骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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コキュートス側とリザードマン側の台詞や行動が入り混じってるから読みにくいかもしれません。


第042話 「ナザリックVSリザードマン連合軍 其の壱」

 足音が聞こえる。一人二人の足音ではなくもっと多くの足音である。

 百か、二百…そんなものではなかった。

 その足音は5000近くのアンデットの大群の物であった。

 ゾンビ2200、スケルトン2200、アンデット・ビースト300、スケルトン・アーチャー150、スケルトン・ライダー100の総数4950のナザリックから送られてきた軍勢をコキュートスは見送る。

 軍勢が目指す先はリザードマンが陣を敷く戦場へと隊列を組んで進んでいく。

 

 

 

 「始まるな…」

 「そうね…」

 

 ザリュースとクルシュは寄り添うように湿地の先を見つめる。これから起こる戦争とその結果について考えながら…

 

 「何黄昏てんだおめーらは」

 「…私達の戦いはこれからだ!」

 「『これからだ!』じゃねぇよ!!てめぇはなに逃げ支度してんだ!!」

 「…こんなか弱い少女に戦えと?」

 「俺を赤子のように捻った奴がか弱いわけあるかよ!」

 「ぷっ!くくく」

 「ふふ、ふふふふふ」

 

 二人のやり取りを見て先ほどまでの不安が掻き消えていった。それを安心したように見つめるモミとゼンベル。

 

 『戦いの前に笑い合えるとは中々余裕だな』

 

 そして水晶から発するヒューリック(精神安定系アイテム大量投入中ぼっち)の声が聞こえてくる。

 声が聞こえると同時にシャースーリューが合流した。

 

 「兄者、もう準備はいいのか?」

 「ああ。『レイザー・テイル』族長は重戦士隊と共に配置についているし、『スモール・ファング』族長は予定通りだ。あとは貴方だけだ」

 「…私?」

 「もう!もしもの時のことを頼んだでしょ」

 「……あぁ…逃がしているリザードマン達の護衛だっけ?」

 「そうよ。忘れてたのね」

 「…むぅ」

 「それは兄者の口癖だろう」

 「ん?そうだったか?」

 「そうだよ兄者」 

 「そうね」

 「だな」

 「むぅ…あっ!?」

 

 再び笑い声が皆を包む。これから自分達の命を懸けて戦うと言うのに心が軽く感じる。やれる。皆がそんな自信を持っている。友人を含むリザードマン達を眺めたモミは戦場となる湿地帯を離脱した。

 

 

 

 

 「で、どういう手筈になっているんだい?」

 

 指揮所となっている天幕にはコキュートス陣営以外にナザリックから数名が到着していた。

 意見役としてデミウルゴスにぼっちの護衛としてシズの二人である。この二人は当初来る予定ではなかったがコキュートスが自身で考えた結果、必要と判断してアインズに許可を貰ったのだ。

 アインズとしては当初の予定と違ったがエントマの報告やコキュートスの今回の行動で以前とは違う行動などを知り、成長していることを喜んでいた。ゆえに許可したのだ。

 ちなみにここにはマインは居るがぼっちは居ない。自分が居てはコキュートスが全力を出せないだろうと告げ自分の天幕で待機中である。

 指揮所中央の大テーブルには戦場のパノラマと敵・味方を表す駒を置いていた。

 

 「マズハコノ地点デリザードマン達ヲ三方カラ包囲スル」

 

 言われた通りに部下達が駒を配置しデミウルゴスに見せる。

 

 「ソコデコノ部隊デ攻撃ヲ仕掛ケル」

 「ふむ…そこで相手と同数で戦うのか。数が多いのであればそのまま包囲殲滅してしまってもいいと思うのだがね」

 「確カニソウナノダガ大軍勢ダト何カアッタ際ニ小回リモ効カナイ上、建テ直シニモ時間ガカカル。ソレニ私ハ指揮官トシテノ経験ガ少ナイ。ソンナ者ガ行キ成リ大群ヲ操ルノハ難シイト判断シタノダ。……ソレニ」

 「それに?」

 「ボッチ様カラ教ワッタ戦略トイウモノヲ使ッテミタイ。指揮官トシテ戦イタイノダ」

 「……その後はどうするんだい?」

 「臨機応変ニ対応シヨウト…」

 「ふ、はははは」

 

 急に笑い出したデミウルゴスに首を傾げつつ疑問を口にする。

 

 「スマナイ…何カオカシナ点ガアッタダロウカ?」

 「ははは。いや、すまないのは私の方だ。アインズ様が言われた通り成長したのだなと思って。少し前の君なら『剣は考えず振るう物』と言っていたね」

 「タシカニ」

 「コキュートス様、軍勢が到着したようです」

 「ウム」

 

 戦場に駒が配置されていく。戦が始まるのだ。

 

 

 

 三つに分けられたアンデットの軍勢を見ながらリザードマン達は息を呑む。しかしその顔には絶望や諦めなどの感情はなかった。先ほど祭司達が先祖達の御霊が我らと共にあるべく降りてきたと言いながら魔法を使ったりして戦意は上々である。

 敵に動きがあった。中央に居たアンデットだけがこちらと相対したのだ。残りの部隊はかなりの距離をとったまま動かなかった。

 アンデット・ビースト、スケルトン・アーチャー、スケルトン・ライダーの全兵とゾンビ&スケルトン500ずつの1550のアンデット軍団である。

 

 「何だあれは?こちらを舐めているのかそれとも…」

 『ふむ…疲弊させるのが目的だろうか?まぁ無策に突撃してこない辺りは優秀なんだろうな』

 「では予定通りに」

 『ああ、頼むよ』

 

 シャースーリュー本陣が合図を送るとこちらとあちらの中間付近に出来ていた穴に隠れていたリザードマン達が合流してきた。

 

 『本陣を中央に鶴翼の陣を』

 「鶴翼の陣に展開させろ!!」

 

 指示通りにリザードマン達が移動を開始した。

 

 

 

 指揮を出したコキュートスが最初に驚いたのは中央付近の穴から本隊に帰っていくリザードマン達であった。

 

 「コレハ伏兵ダト思ウガドウ見ル?」

 「そうだね。しかし生命感知できるアンデットに伏兵とは…」

 「あれ?動き出しましたよ」

 「ン?……!?コレハ鶴翼ノ陣!」

 「それは何かね?」

 「ボッチ様カラ教ワッタ陣形ノ一ツダ」

 「…だとしたら敵はぼっち様と同じ戦法を執ると?」

 「カモ知レナイ…コチラノ陣形ハパターン『W』ヲ」

 

 部隊は6つに分けられ本体の斜め左右に第一、第二に。その第一、第二の斜めに第三、第四、第五が配置されている。上から見ればWの形になっているだろう。

 これから指揮を執るコキュートスはとある幻覚を見た。

 居るのだ。

 コキュートスに向かい合って座る席も者も居ない。だが、そこに居るのだ。何者か分からない何かが…

 多分これは幻術でも魔法でもない。コキュートス以外の誰にも見えないのであろう。 

 

 「サテ…ドウ動クカ」

 

 初手が大事なのは指揮も戦いも同じである故に思案するところなのだが少し考えていた手がある。

 

 「左翼ヲ伸バセ。中央ニ居ル第四ハ本体前カラ本体左翼ヘ移動セヨ」

 

 これにより敵の左翼側面もしくは背後に兵を進めることが出来るだろう。中央は手薄になるがこの状態で突っ込んでくれば左右両翼により挟み撃ちを受ける。

 

 

 

 アンデットに動きがあった。陣形を整えて敵左翼を伸ばしてきたのだ。その動きに反応した者が水晶を通して叫んできた。

 

 『おい!敵本陣が手薄になったぜ。攻め込むぞ!!』

 『袋叩きに合うのが関の山だよ。ザリュース隊は敵左翼の先を抑えて』

 『分かった!仕掛けなくていいんだな?』

 『まだ序盤だ。今は我慢して欲しい。特にゼンベルは』

 『ちっ、わーたよ』

 「ヒューリック殿…」

 『どうしましたシャースーリュー?』

 「私は前線に出なくていいのか?指揮は君が執るわけだから…」

 『先ほども言いましたが今は耐えるときです』

 

 勝つために。そう心の中で呟き自分を押し留め、自分の弟が向かった戦場を見つめる。

 

 

 

 敵はこちらの動きを見て左翼の先へと兵を進めこちらの進行を止めた。

 

 「牽制…カ。左翼ヲ戻セ」

 「しかしそれでは陣形が崩れるのでは?」

 「構ワナイ。誘イノ手ダ」

 

 伸ばしていた左翼を陣形を崩しつつ戻っていくのを見ると誘いの手と理解する。

 

 『全軍に通達。敵陣形が崩れたが誘いの類だ。乗るなよ』

 

 駒が動かされ敵右翼が進んでくる。乗ったか?と思った瞬間進軍が停止した。こちらの思考を読まれたのだろう。

 

 「乗ラヌカ。陣形ヲ立テ直ス」

 

 アンデット達が先ほどと変わりただ戻るだけではなく法則を持って移動を開始した。

 

 『陣形を立て直す気か?重戦士隊前進』

 

 「敵一部進軍してきます!アーチャーが居る部隊のほうへ!!」

 「アーチャー隊ハ構エサセロ」

 

 『重戦士隊進軍を停止せよ』

 

 「敵、進軍を中止!射程圏外で止まりました」 

 

 

 

 ヒューリックとコキュートスの指揮の執り合いで動かされるリザードマン達の大多数がじれったくなってきている。が、状況の理解できる者はいつまでも続くと思われた式指揮の執り合いに決着が付くのが分かった。

 

 『…よし。全軍攻撃を開始せよ。ゼンベル隊は敵の崩れた陣形突入!ザリュース隊は援護に回って!重戦士隊はそのまま前進。敵弓兵隊の攻撃を引き付けつつ殲滅せよ!』

 「聞いたか皆!攻撃開始だ!!」

 

 待ってましたと言わんばかりに声を張り上げリザードマン達が一斉に仕掛けたのである。

 

 

 

 コキュートスは焦っていた。まさかここまでなるとは思わなかったからである。されど思考を停止させる事などせず戦場を見極める。

 

 「コキュートス!!」

 「分カッテイル。通達セヨ。後退シツツ応戦セヨ!!」

 「第一陣後退を開始します」

 

 駒が動かされていくが思ったより進みが遅く敵が食い込んでくる。すでに陣形その物が崩れている。

 

 「このままでは中央を破られます!!」

 「何とか右翼は保てているが左翼が壊滅的とは…アーチャーの隊を援護に向かわせては?」

 「現在アーチャー隊は敵部隊と交戦中!固い鎧を着こなしている分、矢が通りません」

 「コノ乱戦デハライダーノ機動力ガ殺サレルカ。ライダーヲ全力後退サセロ。ビーストハ敵陣形ヲ乱セルダケ乱セ」

 「第一陣を見捨てられるので?」

 「ウム…現時点デ第一陣ヲ放棄。ビーストトゾンビハ時間稼ギニ専念シテ残存スケルトントライダーハ第二陣ニ合流セヨ」

 「敵もやりますね…ですが」

 「アア、コレカラガ本番ダ」

 

 

 

 「敵が後退して行く!?」

 『兄者違う!敵は確かに後退しているが残っている奴らも居る』

 「それは…」

 『時間稼ぎ…だろうな』

 

 第一回戦はこちらの勝利で終わりそうだか、今リザードマン達が戦ったのは敵の三分の一以下。これからは残りの全軍と戦うこととなるのだ。

 

 『出来るだけ減らしておきたかったんだが…』

 「敵の第二陣か…予定が狂ったな」

 『戦争で予定通りに動くことの方が少ない。これで良いと思うよ』

 「むぅ…しかし」

 『それより深追いはするなと全軍に伝えて。特にゼンベルに』

 

 短く返事を返すと全軍に指示を通達する。

 ヒューリック…ぼっちはさっきはああ言ったがゲームである(思っている)戦争でもこうも上手くいかないものなのかと思う。同時に決まった結末ではなく分からない結末なのだから良いのだと思った。

 

 『このゲームって・・・面白!!』




ぼっちの結果
コキュートス…陣形など多少の知識アップと間違っても進み続ける心を得た。
連合軍…軍師として指示を出す。

内容が軽くなってしまった感があるのですが…どうなんでしょう?

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