骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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リザードマンとの戦はもう数話後となります。
その間にいろいろ入れたいので…


第039話 「モミと白蛇」

 いつもは静かな第11階層が今日はやけに騒がしかった。

 それもそのはず。この時刻ならナンバーズは就寝しているはずなのだが今は灯りを手に何かを探し回っている。

 

 「いたか!」

 「いえ、こちら発見できず!!」

 

 陣頭指揮を執っていたのは入り口の守りでもあるステラである。現在はカストルに守りを頼んで居る為に離れることができている。

 名を思い浮かべるのもあまり好きではないが転移系や索敵系を扱えるザーバが居ればもっと簡単に調べれるのに…

 

 「あの馬鹿姉め!マスターから頂いた地位に居ながら勝手な行動を」

 「そう怒るなステラ」

 

 優しげに名を呼ばれて振り返るとそこにはハイネが立っていた。ステラに頼まれて捜索隊に加わったのだ。

 もちろん捜索対象は第11階層の階層守護者モミ・シュバリエである。

 

 「先ほどシャルティア殿の配下が第一階層で見たと言っていたよ」

 「しかし入り口を通っては…」

 「指輪を使ったのだろう」

 「くっ、してやられたということか」

 「ほっとけばそのうち帰って来るでしょう」

 

 モミはアインズを模すようにされており当然のようにリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持っているのだ。

 ステラは諦めたように…と言うか諦めた表情をしてため息をついた。

 今頃何をしているのだろうか…

 

 モミはエ・ランテルの夜道を歩いている。先ほどぼっちさんからの頼まれ事を終え、目的地に向かっている。

 今頃第11階層では自分を捜索しているだろう。何も告げずに出てきたのだから。と言ってもいつもの事でもあるが。

 

 「…ま、いっか…」

 

 暗闇が支配する町を進んでいく。友の元へ向かって…

 

 

 

 数週間前…

 

 「…冷たい…靴が濡れる…」

 

 暇だったモミはいつも通りに抜け出し散歩していた。アウラからリザードマンの集落の話を聞いて行ってみようと思い立ってここまで来たのだがすでに後悔でいっぱいであった。

 まず周りが湿地帯なのだ。近くには森もあるがリザードマンは湿地帯で過ごしている為に必然的に森から離れる。歩くたびに泥が跳ねたり、靴の間から侵入してきたりする。最初は魔法で綺麗にしていたが途中で面倒になり止めると靴が重くなりさらに面倒になった。

 どれだけ歩いたか分からないくらい歩くと集落の前に出た。アウラの情報によるとナザリックから見れば低級程度のリザードマンの群れが住んでいるという。

 さて、ここでどう接触するかで相手の対応が変わる。高圧的に行くか、柔和に行くか………よし、北斗のケンちゃんで行こう!!

 入り口の見張りらしきリザードマンの前へ弱ったようにフラフラと現れる。

 

 「み……みみず」

 

 バタン…

 あれ?何か一文字多かったような?それよりも失敗したな…倒れたら泥だらけになっちゃったよぉ。

 用心しながら近づいてくるのが分かる。モミは大事そうに抱えられ…

 牢屋に入れられた。

 

 「…ですよねー」

 

 原作通り不審者として牢屋に入れられたモミは落ち着いていた。いつでも逃げれるわけだしね。

 門番役のリザードマンは胸部を上下させ安らかな寝息を立てていた。

 下級の睡眠アイテムで一発とは…などと思いながら鉄格子で出来ている檻の中央付近の二本を握り締める。

 「ぬあああああああ」と叫んで力ずくで開こうとしたがめんどくさくなりピッキングで済ませることにする。

 

 「確か鍵穴に針金を…あっ!……折れた………えい」

 

 ガコンと音がして鍵穴事一部が欠損した。ピッキング(物理)したモミは悠々と外へ出る。

 何か良い物が無いかと捜索ついでに探検しようと歩き回る。見つからないようにひっそりとだが。

 木で作られたらしき建物が並んでいるがキレイな物ではなく、作りは荒くボロであった。

 うん。ここにめぼしい物なんてある訳がない。

 結論付けて帰ろうとした所、ひとつだけ警備の厳しそうな部屋がある。

 

 「わたし、気になります」

 

 再び取り出した催眠系アイテムを使用して眠らせ、忍び足で中へ入って行く。

 目が合った。

 種族がリザードマンなのは理解出来た。が、思ってたのと違った。

 リザードマンとは人型の龍のようなイメージがあった。龍じゃないと言われればオオトカゲと答えるだろう。

 しかし目の前に居たのは目はルビーのように輝き、肌は透き通るような白さ、龍やトカゲと言うよりは白蛇だ。

 突然見知らぬ者が入って来た為途惑っている。が、モミはそんな事お構い無だった。

 

 「しっろ!?綺麗!凄く綺麗!!」

 「えっ!?あ、ちょっと…」

 「うわ~触り心地もいいよ~」

 「ひゃ!なななな」

 

 ハッと我に帰ったモミは撫で回していた腕を放す。しかし未だテンションは何時に増して高かった。

 モミはゴルゴンで蛇系でもあるから彼女のような美しい蛇を見て興奮しているのだ。

 先ほどの慌しさをかき消すように冷静に落ち着いて行動を開始する。まずは背筋を伸ばして正座をして一礼する。こんな動作を第11階層ですれば皆が仰天するだろう。…いつも不真面目すぎる為… 

 

 

 「…いきなりでごめん。名前なんていうの私はモミ!貴方は?」

 「クルシュ……クルシュ・ルールー…です」

 「クルシュね…覚えた」

 「えーと…貴方は何ですか?」

 「何ですかか…あ、これ」

 

 今も困惑しているが少しずつ冷静さを取り戻そうとしていたクルシュは指差されたモミの指先を見た。普通の…いや、綺麗な黒髪だなと思ったのだが

 

 「しゅー。しゅー」

 

 髪の毛一本一本が微かに声を上げた。その瞬間落ち着き始めた精神が荒れ始めた。

 

 「ご、ゴルゴン!?」

 「うん。同じ蛇系だね」

 「同じって…」

 

 何度目か分からない驚きもにへら、にへらと笑うモミの笑顔を見ていたらもうどうでも良くなってきた。

 どうも彼女を見ていると敵とは思えなかった。と言っても警戒しないわけではない。けれど…

 

 「さっき私の事“綺麗”って言いましたよね」

 「…?言ったけど嫌だった?」

 「いえ、そうではなくこんな私が綺麗なんて」

 「なんで?すっごく綺麗だよ。ずっと触っていたいし」

 「――――っ///」

 

 真顔で言われてしまい照れて尻尾がのた打ち回る。

 赤面したクルシュとまたにへらと笑うモミの視線が合わさった。

 

 「ふふ。ふふふ」

 「…ふひひ」

 

 二人が笑う。

 ふとこんな風に誰かと笑うなんて何時以来だろうとクルシュは心に温かい物を感じながら思う。彼女は不思議だ。いつの間にかこんな気持ちにさせられて、いつの間にか警戒を解いてしまっていた。

 しかし次の瞬間にはその思いも霧散した。

 何の予兆もなくモミがばたりと倒れたのだ。

 慌しくクルシュに話しかけたモミはそう言うや否や倒れた。何が起こっているのか分かっていないが心配して揺さぶる。

 

 「いっきに喋って…疲れた……休む…」

 

 これがクルシュとモミの出会いであった。回復したモミは綺麗なクルシュを気に入り、一族から忌み嫌われていたクルシュは本音で話せる友達が始めて出来たとして仲良くなったのだ。

 当たり前のように帰ったらかなり怒られたが…

 

 

 

 夜の屋台で買った食糧を持ってクルシュが居るレッド・アイ族に向かっている。

 毎度の如く門の警備は顔パスで通してくれるのだが何か空気がピリピリしている気がする。

 でも自分とは関係ないよねと決め込みクルシュが居る家屋に入って行く。

 こちらに気がついたクルシュが振り向く。

 その目は恐怖と不安で塗り固められていた。

 

 「モミ!!」

 「あっ…ザム!?」

 

 不安だったのだろう。いきなりモミに抱きついたのだ。だが、モミは受け流すすべを知らずそのまま押し倒され後頭部を強打する。

 礼儀正しい彼女がこのような行動をとるなんて余ほどの事なのだろう。嫌な予感を感じながら口を開く。

 

 「…どったの?」

 「……戦争が起こるかもしれない…」

 

 聞かなきゃ良かったかなぁと思いつつ観念したモミであった。

 まさかこれがナザリックからリザードマン達への宣戦布告された事とは露とも知らず…




最近忙しかったり、指が寒くて動かなかったりで二日ずつの投稿分のみで外伝が書けない…

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