骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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外伝05:仲間を求めて

 木々が押し茂り、多少の霧が出ている山奥。

 こんな所をのんびりハイキングなどをしたら凄く気持ち良い場所だと思う。思うのだがそこを全力疾走で駆ける集団が居た。

 

 「もお~!何でこうなるのよ」

 「確実に僕たちの準備不足と数の…」

 「その話は後にして全力で走れよ!!」

 

 駆けていた集団はvのメンバーであった。

 彼らは6人集まったことでギルドを作ろうとここにやって来たのだ。

 この山奥にはドイツの城をモチーフとした『ヴァイス城』と言うギルド施設が建っている。この情報は掲示板に上がっている情報である。なのに未だ無人なのである。

 理由は簡単。難易度が高すぎるのだ。無限湧きする高モンスターの群れに大型ドラゴンの群れ、視界の悪いフィールドに無数のトラップ。挑む為にはレベルと数を要求されるのだ。

 

 「さっさと走れ弱者共」

 「誰のせいでこうなったと思ってんのよ!?」

 「小さい事を気にするな」

 

 駆ける三人の横を吸血鬼が追いつく。前回仲間になったビオである。こうなった原因は彼にあった。自分勝手に動き、興味があれば近寄りトラップに引っ掛かる。おかげでワイバーン竜騎士5体に騎馬竜騎士…そして赤い西洋ドラゴンに追われているのである。

 

 「私あいつ嫌いよ。チームワーク乱すし」

 「僕も苦手ですね」

 「だから今はそんな話するより少しでも…」

 「さっさと走らないとドラゴンの餌食だニャ~♪」

 

 最後尾から追いついたぼっちさんの背から声がかけられた。

 

 「あんたはぼっちさんに乗っているだけでしょう!?」

 「貴方はぼっちさんに乗っているだけでしょう!?」

 「お前はぼっちさんに乗っているだけだろうが!?」

 「貴様は乗っているだけだろうが、走れ!!」

 

 皆が一斉に突っ込む。

 ぼっちの背にはミイが乗っており、そのままなにも言わずに走り続けているのだ。

 

 「だって疲れるんだニャ~…」

 「ゲーム内だから疲れないでしょうに」

 「そうだ!罰にこやつに時間を稼がせるか!!」

 

 名案を思いついたって感じでビオがミイを指を刺して言った。

 

 「『そうだ』じゃねーよ!お前が撒いたんだからお前が何とかすれば良いじゃないか!」

 「それにミイさんじゃ一瞬の足止めにもなりませんよ」

 「ちょっとクロノ君、それは…」

 「ショックニャ…事実だけに何も言い返せれないニャー」

 「あ!いえ、違うんです。いや、違わないけど違うんです」

 

 焦りながら否定する中、モンスターは近づいてくる。そこでぼっちさんが顔を向けて

 

 「・・・行って来る」

 

 と一言だけ告げてきた。

 踵を返し来た道を戻って行く。

 

 「ってぼっちさん!?」

 「俺は背のネコに言ったつもりだったが」

 「助けなくては!」

 

 クロノとスレインが振り返る。ぼっちが戻って行ったことで騎士とワイバーンは居なかったが変わりにドラゴンが追いかけて来る。

 二人の横を皐月とビオが駆けていく。

 

 「ちょ!お二人とも」

 「クロノさん…」

 「なんでしょう?」

 「逃げましょう!」

 「そうします!」

 

 ドラゴン相手に前衛と魔法攻撃系の二人では勝てない。軽くぼっちさんの無事を祈って即座に判断して再び駆け出す。

 

 

 

 何とかドラゴンを撒いて合流した一行は山の麓の草原フィールドでくつろいでいた。この辺りにはあまりモンスターが出てこないから丁度良いのだ。

 10分ほど休んだ頃だろうかクロノが皆を見渡し立ち上がった。

 

 「少し提案良いですか?」

 「また挑むのはかんべんニャ~」

 「私も無理…」

 「それは僕も思います。そうではなく攻略する為の提案です」

 「勝手に特攻するビオを外す」

 「なに!?俺を除け者にする気か!!モンスターの前にお前を狩ってやろうか!!」

 「やってみろ特攻吸血鬼!!」

 

 ヒートアップし始めたスレインを皐月が、ビオをぼっちが止めた。そんな光景に苦笑いをするクロノは言葉を続けた。

 

 「このまま挑んだ所で結果は同じでしょう。なので仲間を増やそうと思います」

 「・・・仲間」

 「どうでしょうかぼっちさん。城を落とすなら戦力の増強は必須です」

 

 唸って考え込むんだぼっちは納得したのかゆっくりと頷いた。

 

 「では僕は前のメンバーに声をかけてみましょう。もちろん『上を目指す者を』だけですが」

 「俺も知り合いが居るから当たってみよう」

 

 決まれば行動は早かった。クロノもビオも早速動き出したが前のメンバーに声をかける気もあまりなかったスレインと皐月は他に知り合いも無くぼっちを見つめた。

 

 「ぼっちさんなら誰か知り合い居ませんか?」

 「・・・(ふるふる)」

 

 まぁ、ぼっちさんは今まで一人で十分だったから知り合いも居ないのだろう。手詰まりになったことに唸っていると皐月が手を挙げた。

 

 「掲示板で募集するのはどうでしょう?」

 「そんな事出来るのかにゃ?」

 「ああ、そんな機能あったようななかったような…」

 「どっちにゃ?」

 「とりあえずそれでいきましょう」

 

 後は早かった。掲示板に書き込みして指定した2時間後には30ぐらいのプレイヤーがいつもの店に集まった。戦士系から盗賊など近接戦を得意とする職種が多かったのは皐月が掲示板にぼっちさんの名を書き込んだのが原因だろう。

 『無口の英雄』、『負け知らずの神父』など複数の二つ名を持つからには結構有名になっていたらしい。ゆえに「会って見たくて」とか「お零れに預かろうかな」とか冷かしみたいのが多かったが…

 中には二つ名持ちも居たが…

 

 「どぉも~。みのりこって言います~よろしくぅ~」

 

 大型の兎の毛皮で来たフード付きのローブを着込んでいるニッコリ笑っているのほほんとしたプレイヤー。ローブから出ている手足には包帯が巻かれ手に持つ杖は二匹の龍が絡まったように巻かれていた。

 『煉獄の爆弾魔』

 なぜそんな二つ名が付いているのかが分からないと言うのが第一印象で思ったことだ。採用する事は決定したがそれより問題になったのは最後の二人の男女だった。

 男の方はスサノオと名乗った無表情の青年で背には大剣を備え、服装は和装に陣羽織を羽織っている。

 女の方はエスデスと名乗った少し歪んだ笑みを浮かべる透き通った水色の髪を腰まで伸ばしたプレイヤー。腰には髪と同じ色のレイピアに服装は白の軍服に黒いロングコートを羽織っていた。

 レベル80と言う点を除いて装備に問題はなかった。が、随時舌足らずなんだ。

 

 「どう考えても子供なのにゃ~」

 

 ミイが言った通りだった。今度の攻略は難しく、まだプレイヤーとして未熟そうな子供を入れておくほどの余裕は無いだろう。

 

 「ねえ…この子達どうするの?(ボソボソ」

 「入れるわけにもなぁ…手がかかるのは特攻吸血鬼で十分だし(ボソボソ」

 

 小声で結論を出し二人に告げる。

 

 「すまないが君達を入れるわけに行かない」

 「何故だ!?」

 「どうして僕は…何故自分は落とされたのか?」

 「それは君達が…」

 

 断る理由を挙げようとしたら壁に持たれていたぼっちさんが手で制した。まさかとは思うが…

 

 「まさか入れる気なんですか?」

 「・・・(コクン)」

 「相手は子供ですよ?足手まといになりますよ!?」

 「・・・構わない」

 「っ!?……ぼっちさんがそう言うのなら…」

 

 納得できなかったが納得するしかなく頷くと二人の男女が喜んでいた。本当に大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 ~ぼっちSIDE~

 

 今日はなんて日だ。

 先日クロノ君に「そろそろ拠点を手に入れませんか?」と言われて確かに欲しいなとは思った。でもまだ未発見の拠点を探す為にフィールドの奥地まで行けるだけの余裕はvには無い。

 ゆえに今まで誰も入手出来ていない拠点をネットの中から探し出し3ヵ所ほど発見したのだ。その中で西洋のお城と言わんばかりの城を一瞬で気に入り選んだのだ。

 結果は散々…。罠にはかかるはモンスターは大量発生するは、さらには自分達の準備不足が露呈するわ。……帰ったら装備を整えよう…

 と、言う訳で現在撤退中なのですが、何故か背中にはミイが取り付いているんですね。どゆこと?いきなり掴まってきて、走るから振動で落ちそうになっても支えたらセクハラコードにふれるんじゃないかって手も出せないしさ。

 一人背負ったまま何とか前を走る4人に追いついた。

 

 「さっさと走らないとドラゴンの餌食だニャ~♪」

 「あんたはぼっちさんに乗っているだけでしょう!?」

 「貴方はぼっちさんに乗っているだけでしょう!?」

 「お前はぼっちさんに乗っているだけだろうが!?」

 「貴様は乗っているだけだろうが、走れ!!」

 

 背中より皆に声をかけたミイが一斉に突っ込まれる。意外と皆仲良いね。

 

 「だって疲れるんだニャ~…」

 「ゲーム内だから疲れないでしょうに」

 「そうだ!罰にこやつに時間を稼がせるか!!」

 

 名案を思いついたって感じでビオが俺のほうをを指を刺して言ってきたんだけど…。って俺が行くのか!?

 

 「『そうだ』じゃねーよ!お前が撒いたんだからお前が何とかすれば良いじゃないか!」

 「それにミイさんじゃ一瞬の足止めにもなりませんよ」

 「ちょっとクロノ君、それは…」

 「ショックニャ…事実だけに何も言い返せれないニャー」

 「あ!いえ、違うんです。いや、違わないけど違うんです」

 

 何か皆話しているけどそんな言葉は耳に入ってこない。ここを選んでこうなったんだから責任は取らないといけないんだよなあ…多分。

 

 「・・・行って来る」

 

 それだけ告げると元来た道を戻って行く。ドラゴンは数の多いスレイン君の方に行ったけれどもワイバーン竜騎士5体に騎馬竜騎士は俺を追って来ている。

 あ…ミイが居たの忘れてた。

 

 「にゃ、にゃ、にゃんで戻るのかニャ!!」

 「・・・」

 「答えて欲しいで…きゃああああ!?」

 

 騎馬竜騎士が持っている大型ランスを突き出してくるのに合わせて跳んだ。魔法詠唱者でもない人間種であるぼっちが飛べる訳も無くすぐに落下して行く。その先には突き出されたランスが…

 

 「よっと!」

 

 掛け声と共に突き出されたランスを蹴り、もう一度空中へ跳ぶ。背後を取ったことで刀を抜き放ち切り刻む。

 

 「・・・スキル《収束された風》」

 

 《収束された風》は二刀流のスキルで武器に風を纏わせ速度上昇と風圧ダメージを付与するスキルである。

 空中であるが刀を振る分には何の問題もなく切り刻みダメージを蓄積させる。着地する前に一騎は消滅し、残るは四匹…

 背中でミイが叫ぶが気にする事が出来ずに突撃して行く。

 

 

 

 殲滅させてドラゴンに出くわさないように隠れながら駆けて行くとスレイン君達は山の麓の草原フィールドでくつろいでいた。何とかドラゴンからは逃げ切れたんだ良かった。

 ところで俺の膝に乗っているのは何故か教えてもらえないでしょうかミイさん?

 

 「少し提案良いですか?」

 

 沈黙を破ったのはクロノ君だった。 

 

 「また挑むのはかんべんニャ~」

 「私も無理…」

 

 俺も・・・と言う所を押さえて話を聞く事に。

 

 「それは僕も思います。そうではなく攻略する為の提案です」

 「勝手に特攻するビオを外す」

 「なに!?俺を除け者にする気か!!モンスターの前にお前を狩ってやろうか!!」

 「やってみろ特攻吸血鬼!!」

 

 はい、どうどうどう。落ち着こうねビオ様。てか君が暴れると本当に困るから止めよう。

 

 「このまま挑んだ所で結果は同じでしょう。なので仲間を増やそうと思います」

 「・・・仲間」

 「どうでしょうかぼっちさん。城を落とすなら戦力の増強は必須です」

 

 なん…だと!?戦力の増強って事は人数増えるんだよなぁ…。これ以上増えるのか…でも皆必要って言ってるし…

 

 「・・・(コクン)」 

 「では僕は前のメンバーに声をかけてみましょう。もちろん『上を目指す者を』だけですが」

 「俺も知り合いが居るから当たってみよう」

 

 早速二人とも行っちゃったね。そして君らは俺を見るし?期待の眼差しで見ても何もないよ。

 

 「ぼっちさんなら誰か知り合い居ませんか?」

 「・・・(ふるふる)」

 

 居るわけないでしょうが!!ぼっちだから名前だってぼっちにしてるでしょうが!!まぁ、このメンバーにはなれてきたから良いけれどまだ初対面の人とか本当に無理だから。

 

 「掲示板で募集するのはどうでしょう?」

 「そんな事出来るのかにゃ?」

 「ああ、そんな機能あったようななかったような…」

 「どっちにゃ?」

 「とりあえずそれでいきましょう」

 

 どげんにしてこんなに集まった?掲示板に書き込んで二時間後には30ほど居るしさぁ…。お前らどんだけ暇人だよ!!と口に出来るわけなく多くの人を見てびびったぼっちは壁際に退避である。

 皐月ちゃんが作った掲示板の書き込みに目が行くと恥かしさで変な汗が出る。なんだあの『無口の英雄』、『負け知らずの神父』とかなんだ?駄目だ頭がおかしくなりそうなぐらい恥かしいんですけど。

 そんな間にスレイン君と皐月ちゃんとミイがどんどん面接を行なっていく。あの三人マジ有能。30人居た人数が今や10未満まで減らされた。やった、これで少なくなった。

 

 「どぉも~。みのりこって言います~よろしくぅ~」

 

 次に来た女性の面接をしているのだがなんか二人の言葉が聞こえたんだが『煉獄の爆弾魔』?二つ名持ちだよね?彼女入れたら俺の二つ名の注目度減るよな?

 口を出す前に採用されたから良かった。

 

 「ぼ…自分はスサノオと言います」

 「わたしはエスデスと言う」

 

 最後の二人の名を聞いた瞬間超反応してしまった。

 エスデスにスサノオだって狙ってる?狙ってるよね?絶対『アカメが斬る』を知っている子だよね?ねぇ?

 と興奮して見ていたのだが…

 

 「すまないが君達を入れるわけに行かない」

 「何故だ!?」

 「どうして僕は…何故自分は落とされたのか?」

 「それは君達が…」

 

 ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!!

 慌てて手をかざすと振り返ったスレイン君が驚いたような声を上げた。

 

 「まさか入れる気なんですか?」

 「・・・(コクン)」

 「相手は子供ですよ?足手まといになりますよ!?」

 「・・・構わない」

 「っ!?……ぼっちさんがそう言うのなら…」

 

 二人は「よし」と呟きながら喜んでいた。

 内心ぼっちもガッツポーズを取っていた。何にせよこれで数も増えたし良いよね?


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