骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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ブレイン二度目の登場回ですよ!!
一度目は何処って?

『しかし結果は散々だった…武技を使える者を見つけたが他の雑魚と遊んでいる隙に逃げられ』・・・「二人の吸血鬼のお仕事」より

ここですよ。姿すら描かれてないが…


第054話 「ガゼフとブレインとぼっち」

 迷う事無くガゼフ戦士長の家に辿り着いたぼっちは軽くドアをノックした。

 中から誰か出てくるまで建物を見渡してみたがそれほど豪華でも大きい訳でもない建物。本当に王国戦士長が住んでいるのか疑うような一軒家だった。

 ドアが開き一人の老人が顔を覗かせた。 

 

 「どちらさまですかな?」

 「私はアルカード・ブラウニーと申す者です。ガゼフ戦士長と約束したのですが…」

 「承っております。どうぞ中へ」

 

 老人に促されるまま中へ入っていく。外もだが中も質素で家具が少ない。と言うか必要最低限の物しかない。奥のリビングでガゼフ・ストロノーフが待っていた。

 

 「おお!ブラウニー殿」

 「今日はお招き頂きありがとうございます。ストロノーフ殿」

 「いや、よく来られた。カルネ村以来ですな」

 「ええ…そちらの方は?」

 「ん?ああ、ブレイン・アングラウスと言って私とやりあえる実力者です」

 「…どうも」

 

 癖のある青い髪に生気が抜けたような目。ぼっちは何処かで会ったような気がする。それは向こうも一緒なのだろう。一瞬同じように悩んだ素振りを見せたが次には手に持っていた酒を飲み干していた。

 実はぼっちとブレインは一度顔を合わせた事があるのだ。己の剣に自信を持ち、修行の一環として野盗に組していた時だ。シャルティアの任務で武技使用者の捕縛を見学していた際、対象である野盗の巣である洞窟よりプライドを完膚なきまでに砕かれ悲鳴を上げながら走り去っていくブレインを目撃していたのだ。だが、当の本人達はそんな事忘れてしまっているわけだが…

 

 「これを」

 「これは…結構な上物じゃないか。そこまで気を使ってくれなくて良かったのに」

 

 酒を持っていこうと思ったときぼっちは気付いた。銘柄が分からない。こちらの酒はどのような物が好まれているのかまったく知らないのであった。ゆえに取り合えず一番高い酒を選んだのだが正解だったようだ。

 酒を三つのグラスに注ぎ、三人で乾杯する。ブレインはロックでチビチビと、ガゼフは水割りでぐいっと呷る、ぼっちはストレートで少量ずつ喉に流し込む。

 

 「あんたはストロノーフの知り合いなんだよな?」

 

 酒を飲んだ三人の中で一番に口を開いたのはブレインだった。

 

 「ええ。あ!名乗り忘れてましたね。私はアルカード・ブラウニーと申します」

 「ああ…俺はブレイン・アングラウスだ。っと、さっきストロノーフが教えてたっけ」

 「ブラウニー殿は以前、私を救ってくれたことがあるんだ」

 「何?」

 

 どうもその話に興味がそそられたのか、カルネ村の話へと変わる。そして…

 ぼっちが人の家でぼっちにされている件について。

 てかお客様を放置して二人で話されても困るんだが。まぁぼっちにはなれているからいいんだけどね。そう言えば最近カルネ村に行ってないな。今度マインと共にいってみるか。

 

 「ハッ」

 

 話を聞いていなかったのだがいきなりこちらを見て鼻で笑われたのが一番の謎だ。何の話?

 

 「俺達の強さなんてゴミだ…あの化け物の前では特にな…そんな強さを誇っていたなんてな」

 

 ごめん。マジで何の話?聞いていなかったけど重い話してたの?カルネ村の話からどうやって…カルネ村の話も十分重いか。

 力なく言葉を吐き出したブレインの肩をポンポンと心配そうにガゼフが叩く。

 

 「もし良ければ話を聞かせてくれまいか?」

 「ああ…いいぜ」

 

 ブレインが語った話はこうだった。

 剣の修行の為に野盗の仲間になった。ある日二人のヴァンパイヤが現れた。その内の一体には勝てそうだったらしいがもう一体に小指一本で自分の編み出した必殺の武技が破られたとか…

 野盗…ヴァンパイヤ…武技…何か思い出しそうなんだけど…

 

 「俺でも負けていただろうな」

 「必ずな…」

 「一応名前を教えてもらえないか?」

 「聞いても何も出来んと思うぞ」

 「嵐が来る前に何かしら対策をしておく必要はあるだろう」

 「そうか。そうだな。名は『ブラッドフォールン』。『シャルティア・ブラッドフォールン』だ」

 

 驚きのあまりに酒を噴出しそうになった。それと同時に思い出した。

 あー…居たね。何か涙を流し叫び声を上げつつ爆走してた男が。シズと一緒に首を傾げながら見てたっけ。それにしても小指一本ってなめぷして逃がしちゃったかシャルティア。どんな相手にも本気で挑まないと…

 『グラスプ・ハート!』

 ………いや、少しは手加減しても良いかな。あんな初心者狩りみたいなことも合ったし。何にしても彼のプライドはボロボロだね。

 

 「さっきは鼻で笑って悪かったな。でもあんたの力もそんなもんだ。無意味だよ…」

 「?・・・それが何か?」

 「何かってあんたさっきの話聞いてなかったのか?」

 「いや、聞いていたのだが何故そんな話になったんだ?」

 

 驚きの表情でブレインは見つめ、ガゼフは真面目な顔をして聞く体勢をとっていた。

 

 「私は私より強い奴は知っている。負けたことがある。それでも私…いや、俺は彼と肩を並べたい。あの領域に少しでも近づきたい。あの俺を魅了して止まないあの世界へ。そこへ進む為の努力を、道のりを、すべてを無駄だとは思わない」

 「それでも!どんなに憧れようとも、どんなに欲しても人間じゃああの領域には絶対踏み込めない!!それが俺達の限界なんだ!!」

 「誰がそんな限界を決めた?」

 「誰って…」

 「限界はあるものではなく、自分で決めるものでござ…ものだ」

 「自分で決める…」

 「そうだ超えるんだ。今が未熟ならそれを乗り越えて前へ進めばいい。後ろ向きな自分に決着をつけて少しでも前へ」

 「………」

 「その通りだな。私はブラウニー殿の意見に同意だ」

 

 大きく頷いてくれるガゼフは良いとしてブレインは納得したような納得してないような微妙な表情をしている。

 

 「確かにその通りだと思う…だけどもう少しこのままで居させてくれ…決着をつける為に…もう少し」

 「ああ!今は待とう。いくらでもと言う訳には行かないがな」

 「ブレイン」

 「ん?」

 「ブレインでいい」

 「分かったブレイン。なら私もガゼフでいい」

 「よし。今日は存分に飲むか!」

 

 先ほどの暗い表情ではなく少しでも笑えるようになった彼はいずれと言わずすぐにでも立ち上がることが出来るだろう。だが、それは俺の役目じゃない。

 彼らを眺めつつ酒を煽る。するとメッセージが届く。

 

 「すまないがお手洗いは何処かな?」

 「お手洗いは…」

 

 場所を聞いたぼっちは移動して誰も聞き耳を立ててない事調べメッセージを繋げる。

 

 「・・・どうしたザーバ」

 

 

 

 

 アルカードが席を立って二人になった。

 

 「変わった人だな…あのブラウニー殿ってのは」

 「確かに変わった雰囲気を纏った御仁だ」

 「いや…俺が言いたかったのはあの仮面だ」

 「仮面?ああ、その事か」

 「どんな顔なんだろうな?お怪我をしてるとか不細工だったり…」

 「そんな事はなかったぞ。威厳を持った優しげな顔立ちだった」

 「見たことあるのか?」

 「王の御前でな」

 「ちょっと待て。王の御前?何かあったのか?試合とか」

 「ブレインは知らなかったのか?昨日爵位を得たのだ」

 「爵位!ってことは貴族なのかアレが!?」

 「アレとは失礼だぞ」

 「どうみても貴族には見えなかったがな…服装は別として」

 「元々は商人だったらしいが五宝物に匹敵する刀を姫に献上した事で伯爵の地位が与えられたんだ」

 「五宝物…そりゃすげーな」

 

 酒を含みながら考える。そんな刀を献上するぐらいなのだから他にもっと凄い刀とか持っているのだろうか…

 そんな考えを払い、戻ってきたアルカードと再び酒を飲む。今アルカードの腰に差している刀がそれだと知らずに…

 

 

 

 ぼっちは飲み会を終え、深夜の街を一人歩いていた。

 

 「・・・モミ」

 『聞こえてるよ』

 「シャルティアの名が知られている・・・」

 『ふーん…』 

 「・・・お前ならどうする?」

 『んー…あ、ニヒヒ』

 

 シャルティアの事を知られて不安になり理を考えるモミに連絡したのだが何か余計に不安になってきたのは気のせい…だよな?

 

 「モミ・・・」

 『放っておけば良いと思うよ。良いアイデアも浮かんだしね。この事はアインズ様にも報告しておくね』

 「・・・頼む」

 

 メッセージを終了するのと同時に大きな息を吐いた。

 今日は予定の多い日だった。疲れたヲー!!そして明日もさっそく予定が…

 二度目のため息を吐く

 帰ったらすぐに寝よう。

 ぼっちは屋敷へと向かうのであった。




 ぼっち連続回いったん終了!
 次回はヘルシングと蒼の薔薇との共同戦線!しかし皆の様子が…
 
 次回「共闘」お楽しみに

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