骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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第027話 「ぼっちの想い」

 ぼっちはセバスとソリュシャンに囲まれた環境下の部屋でくつ…ろげるかぁ!!

 何でこんな事になってるかと言うと原因は俺にあった。この前の事件で皆に迷惑をかけた事により謹慎を言い渡され、その事で一時帰投したセバスとソリュシャンは俺の監視役になったのである。

 ちなみに今はお仕事中である。これもぼっちのせいで発生した仕事である。

 

 昨日 アインズの執務室

 

 「やっぱり出来ないか…」

 「申し訳ありませんアインズ様…」

 

 深く椅子に座り込むアインズは残念そうに呟き、本当に申し訳なさそうにデミウルゴスが頭を垂れる。

 その光景をぼっちは壁にもたれながら見ていた。

 

 「・・・何の話?」

 「ええ、その…っ!?ぼっちさん!ナイフをペン回しのようにしながら来るのやめてください!!危ないでしょう!?」

 「そう?」

 「それは上級ナイフ・バットでは?」

 「?そうだが・・・」

 

 魔力量で上級と分かったデミウルゴスは足を撫でながら一歩引いた。首をかしげながらナイフを懐にしまう。

 

 「・・・で?」

 「え?ああ、話の内容でしたね。前にぼっちさんが部下にした…」

 「・・・クレマンティーヌ?」

 「その者が持っていたスティレットが作れないのですよ」

 「???」

 「あの程度の短剣なら五萬とありますが魔法を内蔵する武器の精製となると…」

 「・・・あるけど?」

 

 一瞬にて静けさが執務室を満たした。二人の視線がぼっちを貫く。

 

 「・・・コレ」

 

 差し出されたのは先ほどから指で回していたナイフ・バットだった。

 

 「…ぼっちさん?どういう…」

 「・・・これは魔力を注ぎ込むことで出来る」

 「え、ええ…作れるぼっちさんがMPを消費することで出来るんでしたね」

 「これは魔力を含める媒体・・・」

 「「あ!?」」

 

 二人の声が重なった。

 魔力を注ぎ込む、もしくは内包できる魔力を含める媒体にある物を思い出した。

 

 「羊皮紙と同じ原理でございますね!しかしどうやって魔法を…」

 「そのナイフ・バットはユグドラシルでの手法で精製されているということは羊皮紙に行なうように出来るのではないか!?…ぼっちさん!実験用に数本…いや、五十本ほど作ってくれますか?」

 「お待ちくださいアインズ様。複数のナイフ・バットを所持すると効果が消えるのでは?」

 「・・・消えるのは追尾能力だけ・・・」

 「ではお願いしますぼっちさん。あと何が必要だと思うデミウルゴス?」

 「ハッ!まず…」

 

 後は二人の会話に入れずぼーとしていたらいつの間にか50本の短剣とレポート用紙を渡され帰されたのだ。

 

 

 

 「ぼっち様、少し休憩をなされてはどうでしょうか?」

 

 セバスに声をかけられて時刻を見るともう作業開始してから3時間が過ぎていた。

 同じ作業をしていて凝り固まった背筋を伸ばす。

 

 「ふふ、お茶の用意をいたしますね」

 

 奥へと向かうソリュシャンだったがしかめっ面をしているセバスに気付き動きを止める。

 

 「ぼっち様…お疲れなのですか?」

 「?・・・ああ」

 「アイテムはお持ちではないのですか?」

 

 持ってないヲー!だってあれらって持ってたら睡眠・食事に不便だしね。あー…飲食不要だけは持ってるけど…たまに血が飲みたくなるんで♪

 

 「不便ではございませんか?疲労不要のアイテムがあればそのような煩わしさは無くなりますのに…」

 『ツカエ…クスリ…イタミ…ナクス』

 「痛みがある方が、生きている気がする」

 「確かにそうでございますね。ぼっち様の考えも分からぬままの発言…平にご容赦を」

 「?・・・ああ、許そう・・・」

 

 ん?俺、今何か口にした?…というかさっき『クスリ』がどうたら言ったのって…あれ?幻聴に答えてなかった!?なんかどんどん悪化しているような…ソリュシャンもそこまで深々と頭下げないで!

 

 「ぼっち様。宜しければマッサージなど如何でしょう?」

 「マッサージ?」

 「はい。疲れを癒すには最適と聞いたのですが…」

 「・・・ちなみに誰が?」

 「話の内容は定かではございませんがヘロヘロ様がそう呟いていたのを聞きました」

 

 ヘロヘロさん!?あ、あー…あの人はいろいろやばかったからなぁ…精神的にも肉体的にも………少し気になるんだよね、マッサージって。店に入るのは気が引けてたし、リアルでは入れないから。

 

 「・・・では頼もうかな」

 「では、上着をお預かりいたします」 

 

 赤いコートと黒いジャケットを手渡すと手馴れた手つきでハンガーにかけていく。

 促されるままベットに横になる。もちろん靴は脱いでだが。

 

 「あ、ぼっち様。帽子を…」

 

 渡し忘れていたシルクハットを渡しいつもより軽装になった自分を見る。カッターシャツにスラックスのみ…仮面はオプション装備…でもし敵襲なんてあれば本気で不味い。武器も持ってないしね。

 

 「では失礼致します」

 

 優しい手つきでセバスが背を撫で始めた。まだ揉み解す段階ではなく血行を良くする為に擦って暖めているのだろう。

 背が程よく温かくなるのを感じるがスライム種である自分に血管があるかは謎だが。

 ふいに足を誰かに触られ、動くことすら出来ず驚いた。部屋にある鏡越しに見るとソリュシャンが足の裏を擦っていた。

 鏡越しの視線に気がつきハッとした表情をした。

 

 「申し訳ございませんぼっち様…勝手に…」

 「いや・・・気持ちいいからいい・・・」

 「え!?は、はい!では、続けさせていただきます♪」

 

 徐々に二人は力を込め始めた。

 程よく加えられた指先により身体が解されて行く。

 背から首筋へと揉み解されていく。スーと何かが消えていく感覚と同時に少しずつだが楽になっていく。余りの気持ちよさに瞼が重く感じてきた。別に寝てもいいか…と思い瞼を閉じて身を任せた…

 

 「結構凝っていらっしゃるようで…毎日お疲れなのですね」

 「ぼっち様。我々は至高の御方々のようなりっぱな働きは出来ませんがどうぞ我らを使い、もっとご自愛ください」

 

 閉じかかった瞼を開き二人の顔を鏡越しに除く。

 背から首筋を揉み解し肩を揉み解し始めたセバス、足裏から脹脛を撫でるように揉み解すソリュシャン。二人の目から悲しいような表情が見て取れた。

 …あぁ…そうか…ここに居るナザリックのNPC全員はアインズ・ウール・ゴウンに仕えることを行動の原理になってるんだった…だから身体をここまで酷使している俺は皆を頼ってないと思われているのか…そんなことは無いと断言できる。

 

 俺をこのギルドに誘ってくれたモモンガさん

 そのモモンガさん第一に考え支えようと尽くしているアルベド

 優れた知能を俺達の為に酷使することを厭わないデミウルゴス

 少し空回りしてしまうがそれでも必死にがんばっているシャルティア

 外へ出ている間この家を守り続けてくれているコキュートス

 アウラとマーレの子供独特の純粋さは癒しを与えてくれる

 完璧なサポートから外での仕事を任せてしまっているセバスにプレアデス達

 ナザリックを資源不足にならないように日々生産し続けるモミを始めとする第11階層の者達

 他にもこのナザリックを支える為に働く一般メイド達に各階層に居る配下の者達

 

 その有難味は心の奥を温かくしてくれる。

 友を持たず、家族との繋がりは薄く、誰とも接して来なかったぼっちを家族のように温かく受け入れてくれた皆への感謝を忘れた日など無かった。

 ぼっちはマッサージを中断させベッドに座り二人と向かい合った。

 

 「セバス…ソリュシャン…」

 「「はい」」

 

 二人はいつもより間が少ないぼっちに驚きつつ返事をする。その声は優しくもハッキリした物だった。

 

 「お前達はいつも自分達の事を卑下するがそれは間違っている。私もモモンガさんもいつも変わらず尽くしているお前達に感謝しているのだ」

 「そんな感謝の言葉など…」

 「最後まで聞いてくれ。私は家族や友などを知らない。知って来ようとしてこなかったのだ。けれどモモンガさんと出会い、タッチさんと再会し、『アインズ・ウール・ゴウン』のメンバーになり、今はお前達と共に過ごしている。

 お前達はいつどんな時でも温かく接してくれて私はお前達を友人、家族、そして最高の宝物だと思っている。

 だからこそ自分達を卑下せず胸を張って欲しい。

 そしてまた同じことを言うようだが感謝する。セバス、ソリュシャンはもちろんこのナザリックの皆に対する感謝の気持ちを一日たりとも忘れたことは無い。…ありがとう。本当にありがとう」

 

 セバスもソリュシャンも膝をつき、深々と頭を下げる。

 

 「そのようなお言葉勿体無く存じます」

 「私達はこれからもぼっち様、アインズ様に尽くすことをお許しください」

 

 顔を上げた二人の瞳には大粒の涙が溢れていた。




 今日から再び本編へ戻ったが当分謹慎話であーる

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