sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
GUN's BASE:Long time no see
ソニックは、アリスの話を一言も口を挟まずに聞いていた。
彼女は一通り話し終わると、ぬいぐるみを抱き締めて目を潤ませた。
「…そうか…。 じゃあ、そのぬいぐるみは、オマエの友達の物だったんだな」
「そうですわ… 私はあの日以来、これを肌身離さず持っているんですのよ。 何だかジェイクと一緒にいるような気分がして… 未だに家にも置いてこれないのですわ」
「なるほどな…」
彼は頷いたが、後に続く言葉が見つからなかった。
…なんて惨い話なんだ…
ちょうどその時、ソニックが身に付けていた通信機が鳴った。
『もしもーし! ソニックー?』
テイルスだった。
「あ、ああ、どうした、テイルス?」
『事件は片づいた? もうそろそろ夜遅くなっちゃうからさ、戻っておいでよ』
「え、でも…」
ソニックは、アリスの事が気になって少し横を向いた。
彼女は、心配なさらなくても大丈夫ですわよ、と、声には出さなかったが、優しく微笑んでいた。
「…分かった。 今から戻るから、少し待ってろよ」
『オッケー! それじゃ、また後で!』
通信機の画面が暗くなった。
「アリス、本当に大丈夫なのか?」
「構いませんわよ。 話を持ち掛けたのは私ですものね。 …それに、お友達が待ってらっしゃるんでしょ? 早くお帰りになった方がよろしくてよ」
彼女はそうは言ったが、どことなく寂しそうだった。
「…ありがとよ。 じゃあ、用事が無かったらまた来るからな」
「ええ、お待ちしておりますわ。 次に来るときはシャドウも元気になっているといいですわね」
「…そうだな」
彼はシャドウの事も気になったが、テイルスが待っているので、様子を見るのはまた今度にした。
アリスの部屋の出口で、彼は振り返った。
「またな、アリス。 元気でな」
「ありがとうございます。 ソニックさんもご無事で」
それから、彼は控えめに部屋から出ていった。
アリスは、また独りになった。
独りになったとは言えど、胸の奥底に固めていた記憶を他人に話したこともあり、かなり寂しさは緩和されていた。
彼女はまた、ぬいぐるみを抱き締めた。
「…勿論、ずっと側にいますわよ、ジェイク」
それから、数日が経った。
ソニックとしては、一刻も早くアリスの所へ向かいたかったのだが、GUNとDr.エッグマンの絡み合いや、カオスエメラルドの奪い合いなどに翻弄されて、なかなかそうはいかなかった。
やっと空きが出来た今日は、テイルスも連れて施設に行くことにしていた。
「…へえ、それでアリスって子は…」
「ああ、そうだ。 アイツ、本当はすごく寂しい筈なのに…一人で頑張ってるんだ」
施設への道中、二人は幾つかの会話を交わした。
どの話も、テイルスは真剣に聴いていた。
「こんなこと言ったら他人事みたいに聞こえるかもしれないんだけど…大変だねぇ」
「オレ達も見習わないとな…お、すぐそこだな」
GUNの施設が見えてきた。
周辺では警備員やロボットが往来していたが、彼らはソニック達に気付くとすぐ中に通してくれた。
「すごーい! さすがソニックだね! ボクなんか、大統領からマシンの修理要請をもらわないと、すぐ通してくれないのに…」
「ま、まあ… そんな時もあるさ」
二人が施設のロビーに入ると、大統領が待ち構えていた。
「うわっ…。 噂をすれば影、だね… あの、大統領? 何か用事ですか?」
「おおテイルス君! 良かった、今ちょうど警備システムのメンテナンスをしていてね、今日は最新鋭のものに取り換える作業なんだよ」
「…それで、ボクに何か用ですか?」
「テイルス君にパフォーマンスの性能を見てもらいたくて連絡をしようと思っていたら、今まさに君がやって来た、という訳なんだよ」
パフォーマンスの性能、と聞いて、テイルスは目を輝かせた。
「それ、ボクがすっごく見たかったやつだ! い、いいんですか!?」
大統領は満足そうに頷いた。
「勿論だとも。 ついて来たまえ…って、ソニック君も何か用事があるかね?」
それまで宙を仰いでいたソニックは、はっと我に還った。
「あ、いや、オレは… シャドウの様子を見に来たんだ」
「おお、シャドウ君かね。 彼は大分元気になってきているが、まだ充分に動けそうにはないんだ。 君が行ってやったら喜ぶだろうね」
「…そうだな。 じゃあテイルス、終わったら来いよな」
もうすっかりメカのモードに入ってしまったテイルスは、何とか平常心を保ちながら頷いた。
「勿論! じゃあ、ボクは行ってくるね~!! また後で~!!」
「待ちたまえ、私は飛べないんだ! って、おーい! そっちじゃないぞ~!」
通路の奥に消えていく二人を見送ってから、ソニックはアリスの部屋に向かった。
と、間もなく、聞き覚えのある声が彼を呼び止めた。
「ソニックさんじゃありませんこと? いらしてたんですのね」
振り返ると、アリスがいた。
彼女は元気そうだったが、靴下も靴も履いていなかったし、いつも髪に付けている赤色のリボンも無かった。
ソニックは一瞬、何かあったのかと考えた。
…いや、オレは考えすぎなんだ。
…アリスの事だから、きっと何も無いさ…
「オマエが心配になったからな、来たんだよ」
彼がそう言うと、アリスは目を輝かせた。
「まあ、嬉しいですわ…!! あ、私、体調が良くなって、走れるようになったんですのよ!」
「本当か? そりゃ良かったじゃないか!」
「ええ! 今日は都合で少ししか時間が無いのだけれど、それで良ければ私とひとっ走りしませんか?」
ソニックは、それを聞いて心底嬉しくなった。
あんなに弱くて、壊れてしまいそうな彼女が、ついに走れるまでに回復したのだから。
「Of course! …でもな、さすがに手加減はしてやるよ」
アリスが子供っぽく笑う。
「お手柔らかにお願いしますわよ」
ソニックも、つられて笑った。
「当たり前じゃないか! それより、今日は時間が無いんだろ? …行くぜ!」
それから彼らは、軽々と施設を駆け巡った。
まるで、風のように。