骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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連続ぼっち回。セバス何処に…


第053話 「蒼の薔薇の心配事」

 「よう童貞」

 

 『蒼の薔薇』の面々に会う為に彼女らが滞在している宿屋に一歩足を踏み入れるとそんな声をかけられた。脳内で『なぜ分かったし!?』と叫ぶと同時に隣で肩を竦めるクライムが視界に入った為に自分ではなくクライムに言った事を理解した。

 初対面の相手に童貞など言う人ってまず居ないだろうな。なに焦ってんだか。

 『童貞ぼうやか』

 居たな。初対面だったかは忘れたが会って2、3日もしない間に言ってきた女性が。

 さっき声をかけて来たのが『蒼の薔薇』一行だったのだろう。クライムに続いてマイン、ぼっちと歩いていっていたのだが途中別の冒険者にぶつかってしまった。

 

 「すまな…」

 「いてえじゃねえか、おい!」

 

 謝罪を言い終わる前に絡んできた。高そうな宿屋だが客の中には彼のようなケンカっぱやいのも居るのだな。もしくは貴族だからか?

 

 「どうしてくれんだお貴族様よぉ?」

 

 後者だった。ここで撫で斬りにするわけにいかないし、って!気付いたマインが今にも切りかかりそうなんですが!?

 

 「聞いてんのか!?」

 

 そこで腰にあったナイフをチラつかせた。

 

 「これで良いかね?」

 

 懐から出した金貨を親指の上に乗せ男に見せる。欲満開の笑顔で受け取ろうとした瞬間に親指で金貨を空中へと弾く。その場に居た全員の視線が金貨に集まった。

 相手の腰のナイフに手を伸ばし抜き取ると同時にベルトを切り裂き、服のボタンの一つ一つの紐を切って行く。そして見る事無く左手で落ちてきた金貨をキャッチした。この間俺の動きについて来れた者は居ない。むしろ目の前の男も気付いてない。

 

 「それともこのナイフが良いかね?」

 「あん?あ、それ俺のナイフじゃねえか!何時の間に…なっ!!」

 

 目の前に差し出されているナイフを見て引っ手繰るように取ろうとした瞬間に彼のボタンはすべて外れ、ベルトが切断された為にズボンが足首まで降りてった。意味を理解した男は顔を真っ青にした。

 

 「どちらが良いかね?」

 「……ナイフで…」

 

 男はナイフを受け取るとズボンを片手で上げつつ飛び出していった。ため息を付きつつ席に向かうと

 

 「やるじゃねえか」

 「驚いた…」

 

 と賞賛の声をかけられた。すかさずクライムが彼女達が『蒼の薔薇』だという事を教えてくれる。

 

 「始めまして。私はアルカード・ブラウニーと申します。この度爵位を受けたとは言えただの商人。気軽にアルカードとお呼びください」

 「おう。よろしくなアルカードのおっさん。俺はガガーラン」

 「…お前は本当に脳筋だな。許可を得たからと言って…」

 「いや。それくらい気楽なほうが良い」

 「そう言ってもらえると助かる。私はイビルアイだ」

 「ティア…」

 「あ、ボクはアルカード様の弟子のマイン・チェルシーと申します」

 

 それぞれ自己紹介を済ませて席につくとスキルを発動して調べる。

 ティナと同じ服装をしており違いと言えば赤が青になっている。

 

 「…!?…いい匂いがした?」

 

 何の話だ?マインが隣に座った瞬間何か言ったような?

 で、マインとは反対側のティアの横に座っているガガーラン。筋肉隆々でまさに漢といった感じの女性。……女性?

 『嘘だ!!』

 『うそさ~!!』

 先に言うなし!!しかも二人分。本当に女性なの!?マインと別の意味でビックリした。けれども二人ともレベル的にこの世界で言う英雄級に近いじゃん。

 そして最後の相手を見た瞬間止まった。

 同じように面を被った漆黒のローブで身を纏っている少女。イビルアイ。…本名はキーノ・ファスリス・インベルン。レベルは50台でエントマより上で年齢250歳…そして吸血鬼。この世界の吸血鬼…気になる。

 『わたし気になります!』

 それはもういいよ。とりあえず話を進めなければとティナより頼まれた事をガガーランに話した。少しの間、難しい顔をして俺を見つめた。

 

 「クライム、こいつは信用できるか?」

 「ええ、勿論です。ラナー様が例の件を話されるぐらいです」

 「!!そうかい。ならまぁ…」

 

 中々に重い話なのだろう。信用が出来なければ出来ない話。少し覚悟を決める。

 

 「これはご内密にお願いする」

 「約束します。で、内容は」

 「リーダーの話なんだがな。おかしいんだ」

 「おかしいと言うのは何かご病気で?」

 「いや病気じゃないと思う。前に『お前が油断したら、暗黒の根源たる闇の私が肉体を支配し、魔剣の力を解放してやる』とか呟いてたのを盗み聞きしてさ」

 「なんだそれは。初耳だぞ」

 「なんで言ってくれなかったの?」

 「いや、だって本人に聞いたら顔を真っ赤にして『心配しないで』なんて言ったんだぞ」

 「何かに操られそうになっているとしても信仰系であることから恥かしがっているのか…」

 「他にも右手を押さえながら『パワーを全力で抑えるのは私のような神に仕えし女性でないと』とか」

 「・・・」

 「原因は分からないんですか?」

 「多分あの四大暗黒剣の魔剣キリネイラムが関係してるんじゃないかと思う。確かあれを手に入れてからだっただろ。あのリングをつけたのって」

 「何の意味もないアーマーリングだと思っていたが何らかの封印系の物なのか」

 「…!ラナー様が危ない」

 

 話を聞いていたクライムが己が主人に危険が迫ってると判断して立ち上がる。が、ガガーランの力強い手に止められる。

 

 「安心しなって。あのラキュースが本当に危ないんだったら俺達に何か言ってくるだろう?」

 「それは…そうですが…」

 「それでだ。五宝物を持っていたぐらいなんだ。ラキュースを助けるアイテムか何か持ってないか?」

 「!!私からも頼む。言ってくれれば出来る限りのお礼を約束しよう」

 

 『ん?今何でもするって言ったよね?』

 はいはい。言ってないから黙ってようね。

 必死に懇願してくる『蒼の薔薇』のメンバー達に期待を眼差しに宿してこちらを見つめるクライム君とマインに対して俺はどうして良いか分からないんだが、

 それってどう考えても中二病だよね。会った時に気付いたけどさ。そっかこっちの世界で発症したらこうなるのか。でもこれって馬鹿と恋愛と同じでつける薬なくね?手段はあるけど…モモンガさんに洗脳魔法で中二病を無くすとか。でもこんな事で頼みたくないしな…

 

 「分かった。アイテムを用意しよう」

 「本当か!?」

 「ええ。お代は…一つ借し…と言う事でどうでしょう」

 「ありがたい。なんと礼を言っていいのやら」

 「そんなに畏まらないでください。キー…イビルアイさん」

 

 あっぶね!本名で呼ぶ所だった。っともうこんな時間だ。約束に遅れてしまう。

 『紳士は時間に正確でなくてはな』

 まったく持ってその通りだ。って今回幻聴が絶好調だな。どした?

 

 「では私はこれで失礼。例の話はマインに任せる」

 「了解しました」

 

 立ち上がり扉に向かって歩き出した俺は憂鬱だった。もう予定ばっかで疲れる…

 

 

 

 イビルアイは宿屋から出て行くアルカードを睨んでいた。

 先ほど奴は『き』と何か言いかけたのだ。何を言いかけた?思い当たる節があった。

 『吸血鬼』。私は仲間にも伏せているが吸血鬼だ。何かの魔法で分かったのか?いや、こちらも対策をしている気付かれるはずが…

 まさか!?本名…私を知っている奴なのか?それとも…

 

 

 

 何で今日は建物から出ると睨まれるの?まあ良いや。

 ぼっちはメッセージを繋げる。本来ならセバスに頼む所なのだがセバスは王都に居るからユリに頼む事にする。

 

 『いかがなさいましたかぼっち様』

 「少し作って欲しいものがある」

 『材質は最高のものをご用意…』

 「いや…この世界の者に渡すのだ」

 『この世界?マイン様にですか?』 

 「いいや、今日あった冒険者だ」

 『そのような者に…』

 「友好関係を築いておきたいのでな」

 『そうですか…』

 「材質は…モモンさんのプレートは…アダマンタイトだったか」

 『その通りでございます』

 「だったらそれで。形は…」

 

 ぼっちは周りに気付かれないようにユリとメッセージをやりあう。

 




ラナー&イビルアイ「何者なんだ?」

ラキュース 「(中二病)仲間にしよう」
ティナ   「(ショタ?だから)仲間にしよう」
ティア   「(女の子?だから)仲間にしよう」

なんでこんなにも差が出たし…
次回ブレインさん出るよ!

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