予約投稿時間を間違えるはエントマの台詞がイビルアイと戦って喉(蟲)をやられているのに普通に喋っていたりとやらかしてしまいました…
すみません。
イビルアイの台詞だけは直しましたので…
悪魔の攻撃を何とか退け勝利したがその代償は大きな物だった。
戦いで多くの兵を失い、倉庫に保管されていた財宝が消え去った。王都の防衛力ならびに財政面の大打撃。それだけなら良かった。悪魔の攻撃を受けた倉庫区があった王都北東部は壊滅的であり、多くの民が住居を失ってしまったのだ。
「はぁ~」
ラキュースは戦場跡となってしまった王都北東部を見渡す。戦闘中は気にならなかった…いや、気にする余裕がなかったが改めて見てみると悲惨な物だった。
今まで暮らしてきた家を失った人々の顔からは不安が見て取れた。
「どうしたんだよため息なんてついてよ」
「つきたくもなるわよ。私達何も出来なかったのよ?」
『蒼の薔薇』のラキュースとガガーランは病院を兼ねた天幕に向かっている。そこに居るマインとアルカードのお見舞いに行く予定だ。
二人の活躍はヤルダバオトを撃退したモモンと並ぶほど騒がれていた。捕らわれていた民間人を救うために身体を何らかの魔法で酷使して多くの悪魔を一人で倒したマイン。そしてヤルダバオトよりは弱いらしいシャルティア・ブラッドフォールンを満身創痍だが撃退したアルカード。
少しだけ悔しい。冒険者で最高の称号であるアダマンタイト級冒険者である自分が手も足も出せなかった者を撃退したのだ。でも悔しさよりも嬉しさの方が大きい。あのままではその場に居た王もラナーも殺され、今より酷いことになっていただろう。王を無くし統率の取れなくなった王国を帝国が見逃す筈が無いのだから。
「まぁそれについては同意するけどって、あれイビルアイじゃねえか?」
言われて向いてみると確かにイビルアイが居た。イビルアイも気付いたのか軽く手を挙げて挨拶してくる。
「もしかして伯爵に用があんのか?」
「…何故そう思った?」
「いやぁ、なんとなくだけど」
「あら?イビルアイは伯爵の事警戒してなかった?」
「していたさ。少し思うところがあってな」
「ま、何にせよ会いに行くんだろ?ならさっさと行っちまおう」
途中人に聞きながら進んでいくと一個だけ離れた天幕があった。「お邪魔します」と一言かけて開けると怯えた顔をしたマインがベットで固まっていた。固まってと言ってもそもそも三日間は絶対安静らしい。動こうとしても動けないぐらい身体中が痛いとの事。
私達だと認識すると安心したように息を吐き出し笑顔を向けてくれた。
「これはよくz…痛っ」
「あまり無理はするな」
「そうだぜ。無理して悪化さてもいいことねえしな」
「ははは、すみません。ではこのままで失礼しますね」
「大丈夫そうじゃないけど問題はなさそうね」
「ええ、身体的には三日間安静にしていれば問題はないそうです。はい」
「なにかあったの?」
「ッ!?ナニモアリマセンヨー(棒)」
「なぁ…マインって嘘付くの下手だろう」
「う、嘘なんてっ!ツイテマセン(棒)」
「最後、棒読みになってるわよ…」
「うー…すみません嘘付きました」
諦めたように肩を落としたマインは再び天幕の入り口が開いたことにより固まった。
入り口に立っていたのは気だるそうな表情をした少女?…違う、少年だった。確かアルカード伯爵が連れていたレイルと言ったかしら?
レイルはラキュース達に軽く会釈してマインの元へと歩いていった。
「元気そうだな」
「あ、う、うん!これもレイルが打ってくれた刀のおかげだよ」
気のせいかマインの声があがっている気がする。
「そう言ってくれるのはありがたいな」
「あはははは…」
「で、これがあんとき貸した刀だな?」
「あ!ちょ…」
「なんだこれ…」
鞘から抜かれた刀はボロボロだった。文字通りのボロボロである。刀身は錆びのように触ったところから崩れ去っていた。表情は同じく気だるそうなのだが目は完全に冷め切っていた。
「いえ、ちょっと待ってね!…そう、それは事故って言うか何と言うか…」
「大丈夫。怒ってないから」
「ほんとっ!!」
「二度と打ってやらないだけで」
「ほんっとうにすみませんでしたたたたた!!」
三日間安静のはずなのにベットから飛び起きようとして痛みが全身に広がったらしく悶え苦しんでいた。それを面白そうに鞘で突かれていた。
「あー…コホン。お楽しみ中の所悪いんだけど伯爵は?姿が見えないんだけど…別の天幕に居るの?」
この天幕にはベットは二つあった。一つはマインが使っているがもう一つは誰も居ない。居ない所かこれから誰かが使うのだろう。綺麗に布団が畳んであった。
突かれるのが止むと何やら気まずそうな表情をしたマインが口を開いた。
「五時頃には天幕から出て行ってしまいました…」
「「「え!?」」」
ちょっと待って!!伯爵の方が重体だったよね?私の目がおかしかった訳じゃないよね?出て行った?ありえないでしょう…
呆然とする三人の前でレイルだけが面白そうに笑っていた。
『蒼の薔薇』の三人が呆然とした原因であるぼっちは王都北東部の倉庫の前に立っていた。右腕も左腕も包帯をぐるぐるに巻かれて、右手については固定までされていた。そんなぼっちが何をしているかと言うと…
「・・・どうぞ」
「あいがとー」
器に入ったスープを子供に渡していた。その近くではヘルシングの者達が配給を配っていた。あの陽光聖典隊長だったニグンが割烹着を着てスープの火加減を見ていた。傍らで爆笑しているクレマンティーヌに対して額に青筋が浮かんでいた。
あー…疲れた、腕が痛い、帰りたい、でも事後処理が…あーうー
現在ぼっちはヘルシングの面々に命じた事の手伝いを行なっていた。
深夜に召集した近隣のヘルシング各店舗から人材と物資を集めて到着次第配っているのだ。現在は失ったであろう王国の防御面の補助と王国の民への支援を行なっている。食べ物から寝袋まで無償で提供しているのだ。
また別の子供にスープを渡しながら思う。
これって別に俺がしなくてもいいよな多分。国がやってくれると思うしさぁ。でも『伯爵』になっちゃったからな…貴族なら民を守らなきゃならないんだよな。止めたいけど『伯爵』と呼ばれるのは好きだし…。あ!瓦礫の処理から新しい住居の建設もあるのか。王様かラナーちゃんに許可貰わないと不味いな。費用は…俺の小遣いからか…赤字だー。キングボンビーにとりつかれた気分だ。くそったれー!!
そんな事を思いながらもやってしまうのだろう。
ちなみにぼっちは今回の作戦の説明は『レベル30ぐらいで指揮所に来るアンデットで戦ってね。もちろんこの世界の人間の常識で』とモミの伝言しか伝わっていないので…
財宝を奪ったとか。
『八本指』を支配下に治めるとか。
モモンの名声を高めるとか一切合切知らないのであった…
あ”ー!!帰って休みてー!!!!
心の中でだけ叫ぶのだった。
ぼっちの仕事が増えていく。自分で増やしていく。ストレスも増えていくー
次回『王と六大貴族とぼっちの関係』
お楽しみに