骸骨と共にぼっちが行く   作:チェリオ

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 さてと原作お馴染のあの作戦の準備ですよ…原作と違い、いろいろと変わっちゃいましたが…


第061話 「悪魔の作戦と裁判」

 深き闇を表すような黒や血を連想させる赤で支配される部屋に灯りが灯される。蛍光灯や太陽のようにある物をすべて照らそうとするのではなく、明るさと薄暗さを演出するように配置された蝋燭の灯りだ。

 そんな一室の机の前に出された椅子にデミウルゴスは腰掛、重圧に書き連ねられた辞書のような冊子に目を通す。その行動だけでも20回を超える。

 ふぅ、と息をつき時間を確認する。同じ冊子を数冊手に取りゆっくりと立ち上がる。

 

 「さて、行きますか」

 

 背筋を伸ばしてドアへと向かって行く。

 デミウルゴスが向かう先は玉座の間。これから自分の計画した『ゲヘナ』を各階層守護者とプレアデス達に発表するのである。

 玉座の間を開くとすでにアルベド、コキュートス、シャルティア、マーレ、アウラ、ユリ、エントマ、シズ、ルプスレギナと呼んだほとんどが揃っていた。モミはこの場に居ない為にメッセージでの参加である。

 

 「お待たせしてしまいましたか」

 「イヤ、時間通リダ。問題ナイ」

 「そうですか。なら良かったのですが…シャルティアはどうしたのですか?顔色が優れないようだが」

 「気に…気にしないでほしいでありんす…」

 

 表情は暗く、虚ろな目をしているシャルティアを心配したが気にするなといわれればそのまま話を進めさせて貰おう。

 まずはユリを通して冊子を皆に渡す。

 

 「『ゲヘナ』?これを読むに王都を狙った計画のようね」

 「王都を?あんなところ襲って何があるの?」

 

 冊子に軽く目を通したアルベドはすでに大体の事は把握しただろうが他はそうではなかった。こうなることも解っていたデミウルゴスは口を開き説明を開始する。

 

 「目的は複数あります。まずは『八本指』と言う組織を襲います」

 「襲撃カ…私ガ行コウ」

 「いえ、出来ればコキュートスとアルベド、アウラには残ってもらいたいのです」

 「まぁ、防衛の面も考えてそれが妥当なところね」

 「その『八本指』なる者を襲って何かあるでありんすか?」

 「一つは『八本指』という組織そのものをのっとります。王国を裏で支配している組織ですので後でいろいろ利用できるでしょう。二つ目はその者たちがセバスやソリュシャンに敵対したことです」

 

 一つ目では大した反応はなかったが二つ目で皆の目が見開かれた。

 

 「そしてセバスの元にはアインズ様とぼっち様に迎えられた人間が居ます。もしかすると手を出してくる可能性があるからです」

 「アインズ様が認められた人間!?デミウルゴス!まさかとは思うけど雌ではないわよね?ね!?」

 「至高の御方々が認められた者に手を出す?許せないよね」

 「僕もそう思う…」

 「人間ごときが手を出そうとは…」

 「万死ニ値スル!!」

 

 殺気立つのも分かっていた。一人別の理由で叫んでいる者も居るがそれは無視して話を進めよう。

 

 「という訳で皆様納得して頂けましたね?では次の目的に移ります。王都の倉庫にある財宝を狙います。これにより王都の財政は悪化し、微量ながらナザリックの補充にもなりますしね」

 「ねぇ!雌じゃないわよね!」

 「…アルベド、落ち着きなよ…」

 「落ち着いてられますか!!アインズ様が認められた雌ならばもしかするとその人間が、せ、せ、せ、正妻の座を手に入れるかも知れないのよ!!」

 「…デミウルゴス」

 「あー…コホン。その心配には及ばないよ。アインズ様もその気は無い…と言うか興味もなさげだったからね」

 「あら、そう。では話を戻しましょうか。財宝を手に入れると言う事はパンドラズ・アクターにも協力してもらった方が良いわね」

 

 アインズ様の興味がないと知ったアルベドは冷静さを取り戻し、淡々と話し出した。

 

 「ええ、その通りです。彼にはアルベドから伝えてもらえますか?」

 「構わないわ」

 「トコロデ兵力ハドウスルノダ?ココカラ連レテ行クノカ?」

 「いいえ、私の配下に召喚させた悪魔達が居ますのでそれらを使おうかと…」

 『…デミデミ質問良い?』

 

 ここで今まで黙っていたモミが口を開いた。

 正直彼女の事はあまり好きではない。いつも至高の御方から頂いた職務を放棄してなにをしているか分からない為であるが…

 されど信頼は別である。彼女は至高の御方によってナザリックの理を一番に考えるように創造された身。ゆえにその点に関するものに対する信頼は高い。

 

 「何かね?」

 『倉庫や『八本指』を襲うって言っても隠密で襲うの?それとも大々的に?』

 「大々的に行なう予定です」

 『ふーん…周りに住んでる人間たちは皆殺しにするの?』

 「いえ、持ち帰っていろいろ実験に…」

 『却下』

 「!何が悪いというのですか?あの虫けらを有効活用する事するだけですよ」

 『アインズ様もぼっちさ―――まも心優しい所がある。それで心痛められるかもよ』

 「確かに御優しいところはありますが…」

 『進言はしたからね…』

 「む…良いでしょう。では人間たちは…」

 『あ!とりあえず財宝を奪った後の倉庫にでも集めておいてくれない。良い事思いついちゃった』

 「はぁ~…貴方の良い事がナザリックにとっての良い事だと解りかねますが?」

 『後で説明するから…フヒヒ』

 

 軽く冊子に書き記し、計画が変更された事を書き記す。

 

 「後は配置ですが私とプレアデスは仮面を被り、魔王と魔王の部下を演じてもらいます。その際にマーレとプレアデスは一緒に『八本指』拠点襲撃に参加してもらいます。シャルティアは物資の移送をお願いします」

 「わたしが移送でありんすか。理由は解ったでありんすが襲撃に周らなくても良いでありんすか?」

 「ええ。これ以上は階層守護者の名を貶める訳には行きませんから」

 

 デミウルゴスの言葉にシャルティアは怒りを露にした。眼光を見開き、拳に力がこもっていた。

 

 「それはどういう意味でありんすか!」

 「君が一番知っているだろう」

 「何がっ!!」

 「『ベルセルクの腕輪』」

 「!?」

 

 何のことを言われているのか理解して怒りが霧散して落ち込んだように表情が沈む。

 『ベルセルクの腕輪』

 かつてぼっちが身に着けていたワールドアイテムで暴走した事件を引き起こしてしまったアイテム。そもそもの原因を作ったのは油断し、狂乱に堕ちたシャルティアのミスである。

 苦い記憶を思い出し黙る。

 

 「解りましたか?それにコキュートスもリザードマン達に敗北しました。階層守護者が二回も主命に失敗してしまったのです。ならばこの辺りで挽回しなければなりません」

 「デミウルゴスの言う通りね。芳しくないわ」

 「ゆえにこの作戦は失敗するわけには行きません」

 「分かったでありんす…分かったでありんす!!」

 「ムゥ…スマナイナ」

 『はーい!暗く重ーくなった空気の中でモミからのお知らせがあります』

 

 空気が重くなった所でまたモミが喋る。

 

 『ぼっちさ―――まが暴走した時にシャルティアが逃がしてしまった武技使いが王都にいました!やったね。これでシャルティアの名は広まったね♪』

 

 重かった空気が凍り付いた。生物を死滅させてしまいそうな視線を一斉に浴びたシャルティアは震えだしていた。むろん視線が怖いのではない。どれだけ大きなミスを犯し、至高の御方に迷惑をかけるかを思って震えているのだ。

 死ぬことも殺されることも恐ろしくない、だが見捨てられる…失望されるのは…

 

 『…失望されるかもね』

 「!!」

 『下手をすれば捨てられたり…』

 「そんな!?いえ、そうでありんすね…それだけの失態を…」

 『私に良い考えがある』

 「良い…考え?」

 『汚名挽回…じゃなかった、名誉返上?あれ?ま、いっか。アインズ様とぼっちさ―――まの役に立つ作戦があるんだよね。しかもぼっちさん…あー…様が喜ぶ系のやつ』

 「本当でありんすか!!」

 『でも他の誰もがやりたがらないような仕事だけど…やってみる?』

 「やるでありんす。それでぼっち様とアインズ様のお役に立てるなら何でも!!」

 『フヒヒ…』

 

 不気味な笑い声が玉座の間に響く。

 デミウルゴスの作った『ゲヘナ』。それがモミの手で改竄された。この結果がどうなるかはこの先のお楽しみと言う事で…

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 『ここで皆様にご報告がありまーす!!』

 

 『ゲヘナ』の計画を発表した後の玉座の間にてモミが大声で発する。

 

 「まったく、もう少し静かにしなさい」

 「今度は何よ?」

 『裁判です!!』

 

 答えを聞いた皆の動きが止まる。思い浮かんだ物は同じだったのだ。

 

 「まずは無断外出でしょうかね」

 『ザク!?』

 「む、無断欠勤もありますよね」

 『グフ!?』

 「仕事放棄でしょ。多いのは」

 『ドム!?』

 「アルベド、判決ハ?」 

 「もちろん有罪に決まっているじゃない」

 『ゲルググ!?って私じゃなくて』

 

 むーと唸るような声が聞こえたかと思うといつも通りにすぐに戻る。半分呆れつつ何を言ってくるのかを待つ。

 

 『ぼっちさんの偽名を知らなかったとは言えディスってた人が居ます』

 「ナンダト!?」

 「ぼっち様を…誰でありんすか!!」

 「まさかあんたじゃ…」

 「私はそんな事してないでありんす!!」

 「ぼ、僕も違いますよ」

 「では…」

 「そこで何で私を見たのかしら?」

 「いえ、別に深い意味は…」

 

 それぞれが自分の無実を口にし、アルベドを疑ったデミウルゴスは威圧され慌てて否定する。

 皆が次に思ったのはプレアデスだった。

 それに気付いたユリが慌てる。

 

 「ぼ、僕は!…コホン。私は違いますよ」

 「……ぼっち様には良くして貰っている」

 「私も~」

 「そうっすよ。ナザリック内でぼっち様を悪く言う者なんていないっすよ!…何でこっちを見るんすか?」

 「まさか貴方…」

 「うぇ!?違うっすよ!!」

 「ルプー怪しい」

 「…ルプスレギナ」

 「待つっす!虫や銃を向けないで欲しいっす」

 『残念皆外れ~。プレアデスまでは当たってるんだけどね』

 「ほら私じゃなかったすよ!」

 「プレアデスって事はここに居ないのは…ソリュシャン?」

 「ナーちゃんもっすよ。でもナーちゃんがそんな事…」

 『ルプスレギナ正解!!』

 

 

 

 漆黒の英雄として名が知れているモモン様と一緒にナーベはエ・ランテルを離れようとしていた。

 

 「至高の御身をあのような者達が…」

 「そういうなナーベよ。これも仕事だ」

 

 とある貴族の依頼で王都に行く事になったのだがその手段に不満があるのだ。

 道の整備が行き届いてないこの世界では馬車は大きく揺れる。至高の御身を歩かせるなどもってのほか。ゲートなどの魔法はモモン様が剣士である事から不可能。…いや出来るがもしも見られたらと考えるとあまりよくない手である。

 今回貴族が指示した移動方法はフライを使用した移動方法だ。これなら馬車より早く、揺れもないだろう。しかし虫けらである人間に至高の御身を任せること事態がありえないのだ。

 けれど至高の御身であるモモン様がああ言われているのだ。しかしもし何かがあれば即座に…

 

 「―――――っ!!!!!!!!」

 

 背筋が凍るほどの殺気を感じ、振り返りつつ剣に手をかける。

 息を荒くして、冷や汗を掻いてる自分に驚きつつ辺りを見渡す。

 

 「?どうしたのだナーベよ」

 「!……いえ、何でもありません…」

 

 急に剣に手をかけたナーベを不思議そうに見つめていたが気にすることもなく歩みを続ける。ナーベも至高の御方が気付かなかったと言う事はありえないので自分の気のせいと判断して追従する。

 決して気のせいではなかったのだが…

 




 書いたチェリオが書くのもあれなんですが…不安しかない!不安要素再び…
 さて、気を取り直して次回予告に行こう。
 平和な王都で暮らす一人の神父の一日のお話です。
 あれ?不安があるのは何故?
 次回「王国での神父の一日」
 お楽しみに
 

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