様…」

 

 シャルティアと同じくらいの身長の少女。ステラと同じように顔などに蛇の鱗は見えないことからそこまで種族レベルは上げていないのであろう。黒い服で身体を覆っているが所々はみ出しており、彼女のだらしない性格が隠れることなく出てきてしまっている。

 そんな少女の一番の特徴は腰まで伸びた黒髪の蛇達に瞳の下に出来た濃く、大きなクマだろう。

 少女は後ろ髪を掻きながら挨拶を続ける。

 

 「この第11階層生産プラントの階層守護者のシュバリエ・モミと申します…ッヒヒ」

 

 モミの笑いや態度に階層守護者達が不快感を示すことはなかった。彼女がそういう行動をするという事は至高なる御方々がそう創られた事。それにアインズがその事に対して何も言わないということはそういうことなのだろう…

 

 「シュバリエ・モミ?」

 「はい。なんでしょうか…アインズ様?」

 

 変わった名前に反応したアインズが不思議そうに彼女とぼっちを見る。ハイネやステラ海外の名前で聞いたことがあったがモミという名前に覚えがない。まあ、そんな名前もあるのか。と、そう思うので止めた。

 

 「いや、呼んだ訳ではなかったのだが…ここで何を生産している?」

 「はい。ここでは各エリアで消費する物に羊皮紙や回復系アイテムを生産しています…」

 「生産された物は何処に集められるのだ?」

 「…物資を貯める蔵に貯められますよ」

 「「……あ」」

 

 アインズは何か違和感を感じた。それは守護者達もなのだろう。その笑い方は別として喋り方…アウラとデミウルゴスが動いた。

 

 「ああ。そういうことか」

 

 違和感の正体はぼっちだった。少し喋りすぎるし感情が見え隠れもするがその喋り方・雰囲気がかすかにぼっちに似た物があった。アインズは納得した。自分に似せた彼女を今まで紹介したくなかったのはこういうことかと…勝手に理解してしまったのだ…デミウルゴスとアウラはぼっちの表情に似たものをモミから見たのだ。

 納得したアインズはぼっちから目を離しモミに向き直った。

 

 「では、この階層の案内を頼む」

 「…了解。頼まれた」

 

 さすがにこの台詞にはカチンときたのか、アインズの後ろで殺気が起こった。

 そんなことを気にも留めずに外に出て行くために装備を整えていくモミ。その姿に目を瞠った。

 

 所々に金の装飾を施された漆黒のローブ。

 両手にはめられたガントレット。

 一匹ではあったが真紅のスタッフを銜える金色の蛇を模った魔法使いの杖。

 そしてユグドラシルプレイヤーのほとんどが無理やりに渡された不気味な仮面《嫉妬マスク》。

 

 「……その面はどうしたのだ?」

 

 恐る恐る聞いたアインズの質問にモミは嬉しそうに答えた。

 

 「…!これですか?これはぼっち様に頂きました。……アインズ様が装備なさった物と同じと聞きましたが…」

 「あ、ああ…」

 

 確かにカルネ村の時に装備した。が、なぜそれをこの子に渡す必要があるのだろう。何らかの能力が込められている訳ではないアイテムを…答えは簡単だ。アインズが装備したからだ。皆も気付いている。モミの装備は同等ではないが能力は近く、そして似すぎている。つまりはこのNPCはアインズの劣化版なのだろう…

 アインズの視線を感じたぼっちが顔を背けた…

 

 「…ちなみに得意な魔法は?」

 「?…グラスプ・ハートなどの死霊系魔法ですが…」

 「ぼっちさんこれはどういう…」

 

 振り返った時にはすでにぼっちの姿はなかった…

 

 

 ぬおおおおおおお!恥ずかしい!!

 瞬間的にスキルを使い逃避したぼっちは己の部屋でのた打ち回っていた。

 彼女をあんな感じに創ったのはモモンガさんを尊敬していたからだ。

 彼は辞めようと思ったらいつでも辞めれた。が、彼はそんなことを考えることなく仲間と創ったこの地を何時までも守る気で居た。その時思ったのだ。彼こそがナザリックの守護者なのだと…そう思ったら階層守護者として創ろうと行動していた。

 結果できたのが性格ぼっち似の装備能力モモンガのNPCが出来たのだ。

 いい出来だったと思う、…思うが、幼かった頃のアルバムやお絵かきなどを誰かに見られたような感覚に襲われているぼっちは未だに悶えていた。

 ステラとハイネはあるアニメのキャラから付けた名前だがモミだけは違った。モミとは平安時代に呼ばれていたモモンガの呼び方である。

 悶え苦しんでいるとピピッとメッセージが届いた音がした。

 

 「・・・はい・・・」

 『ぼっちさん……集合』

 「・・・・・・了解・・・」

 

 メッセージを切ると再びスキルを使い爆走する…後のことを考えずに…




前回書いたとおりオリキャラ説明を出させてもらいます。
ほとんど出てきた内容とほとんど変わりませんが見られるならぜひ…

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