sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
NeW vISitOrs
…ここは…何処だ…?
…あの空、見たことがあるような…
…まさか……!
「おい、二人とも……起きろって!」
一番早く目を覚ましたのは、ソニックだった。
彼は、まだ気を失っている二人を起こした。
「…ぅぅ……あれ、ソニック…?」
「…ここは……? それより、僕たちは何を……」
「分からない。 でもほら、周りを見てみろよ」
よろめきながら立ち上がった二人は、周りの景色を見て驚いた。
そこは、ソニック達が暮らしていた、『グリーンヒル』だった。
しかし、空はコンピュータの画像を貼り付けたようにぎこちなく動き、彼らが立っている地面も、リアリティが無かった。
…まるで、何かのシミュレートシステムのように。
「完璧なグリーンヒルだね…!」
テイルスは周りの情景の精密さに驚いていたが、シャドウは何かに気づいたようだった。
「待て、僕たちはさっき、マザーコンピュータ室で倒れた。 …ということは……」
「ああ。 例のプログラムの中に、入っちまったみたいだな」
それまで、周りの草花や地面に触れてみては感嘆の声をあげていたテイルスは、はっとしたようにソニックを見た。
「…え、今、何て……?」
「オレ達は今、あのハッキングされたとかいうプログラムの中にいるんだよ。 たぶん…だけどな」
「ええぇぇぇぇぇぇ!? ど、どうしたら……!?」
「…ソニック。 僕は前に、『ここにはもう一人の君がいる』と伝えたな」
深刻な表情でソニックが答える。
「…そうだ。 …オレ達はそいつに出喰わすかもしれない…… そいつがどんなヤツかは、オレには分からない」
シリアスな返答をテイルスは気にかけたようだが、彼は別の事を思い出した。
「それって…… まあいいや。 これは、GUNの研究者が作ったプログラムだよね。 だとしたら、絶対、どこかに侵入口(バックドア)があるはずだよ」
侵入口、と聞いて、二人に疑問の念が浮かんだ。
「…何故だ?」
テイルスが満足そうな顔をする。
「GUNの研究者たちはね、プログラムを作るときに、必ずどこかに抜け穴を作るんだ。 プログラムを動かすには膨大な桁のパスワードが必要で、中にはそれを打ち込むのが面倒くさいって人もいるらしいんだ」
そこまで言って、彼は小さな端末を取り出して操作し始めた。
「本当はセキュリティに関わるから、それはあんまりやっちゃいけないんだけどね… でも、ごくごく小さいけれど、GUNの研究者達は確実に侵入口を作ってるんだよ。 だからこのプログラムにも、絶対に侵入口があるはずなんだ」
「なるほどな。 …ていうか、テイルス……それ、機密情報じゃないのか?」
テイルスは、しまった、と言わんばかりに顔を赤くした。
「き、機密情報だなんて…… でも、そんなのが有っても、使うのは少数の人達だけだと思うよ」
「…これは指令官行きだな。 どこかのコウモリと同じことをしているな、君は」
「えぇ!? や、やめてってば~!! それより、早く侵入口を探さないと!」
テイルスは、端末を宙にかざしながら先に進んでいった。
ソニック達も後を追う。
道中で、ソニックはシャドウに語りかけた。
「…なあ、シャドウ」
「…何だ?」
「何か、気味悪いと思わないか? …アリスが倒れたのも、オレ達と同じ場所なんだよな」
「そうだ。 …彼女がどうしたかは、分からないが…… おそらく、僕達と同じような羽目になったんだろう」
「…そうだよな。 でもオレ達は……アリスや、皆の為に…帰らなくちゃいけないからな」
「…当たり前だ」
ソニックは、顔を上げて無機質な空を仰いだ。
「できるんだったら、その……もう一人のオレと、話がしてみたいんだ」
「何故だ?」
「そいつも、アリスの事を知ってるんじゃないか? …オレ達より、知ってるかもしれないけどな。 だったら…」
ソニックは、走るスピードをほんの少し上げた。
そして、哀しさとも希望ともつかないような表情で、彼はこう言った。
「分かち合いたいんだ。 アリスの気持ちとか……そんなのをな。 ほら、分かるだろ、シャドウ?」
シャドウは、少しうつむいて頷いた。
「…そうだな。 君はやはり……」
シャドウが次の言葉を継ぐ前に、ソニックが唐突に叫んだ。
「テイルス! 止まるんだ!」
「…え? ソニック? どうしたの?」
やや前方を走っていたテイルスの前に、薄暗い影が揺らめいたのを、ソニックは見逃さなかった。
…その影は、どうやら彼にしか見えていないようだった。
「テイルス! 戻って来い! テイルス!!」
彼は必死に叫んだが、テイルスはまともに取っていなかった。
「だ、だから、どうしちゃったのさ、ソニック? 何もいないって……」
「違う! オレには……むしろ、オレにしか見えてないんだよ! 頼むから、こっちに来いよ!!」
影は、まるでテイルスを獲物にでもしているかのように、静かに佇んでいた。
その時、それまでは、ただ単にソニックの気が動転してしまったものと考えていたテイルスは、やっと気づいた。
「テイルス!! 危ない!!」
…少し、遅かったが。
テイルスが感づくほどに、更に影が濃くなっていった。
そして、少し間があったあと、その影は赤いものを放った。
それは、紛れもない、血だった。
ソニックが、その血が誰のものであるかを覚る前に、先程と同じような砂嵐と霞が、二人を包み込んだ。
「テイルス! テイルスーーー!!」
親しい者____守るべき者____を思ってソニックが発した言霊は、誰に届くこともなく、虚しく宙に潰えていった。
◇◇◇
「やっと退屈じゃなくなったね、今度こそ」
【 … 】
「何を黙ってるんだよ? 遊び相手が来てくれて、嬉しくないの?」
【 そうじゃない 】
「…彼女のことかぁ。 対象が誰か分からなくて困ってるんだね」
【 しってるの? 】
「知っているも何も……すぐに分かるはずだよ」
「…君が、いつもどおりにしていれば…、ね」