sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
The begining of “ALL”
気がつけば、自分はここにいた。
遥か下には、得体の知れない空間が広がっている。
目を凝らしても、その空間の中は覗けない。
どうやら、自分はあそこから這い出てきたらしい。
周りでは、やはり自分と似たような者が、不思議そうに辺りを見渡している。
しかし、彼らのほとんどは、誰かと一緒にいる。
あの空間から這い出てくる時も、おそらく一緒だったのだろう。
そして彼らはいつか、結ばれることになるのだろう。
しかし、自分は一人きりだった。
誰も近寄ろうとしない。
誰も目を合わせようとしない。
まるで、自分だけがいないような空間に、自分はいた。
不思議だった。
自分の周りにある空気と、彼らのそれとは全く違うのだろう。
どちらが良いのかは、自分には分からない。
きっと、彼らにも分からない。
…知っているのは、誰なんだろうか。
途端に、目の前が明るくなった。
誰かが声を上げた。
「ほら、始まりだ。 長い長い旅が、始まるんだ」
彼らは『旅』のために、次々と明るいところへ飛び込んでいった。
自分も、彼らの後に続いて飛び込んだ。
色々なものが混ざり合う光の中を、彼らはゆっくりと進んでいく。
進むうちに、感情が芽生えてきたり、それまであまり感覚が無かった体も、はっきりと動かせるようになってきた。
「わぁ、入り口が見えてきたよ」
「そうか、もう始まるんだね。 …じゃあ、いつか……また会おうね」
「うん。 いつでもおいで。 待ってるよ」
幸せそうな顔をしたまま、彼らは『入り口』へ消えていった。
自分は…どうしようか。
どちらの世界が良いのかは、今のところ、全く分からない。
…そして、自分はそれが、いつまで経っても分からないのだろう、という気もした。
しかし、世界が呼んでいる。
…行かなければ。 まだ見ぬ世界へ。
…それがどんなに酷くて、廃れていたとしても。
『入り口』は、赤色の光を放ちながら、次第に大きくなっていった。
…始まりは、黒でも白でも、透明でもない。
血の色だった。
それは、懐かしいような、それでいて哀しいような、そんな色だった。
誰かが呼んでいる。
何かが待っている。
自分が旅をする理由は、まだ見つけられない。
しかし、それを旅路で考えるのも、悪くはないかな、と自分は思った。
怖いが、確かに嬉しかった。
周りが活気を帯びてくる。
全てのものが、生気を立ち上らせている。
まるで、歌を歌っているかのように。
自分は、歌に誘われて、旅に出た。
いつか、旅が終わるときも、また歌を聴きたい。
そして、色んな者と、あの世界は何もかもが素晴らしかったと、語り合うのだ。
若葉が芽をふく。
命も、同じように、芽を出す。
…摘みとられなければ、いいんだけどな。
自分には、そんな不安しか無かった。