sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
楽しい時はすぐに過ぎてしまった。
アリスは、もう行かなくちゃ、と そわそわし始めた。
「…あの、今日は楽しかったですわ、本当に。 でも私、もう時間が…」
ソニックは、走った時の爽快感がまだ抜けきらなかったが、すぐにアリスを気遣った。
「オレも楽しかったぜ、アリス。 ま、時間のせいならどうしようもないな… オレだったら、ちょっとはどうにかなるけどな」
うんうん、とアリスは満足気に頷いた。
「時間も操れて、地上最速… 言うこと無しですわね、あなたは」
「よ、よせよ… 照れますやん」
「きっと、この先も良いことが舞い込んできますわね…私がいなくても」
ソニックは一瞬耳を疑ったが、彼女が否応なしに彼を急かすので、口には出さなかった。
「さ、もう時間ですわ… 楽しかったです、ソニックさん。 ありがとうございました」
「オレの方こそ。 …体調に気をつけるんだぞ…あと、隊長にもな」
彼は冗談めかしてそう言ったつもりだったのに、彼女は切なそうに微笑んでから、少し手を振って、ソニックとは反対の方向へ歩き出した。
…疲れたんだな、急に走ったから…
それから彼も、アリスと反対の方向へ歩き出したが、やはり彼女の事が気になって、後ろを振り返った。
そこには、誰もいなかった。
「…アリス? 部屋が近かったのか? 無事に戻れたんなら、いいけどな」
彼が独り言を呟いた矢先、彼の前から誰かが走ってきた。
それは、シャドウだった。
「お!? シャドウじゃないか! 良くなったみたいだな、心配して…」
シャドウは、ソニックの言葉を遮った。
「…アリスが…先程から意識が無いんだ…」
ソニックには、彼の言葉の意味がよく分からなかった。
「…そんな、アリスが!? 先程…って、いつからなんだ?」
「約一時間半前だ。 君はまだここには来ていなかったから、知らなかっただろう」
「は……?」
…アリスが、オレが来る前から意識が無かっただって?
…じゃあ、さっき見たアリスは、何だったんだ?
…オレは、確かに見たが…
「何を呆然としているんだ。 急げ、彼女の部屋はここからかなりある。 僕でも五分は かかるんだ」
「ご、五分だって……?」
「…行くぞ。 すぐに来い」
シャドウは走り去ってしまった。
勿論、ソニックは立ち尽くしていた。
…アリスが……?
…そんな筈は無い。
…オレは…オレは、アリスとさっきまで一緒にいたぞ……!
…何が……起こっているんだ……
世界が反転して、何もかもが混ざり、混沌の色 一色だけになってしまいそうだった。
「…アリス…無事で……」