骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 昨日からDVDに付いていたサウンドトラック聞きっぱなしのチェリオです。
 この話にてぼっち騒動終了です。
 ではどうぞ


第026話 「二人の吸血鬼のその後」

 ぼっちは暗く冷たい泥沼に沈んでいくような感覚を味わっていた。

 薄っすらと光が見える…ナザリックの守護者達にモモンガさん…

 戦っているんだろうか…皆の顔色が悪くなっていく…止めたい…って言うか俺ってこんなに強かったの?誰か止めて欲しい。

 突っ込んでくるシャルティアが見える…俺が出来る事はそう思ったら血を吸っていた。意識が飛び飛びだった。

 重い瞼が開く。ぼんやりとした世界が徐々に鮮明になっていく。

 

 「・・・」

 「ああ!ぼっち様?ぼっち様!?」

 「よ、よ、良かったよー!!」

 「マーレ、アウラ落ち着きなさい。アルベドすぐにアインズ様を」

 

 俺は助かったらしい。ぼんやりする意識の中で多くの者が駆け込んでくる。守護者やプレアデス達に一般メイド達まで心配していたのだろう。申し訳ない気持ちと何か恥かしさに襲われ左頬を掻こうとした。頬を掻くことは出来なかった。皆の表情が一気に沈んでいく。何だろうと皆の視線の先を追うと…

 

 「・・・あれ?」

 

 そこにあるべき左腕が無かった…

 

 

 

 数分が立ちアインズが到着する。ぼっちの横まで来ると悲しそうに口を開いた。

 

 「すいませんぼっちさん…回復魔法を使用したんですけど…」

 「申し訳ないでありんす…」

 

 治療が出来なかった事を告げるアインズの後ろから俯いたシャルティアが前に出た。

 

 「ぼっち様!今回の失態は全てシャルティアが原因なのは明らかです。罰を与えるべきです」

 

 全ての目が殺気の篭った物になった。あの大人しいマーレでさえそうであったように…

 

 「そうでありんす…私があの時もっと冷静に行動していたら…あの時には腕ではなく腕輪を狙っていたら…こんな事には…」

 

 えー…ちょっと待ってよ皆。この空気重いんですけど。てか、俺が無罪っておかしくね?悪いの俺じゃん。この失った左腕見て「あれ?これってシャンクスか殺生丸じゃね!?」なんて内心興奮してたんだけど。オレ超超超ギルティーじゃん!

 

 「こっちへ・・・」

 

 手招きをしてシャルティアを横になっているベットの枕元まで来てもらう。視界に左腕が入るたびにどんどん沈んでいく。

 

 「ぼ、ぼっち様!あの…」

 「よくやってくれたな・・・礼を言う・・・ありがとう」

 「え!?そんな悪いのは私で…」

 「皆すまない・・・多大な迷惑をかけてしまったのは私だ。モモンガさん・・・罰するなら私を罰して欲しい」

 

 頼むからしてくださいお願いします!さっきから罪悪感が半端ない!

 この発言にアインズを除く全員が驚いていた。悪いのはシャルティアでぼっちは被害者というのが皆の認識だった。それを至高の御方が覆したのだ。ざわめいた…

 

 「ふむ…ぼっちさんの件は後にしよう。意識が回復したばかりだしな。シャルティアには何か罰を与えるのは…」

 

 やっべ。このままじゃシャルティア罰せられるの!?何かないか何かないか!?そうだ!

 

 「・・・では当分俺の世話って事で」

 「…ではとりあえずはそうしましょうか」

 

 何故か皆から非難の声が挙がるのは何故?こんな怪我人の世話なんて大変なだけでしょうに…

 その後はアインズが解散を命じることでぼっちの部屋は静けさを取り戻した。空気は重いけど…

 

 「何ででありんすの…」

 「・・・」

 「どう考えても私が…」

 「・・・えい」

 「!?ぼ…っち様…」

 

 片手だけだがぼっちは力強く抱き締めていた。

 

 「あの時良く私を止めてくれたな・・・ありがとう・・・私はお前を咎めない」

 「そんな!?…宜しいのでありんしょうか…」

 「・・・良いんだ」

 「……はい」

 

 ぼっちへの返事とは逆にシャルティアの表情は沈んでいく。

 

 

 

 「…で相談したいと?」

 

 弱々しく頷くシャルティアの前に肘をテーブルにつき退屈そうにしているモミが居た。

 寝室で寝ているぼっちの見舞いに来たのだが落ち込むシャルティアに声をかけてしまいこの状況にある。若干後悔していた。

 

 「モミは私達と違うでありんす…だからぼっち様が何故お許しになられんしたかが分かると…」

 「…ただ気にしてないから許しただけだと思うんだけど?」

 「そんな訳ないでありんす!」

 

 さっきからこれの繰り返しである。

 

 「……一つ聞きたいんだけど…」

 「何でありんすか…」

 「許されたくないの?」

 「!?許されたいでありんす!」

 「…だったら…」

 「あんな事をしておいて何のお咎めもないなんて!」

 「ああ…責められないのが不服なのか…面倒くさっ(ぼそっ)」

 「………そう、でありんす…私は」

 「責められないのは決定事項なんだからもう何も出来ないじゃん。それよりもこれからどうするか考えたほうが賢明だと思うよ?汚名挽回する為に行動しなよ…」 

 「……」

 

 一瞬考えたシャルティアは意を決し、寝室の方へ駆けて行く。

 それを見て立ち上がり部屋を後にしようとする。が、呼び止められた。

 

 「シュバリエ・モミ!」

 「…?」 

 「感謝するでありんす」

 「…そう」

 「それと汚名は挽回する物ではありんせんよ」

 

 再び駆けて行き、一人部屋に残ったモミは辺りを見渡し誰も居ないことを確認後、勢い良く突っ伏した…

 

 

 

 「~♪」

 

 ぼっちは寝室に隣接させた浴場に浸かっていた。さすがに片手では身体を洗えない為に湯船に浸かるだけだが。

 ちなみに今歌っている鼻歌はアイモである。

 シェリルも好きだけどどっちかと言うとランカ派なんだよなあと思っていたぼっちにノック音が聞こえた。

 

 「ぼっち様。入浴中でありんすか?」

 

 シャルティアだった。除き防止のガラス越しに立っている為に表情までは見えないが声がさっきに比べて明るかった。立ち直ったと思って安堵する。

 

 「・・・入っているよ」

 「し、失礼するでありんす」

 「!?」

 

 ふぁ!?何入って来てんの貴方!ドッキリ?ドッキリだ!後ろからモモンガさんがパネルを持って…

 

 「お、お、お背中お流しするでありんす…」

 

 持って出てこないですよねー…まずドッキリでモモンガさんがこんな事させるわけないもんね。

 バスタオル一枚しか装備してないシャルティアはぼっちに湯船から出るように促す。

 湯船から上がる瞬間に腰の一部をタオルのような物に変化させ腰の辺りを隠す。そして腰掛に座る。 

 

 「ではまず洗髪からいくでありんす。目を瞑ってくんなまし」

 「・・・ん」

 

 短く返事するとゆっくりとお湯がかけられる。お湯が流れると後ろから手が伸び、髪に触れた。程よい力加減の指と泡だったシャンプーの感触が頭皮を刺激する。

 しゃか、しゃか、しゃかと頭皮が擦られる音が浴場全体に広がっていく。

 

 「うわぁ~。ぼっち様何か手入れされているんでありんすか?」

 「・・・いんや・・・何もしてないが」

 「そうでありんしたか…毎日触りたいぐらいさらさらで気持ち良いでありんす」

 

 あまりの気持ちよさに意識を飛ばし掛けていた俺はうつらうつらしながら答えた。

 

 「・・・気持ち良いから毎日でもいいけどな・・・」

 「!?っほ、本当でありんすか」

 

 あれ?俺なんか言った?……まずい…何か嫌な予感…

 そんな予感を余所に引き続きぼっちの頭皮をマッサージするように洗っていく。

 

 「~♪」

 「・・・」

 

 眠気が覚めてきた。「・・・気持ち良いから毎日でもいいけどな・・・」って何言ってんだよ俺。本当に毎日来たらどうしよう…嬉しいけど!とっても嬉しいけど!

 

 『逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ』

 

 うん。逃げないけどどうしよう。幸せすぎて死ぬんじゃね?

 頭の泡をしっかりと流され、洗髪が終了した事が分かり少し残念だったが。

 

 「次は身体を洗わせていただでありんす」

 「うん・・・ん?」

 

 背中の肌を傷めないように優しく洗ってくれているのが分かる。分かるがどう考えてもスポンジやタオルの感触ではない。人肌の温かみと柔らかさがあり、平たい部分から五本の棒状が物が伸びているのが伝わる。

 これってどう考えても手で洗われてね?確かに何かで物を使うより人肌のほうが良いみたいな物を読んだ気がするがまさか実際にしてもらえるとか。

 背中から首へ、腕へ、足へと流れて行き、最後は前だけとなった…

 

 「で、ではぼっち様。まままま、前も洗わせて」

 「ぼ、ぼっち様。入浴中ですか?」

 

 前を洗おうとしていたシャルティアの後ろの扉からマーレの声が聞こえた。

 まずい。この状況どうする。さて選択肢を寄越せ!

 

 1.スキルを使いシャルティアを残して逃走

 2.マーレも誘う

 3.シャルティアの事を隠して何とかする

 

 ………3しかなくね?ここはぼっちのコミュニケーション力で!

 

 「あれ?シャルティアさんも居ない…」

 「て事は…まさか!?」

 

 選択肢の意味がない!というかコミュニケーション力ないから元々3は駄目だった…

 一緒に居たのであろうアウラが一番に扉を開ける。そんな二人の目にほとんど裸の状態で後ろから抱きしめようとするシャルティア…肩が震えているのが分かる。

 

 「な、何をしてるでありんすかアウラ!?」

 「それはこっちの台詞でしょうが!」

 

 声の響く浴場で怒鳴り声は勘弁して欲しい…

 二人の喧騒の中困った顔をしているとマーレが近づいてきた。

 

 「ぼ、ぼっち様。すごいですね…」

 

 ちょ!?何俺の身体マジマジ見てるの!これはぼっちのキャラクターの肉体が筋肉質なだけで現実の俺はこんな良い身体してないからね!触んないでぇ~。

 

 「へ?た、確かにすごい…」

 「ふふん。それだけではなく髪の毛は触るだけでとっても気持ちいいんでありんすから」

 「え!ず、ずるいですよ!!」

 「そうよ!あんた罰よりご褒美貰ってない!」

 「わっ!?」

 

 濡れたタイルでマーレが足を滑らせ、咄嗟に左腕で受け止める。……受け止める?

 

 「あ、ありがとうござ…あれ?」

 「ぼ、ぼ、ぼ、ぼっち様ぁ!?腕が!腕が!!」

 「な、治ったでありんす!」

 

 その通りで無くなったはずの左腕がそこにはあった。

 ……ああ!俺、変身型スライム種だから水分さえあれば身体の修復・変身が可能なの忘れてた…

 

 「良゛がっだ…良゛がっだであ゛り゛ん゛ず」

 

 振り返るとシャルティアが大粒の涙を流していた。そっと左手で撫でてやる。泣きながらだが嬉しそうに笑っていた。

 

 「あー、コホン。ぼっち様。申し訳ありませんがこの馬鹿借りていきます」

 

 そう言うとシャルティアの首根っこを掴み、引き摺って行く。

 

 「ちょ、ちょっと待つでありんす!今は…」

 「「今は」じゃないの!こんな良い思いして!じゃなかった…何一人ご褒美貰ってんのよ!」

 「これは…そう!お世話の一環…」

 「い、言い訳は後で聞きますので行きますよ」

 「マーレもでありんすか!?」

 

 そのまま三人は浴場より退室して行く…この腕どうモモンガさんに報告しようと頭を悩める事に…というか何しに来たんだろう…




モミ  「あー…腕生えたのか…」
チェリオ「?生えたら駄目だったか?」
モミ  「いやピッコロみたいで」
チェリオ「だから何でそういうの知ってんの?」

次回は皆でスキーに行こうと思います。この寒い中に…
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