予告していた「王家と六大貴族とぼっちの関係」を投稿する前に数話思いついてしまったので…
感想でオリキャラが誰が誰なのか分からないとあったので毎回ここに軽く書くようにします。
ぼっち=オリ主
アルカード=ぼっち
マイン=ぼっちの弟子
レイル=鍛冶屋
モミ=第11階層守護者
ステラ=モミの妹・騎士
ハイネ=ステラの兄・モミの弟・軍師
ザーバ=神父
ポルックス=無口な生産者・カストルの妹
カストル=ポルックスの兄
「ふぅ…」
仕事から解放されたぼっちは使用人全員が出払っている屋敷のリビングでコーヒーを飲みながら一息つく。
解放されたと言うがいい訳をして帰っただけで仕事は山ほどあるのだ。
瓦礫の撤去するにも保管場所を決めなければならなかったり、家を建てるにしても物資は足りても人手が足りないし、何処に誰の家があったかのなどの情報を得なければならない。そして王都なのだから王族の誰かに許可を貰わなければならないだろう…
いっぱいあって現実逃避したい…誰かアニメのDVD持ってないかな?のんのんびよりとか見たいな…
「はぁ~」
再びコーヒーに手を付け息を漏らす。
ところでこの状況どうしようか?
テーブル前に配置してあった椅子に腰掛けているぼっちの真横で土下座しているナーベラル・ガンマが居るのだ。
この屋敷に戻ってコーヒーを淹れて椅子に腰掛けたと同時にノック音が聞こえた。そこまでは良い。使用人が戻ってきたのかと思って『・・・どうぞ』と声をかけた途端、ドアが開かれる音がして現れたナーベラルは『申し訳ございませんでした!!』と地面に頭をぶつけるような勢い…というかぶつけた…で土下座したのだ。
オーケー、オーケー。少しクールになろう俺。
『ク――――ル!最高だ!超クールだよアンタ!』
喧しいわ!!唐突に現れるな!!クールになりたいんだよ…マジで少し落ち着かせてくれ。
深呼吸をしたぼっちはナーベラルに向き直る。
「・・・どうした?」
「…そのぉ」
今にも泣きそうな瞳で上目遣いしないで。何かこうグッと来るものが…じゃなくて!俺も悲しくなるから。
少し悩んだナーベラルだがいつまでもこのままではいけないと口を開いた。
「以前カルネ村に行った時にアルカード様がぼっち様の事だと知らずに悪口を…」
「・・・べt」
なんだそんな事か…思い詰めたように話し出すから何事かと思ったじゃないか。別に良いよそんなことと意味を込めて『・・・別に良い』と言おうとしたのだがそれより早く剣を抜き、己が心臓に突き立て様と…
「このご無礼!死んでお詫びもうし…」
「ッ!?・・・」
「な、何をっ!!」
立てる前に剣の刃を握り締めることで何とか止めた。刃を握り締めた手や指から血が流れ、その光景にナーベラルはただただ驚く。
いっっっっっってええええええ!!俺の左手めがっさイテェ!!アイエーナンデ!?
血が出るのも当然である。ぼっちはシャルティアとの戦いで下げたステータスを戻すのを忘れていたのだ。つまり今のぼっちはただの人間なのである。人間である以上、刃を握れば血が出るのは当たり前である。
剣を手放し呆然とするナーベラルはただ『至高の御方にお怪我を…』と呟いていた。優しく左手で抱き寄せあやすように頭を撫でる。呆然としていた表情が困惑しながら赤面した。
「なっ、なっ、なっ///」
「良い・・・良いのだ」
「ぼ…っち様…」
「全てを許そう、ナーベラル・ガンマ」
「ぼっち様ぁ…」
目に溜めた涙を流しながらしがみ付くナーベラルをぼっちは落ち着くまで胸を貸し続けた。
と書いたら格好良く見えるのだが…
痛たたたたた!ちょ、ナーベラル!?胸に顔を埋めるのは良いけど右手のギブスにも当たってる!!痛い、そこ折れてるんだけど!!
ただ必死に痛みを堪えているだけだった…
しばらくして泣き止んだナーベラルは先程より赤くなり恥かしげな表情をしながら頭を下げた。
「この様な痴態をお見せして申し訳ありませんでした。それも至高の御方の御召し物を汚すなど…」
「・・・構わない。それにナーベラルのような美女に胸を貸したというのは嬉しいものだ・・・」
「!!あ、ありがとうございます///」
あれ?また真っ赤になったぞ?今度はモジモジのおまけ付きだけどどったの?何か変なこと言ったか?あー、あれか。俺が血みどろにしてしまった服を何とかしたいのか。そうだよなー、血が出ている左手で触れたから頭から服にまで血がついちゃってる。思い出したら痛みが…
「ぼっち様…」
「・・・?」
「どうか私に罰をお与えください」
「それは・・・」
「分かっています。けれども至高の御方を悪く言った上に怪我までさせてお咎め無しでは自分自身を許せないのです。だからどうか」
「・・・分かった。ナザリック帰還後に・・・」
「ハッ!では…」
「・・・待て。せめてお風呂に入って行け」
礼を言い頭を下げて浴室へと向かうナーベラルを見送ったぼっちは急ぎポーションを左手で固定して口で栓を外す。近くにあった桶に中身をぶちまけて左手を浸ける。傷口が塞がって血が止まる。
ああ…、久しぶりにポーションのありがたさが分かる。吸血鬼の種族を持っていたら毒にしかならないからなぁ…
一人そんな事を思いながら辺りを見渡すと…
ナーベラルが頭をぶつけた勢いで底が貫けた床…
床に転げた血塗れの剣…
ポーションをかけるまで滴り落ちた血…
急いで動いた為に撒き散らしてしまった飲みかけのコーヒー…
ポーションと血を蒔かれた桶…
数分前と変わってしまった室内に目が点になる。とりあえず片づけをしようかと雑巾を取りに行く。
仕事から逃げてきたのにどうしてこうなるのおおおお!!
またぼっちの胸のうちだけで叫び声が上がる。
おまけ
「はぁ…」
湯船に浸かりながらナーベラルはため息をつく。
謝罪に来た筈なのに至高の御方にお怪我をさせ、お召し物をお汚ししたりと失態の数々…それに優しく抱きしめ…
「――っ///」
ぼっちに抱きしめられていた事を思い出すと恥かしさと嬉しさのあまり顔が真っ赤になる。
「なっ、何を考えているの私は///」
勢いよく顔を湯船に突っ込み、落ち着いた頃に頭を上げる。艶やかな黒髪がしっとりと濡れていた。
落ち着いたら再び後悔が込み上げて来る。
この世界は科学などが発達していないが魔法のおかげでそれなりの生活をしている。風呂に入る為に湯を沸かすのに用いられるのは人力がほとんどであるが貴族などのなかには沸かす為だけに人を雇って魔法を使わせる者もいる。
アルカードも貴族であるならば後者を取るのだが今回使用人は居ない。ここに居るのはナーベラルとぼっちのみ。ナーベラルは湯船に浸かっていると言う事は当然ぼっちが人力で沸かしているのだ。
再びため息を付きながら湯船を見るとほんのり赤くなっていることに気付く。
「なにかしら?………っ!!」
思い出した。先ほど傷ついた手で頭を撫でていたぼっちの事を。髪をつけた際に付いていた血が落ちたのだと。
何を思ったのか再び湯船に顔を浸けたナーベラルはそのまま動かなくなった。
「…ぷはっ!…って私は何をしているの!!」
左右に頭を振り、湯船から上がる。用意されたバスタオルで身体の水気をふき取り、何もない空間から予備の服を取り出して袖を通す。
そこでふと目に入った先ほど着ていた服…
至高の御方であるぼっちの血がしみ込んだ服が…
キョロキョロと辺りを軽く見渡し、自分の物にも関わらず引っ手繰るように手に取る。
震えながらゆっくりと近づけ、顔に押し当てる。
「すー…はー…」
浴室には規則正しい呼吸音だけが響く。
「・・・ナーベラル」
「はひ!!なんでごじゃいまひょう///」
ぼっちは普通に声をかけたのだがやっていることを自覚したナーベラルは慌てて噛みまくる。浴室の戸を開けていないのだからそこまで驚かなくても良かっただろうに。
「・・・汚れた服は・・・どうする?」
「あー…もって帰ります///」
大事そうに服を何もない空間に仕舞いこみ、浴室を後にした。
さぁて、ナーベラルの罰はなぁににしようかなぁ♪
ああ…楽しみだ。ああ…楽しみだ…
次回「蒼の薔薇からの依頼」
お楽しみに