そしてタイトル通りリザードマンとモミのお話。モミはどう行動するのかな?
リザードマンの集落にてモミはボッチ感を感じていた。
ゆっくりと立ち上がると窓辺に立ち、小屋の中から外を見る。
右を見るとリザードマンの群れ。左を見てもリザードマンの群れ。正面を見てもリザードマンの群れ、群れ、群れ。見渡す限りリザードマンで覆われているのだ。百や二百ではなく千は居る。
小屋の中はモミを除けば6人と外に比べて天と地ほどの数の差があるが外と違い空気が段違いで重い。
『グリーン・クロー』祭司の力を使う戦士で族長のシャースーリュー・シャシャと弟で四至宝の一つ『フロスト・ペイン』を持つザリュース・シャシャ。
戦士103
祭司5
狩猟班7
オス124
メス105
『スモール・ファング』族長。元々狩猟班に属していた小柄なリザードマン。飛び道具で彼に敵う相手無し。
戦士65
祭司1
狩猟班16
オス111
メス94
『レイザー・テイル』族長。白き鎧で四至宝の一つ『白竜の骨鎧』を装備し防御力随一。その防御力を得た変わりに知力が下がっているが元が聡明だった為、頭の回転は良い。
重装甲戦士89
祭司3
狩猟班6
オス99
メス81
『ドラゴン・タスク』族長。2メートルを超える巨漢で右腕の筋肉が異常なほど発達している。トカゲと言うよりはワニに近い姿をしているゼンベル・ググー。
戦士125
祭司2
狩猟班10
オス98
メス32
『レッド・アイ』族長代理で祭司として優れた持ち、モミの友人になったクルシュ・ルールー。
戦士47
祭司15
狩猟班6
オス59
メス77
五部族合わせて1380ものリザードマンの頂点に立つ者達がこれからのことを話している。
偵察をしたスモール・ファングの族長は敵は5000弱のアンデットの群れだと言う。
最悪だ。
別に友人になったクルシュが死のうと生きようとそんなことはナザリックを第一に考えるモミにとってはどうでもいい事であった。いや、そう設定に刻み込まれているのだからと言った方がいいのか…
5000ものアンデットの軍勢を用意できる組織などこの低レベル基準の世界ではまずないだろう。出来たとしても長い年月と高アイテムが必須となる。そこまでして作った軍隊を占領することでうまみが出る地域ではなくこんな所を狙うはずがない。
思い当たる所はあった。こんな辺境の地に簡単に5000もの軍勢を差し向けられる力を持つ者。確認も取れた。相手は『アインズ・ウール・ゴウン』である。
モミが最悪と称したのはこの状況をあることに利用できないかと考えたことである。それをどう実行するかが問題なのだ。現在の立場は『レッド・アイ』族長代理の相談役と言う事になっている。相談役ならば意見を言いやすいと思ったがリザードマンでもない者の意見がすんなり通るはずもない。
「きみは、どうする?」
腕を組んで考え込んでいたモミに声をかけたのはスモール・ファングの族長だった。今までの話は一応聞いていた。奇襲・篭城が提案されたが奇襲は却下され篭城は頭の片隅にでもと言う事で戦うことは決定したのである。ならば戦うことを条件として考えれば…
「…私の知り合いに策士が居る。その人に知恵を貸してもらう」
「さくし?なんだそりゃ?」
「戦いなどで策を練る者だろう」
「目の前の敵を殴るだけで良いじゃねえか」
おおう。居たよ脳筋キャラが。ゼンベルはただ突っ込むだけで勝気なのかな?とんでもない戦闘狂だ。
「ま、そいつがどんな策を練ろうが弱い奴に従う気はねえがな」
「(カチンッ)…貴方じゃ到底敵わないけどね」
「なんだと!!」
「落ち着けゼンベル」
「モミもね」
一気に険悪になった二人を宥めようとザリュースとクルシュが間に入って止めようとする。
フンッとゼンベルは鼻を鳴らし腕を組み音を立てて勢いよく座った。
「だったらそいつをここに呼べ。相手になってやるよ」
「…その必要はない。貴方は私にも勝てないから♪」
「言うじゃねえか?」
「やめといたほうがいい」
「確かにその通りですよ。結果は見えてますしね」
荒々しく立ち上がったゼンベルと相対して立つモミを周りの者が止めようとする。
「武器を振り回して戦うのもなんだし、これで勝負!」
「……何してる?」
「へ?腕相撲知らない?」
「いや、知ってけどよ……」
「ヘイ!カモ~ンチキン」
「………」
両膝と右肘を床に着けたモミに対してやる気満々で立ち上がったゼンベルが何とも表現しにくい表情をしながら同じ体制をとり手を合わせる。
二人の腕を比べると大木と糸ほどの差を感じてしまう。百人居れば百人がゼンベルの勝ちに賭けるだろう。
腕の太さ=強さだったらの話だが…
「では、始め!」とシャースーリューの合図と共に開始されたはずなのだが動く様子がなかった。不思議に思い二人の顔を見るとゼンベルの顔が力み過ぎて変わっていた。よく見ると力を本気で入れているのだろう。腕がぷるぷると震え、顔は力んで赤くなっていた。
対してモミは涼しい顔でニコニコと笑っていた。我慢しているようにはまったく見えなかった。それもそうだろう。レベル100の魔法詠唱者は戦士としてレベル30になる。その上でゴルゴーンで超強化されているモミがたかがレベル18のリザードマンに後れをとる訳がないのだ。
いつまでも続きそうだったので一瞬でモミが決着を付けた。ドヤ顔をしつつ立ち上がると
「じゃあ連絡してくるね♪」
そう告げると隅に走って行き、何かを呟き始めた。
「なあ、ザリュース…」
「なんだ?」
「俺は夢でも見ているのかな?」
「奇遇だな。俺もそう思ってた」
「私もよ」
唖然として放心に近い心情で6人はモミが戻ってくるまでただ見ていた。
『私が策士の・・・ヒューリックか、ヤン。もしくはゼロとでも呼んでくれ・・・』
6人の中央に置かれた五角形の水晶より男の声が聞こえてくる。少しくぐもって聞こえる気がするが。
このアイテムは遠方の人と通信するアイテムと聞いて信じられなかったが目の当たりにすると信じるほかなかった。
「ではヒューリック殿、率直に聞こう。我々はお終いだろうか?」
『否!!ありえない!!数年前の八ギルド連合1500名対42名に比べたらこの程度、苦境の内にも入らない』
「ならば勝てるというのか!?」
『肯定だ。大群相手に勝った戦もある。3000対約40000の第二次上田合戦やケルベロス会戦、新宿事変etc.etc…』
「「「おお!!」」」
歓声が上がった。私達は3倍近い敵にうろたえていたがヒューリックさんは10倍以上の敵と戦ったことがあるんだ。そんな人の知恵を借りれれば勝てる!!
皆が同じ思いだとクルシュは確信した。それぞれの表情から希望が感じ取れるからだ。
しかしこの場ではモミしか知らない。彼が語ったのは少数対多数で勝った前例があると言っただけで参加していないのだから。参加しているのは1500対42のみだ。それも指揮は執ってはいない。むしろ前線で戦っていたような…
シャースーリュー、スモール・ファング族長、レイザー・テイル族長はヒューリックから策を聞いているようだ。
「…話し聞かなくていいの?」
「あん?聞かなくても俺は目の前の敵を叩くだけだからよ」
「……戦闘狂…」
「よせよ。褒めんなって」
何故アレが褒め言葉になるのだろうか…
同じようにザリュースも思っていたのだろう。目が合った瞬間二人で笑いあった。
「ところでクルシュ…」
「ん?なにかしら」
「何時の間にイケメンの彼氏見つけたの?」
「っ!?」
「ねぇねぇ教えてよぉ」
「お、教えない!」
「どっちが告白したの?彼氏さん教えてよ」
「それは…」
「い、言わなくていいから///」
「良いじゃねえか。聞かせろよ」
心に余裕が出来たのか弄られる私を見て皆に笑顔が戻った。
その後のヒューリックの指示により陣形や策を叩き込まれた。同時に堀や穴などの準備にもかかった。
『さぁ、ゲームを始めようか』
水晶から聞こえた声は誰の耳にも入ることはなかった…
約1400で約5000をどうやって倒せと!?
奇襲に夜襲、伏兵なんて生命探知できるアンデットに効かないし…指揮官は頑張ろうとするし…
どうしよう…